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株式会社りそなホールディングス

ケーススタディ

2016年12月27日

経営ビジョンである「リテールNo.1」を目指し、
CRE戦略遂行で本部機能の移転・集約を実現したりそな銀行大阪本社&近畿大阪銀行本社。

オフィス

東京、大阪、埼玉を基盤に持つりそなグループ。その関西圏における重要拠点「りそな銀行大阪本社」と「近畿大阪銀行本社」が、お客さまへの利便性の向上と地域経済の発展に貢献するため、最適なグループ運営体制を構築することを目的に本社ビルを集約した。プロジェクトのスタートから1年半で、総床面積1万坪、総勢4,000人にも上る移転がどのように実現されたのか。その足跡を追う。

徹底した合理化でさらなる発展を目指す「りそなグループ」

外観

りそなホールディングスを親会社として、りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行という3つの商業銀行によって構成されるりそなグループ。いくつもの銀行が統合し、りそなグループとして発足したのは2002年のことだ。東京・大阪・埼玉それぞれの地域に企画・営業の中核拠点を有し、それをりそなホールディングス東京本社が統括するという形態をとっている。東京本社が、りそな銀行およびグループ全体の本社機能を担っているのに対し、埼玉本社は埼玉りそなの本社機能を、また大阪本社は、りそな銀行と近畿大阪銀行のマザーマーケットであるため、中核拠点としてそれぞれが、本社機能を置いている。つまり、各社がそれぞれ、より現場に近いところで企画・業務推進を行っているのである。

とはいえ、基本方針はグループ連結運営であり、各社がそれぞれに顧客サービスを提供するものの、それ以外の点では一体経営による合理化を推進している。こうした合理化策は同社のCRE戦略にも如実に表れている。多くの銀行が、その権威を象徴するかのように一等地に自前の本社ビルを有しているのに対し、同グループは2010年、皇居を間近に望む大手町の自社ビルから、江東区木場の賃貸ビルに本社機能を移転して注目された経緯がある。そして次に着手したのが、りそな銀行、近畿大阪銀行の創業地である大阪。所有不動産の売却を含めた、大掛かりな拠点再編が行われたのである。

限られたメンバーによって推進された極秘プロジェクト

オフィス

大阪の拠点再編計画が持ち上がったのは、2013年末のこと。当時、同グループでは、りそな大阪本社ビル、近畿大阪銀行本社ビルのほか、いくつものビルを所有・使用していたが、バブル期に竣工したビルが多いため、空調や照明に膨大な維持管理コストがかかっていた。また、利用効率の悪い拠点もあり、経営的観点から最適化を図る必要性が認識され始めたのだ。

「一体運営を目指し合理化を推進するには、同一業務をまとめる方が生産性が高いことは自明の理です。その意味で、コスト管理の面からも、業務統合を含めた拠点の集約が不可欠でした。リテールNo.1を目指す当社グループとしては、業務統合により捻出した人的資源を顧客サービスに振り向けることが、なにより重要と考えたのです」。そう語るのは、今プロジェクトの中心メンバーの1人、同社購買戦略部部長の石原照久氏である。

折しも、経営陣による経営改革的な場でも、同様の趣旨のテーマが話し合われており、そのためボトムアップで始まったこの提案は経営陣にも高い評価を受け、実現に向け大きく動き始めた。また、東京本社ではすでに働き方改革も進められていたため、東京に追いつけ、追い越せを合言葉に意欲が高まったことは言うまでもない。

具体的な計画としては、当時の「りそな大阪本社ビル」を「りそなグループ大阪本社ビル」として2社の本社機能を集約。同時に「近畿大阪銀行本社ビル」は「りそなグループOBPオフィスビル」とし、周辺に分散していたバックオフィス機能を集約する。さらに、所有不動産である2棟のビルを売却するほか、賃借ビルについても床面積の見直しを実施するというものだ。

当初の計画は、事務局のわずか3名だけで立案され、ほかに知っているのは経営陣のみという極秘プロジェクトとして進行していた。

猫のキャラクター

「当時、当グループは、注入された公的資金を2015年6月に完済する予定であり、それに先立つ同年2月には、新生りそなグループの今後のあり方を示す、中期経営計画を発表することになっていました。今回の移転プロジェクトの正式発表をその中期計画に組み込むことで、推進力としての一翼を担うことができると考えたのです」(石原氏)。

このため、従業員のほとんどは、この発表で初めて移転計画を知ったという。

1年間に17回の分割移転を実施まさに走りながらの決断の連続

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こうして、ようやく明るみに出た総計1万坪、約4,000人の移転プロジェクトだが、大変なのはここからだった。移転期間は2015年8月から翌2016年8月まで。計画公表からスタートまで半年しかない。しかも、新築ビルへの一斉移転ではなく、業務を継続しながら、一方ではリノベーションと、フロアごとの分割移転を、1年間に17回も実施する予定なのだ。「建築、設備や移転といった業務に対してアマチュアであったため、出来ないことを考えるのではなく、出来るはずと考えたからこそのスケジュールだったかもしれません(笑)」と、同社グループ戦略部グループリーダーの水川敏幸氏は当時を振り返る。

