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日本コカ・コーラ株式会社

ケーススタディ

2016年12月20日

日本市場をリードし続けるために時代変化に対応できるオフィス構築を目指した
3年半に及ぶ本社建て替えプロジェクト。

BMW

40年以上渋谷に本社を構えてきた日本コカ・コーラ。このたび老朽化した社屋を建て替え、市場をリードする企業に相応しい本社オフィスを構築するため、建て替え中の仮移転から解体・新築、戻り移転までの3年半に及ぶ長期プロジェクトを敢行。予算とスケジュールを厳守しながら、市場環境に柔軟に対応するための新しいオフィスをどのように作り上げていったのか。その軌跡を取材した。

愛着ある渋谷の地で老朽化した本社を建て替え

敷地全体

日本コカ・コーラは、アメリカ・アトランタに本社を置くザ・コカ・コーラカンパニーの100%子会社。製品の原料供給と、商品開発や広告などのマーケティング活動に特化したマーケティングカンパニーである。実際の製造や販売は、同社から原液提供を受けた全国のボトラー各社が行っている。

1970年から東京・渋谷に本社を構えてきたが、東日本大震災を機に、老朽化した社屋の建て替えを決めた。建て替え期間中は、約530人の従業員とともに本社機能を六本木のアークヒルズサウスタワーに仮移転。建て替えを終えた新本社ビルに再び戻り、2016年7月から業務を開始した。

新本社を構えるにあたり、新天地を求めず渋谷に戻って来たのは、それが自社所有の土地であることが理由だが、それだけではない。「40年以上もこの地に所在していたことで、社員も取引先様も慣れていましたし、何より愛着がありました。交通の便も悪くないし、ボトラー社であるコカ・コーライーストジャパンや、販売を担当するコカ・コーラカスタマーマーケティング社も近くにあります。自社不動産を売ってまで別の場所に移りたいという声は、社内ではほとんど聞かれませんでした」(日本コカ・コーラ 移転プロジェクト担当者)。

予算とスケジュール厳守のなか仮移転と新本社設計を同時進行

外観

アメリカ本社から建て替えの承認が下りたのが2012年12月。翌2013年5月には基本設計のコンペを実施、同年7月にはプロジェクトマネジメント(PM)の担当にCBREを起用した。PMの外部委託については、このプロジェクトに割ける社員が数人に限られていたため極めて自然な流れだったという。「通常業務以外の分野では、外部の専門家にアウトソースする文化が当社にはあります。外部に頼るほうが、知識やノウハウの面でも視野が広がります」と担当者はPM起用のメリットを語る。

こうして約3年半にわたる本社建て替え・移転プロジェクトが本格的にスタートしたわけだが、プロジェクト遂行において最も神経を使ったのは、スケジュールと予算の管理だった。プロジェクトが長引くほど仮移転先の家賃の支払いが膨らむため、アメリカ本社からできる限りの期間短縮およびコスト削減を求められていたのだ。新本社の竣工予定は2016年6月と設定され、この最終ゴールに向かってすべてのスケジュールが組まれ、動いていったのである。

オフィス

最初の関門は、2013年12月に予定された仮移転だった。新本社が完成するまでの仮オフィスとはいえ、国内のボトラー社をはじめ世界中からの来客を迎える日本コカ・コーラの顔として、建物にはある程度のグレードが必要である。そこで六本木のアークヒルズサウスタワーを仮移転先に決め、オフィスデザインを急ピッチで進めていった。「仮移転までの4ヶ月ほどで、仮オフィスのデザインだけでなく、新本社の基本設計も8割方詰めなければならず、まさに時間との戦いでした。デッドラインから逆算すればほかに選択肢はなかったのです。仮オフィスで使うデスクなどの家具類は新本社でも使用するため、社員の意見を吸い上げながら選定作業を行っていきました」と担当者は振り返る。

ビジネス環境の変化に合わせ個室からオープンレイアウトへ

コンツァ―ボトル

本社建て替えを機にオフィスレイアウトを大幅に変更し、今の時代に合った執務環境に整えることも狙いの1つだった。40年前に建てられた旧本社では、欧米企業で一般的だったブース型レイアウトを採用していたが、新本社では社員間のコミュニケーションを重視したオープンで透明性の高いオフィスを実現することにしたのだ。

「旧本社では、VPの社員には個室が与えられ、一般社員も衝立で仕切られたボックスのなかで執務していました。これは一人ひとりの役割分担が明確で、それぞれが担当業務を全うすることでチーム全体としての成果を出していた時代には非常に効果的だったといえるでしょう。当時は全国展開するナショナルブランドの力は絶大で、年間で5~6本の新商品を発売する程度でビジネスが十分に成り立っていました」(担当者)。

ところが今は、消費者の好みが多様化し、新商品が週に5~6本企画されるスピードに変わった。また、コンビニの登場で、消費者に一番身近な流通が力を持つようになり、パワーバランスも大きく変化した。「多岐にわたる業態、販売先、様々な属性の買い手や消費者に対して、より柔軟に対応できる本社オフィスが必要でした。それぞれが個室にこもって仕事をするのではなく、みんなで一緒に考え、お互いに意見やアイデアを交換しながら、チームで仕事ができる環境を目指しました」と担当者は話す。

