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日本郵政グループ

ケーススタディ

2019年4月2日

民間企業としてさらなる成長と発展のため、
グループ間連携強化と新たなビジネス創造に挑む。
霞が関から大手町へ、4社6,000人の本社機能統合移転。

日本郵政グループ

日本郵政グループ4社(日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)は、2018年9月~11月に霞が関から大手町への本社移転を実施した。移転の狙いは、8拠点に分散していた本社機能の集約によるグループ間連携強化と、日本有数のビジネスエリアへの移転による脱官僚体質・新たな企業文化の創造である。今や独立企業となった4社の足並みをそろえ、6,000人もの大所帯の移転をスムーズに成し遂げた秘訣は何だったのか。50年ぶりに霞が関を離れ、民間企業としてさらなる成長を目指す日本郵政グループの、歴史的な本社移転プロジェクトを取材した。

本社機能8拠点分散の弊害、グループシナジーを求め集約移転

日本郵政グループ

日本郵政グループは、昨年9月から11月にかけて、東京・霞が関周辺に分散していたグループ各社の本社機能を大手町の一拠点に集約させた。移転先は、大手町エリア最大規模の新築オフィスビル「大手町プレイス」である。2棟あるうちの1棟のウエストタワーに、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の本社勤務の社員約6,000人が移った。

移転を本格的に検討し始めたのは、郵政民営化により日本郵政グループが発足した2007年にまでさかのぼる。組織拡大に伴う人員増加により、当時から霞が関の日本郵政ビルだけでは収容できず、各社の本社機能が周辺ビルなど主要8拠点に分散していた。「各社内の業務効率やコミュニケーションが低下しただけでなく、グループ間の交流も減少し、連携しにくいような雰囲気でした」と話すのは、日本郵政の本社移転推進室室長である齋藤隆司氏である。

加えて、物理的なスペース不足や、合理性を欠いたオフィス運用も深刻だったという。「例えば、会議室の数が圧倒的に不足し常に予約で埋まっているにもかかわらず、実際に稼働率を調べてみると3割程度と極めて低い状態でした。これは後の利用状況調査でわかったことですが、例えば予約は2時間で実際の利用時間は30分など、会議室が有効に活用されていなかったことが原因です。また、人員増によるスペース不足から、元々あった柔剣道場やジムなど福利厚生施設を次々と執務室に転化していった結果、社員へのホスピタリティ不足、オフィス内の快適性も損なわれていました」。

このような背景から拠点集約の検討が始まったのだが、当初は分社したグループ各社の一括移転に反対意見も多かったという。「各社上場を控えていましたから『独立企業としてそれに相応しい移転先を個別に探せばいい』という声もありました。しかし、それではグループとしての成長は望めません。新たなビジネスの芽を創るには、グループシナジーを発揮できる環境が不可欠だと考えたのです」と齋藤氏。

移転先の選定も難航を極めた。第一に、霞が関以外で移転先を探す必要があった。霞が関は官公庁施設の集積地のため、民間企業となった日本郵政グループの本社建て替えは制限されていたからだ。そこで有力候補として挙がったのが大手町である。日本郵政グループは、逓信ビル跡地に建設予定だった大手町再開発ビル(大手町プレイス)の一定の権利を有しており、権利変換により移転に必要な床面積の取得が可能だった。ところが、地価の高い大手町への移転に賛成する人は2割程度で、「大手町のビルは貸し出し、本社は他の自社所有地で十分」という意見が大半だったという。それを覆したのは、自分たちのビジネスのやり方を変えていかなければ企業の成長はない、という強い想いだった。「民間企業が集積し、いわば日本のビジネスの中枢ともいえる大手町に本社を置き、お客様から常に刺激を受けながら自らのサービス改善や新たなビジネスイノベーションに取り組んでいくことが大切」と周囲への説得が続けられ、徐々に賛同が増え、2013年、大手町への本社移転が正式に決まったのである。

4社6,000人の大規模移転、グループ内の意思統一の秘訣とは?

日本郵政グループ

郵政グループ4社合わせて総勢6,000人という大規模移転。成功させるには4社の足並みをそろえる必要があり、「まず、各社それぞれの経営陣との意思疎通が最大の課題でした」と齋藤氏。そこで2014年4月、日本郵政の総務部内に本社移転推進事務局を設置すると同時に、各社の意思統一を図るため、副社長と役員クラスによるグループ本社移転推進本部を立ち上げた。

事務局が最初に行ったのは、グループ4社へのトップインタビューである。「4社のトップ全員に移転への想いを聞くほかに、事務局の仮説を確かめる狙いもありました。我々が移転に期待したのは、お役所的体質からの脱却です。例えば執務室のレイアウト一つとっても、従来は部署ごとに間仕切りがあって、窓際に管理職がズラリと並ぶ雛壇スタイルでした。『移転を機に新しい企業文化を創りたい』という我々の想いにトップ全員から賛同を得ることができたのは、幸先のいいスタートでした」。

また、社員に対してもアンケートを行い、旧オフィスの問題点や新オフィスに期待する機能などをヒアリング。オフィス利用状況調査などの結果も踏まえて課題を抽出し、本社移転で取り組むべき改革方針を決定した。

日本郵政グループ

最初に経営陣の理解を得たことで、事務局にある程度の権限が委譲され、移転プロジェクトをスムーズに進めることができたと齋藤氏はふり返る。一方で、社員に対しては、各社に設けた本社移転担当を通して、あるいは2015年6月から毎月配信した「大手町移転news」を通して集約移転に関する周知を図った。しかし、新オフィスの詳細は引っ越し直前まで明らかにしなかったという。「働く環境が大きく変わると知れば、反対する人が大勢現れます。ですから、いいオフィスをつくることで『結果で勝負しよう』と考えたのです。逆に言えば、社員の賛同を得られなければ移転は失敗する、というリスクもありました」。

