賃貸オフィス・賃貸事務所の記事

株式会社マルハニチロホールディングス

ケーススタディ

2011年6月7日

グループ会社7社を集約した本社機能移転。4年にわたる経営統合がここに完結。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / 受付

2007年に旧マルハと旧ニチロが経営統合して誕生したマルハニチログループ。

経営統合から4年が経った今年1月、グループ会社7社を集約した本社機能移転を実施した。本社移転を経営統合の最終段階と位置づけ、 さらなる飛躍を目指す同グループの移転プロジェクトを追った。

経営統合の最終目標は新本社機能の構築

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / サインボード

マ ルハニチロは、持ち株会社であるマルハニチロホールディングスのもと、水産、食品、保管物流、その他の4つの事業セグメントから成るグループ企業。 2007年10月に旧マルハと旧ニチロが経営統合して誕生した。同グループはその後、2008年に旧ニチロ本社(東京・有楽町)を旧マルハ本社(大手町) に統合する本社オフィス統合ならびに全国各拠点統合を、さらに今回の豊洲への本社移転の2011年1月完了へと統合プロセスを進めてきた。

今回の本社移転の検討が始まったのは、経営統合の発表時期までさかのぼる。2010年1月に旧マルハ本社ビルの賃貸契約期間が満了するのに伴い、賃料コストの見直しと新体制での本社機能強化を図るため、経営統合と並行して本社移転の検討も進められてきた。

実 際には、2008年の本社統合の後、2010年1月の本社移転ではあまりに慌ただしすぎ、経営統合後の安定期を十分に確保するため旧マルハ本社ビルの賃貸 契約を2011年3月まで延長。移転プロジェクトの実務を担当したマルハニチロマネジメント総務人事部総務第二課課長の黒木勇壱氏は、「今回の本社移転、 つまり新体制における本社機能の構築こそが、マルハニチログループの統合プロセスの最終目標でした」と話す。

新本社の候補地選定にあたって は、シービー・リチャードエリス(CBRE)のサポートのもと、全従業員へのアンケート調査をもとに検討が重ねられた。当初、各事業会社の主要な営業エリ アである中央区や、従業員の通勤の利便性から浜松町や上野などが候補に挙がったが、当該エリアでは本社機能にふさわしいビルがなく断念。最終的に、大手町 の旧本社に比べて平均通勤時間は15分延びるものの、約1,500坪という国内最大級のワンフロア面積を有しながら、コストパフォーマンスに優れた豊洲フ ロントが候補に残った。

ここで問題は、旧本社ビルが所在する大手町への思い入れの強いベテラン社員から、どうやって理解を得るかであった。 そこで、食品業界の他社の本社所在地が必ずしも東京駅周辺ではないことや、近年は首都圏の交通インフラやIT環境が整備されていることから、東京駅周辺に こだわる必要はないことをくりかえし説明し、理解を得ていった。

また、旧本社ビルでは高層での多層階(6層)オフィスだったのに対し、豊洲フロントでは低層かつ少層階(3層)への入居だったことから、これまでの課題だった社内コミュニケーション不足の改善が期待できる点も、同ビルへの移転を決める好材料となった。

各社からメンバーを招集し合意形成による推進体制

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / 室内

旧マルハ本社ビルへのオフィス統合が完了した2008年6月から、最終目標である本社移転プロジェクトが本格的にスタートした。2011年1月の引越しに向けた、2年半にわたる長期プロジェクトである。

推進体制としては、マルハニチロホールディングスと管理部門を担うマルハニチロマネジメントを事務局として、「本社移転プロジェクト実行委員会」を組織。その下には、検討課題ごとに「部門推進者連絡会」「文書管理改善委員会」「各種分科会」「特殊部会」を設置した。