銀行マンには「時間=経営資源」の意識が浸透している。業務が停滞すればそれだけ本業収益を圧迫する。そのため、少しでも早く業務統合して生産性向上を実現し、コスト削減しながらいかに社員という経営資源を顧客に振り向けるかが、最大のテーマだったのである。

スタートは、事務局の3人に各業務の担当スタッフ4名を加え、計7名の社内専門チームを立ち上げた。その後、東京本社の移転時でその有効性を認識していたプロジェクトマネジメント(PM)にCBRE、その他協力業者選定の入札を経て、協力会社を確定。同時に、社内のコンセンサスを得るため全社員にアンケートをとり、参加者意識を高めた。フロアごとの移転だが複数の部署が混在しているためその調整はもちろん、全社だけでなくフロア単位の移転説明会を開催、レイアウトの調整も行った。移転が始まってからは、ワンフロアが終了するたびに全社員に報告し、当事者意識も共有していった。

建物のリノベーションにも課題が多かった。築年数を経たビルなだけに、現在とは設計思想も働き方も大きく異なる。例えば、今回の変更の大きなポイントの1つがユニバーサルレイアウトの導入だが、以前のレイアウトよりワンフロア当たりの収容人数が増えるため、換気機能が足りないことから増強。また、バックオフィス等のビジネスサポート機能を集約したりそなグループOBPオフィスビルでは、担い手の8割を女性が占めるようになったため、女性用化粧室が足りないといった課題に直面し、女性に配慮したオフィス設計に工夫を凝らした。

今回の移転は5ヶ所のビルを2ヶ所に集約する計画であり、限られたスペースに全社員を収容するには、ペーパーレス化の徹底も不可欠だった。そのため全体の6割強の文書の削減を実施。その量は1万3216ファイルメートル、富士山3.5個分の高さに匹敵するという。

エントランス

こうした、本来なら事前準備というべき業務と、実際の移転作業が同時進行で行われた今回の移転。まさに走りながら考えてこそ実現できたと言えるだろう。「スケジュールもコストも、ミスや変更は起こりうるものと想定して、いつでもリカバリーができるように調整を重ねながら遂行していきました。その意味で、PMの専門的なノウハウが重要であり、CBREのプロジェクトマネージャーと目的を共有できたことで、短期間での移転が実現できたと実感しています」(水川氏)。

新たな働く環境を提案する2つのワーキング・スペース

外観

今回の移転には、拠点維持コストの削減、業務統合による効率化と同時に、部門を越えたコミュニケーションの活性化、既成概念にとらわれない働き方の導入、生産性向上に向けた社員の意識改革といった目標もあった。その1つが、りそなグループ大阪本社ビルの5階に導入されたABW(アクティビティベース・ワークプレイス)だ。

他のフロアとは異なり、業務特性を考慮して一部の業務は固定席であるが、その他大半の社員は完全にフリーアドレス。フロアには「正方形のデスク」を組み合わせた執務デスクのほか、コミュニケーションを活性化させるための「円形デスク」や「ベンチシート」、「ミーティングブース」、「ハイカウンター」、執務に集中するための間仕切りのある「集中デスク」といった様々なワークプレイスが設けられ、働き手は自律的に働く場所を選ぶことが出来る。

オフィス
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もう1つの特筆すべき点は、バックオフィス業務をりそなグループOBPオフィスビルに集約したこと。一般に、伝票処理などを集中して行うセンター業務は、お客さまが直接来訪されることがないため、事務的な効率性を優先したレイアウトになっていた。だが、その職場を執務環境重視の高機能な環境に転換したことは、大きな改革とも言えるのだ。

「どちらの施策も銀行では珍しい試みですが、とても好評でモチベーションは確実に上がり、執務される方々の意識は変わってきています。次なる働き方改革への布石は打てたと考えています。今後は、実際にその場で働く方々が自ら考え、改善・進化させていく段階です。もちろん、本来の目的は移転ではなく、より多くのお客さまに、より質の高いサービスをご提供すること。それが “リテールNo.1”に向けた道筋です。そのための意識改革が少しでも早く進むように努力していきます」と、取材の最後に、プロジェクトメンバーの同社購買戦略部アドバイザーの俣野等氏が、りそなグループのビジョン実現に向けた意気込みを語ってくれた。

プロジェクト詳細
企業名 株式会社りそなホールディングス 株式会社りそな銀行 株式会社近畿大阪銀行
施設 りそなグループ大阪本社ビル りそなグループOBPオフィスビル 等
内容 りそなグループ各社の本部機能の集約 近畿大阪銀行の本社移転
りそなグループのビジネスサポート機能の集約
実施期間 2015年8月~2016年8月
CBRE業務 プロジェクトマネジメント ワークプレイスストラテジー

 

上記の記事の内容は BZ空間誌 2016年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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