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アイロボットジャパン合同会社

ケーススタディ

2019年1月8日

“アイロボットらしさ”を世界各国のオフィスで共有。
グローバル戦略、ビジネス効率、ブランディングを勘案した
コラボレーションを育む、新東京オフィス。

アイロボットジャパン合同会社

進展著しいロボット掃除機マーケットをリードする、米国発の「アイロボット社」。あの「ルンバ」を世に送り出した同社が、今、もっとも力を入れている戦略のひとつが、企業のグローバル化だ。2017年4月に設立されたばかりのアイロボットジャパンも、その戦略に基づいて東京オフィスを移転。移転の検討からよりオープンな新オフィスの開設まで、込められた想いや戦略を聞いた。

グローバル戦略に基づきアイロボットジャパンを設立

アイロボットジャパン合同会社

過熱化するロボット掃除機市場において、その名を知らない人はいないであろうロボット掃除機「ルンバ」。ロボット掃除機の代名詞的存在であるこの製品を、いまや暮らしになくてはならないパートナーとして愛してやまない読者も多いのではないだろうか。この製品の開発・製造を手がけているのが、米国マサチューセッツ州に本社を置くアイロボット社だ。

アイロボット社は1990年、マサチューセッツ工科大学出身の学者たちによって立ち上げられた企業であり、もともとは海洋や宇宙、紛争地や被災地、さらにはピラミッドの調査など、人間の立ち入ることが困難とされる場にロボットを投入することで、その評価を獲得してきた。 

一方、近年は冒頭で述べたとおり、ロボット掃除機「ルンバ」や、床拭きロボット「ブラーバ」など、一般消費者向けの事業に注力し、2017年には、それまでにおける全世界での家庭用ロボットの販売総数が2000万台を超えたという。

このような経緯のもと、ロボットの研究開発はもとより、グローバル市場における販売やマーケティングにも注力しようと、2016年には中国へ進出。続く2017年には日本とイギリスにも直轄法人を設け、現在、世界7ヶ国で事業を展開している。中でもアイロボットジャパンは、長きにわたり販売パートナーであった総代理店からアイロボット事業部を買い取ることで、直轄の法人としてのスタートを切ることになった。

この時、アイロボットジャパンの代表執行役員社長として就任したのが、テック系企業のヒューレット・パッカード社や、オーディオ機器のBOSE社など、名だたる外資系企業で要職に就いてきた挽野元氏だ。氏は次のように語る。「アイロボット社が販売を直接手がけるメリットのひとつは、お客様の声を聞いて消費者ニーズに適した製品をどんどんと展開していけることです。つまり、アイロボットジャパンを介し、米国本社とお客様の距離をより一層縮めることで、マーケティングや営業などのプロセスも含めて、グローバルな事業をよりスピーディに展開できるのではないかと考えたのです」。

理想のオフィスを求め国内拠点の見直しをスタート

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米国アイロボット社のグローバル戦略に基づき、その一員として事業の効率化を図っていくという使命のもと、アイロボットジャパンは以前の総代理店から引き継いだままであった国内拠点の見直しに着手。西日本エリアの営業拠点である大阪オフィスを、交通アクセスやビルの耐震性などの観点から移転させたのち、東京オフィスの移転に本腰を入れることとなった。

「アイロボットの一員である以上は、そのアイデンティティが感じられるオフィスである必要がありますし、製品開発における議論など、電話やICTを活用したグローバルな会議も増え、スピード感が求められるようになりました」と、挽野氏は言う。また、「以前の東京オフィスは飯田橋にあり、駅も近くて便利だったのですが、ビルの3階と5階にオフィスが分かれていたため、往来に手間取り、ビジネス上とても非効率でした。それぞれのフロアも広さはあったのですが、L字型の間取りで見通しが悪く、窓も少ない。これではスタッフがアイデアを練ったり、自由に意見を交わし合うのが難しいようにも思いました」。

