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京セラ株式会社|事業拠点構築ケーススタディ

ケーススタディ

2019年9月24日

京セラ株式会社

世界中に拠点を広げる、日本が世界に誇るグローバル企業「京セラ」が、関東に点在していた3ヶ所のR&D拠点を横浜市の「みなとみらい21地区」に集約し、新たな研究施設を構築した。その名は「みなとみらいリサーチセンター」。従来の京セラの殻を破る画期的な施設には、企業の将来を担うビジネスの種を生み出すことが求められる。同社発展の鍵となる大きな期待を背負ったリサーチセンターがどのように誕生したか、その足跡を追ってみる。

シナジー効果を生むべく関東3拠点を統合。
次代を見据え、京セラがみなとみらいに構築した
R&D拠点、新感覚のリサーチセンター。

京セラ株式会社

超優良企業京セラが抱くニーズの変化に対する危機感

京セラは、今から60年前の1959年、電子工業用セラミック製品メーカーである「京都セラミック(株)」として創業。その後、セラミックスをより高度に精選、または合成した原料粉末であるファインセラミックスを利用した製品を数多く開発し、急成長を遂げてきた。その主力となっているのは電子部品であり、半導体はもちろん、自動車の車載部品、スマートフォンや携帯電話などの通信機器、医療機器を中心に使用製品は多岐にわたる。今日では、国内外を含め関連会社数が286社にも及ぶグローバル企業であり、グループ全体の従業員数は77,000人弱。

2018年度の売上高は1兆6237億円に達し、2年連続で過去最高を更新するなど、今もなお成長を続ける超優良企業である。

同社の製品開発をリードする主な研究所は、これまで京都府にある「けいはんなリサーチセンター」、大阪府の「大阪大東事業所」、鹿児島県の「ものづくり研究所」に加え、東京都品川区の「東京事業所」、神奈川県横浜市内の「横浜事業所」と「横浜中山事業所」が存在していた。そんななか、この2019年7月19日、関東にある三つの拠点を統合し、新たなR&D拠点「みなとみらいリサーチセンター」が設立された。「近年、社会で求められる技術や製品は、急速に変化しています。これからの時代に求められる製品を、これまで以上に早く確実に市場に提供するには、各研究施設のシナジー効果を高めなければならないという危機感が、新拠点開発の源泉です」。そう語るのは、同社研究開発本部フロンティア研究企画部、企画推進部の副責任者で、今回のリサーチセンター設立の責任者でもある中村幸弘氏である。

例えば自動車は、EV化や自動運転など進化が著しく、新たな電子部品に対するニーズは大きく広がっている。IoT領域では、通信技術はもちろん最近ではセンシング技術やAI技術も必要不可欠で、部品技術も向上しており、いわば“総合格闘技を極める”ようなもの。要求される技術の領域がオーバーラップしているため、従来の事業部の垣根を越えて連携しなければ求められるニーズに対応できない。だが、「真面目で堅実な一方、企業が大きくなるにつれ、徐々に創業当時のベンチャーマインドが失われつつありました。また、各事業部ごとの縦のつながりは強固でも、それだけでは従来の技術を組み合わせた製品を提供することしかできません。まったく新しい製品やサービスを提供するため、全社横断的な横串を刺し、組織を活性化しつつ未開拓な分野を手がけていくことが、喫緊の課題となっていました」(中村氏)。

同社が保有するリソースが、世界トップクラスであることに疑いの余地はない。しかし、それぞれ個別に探求していっても、バラバラに点在しているだけでは世のニーズに応えられない。それほどまでに製品開発のハードルが上がっているということだろう。現状を打破するためには、各事業部のリソースを結集するプロジェクトを立ち上げる、社内で足りなければ積極的に社外にリソースを求める、いわゆるオープンイノベーションが重要となる。ここ数年の間で、こうした同社のスタンスが顕著になり、新たな組織やプロジェクトが立ち上がったり、社内の雰囲気も明らかに変わってきているという。

