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出光興産株式会社|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ

2021年4月27日

出光興産株式会社

2019年4月、昭和シェル石油との経営統合により新たな1歩を踏み出した出光興産。両社ともに100年以上の歴史を有し、経営統合発表後から、企業文化や社員のマインド、働き方などの融和を図り、統合シナジーの最大化に向けて取り組んできた。しかし本社オフィスは4拠点に分散。「新本社オフィスを開設することで、一人ひとりの生産性・働きがい・創造性を高め、新たな価値創造への挑戦に向けたスタートラインに立つことができた」と語る同社に、2020年12月の新本社オフィス構築までの道のりと今後の展望を聞いた。

2020年12月に、念願の新本社オフィスを開設。
コロナ禍の逆境を乗り越え実現した、
新たな価値創造に向けた本社機能の集約。

出光興産株式会社

経営統合の次なるステップとして、新本社オフィスの開設を計画

エネルギー資源の乏しい日本において、エネルギーを安定供給する大役を担ってきた石油業界。繰り返されてきた業界の再編はいよいよ最終局面に突入し、一方では、脱炭素社会に向け、石油需要の減退が加速。企業としてどのように競争力を高めるべきか。日本におけるエネルギーの安定供給を支えるにはどうすべきか。そのような背景のもと、お互いを成長戦略におけるベストパートナーと認め、2015年7月、経営統合に向けて動き出したのが、出光興産と昭和シェル石油だった。その後、統合の一時延期が発表されたものの、2018年7月には2019年4月の統合が正式に決定した。加えてこの頃、両社で都内4ヶ所に分かれていた本社機能を持つオフィスを1ヶ所に集約すべく、オフィス移転の構想も持ち上がったという。

当時、統合準備室に所属し、現在DTK推進室で上席主任部員を務める岡田悟氏は、統合に向けたプロジェクトの推移を次のように語る。「統合は一時延期されましたが、 2017年5月には統合シナジーの先取りとして、両社間で『ブライターエナジーアライアンス』という協働事業がスタートしました。当時はまだ競合他社ということもあり、販売部門を除く法的に問題のないサプライチェーンを中心とした、両社で重複する部門での協働でしたが、250億円規模のシナジーを創出するという明確な目標も掲げ、両社社員が同じ執務室で机を並べ、ともに働いたわけです。そのなかでは異なる企業文化やそれに基づくマインド、仕事の進め方の違いへの相互理解が必要でしたし、健全なコンフリクトを乗り越えるためのワークショップや合宿なども行いました。この協働事業のおかげで、両社社員のベクトルは同じ方向を向き始め、目標とするシナジーも段階的に600億円へと上がっていきました」。

統合延期の間に行われたこの協働事業が統合に向けた気運をさらに高め、絶好の“準備運動”になっていたと岡田氏。統合後のシナジー創出に集中するためにも、4ヶ所に分散していた本社機能の集約は必須となり、2020年竣工の「Otemachi Oneタワー」への入居が決定。「約2,000名にのぼる本社社員が働くことができる6,000坪規模のオフィスともなると、必然的に選択肢は限られてきます。Otemachi Oneタワーにオフィスが完成するまでの間は、既存4拠点間での移動や、協働事業でオフィス移転をされた方の通勤など、従業員に負担をかけることになりましたが、物件をスムーズに決めたことで、新オフィスのコンセプトやレイアウトの構想に向けて速やかに動き出すことができました」(岡田氏)。

社員の声に耳を傾け、ありたい働き方からオフィスをつくる

出光興産株式会社

出光興産は千代田区丸の内の帝劇ビル、国際ビルのほか、JPタワーを拠点とし、一方の昭和シェル石油は港区台場の台場フロンティアビルに本社を構えていた。丸の内と台場の移動時間は公共交通機関で30分ほど。このタイムロスを解消し、シナジーの向上を優先することはもちろん、新オフィスの選定では広さや眺望のほか、万一のときにもエネルギー供給事業者として使命を果たせるよう、最高水準のBCPと、従業員の生産性や創造性を高める働き方、デジタルトランスフォーメーションへの対応を想定していたという。