オープンな執務空間の導入と、「郵政らしい」空間づくり

日本郵政グループ

移転を機に大きく変えたのは、役所以来の窓際席を廃止し、オープンでフラットな執務空間にしたことだ。組織改正や異動への対応が容易なユニバーサルレイアウトを導入し、窓際はコミュニケーションゾーンや集中スペースなど、多様な用途で利用できるエリアとして開放した。また、不足していた会議室やリフレッシュ空間については、適切な数と規模の会議室を整備するとともに、柔道場や剣道場としても使える多目的室も設置した。

大胆なペーパーレス化も敢行。旧オフィスで実施した文書量実態調査では、蓄積した書類を積み重ねると4社平均で一人当たり8.5fmにも達し、一般の会社の平均である3.2fmと比較しても約3倍だった。それを本社移転までに8割削減し、一人当たり1.7fmにまで減らしたのだ。これに伴い、ノートパソコンの活用促進や会議室のモニター設置などで会議のペーパーレス化も行った。経営陣も協力し、経営会議など社内会議もペーパーレスへと移行した。

社外の人も利用する会議室や食堂など一般エリアは、「郵政らしさ」を感じられる空間づくりを意識した。例えば、会議室の天井に「前島密翁の1円切手」や「見返り美人」などの切手をモチーフにしたグラフィックを施したり、会議室名やサインに郵便番号を取り入れたりしている。また、食堂には、社員が1万枚の使用済み切手を持ち寄って作った巨大な日本地図が飾られている。これは、移転に向けて社内の一体感を醸成するために行った社員参加型イベントで作成したものだ。「私たちの組織は2021年には150年目を迎えます。グループが持つ歴史やコンテンツを最大限に活用し、お客様とのコミュニケーションが生まれる空間をつくりたいと考えたわけです」。

本社社員が利用する執務室や機密エリア以外は、社員証を持つグループ社員であれば誰でも自由に立ち入れるようにしたのも新たな試みである。つまり、日本全国の郵便局で働く社員全員が、本社の食堂や多目的室等を利用できるということだ。社員証をセキュリティカードと兼ねることで、社員の自由な出入りを可能にした。「郵政のコアビジネスを支えるフロントラインの人たちにとって、できるだけ身近な本社にしたい。これも我々が目指す本社のあり方です」と齋藤氏は話す。

日本郵政グループ

BCP対策では、全国各地の郵便局とネットワークを結んだ危機管理専用室を常設し、グループ一体として迅速かつ統一的な災害対応を可能にした。また、コジェネレーションシステムと非常用発電機で平常時の8割の電気を賄えるようにし、災害時における事業継続性を確保。地域の防災拠点として帰宅困難者3,000人収容の防災備蓄倉庫も設置されている。

実質2ヶ月の超スピード引越、万全の準備と社内外の協力体制が鍵

日本郵政グループ

「一番大変だった」と齋藤氏がふり返るのが、昨年9月から11月にかけて実施した引っ越しである。決算月である10月を除く実質2ヶ月間で、毎週末に平均800人を動かしたことになる。システム関連の移動には1年かけて慎重に行う金融機関がある中で、異例とも言える超スピード大型引越となった。

「正直なところ、何かしら問題が起こるだろうと思っていた」という懸念とは裏腹に、引っ越しは無事に終了。その要因として、齋藤氏は外部パートナーとの綿密なチームワークと万全の準備、各社各部門に設置した「引越担当」を中心とするグループ内の協力体制を挙げた。「移転プロジェクトを当初からマネジメントしてくれていたCBREをはじめ、チームを組んだ什器メーカーや引越ベンダーの皆さんは、日本郵政との付き合いが長いこともあり、今回の移転をよく支えてくださいました。綿密な計画を立て、事前に社員への説明会を複数回行い、社員の疑問や不安に明確に応えてもらった。また、当社の社員も、決められたことを粛々と遂行してくれました。この点では、郵政らしさが奏功したと言えるかもしれません」。

新オフィスに対する社員の反応は、想像以上に好評だという。それは、移転してすぐ「家族に見せたいから本社の家族見学会を開催してほしい」という要望が多くの社員から寄せられたことにも表れている。「オフィスのつくりは事務局が主体となって多くの部分を決めたので、社員がどう感じるか不安はありました。ですから、社員が家族にオフィスを自慢しているのを見たときはうれしかったですね」と齋藤氏は話す。

この取材は移転から2ヶ月後に行われたのだが、すでに食堂やコミュニティゾーン、リフレッシュルームで社員が打ち合わせを行う様子が見られ、新しいオフィスで社員の働き方が確実に変化していることがうかがえた。また近年は、グループ内に不動産子会社や資産運用会社が設立されるなど、新ビジネスの発想が生まれつつあるという。「大手町を拠点にお客様とのコミュニケーションを深め、様々なサービスをお届けしていきたい。150年続いた当社の歴史が、さらに100年、200年と続くよう、社員にはこれからも成長するための舞台としてこの新本社を活用してほしい」と、最後に齋藤氏は期待を込めて語った。

日本郵政グループ
日本郵政グループ
企業名 日本郵政グループ(日本郵政・日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険)
施設 東京オフィス
所在地 東京都千代田区大手町2-3-1 大手町プレイスウエストタワー
稼働日 2018年9月~11月
規模 約60,000㎡ 6,000人
CBRE業務 グループ本社機能の集約・移転に関するプロジェクトマネジメント

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2019年春季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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