各 委員会や分科会には、新本社に入居予定の全7グループ会社からメンバーを集め、諸問題を検討、合意形成していく体制とした。そこに、プロジェクトを支援す る外部パートナーとしてCBREが参加。新本社オフィスのコンセプトを「世界においしいしあわせを提供する安心で最適なオフィス」と策定し、就労環境の改 善と生産性の向上を通じて、経営基盤の安定を実現するオフィスの構築を目指した。

新オフィスの狙いの一つは、グループ会社7社を集約して コ スト削減を図るとともに、シナジー効果を高めることにある。同じフロアにグループ数社が同居しながら、グループの壁はすべて取り払い、毎年の組織改変に伴 うレイアウト変更への対応を考慮し、ユニバーサルレイアウトを採用。会議室やプレゼンテーションルームなどオフィスインフラはすべて共用にして、レイアウ ト効率を高めた。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / MTGスペース

ま た、これまで各社が独自に契約、保有、運用していたシステムや備品を一括管理し、適正配置と共有化による集約を行った。例えばファイルサーバは、各社が複 数ずつ保有・運営していたものを一ヵ所に統合し、メンテナンスやセキュリティ管理、バックアップ体制を整備。パソコンを除くプリンターやファックスなどの オフィス機器については、これまでグループ全体で300台あったものを、複合機の共用化促進や、ICカードの利用でどの複合機からも印刷・スキャニングで きる機能の採用により、36台にまで圧縮した。業務用冷蔵庫についても同様に、これまでの平置型から縦型に変えることで、88台から32台に減らした。

最 も苦労したのは、紙文書保有量の削減である。旧ニチロは大手町への移転で文書量が減っていたが、旧マルハは自社ビルであった経過もあり文書量が多く、部署 ごとに文書管理に対する意識や技術に大きな差があった。そこで富士ゼロックスのコンサルテーションのもと、各社の競争による紙文書圧縮を行ったところ、一 人あたりの保管量6.8ファイルメーター(FM)を4.8FMにまで削減することに成功した。これはグループ全体で2,800FM、文書箱に換算すると約 7,000箱の圧縮である。 こうした取り組みによりオフィスのレイアウト効率を高めた結果、契約面積は移転前に比べて約500坪の削減、経営統合直前か ら比べると1,500坪強もの削減を実現したのである。

食堂に代わる交流の場として多目的スペースを設置

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / 食堂

従 業員にとって働きやすい環境づくりも本社移転の重要な目的である。会議室や役員室などは建物のコアゾーンに配置し、日当たりの良いエリアは従業員の執務ス ペースとしたり、各階数ヵ所にパントリを設置し、休憩時間に自由にお茶を飲んだり、従業員同士でコミュニケーションを取れるようにした。

オ フィスづくりにおけるこだわりの一つが、多目的スペースの設置である。実は従業員アンケートで最も要望の多かったのが食堂の設置だったが、建物の給排水上 の問題から実現不可だったため、代わりに社員が一堂に食事できる場所として多目的スペースを整備したのである。黒木氏によると、食堂の要望が多かったのに は次のような背景があったという。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / 調理室

「旧マルハ本社は元々自社ビルであり、当時は食堂があったため、食堂での部門を越えたコミュニケーションの効果を実感していた人が多かったのです。

そ の一方で、食堂を体験していない旧ニチロ社員には実感が薄かったようで、経営層の間でも見解の相違が見られました。前者は、少しくらいコストがかかっても 社内コミュニケーション活性化のために食堂は必要だと考え、後者はコストとのバランスを重視する。最終的には、食を扱う会社として食環境の整備には最大限 の努力をすべきとの考えから、多目的スペースという形での要望を具現化したのです」。

その他、食品会社に特有のテストキッチンやアンテナ ショップについても充実を図った。旧本社では地下3階にテストキッチンと得意先へのプレゼンテーションルームがあったが、圧迫感のある暗い地下階の部屋で は得意先への訴求力が弱く、老朽化も進んでいた。これを新本社では2階に移動させ、可能な範囲で投資を行った。アンテナショップについても、ビジネス街で ある大手町とは異なり、オフィス近隣の住民が訪れることを想定し、より消費者目線に立ち、自社の商品を知ってもらう場としての店づくりを意識した。