大手企業のR&D拠点が集積するみなとみらい21エリアの魅力

京セラ株式会社

関東の3拠点を集約する構想が立ち上がったのは今から5年ほど前の2014年のこと。しかし、具体的にR&D拠点構築のためのビル探しが始まったのは、2017年11月のことだった。当初は東京都心部を中心に、800坪程度の規模で物件選定が進んでいたが、残念なことに目ぼしい物件が見つからず、計画は思うように進まなかった。

そうしたなか、翌2018年3月にCBREから提案を受けたのが、みなとみらい21エリアの物件だった。「みなとみらいは以前から注目していたのですが、具体的に進出を前提に調査を進めてみると、オープンイノベーションを積極的に展開するうえでこれ以上の場所はないと確信しました」(中村氏)。その理由の一つは、東京に近く、品川あたりまでなら30分で行ける距離だ。鉄道などの陸路はもちろん、港や羽田空港の航路・空路も利用しやすい。つまり情報発信がしやすい位置にある。一方、東京に集まる情報のキャッチにも有利といえる。これまでの3拠点が品川と横浜であったことから、従業員の通勤にもそれほどストレスはかからないだろうと思われた。加えてこのエリアには、資生堂や村田製作所、ソニーなど、多くの一流企業がR&D拠点を設けている。また、近くの関内エリアにはベンチャー企業が多数集まっているし、スタートアップ企業も多く進出している。さらに周辺には大学がいくつも立地しており、優秀な人材が確保しやすいうえに、産・学の連携も取りやすい。

当社のビジネスで、部品の占める割合は約6割。残り約4割はシステムやサービスなのですが、ここの部分をもっと強化していきたいと考えています。しかし、当社は元来“部品屋”ですから、BtoCに強みがある企業には敵いません。トータルソリューションのサービスを展開するには、外部の知見を積極的に取り込むしかありません。『物売り』から『事売り』への展開を図ることを考えるオープンイノベーションを実現するうえで、共創環境が整っているみなとみらいは、我々の思惑にピッタリだったのです。研究開発の面からは、むしろ都内に拠点を設けるより良かったのではないでしょうか」(中村氏)。

そして、同地に決めたもう一つの大きな理由が、行政の協力体制だという。最初に挨拶に行ったとき、横浜市長や経済局長から聞いた、「企業と行政が一体となって経済的な発展をしよう」という熱意ある言葉に感銘を受けたという。実際、富士ゼロックスなどの大手企業が参加するエリアのお祭りやイベント、技術交流が活発に行われており、真の意味でオープンイノベーティブな風土をイメージすることができた。また、行政が積極的であることの大きなメリットが、エリアの土地やインフラを活用した実証実験に協力を仰ぎやすいことだ。その意味で、横浜市の熱意や協力体制は他に類を見ないという。

まさに、研究開発に最適なステージを手に入れたといえるだろう。

横浜にちなんで船をモチーフにしたみなとみらいリサーチセンターの概要

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CBREの提案は、横浜高速鉄道みなとみらい線みなとみらい駅徒歩2分の「OCEAN GATE MINATO MIRAI」。2017年7月に竣工したばかりの、地上14階建てのランドマークビルだ。2018年6月にこの物件を借りることに決め、8月に契約を締結、すぐにオフィスレイアウトなどの打ち合わせに入り、翌2019年2月に工事着工というタイムスケジュールとなった。中村氏は2018年6月の段階でプロジェクトの担当になったが、「去年の夏休み以降、目まぐるしく忙しい日々が始まりました。それほど重要で急を要した案件でした。当時はAIラボと研究開発推進の業務も担当していたのですが、この間はずっとプロジェクトにかかりきりで、本業には一切手がつけられませんでした(笑)」(中村氏)。それもそのはずで、当初の契約は1階と3階の一部、および5階6階の全フロア、計7,800㎡だったものが、11月の時点で急遽4階も借り増しするなど、プロジェクトを推進する途中での変更が相次いだのだ。最終的に施設全体の床面積は13,000㎡に達することとなった。