東京オフィスの移転プロジェクトは、アイロボットジャパンが設立されたおよそ1年後の2018年の春に始動。それ以前の検討段階ではコストを考慮し、旧オフィスをリノベーションすることも選択肢として残していたが、新たなオフィスへ移転することに舵を切ることになった。

挽野氏は当時の想いを次のように語る。「以前のオフィスをリノベーションしても、アイロボットジャパンの中核拠点としてはいずれ不具合が出るだろうと判断しました。ですから新しいオフィスでは、アイロボットのオフィスづくりに関するグローバルガイドラインを基軸に、ブランディングを意識することやビジネス効率を高めること、そして、明るくてきれいで働きやすいオープンな職場であることをめざしました。そのほうがスタッフたちのモチベーションも高まり、お取引先やお客様、さらには社員の家族や友人にまで、アイロボットというブランドのポジティブさが伝わっていくと考えたのです」。

世界中の拠点で共有されるアイロボットの社風と文化

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移転先のエリアやビルの選定、アイロボットらしいオフィスづくりに引越し、そして何より、業務機能を停滞させないことや年末商戦期への影響など、諸々の条件を勘案した結果、オフィスづくりに充てることができる実質的なリードタイムは、およそ6ヶ月と想定。その間、リーダーとしてプロジェクトをけん引したのが、アイロボット社ファシリティ・アンド・リアルエステート部門のシニアディレクター、チャド・ハスケル氏だ。

氏はアイロボット社がグローバル戦略を掲げた2015年からその議論に参画し、世界中のアイロボット社のファシリティ総責任者として指揮を執っている。アイロボット社が国外のオフィスづくりに関するガイドラインを作成した際にも、氏を含むデザインチームが尽力したという。

「米国の一企業がグローバル企業になるわけですから、会社の社風や文化を世界各国のオフィスで共有し、スタッフ一人ひとりに当社の一員としての誇りを持ってもらうことが大切です。そのため、カリフォルニア州にあるパサディナオフィスを基準に、デザインや設備に関するガイドラインを設定し、どのブランドのどんな家具を置くのか、壁やカーペットの色はどうするのか、さらには会社のロゴマークをどこにどんなサイズで掲示するのかなど、世界中のスタッフが同じ環境で同じ意識を持って働くことができるようにルールを定めました」。

国外にオフィスを開設する際には、このガイドラインを指標にして立地環境を検討し、アイロボットらしいオフィスづくりに取り組むと、ハスケル氏。東京オフィスの移転プロジェクトでも、このガイドラインを基にまずは移転先の候補地を挙げ、旧オフィスからそう遠くないことやアイロボット社にふさわしいロケーションを選定。その結果、以前のオフィスから程近い千代田区神田錦町のビルへ移転が決まったという。

言葉や文化の違いを越え移転を成功に導いたチーム力

アイロボットジャパン合同会社

ハスケル氏にとっては土地勘がない東京であるうえに、米国と日本では言葉や文化の違いもある。しかし、氏はこの移転プロジェクトの前に中国オフィスの開設を経験しており、その時に得られた手応えや気づきが、東京オフィスの移転の際にも大いに活かされたようだ。「グローバルな市場で働く人たちは、言葉や文化の違い、そして時差など、とてもタイトな条件の下で仕事をしています。そのため、ガイドラインを参照しながらも、各国の社員のことを第一に考え、彼ら自身が働きたくなる環境やオフィスをつくることを目標としました。たとえば、スタッフたちの通勤方法や職種の違い、職場に求めることや休憩時間の過ごし方、さらにはどこでランチやショッピングを楽しみ、近くにフィットネスジムがあるかどうかまで、日本人の働き方やライフスタイルを理解するよう努めました」。

