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賃貸オフィス・事務所の記事

抵当権が建物賃借権(賃貸借契約)に与える影響とは?

抵当権という言葉を耳にしたことがあっても、実際どのような権利なのかについてはよく知らないという方も多いと思われます。そこで、今回は、不動産への抵当権の設定により、建物賃借契約がどのような影響を受けるのかについて、基本的な解説を行います。

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抵当権とは?

抵当権とは、ある不動産から、優先的に債権の弁済を受けるために、債務者又は第三者が所有する不動産上に設定する担保です。

債権者は、抵当権を設定することで、債務が弁済されなかった場合でも、当該不動産の競売を申し立て、競売による売却益から債務の弁済を受けるなどして、債権回収を図ることができるのです。もちろん、不動産の価値が上下することはありますが、少なくとも不動産の価値分の弁済を受けることが可能となるため、債権保全のために有効な担保であるといえます。

抵当権の対抗要件は、登記であり、対抗要件を備えた抵当権は、その後に不動産について、賃借権や所有権等の権利を取得した者にも対抗することができます。なお、抵当権は、非占有担保物権であり、実行までは、目的物である不動産の占有を移転せず、従来の占有者が占有し、利用し続けることができます。

抵当権、賃借権の図

賃借権が設定されている建物に抵当権が設定された場合 Case(1)

建物賃借権は、賃借権の登記(民法第605条)又は建物の引渡し(借地借家法第31条第1項)により対抗要件を備えることができます。
では、このようにして対抗要件を備えた後、賃借した建物に抵当権が設定され登記された場合は、建物賃借権(賃貸借契約)はどのように扱われるのでしょうか(なお、賃貸借契約を締結した後、対抗要件を備える前に抵当権が設定され、登記も備えられてしまったという場合もありえますが、この場合には、後述の「※抵当権が設定されている建物を賃借した場合」と同様になります)。

賃借権の登記又は建物の引渡しを受けることで対抗要件を備えた賃借権は、その後目的物である建物について、所有権を取得した者に対しても、主張することができます。したがって、抵当権が実行(任意売却の場合も競売の場合も同様です)され、建物の所有者が変わっても、賃借人は、新所有者に対して賃借権を主張することができ、建物を明け渡す必要はありません。
この場合、従前の賃貸借関係は、新所有者を賃貸人として当然に承継され、旧所有者は賃貸借契約関係から離脱することになると解されております。そして、敷金関係も新所有者に承継され、賃借人は、建物を明け渡す際には、新所有者に対して敷金返還請求権を行使することができることになります。新所有者によって承継される敷金の範囲は、原則として旧所有者に差し入れられた金額ですが、旧所有者に対して賃料延滞等がある場合には、所有者変更の時点で清算され、残額のみが新所有者に承継されることになります。

抵当権が設定されている建物を賃借した場合

では、抵当権が設定され、登記も完了している建物を賃借した後、抵当権が実行された場合は建物賃借権(賃貸借契約)はどのように扱われるのでしょうか。

任意売却による場合 Case(2)

抵当権者が、抵当権を実行しようとする場合、競売の申し立てによることもありますが、競売は手続に時間がかかることや、競売によると高値で売れない場合が多いこと等の理由から、任意売却、すなわち裁判所の手続によらずに、抵当権の目的物である建物を売却し、その代金から債権の回収をはかる場合も少なくありません(なお、任意売却を可能にするため、多くの抵当権設定契約では、抵当権者が任意に抵当権の目的物の売却をして、債権の優先をはかることを認める旨が規定されています)。

任意売却により、抵当権を抹消し、建物が売買された場合には、建物賃借権が、対抗力を備えていれば(つまり、任意売却より前に賃借権が登記されているか、建物の引渡しを受けていれば)、新所有者に対しても賃借権を主張することができます。なぜなら、当事者間で任意売却により抵当権を実行する旨の特約は、当事者間では有効ですが、第三者に対抗できるものではないと解されており、賃借人との関係においては、買受人は、賃借権設定後に建物の所有権を取得した者であり、賃借権を対抗することができるからです。
この場合には、賃借権が設定されている建物に抵当権が設定され実行された場合と同様、新所有者との間で従前の賃貸借契約が存続することになります。賃借人が優良テナントである場合など、賃貸借契約を存続させた方が、建物の収益性が高まるといった場合には、賃貸借契約を存続させたまま、任意売却による建物の売却が行われる可能性が高いと思われます。

競売による場合 Case(3)