意思決定プロセスに専念し短期間で移転を実現

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / 資料室

実 際の引越し作業は、2010年11月から2011年1月にかけ、各週末を利用して5回に分割して行われた。段階的に実施した理由は、まずデスクなどの什器 を可能な限り再利用するためである。解体→運搬→組み立ての行程を考慮すると、一度に移転できるキャパシティが200名ほどに限定されてしまう。従って、 移転対象人数1,200名を移転するには、5回に分ける必要があったのである。加えて、移転時期が業務の繁忙期(お歳暮の時期)に重なったため、各社の移 転できる日程の調整が難しかったことも理由だった。

 引越し作業も大変だったが、「引越し後にも想定外の問題が発生して、対応に追われまし た」と黒木氏。もちろん、引越し作業前に様々な状況を想定して綿密な計画を立てるのだが、特にハード面での問題発生が多かったという。例えば電源回路でい えば、従業員が食材を温めるために使う電子レンジのコンセントを想定外の場所に差したために、ブレーカーが落ちたことがあった。こうした問題はその都度話 し合い、調整していった。

 移転によって最も大きく変わったのは、周辺環境である。豊洲は大手企業の集積と高層マンションなど住宅地が隣接 する特殊なエリアである。「大手町の旧本社は、皇居の前面に位置し、東京の街並みが見渡せ、皇居の緑もすばらしい立地でしたが、ここでは低層階への入居 で、しかも日中には建物の1階をベビーカーを押した母親が散歩している環境です。生活者が直接見える場所への移転を機に、生活者目線で食を考える企業とし て業務を見つめ直していきましょうと社内では話しています」と黒木氏は話す。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社マルハニチロホールディングス / オフィス

社内環境に目を向ければ、巨大フロアを複数社が共有することで、社内コミュニケーションが活性化しているのを感じるという。共有スペースの利用はもちろん、共有スペースへ向けオフィス内を歩いていく間にも顔見知りが増え、挨拶やちょっとした会話が生まれているようだ。

単 なる本社移転とは違い、まったく異なる制度や風土を持つ2社統合の末の今回の本社移転には、並々ならぬ困難があったはずだ。しかも2年半という短期間で、 グループ会社7社の集約移転である。黒木氏はプロジェクトを振り返ってこう話す。「最も苦労したのは、各グループ会社間の意見調整でした。グループ内の人 間同士では難しい調整も、CBREに中立的な立場で対応してもらうことで、合理的に進めることができました。また、CBREの実務面でのサポートがあった からこそ、我々が重要な意思決定プロセスに専念することができ、プロジェクトを成功に導けたのだと思います」。

経営統合の最終目標である本 社機能移転を終え、今後は器の利点を生かした本社機能の運営に力点が置かれることになる。移転プロジェクトで活躍した関係分科会が今でも定期的に会合を開 き、各事業会社横断での運営体制を強化しているという。7社のグループ会社によるシナジー効果を発揮し、グループとしてのさらなる発展が期待される。

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2011年夏季号 掲載記事 掲載当時のものです。

他カテゴリの記事を読む

関連記事

東京湾岸エリアへの移転:ITシステム開発業 B社

ケーススタディ

2013年7月5日

トップダウン方式が実を結んだスピード移転 湾岸エリアへの移転で賃料コスト3割削減を実現 「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」の3つを柱とす...

りそな銀行

ケーススタディ

2010年9月8日

金融機関の本社といえば、東京・大手町などのビジネス街に立地するケースが多いが、りそな銀行は2010年5月、大手都市銀行として初めて東京...

イメーション株式会社

ケーススタディ

2010年6月8日

記録メディアの製造・販売を行うイメーション株式会社は、過去2年間のうちに2度、オフィス移転を実施した。 1度目は、TDK子...