施設全体のコンセプトは「みなとみらいwo研究所」。パッと見ただけでは分かりづらいが、「みんなとみらいをけんきゅうしよう」という、研究開発本部長である稲垣氏発案のコピーである。そして施設のデザインは、大海原に乗り出す「船」がモチーフ。このコンセプトを踏まえつつ新たな執務空間を具現化するため、デザイン会社や設計事務所、建築会社、インフラ関連などを含め、20社以上の企業に動いてもらうことになる。時間がないうえに、最初の3ヶ月ほどは内容をオープンにできなかったために、関係者にも事後承認のように伝えざるを得なかったそうである。しかしながら、経営トップの考えが全社に伝わっていたからだろう、京セラが生まれ変わるためのチャレンジに、異を唱える幹部はいなかった。

実際のプロジェクトでは、社内に三つのチームをつくり担当を振り分けた。一つは10名ほどのメンバーによるIT関連のインフラを構築するIT改革チーム。二つ目は、20~50代と多様なメンバー30人による、新センターをより働きやすい環境にするための業務改革チーム。そして三つ目は、斬新なアイデアで執務環境をしつらえるレイアウトチームである。IT関連ではサーバの1本化および、Networkの構築、OSの変更により、3拠点および本社で異なっていたデータの共有化を実現。研究開発部門としては珍チームである。IT関連ではサーバの1本化および、Networkの構築、OSの変更により、3拠点および本社で異なっていたデータの共有化を実現。研究開発部門としては珍しいフリーアドレスを実現するとともに、ペーパーレス化にも本格的に取り組める環境が整った。

1階にはパシフィコ横浜のけやき通りに面して「クリエイティブファブ」という同社の研究開発をPRする場所をつくり、様々なモノづくりが体験できる工房にした。3階は実験室、 4階は関連子会社の執務エリア・談話スペース、5・6階を執務エリアにしたほか、6階にはイノベーションスクエアを併設し、イベントやセミナーのほか、学生のインターンシップの場としても利用する予定だ。このリサーチセンターには、3拠点から集まった研究開発部門の約700人が、次代のビジネスの種を生み出すべく、すでにチャレンジを始めている。

創立60周年に見えた未来 将来のものづくり、人づくりの拠点に

京セラ株式会社

今年、創業60周年を迎えた京セラ。昨年度は売上1兆6200億円を突破し、2兆円を射程に入れていることは想像に難くない。だが、「この新たなR&D拠点・みなとみらいリサーチセンターに求められているのは、通常の企業成長だけが目的の研究開発ではありません。売上でいうならば2兆円を達成した後の、次のステージに向けた新しいビジネスの種を見つけてカタチにすることです。そのための器はできました。後は社員が情熱を持って、失敗を恐れずチャレンジし続けること、そして1日も早く成果を導き出すことでしょう」(中村氏)。

同時にこの拠点には、もう一つの大きな役割がある。それが社内外の枠を越えた人づくりだ。1階のクリエイティブファブは、子どもたちに無料でものづくりを体験してもらえる工房。将来、研究者、開発者を目指すきっかけづくりである。3Dプリンタや旋盤、フライス盤もあり、作りたいものにチャレンジできる。また、学生にとっても、京セラの研究やデザインを直接見て、興味を持ってもらうことができる場として提供される。こうした取り組み、仕組みが将来の日本のものづくりを背負って立つ人材教育に及ぼす影響は大きい。

自社のみならず、社会にも貢献する「みなとみらいリサーチセンター」から、これから多くの人材が羽ばたいていくことだろう。

京セラ株式会社
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プロジェクト概要

企業名 京セラ株式会社
施設 みなとみらいリサーチセンター
所在地 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-7-1 OCEAN GATE MINATO MIRAI
開所日 2019年7月19日
人員 約700人
規模 約4,000坪
CBRE業務 R&D拠点構築に伴う物件紹介・仲介

この記事に関するCBREのニュースリリースを下記よりご覧いただけます。

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2019年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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