抵当権者が数多く存在して、建物の権利関係が複雑な場合や抵当権設定者(建物所有者)が任意売却に協力的でない場合等、任意売却がしづらい場合があります。この場合、抵当権者は競売によって抵当権を実行することになると思われます。では、抵当権者が競売によって抵当権を実行した場合には、建物賃借権(賃貸借契約)はどうなるのでしょうか。

登記により対抗要件を備えた抵当権は、その後に目的物である建物について、賃借権等の権利を取得した者にも対抗することができますので、この場合、抵当権は賃借権に優先することになります。そして、裁判所の競売手続によって優先する抵当権が実行された場合には、賃借人は建物を明け渡さなければなりません。
この場合、建物の利用を継続したければ、競売によって建物を買い受けた買受人との間で再度賃貸借契約を締結する必要がありますが、買受人が賃貸借契約の締結を望むとは限らず、締結できたとしても、従前の賃貸借契約同様の条件で契約を締結できる保証はありません。

なお、かつては、民法上、短期賃貸借保護制度という制度があり、3年を越えない期間で設定された建物賃貸借であれば、抵当権の設定登記後に設定された賃借権であっても、抵当権者に対抗できる(つまり競売による買受人に建物を明け渡す必要はない)とされていましたが、現在はこの制度は廃止され、3年を越えないものであっても、抵当権者に対抗することはできません。

もっとも、現在の制度でも、一定の場合には、賃借人に明渡しの猶予期間が与えられる場合があります。具体的には、(1)建物の競売開始前から使用又は収益をする者及び(2)強制管理又は不動産収益執行の管理人が、競売手続開始後になした賃貸借により使用又は収益をする者は、競売による買受時から6ヶ月建物の明渡しを猶予されます(民法第395条第1項)(これを「明渡し猶予制度」と言います)。

しかし、この場合、あくまで明渡しの時期が猶予されているだけであり、買受人との間で賃貸借契約が存続するわけではなく、明渡しを猶予された賃借人は、賃料相当額を買受人に支払うことが必要で、これを怠った場合、買受人に当該建物を明け渡さなければならなくなることに注意が必要です(民法第395条 第2項)。従前の賃貸借が買受人との間に承継されるわけではないことから、当然、敷金関係も買受人に承継されませんので、買受人に対して明渡し時に敷金返還請求権を行使することはできません。
なお、敷金返還請求権は旧賃貸人(旧所有者)に対して行使することになりますが、抵当権を実行された旧賃貸人(旧所有者)には、敷金を返還する資力がないことも多いと思われます。

なお、賃貸借契約を存続させたまま競売した方が良い場合や、抵当権者が賃借権を存続させたまま競売することを望むときには、「抵当権者の同意制度」を利用することができます。これは、賃借権が登記されている場合に、賃借権より先に登記をしている抵当権者全てが賃借権の存続に同意し、その同意を登記し た場合には、当該賃借権は同意をした抵当権者に対する対抗力を取得するという制度です(民法第387条第1項)。(なお、抵当権者が同意をするには、転抵当権者等の利害関係人の承諾を得ることが必要です(民法第387条第2項)。)
この同意の登記があれば、建物が競売により売却された後も、賃借人は、賃借権を買受人に対抗することができますので、建物を明渡す必要はありません。もっとも、実務上は、賃借権の登記がなされる場合は少なく、借地借家法第31条により、建物の引渡しによって対抗力を備えている建物賃借権の方が多いと思われ、この場合には、新たに賃借権を登記しない限り、この制度を使うことはできないことになります。

著者プロフィール

西村 直洋(にしむら なおひろ)氏

長島・大野・常松法律事務所パートナー
1991年東京大学法学部卒業、1993年弁護士登録、1998年Harvard Law School卒業
1998年~1999年Davis Polk & Wardwell(New York)勤務

村田 晴香(むらた はるか)氏

長島・大野・常松法律事務所アソシエイト
2003年~2004年St.Norbert College交換留学、2004年上智大学法学部卒業
12007年慶応大学法科大学院卒業、2008年弁護士登録

※免責事項
本稿は、当然のことながら、抵当権及び賃借権に関する法律関係の全てについて説明したものではありません。
また、契約の内容や事実関係によって結論が異なってくる場合もありますので、実際の事案では、専門家に相談することが必要です。また本稿の説明についても、判例、解釈、運用が確定していない部分も多くあり、本稿の説明は絶対的なものではありません。
執筆者及び当社は本稿の説明についていかなる責任も負うものではありません。

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