「Otemachi Oneタワーへの移転が決定したあと、2019年1月からはオフィスの基本計画を固めるステップに入りました。このときに大切にしていたのが、従業員の声をしっかりと聞くということです。2,000人の本社従業員を対象としたアンケートを実施し、旧オフィスで感じていた不具合や職場環境における問題点などをきめ細やかに洗い出し、ファクトをベースにして新オフィスのコンセプトを構築していきました。また、アンケートのほか、若手中堅社員を対象としたオフィスコンセプトに関するワークショップも開催するなど、従業員を巻き込むことによって、自分たちで新しいオフィスをつくるんだという意識の醸成も狙っていました」と、当時を振り返る。

従業員の声をもとに新オフィスのコンセプトを固めていくなかで、特に重点が置かれたのは「新しい働き方を実践できるようにしよう」ということ。そこで、出光興産にとっての新しい働き方とは一体どんな働き方なのか、さらなる議論を重ね導き出したのが、「当社は、いかなる環境変化にもスピーディかつフレキシブルに対応して事業目的を果たす。その原動力である従業員一人ひとりの生産性・働きがい・創造性を高め、新たな価値創造に挑戦する」だったという。岡田氏は次のように説明する。「我々が考える新しい働き方を実現するには、企業文化づくりとしてABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の推進が必要との結論に至り、以降、オフィスづくりに関してはスペックや仕様より、まずは、『いつでも・どこでも・誰とでも、時間や場所にとらわれず、業務に最適な働き方を自律的に選択すること』を軸にして、話が進んでいきました」。

まさかの“2周遅れ”を痛感し、オフィスの大変革を決意

出光興産株式会社

経営統合を迎えた2019年4月からは、「新しい働き方」を実践している事例として他社のオフィスの視察を開始。働き方に関する社外セミナーにも参加し、オフィスサービスやICTツールに関する情報収集も始めたという。中でもオフィスを視察した企業は数十社におよび、先進的なワークプレイスから受けた印象を、総務部部長付 働き方改革担当の中川純氏は驚きとともに語る。

「出光興産が入っていた帝劇ビル・国際ビルは築50年を超え、昭和シェル石油が本社としていた台場フロンティアビルも比較的新しいとはいえ、築20年以上が経っていました。そのため、他社さんのいまどきのオフィスを見学した時は、本当に愕然としました。オフィス環境や働き方などについてもご 教示いただき、我々は1周のみならず、2周ぐらい遅れているという実感がありました」。

旧オフィスがいわば「昭和の会社」のままであったことを猛省したと、中川氏。築年数が経った建物はもとより、会議室や個室が多く設けられ、デスクまわりや通路が狭く、書類を納めるキャビネットが場所を占めるなど、旧態依然としたオフィスは従業員の満足度も高いものではなかったという。「新オフィスはこれまでのものと大きく変えなくてはいけないと決意しました。特にABWの実践に適したオープンなスペース、コミュニケーションやコラボレーションを行いやすい環境の構築が重要だと思いました」(中川氏)。

会議室の数や広さは、従業員たちのニーズや使用人数とマッチしているのか。キャビネットを間仕切り代わりに使ってきたが、通路やスペースを狭める要因になっているのではないだろうか。旧オフィスの反省点を見つけては、新オフィスの改善ポイントにしていく作業が続いたという。なかでも特筆すべきは、キャビネットの削減につながった社内のペーパーレス化だ。

「当時、社員一人あたりの保管書類は、A4紙を積み重ねた厚さにして約4.4m。それが2,000人分となれば約8,800mで、エベレストと変わらない高さです。そこでペーパーレス化を徹底し、一人あたり1mの厚さに。山は2,000m級となり、80%も削減できたんです。我々がさらに目指すのは600m級の高尾山。今後は保管書類の削減だけでなく、そもそも紙を生まない働き方を深化させていきます」と手応えを語る。

新しい働き方の舞台となる真新しいオフィス

出光興産株式会社

Otemachi Oneタワーは2020年2月に竣工。一方、世界はコロナ禍という未曾有の状況に。緊急事態宣言の発令によるオフィス工事の中断により、入居が2021年にずれ込むことも懸念されたが、結果的には当初計画していた2020年内、年の瀬も押し迫る12月21日に、新オフィスで新たな1歩を踏み出すことができた。