カフェ

とはいえ、ブースからオープンで透明性の高い環境へと一気に変革するのは、社員からの抵抗が予想された。「そこでクッションの役割を果たしたのが仮移転だった」と担当者。六本木アークヒルズサウスタワーでは3フロア約1,600坪を借りたが、仮移転だからこそ「コストを抑えてスピーディに遂行する」ことを理由に、執務空間にはできるだけ壁を作らず見渡せるオフィスレイアウトで対応。社員には「もし気に入らなければ、新本社移転のときに再検討する」と説明した。そして2年半を仮オフィスで過ごした後、個室や仕切られた空間を求める声は消え、「隣の人の顔が見えるオープンな空間のほうがいい」という意見が大半を占めるようになっていたという。

ペーパーレス化の推進で個人収納スペースを3分の1に

階段

新本社は地上7階、地下1階建のうち、3階から6階までの4フロアを執務エリアとした。仮オフィスの時よりもワンフロアの面積は狭くなり、多層階に分かれたが、複数部門を同じフロアに配置するレイアウトの工夫で部門間の交流が持てるようにした。また、非常階段とは別に、室内に吹き抜けの階段を設けて上下階への行き来をしやすくし、社内コミュニケーションを促進している。旧本社にあった役員フロアは廃止し、役員と社員の距離を縮めるべく、役員が担当部門の社員と席を並べて座る配置に変えた。

本社建て替えに伴うもう1つの改革が、ペーパーレス化とごみ削減だった。新本社では、不要な印刷物を減らすことで、個人の収納スペースを約3分の1に縮小するとともに、個人のごみ箱を廃止。代わりに集約型のごみ箱を各フロアに2ヶ所設けることで、ペーパーレス化の促進はもちろん、社員がフロア内を歩いて自然にコミュニケーションを図れる仕掛けとした。

ペーパーレス化は世の中の流れとはいえ、紙の劇的な削減は社員への負担も大きい。しかし、ここでも仮移転を挟み2段階で実施したことが功を奏した。「仮オフィスのスペースは限られているため、必然的に不要なものを減らさなくてはなりませんでした。この時点で出たごみの量は40トン。ここでスリムになったおかげで、新本社への移転のときはほとんどごみが出ませんでした」(担当者)。

社員も納得する使い勝手とブランドを象徴するデザイン

エントランス

このように働き方の変革を従業員に求める一方で、新社屋の設計にあたっては社員一人ひとりのユーザビリティや動線に配慮し、使い勝手がよく、心地よい空間が構築されている。旧本社で不満の多かった会議室やミーティングスペースの不足を解消したほか、「カフェでおいしいごはんが食べたい」という声を受けて、2階に社員食堂「コカ・コーラ カフェ」を設けた。ほかにも、トイレの鏡で化粧するのに十分な明るさがあるか、長身の人もかがまずに手を洗えるかなど、「ユーザー動線や体感する環境を心地よいものにするために、空間設計には多くの時間と労力を割きました」(担当者)。

また、建物の至る所に「コカ・コーラ」ブランドを象徴するデザインを施した。エントランスの床には、コカ・コーラの特徴的な容器である「コンツァーボトル」を輪切りにして埋め込んだほか、1階エレベータ周辺の壁には1万個以上の王冠を使って炭酸の泡がはじける様子を表現。ほかにもコンツァーボトルを使ったLEDライトや、コンツァーボトルのシルエットを採用した自動ドアやトイレのサインなど、「コカ・コーラ」ブランドを表すデザインを随所に盛り込むことで、社員の帰属意識を高める工夫がされている。

自動ドア
マーク

どうすれば働く人たちが心地よく過ごせる場所になるか。これを徹底的に考え、社内に提示することが、結果的に厳しいスケジュールと予算を守り、プロジェクトを予定通り遂行できた一番の要因だと担当者は振り返る。「一旦アメリカ本社の承認を得たスケジュールと予算は厳守しなければならないため、実際は変更できない点が多々ありました。変えられないからこそ、社員の誰もが納得できるものを提示するよう心がけました。また、変えられる部分に関しても、誰彼構わず意見を吸い上げるのではなく、誰に何を聞くかは慎重に考えました。意見を聞いたからには、真摯に対応したいですから。社内で議論となりうる環境を極力避けたことで、予定通りの完成に至ったのだと考えています」(担当者)。

仮オフィスから新本社に移転し3ヶ月が経過したが、新オフィスはもちろん社員にも好評だ。懸案だったごみもそれほど蓄積されていないという。渋谷での本社建て替えは、「今後もコカ・コーラは日本でビジネスを展開し、日本市場を引っ張っていくという力強いメッセージ」と担当者。市場環境に迅速に対応するのに相応しい本社オフィスを完成させたコカ・コーラが、次の時代をどう作り上げていくのか楽しみに見守りたい。

プロジェクト詳細
企業名 日本コカ・コーラ株式会社
施設 日本コカ・コーラ株式会社 本社ビル
所在地 東京都渋谷区渋谷4-6-3
稼働開始日 2016年7月25日
規模 地上7階、地下1階建
延床面積 12,103.93 ㎡(3,661.4坪)
CBRE業務 アークヒルズサウスタワーへの仮移転物件仲介 仮移転・新築・移転プロジェクトマネジメント

 

上記の記事の内容は BZ空間誌 2016年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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