言葉や文化の壁を越えて相互理解を深めるとともに、移転プロジェクトを着実に進めるためには、プロジェクトに携わるチーム内のコミュニケーションも重要だったと、ハスケル氏は振り返る。「東京オフィスの移転プロジェクトには、当社を含め、オフィス選定やプロジェクトマネジメントを依頼したCBREはもちろん、設計会社や家具メーカー、ビルオーナーや建設会社など18社に及ぶ企業のスタッフが日本の国内外から参画してくれました。そのため、綿密な計画を立てたうえでそれぞれの役割やスケジュール、状況を常に把握するなど、コミュニケーションを密に取り合い、より良いチームであることを心がけました」。

時にはスケジュールに遅れが出るなど、プロジェクトの進行具合に懸念が生じる場面もあったが、予想外のアクシデントを乗り越えられたのも、社員や各企業の協力があったからこそ。その結果、移転プロジェクトは、予定期間内で無事にタスクを完遂することができたという。

コラボレーションを育むオープンな新オフィスが誕生

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半年にわたる移転プロジェクトを経た2018年の夏、アイロボットジャパンの東京オフィスは新天地で新たなスタートを切った。入居した「錦町トラッドスクエア」は先進的なオフィスビルで、周囲にも同様のビルが建ち並び、移転プロジェクトを先導してきたハスケル氏も、「アイロボットにふさわしい街」だと、太鼓判を押す。そして、グローバルガイドラインに基づいて設計されたオフィスは、「アイロボットらしさ」に満ち溢れている。

ビルオーナーとの交渉のもと、エレベータホールにも社のロゴマークを配置し、オフィスのエントランス前に立てば、「ルンバ」のシルエットを模した大きなピクトグラムが目に飛び込んでくる。そして何より、オープンイノベーションの時代となったいま、協働する企業やスタッフ間のコラボレーションを前提とした、開放的でフレキシブルなフロアデザインが、この新オフィスを象徴するものとなっている。

ビルの両サイドから陽光が届くオフィスは明るくて居心地が良く、ソファやベンチを置いたコミュニティエリアやタウンホールは、各所にホワイトボードがあり、カジュアルなミーティングスポットとして使われることも。もちろん正式なミーティングルームもあり、その広さは可動式パーテーションで柔軟に変えることが可能だ。また、随所にオープンスペースを設ける一方で、1、2名の入室を想定したフォンブースも確保。電話はもちろん、外部を気にせずに少人数の打ち合わせやビデオ会議、英語のレッスンなどができるようにも配慮されている。

人と人、企業と企業の自由なコラボレーションが生まれることを前提としたオフィスは、一方で厳格なセキュリティルールのもとで運営されており、機密情報の漏洩などにも配慮。人事や法務を担当する部署にはクローズドな個室を配備した。もちろん、グローバルな企業として国内外の各拠点や協力企業とのコミュニケーションが円滑に行えるよう、ICT環境も万全に整備されており、オンラインミーティング用のアプリケーションの導入に伴い、声や音の反響を考慮したガラスや壁材をオフィスに採用するという念の入れようである。

世界に目を向けながらもっと身近なアイロボットに

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不便だった2フロアの旧オフィスから、ワンフロアでビジネス効率に優れた新オフィスへ。オフィスの総面積は縮小した一方、アイデア溢れる空間デザインやゾーニングによって、オープンイノベーション時代にふさわしい理想的なオフィスを獲得できたアイロボットジャパン。新オフィスでは、多くの報道記者たちが集まる新製品発表会をはじめ、「ルンバ」や「ブラーバ」の愛用者を招いたファンミーティング、CEOのコリン・アングル氏が講師を務める子ども向けのワークショップなども開催されており、アイロボットブランドの発信拠点としての可能性も大いに感じられる。

「働くスタッフだけではなく、お取引先やファンの皆様、子どもたちにも、アイロボットという会社や私たちが送り出す製品を身近に感じてほしい」と、挽野氏。グローバル企業として広く世界に目を向けると同時に、誰にとっても身近な存在であること。家庭用ロボットのリーディングカンパニーが描くこれからの未来に期待がふくらむ。

上記の記事の内容は BZ空間誌 2018年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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