新しい働き方に対応するオフィスは、28階の受付レセプション・応接会議室・共創空間を中心としたフロアをはじめ、各部門の執務フロアやカフェテリアなど、32階までの計5フロアを専有で利用。ゲストを迎える28階は社内外とのコラボレーションを生み出すフロアであり、気軽に人が行き交い、イベントやワークショップも行える共創空間や、待ち合わせや会議後の雑談などに利用できるフリーラウンジを確保。少人数用の会議室から、3室を連結することで最大150名を収容できる大会議室も備えている。

執務フロアは開放的な空間のもと、業務関連性やコラボレーションの可能性が高い部門を隣接するかたちで配置。部門間の境界を設けない緩やかなゾーニングにより、従業員が働く場所を自由に選択できるようになっている。また、窓側エリアは集中席から打ち合わせスペースまで、目的に合わせて利用できる多様な席を配し、フロア中央のリフレッシュコーナーはカジュアルな会話が生まれる場となっている。そのほか、上着や傘など、個人のアイテムや書類の保管場所として個人用ロッカーを用意。個人のモノは自己管理することになり、ABWにも呼応したかたちだ。

そして、もう1ヶ所注目したいのは、32階のカフェテリア「hitoiki」だろう。520席という広大なスペースは単に食事をするだけでなく、リフレッシュやコミュニケーション、仕事など多目的に使え、従業員の生産性と働きがいを向上させる場として設計されている。

新オフィスについては、オフィスの活用方法を定めたガイドラインをはじめ、ABWという働き方や移転理由など、あらゆる情報を社内イントラで事前に開示。チャットボットによる問い合わせも可能にするなど、新オフィスや新しい働き方への理解促進が一方通行にならないように配慮された。また、移転前には旧オフィスの一部にABWを体験できるパイロットオフィスを設け、部門によっては1週間のトライアルをしてもらうなど、移転後のスムーズな業務開始に向けた斬新な取り組みも行われたという。そして、執務エリアを具体的に計画する段階では、設計者同席のディスカッションを全30部門にて2回ずつ計60回行ったという。両氏は部門のとりまとめ役になってくれた従業員だけでなく、現場に寄り添ってくれた設計者にも感謝しているそうだ。「新オフィスは旧オフィスとまったく異なるため、働き方も大きく変わります。オフィス環境が激変したのにもかかわらず、上手く活用してもらえているのは、そんな議論を重ねてくれたおかげです」。

企業文化の香りを育み、共創するみんなで未来へ

出光興産株式会社

日本におけるエネルギーの安定供給を支えるとともに、企業としての進化とシナジーの向上を求めた出光興産と昭和シェル石油の経営統合。それは2015年7月に議論が始まり紆余曲折を経たが、その間も協働を進め、お互いの企業文化と人の融和を図ることで、2019年4月の統合初日DAY1を、勢いあるロケットスタートで迎えることができた。また、分散した拠点をまとめ、2020年に新オフィスを開設する際にはコロナ禍の影響を受けたが、2019年7月から活動している働き方改革=だったらこうしよう(略してDTK)プロジェクトの柱となるスマートワーク・BPR・デジタル化も加速し、ウィズコロナにおける多様な働き方が新本社での新しい働き方に示唆を与えたという。

出光興産は今、基盤事業の構造改革、成長事業の拡大、次世代事業の創出を、中期経営計画における重点課題の“3段ロケット”に例えている。中川氏は、新オフィスを未来に向けてロケットを放つ発射台だと語り、岡田氏は出光興産の文化の香りがする場としてオフィスを育むとともに、社内外との共創を生み出すこの場から、多くの人とロケットに乗り合わせ、未来に向かいたいと語ってくれた。

プロジェクト概要

企業名 出光興産株式会社
施設 本社オフィス
所在地 東京都千代田区大手町1-2-1 Otemachi Oneタワー
オープン 2020年12月21日
規模 Otemachi Oneタワー 約6,000坪
従業員数 約2,000人
CBRE業務 本社移転に関するテナントレプリゼンテーション及びプロジェクトマネジメント業務

この記事に関するCBREのニュースリリースを下記よりご覧いただけます。

上記の記事の内容は BZ空間誌 2021年春季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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