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前テナントの「放置物、残置物譲渡」の場合における税務知識

お役立ち

2010年4月16日

前テナントの「放置物、残置物」の引継ぎ

建物の賃貸借契約を締結する場合、賃貸スペースは前テナントによる原状回復工事が終わって、設備等が何も無い状態で賃貸借を開始することが多いですが、前テナントや次に入居するテナントの事情により、前テナントが設置した設備等をそのままの状態(居抜き)で賃貸借契約が開始されることがあります。

例えば、オフィスの場合には間仕切りや配線、机、椅子などの設備や備品を撤去せずにそのままの状態で次のテナントに賃貸借するような場合であり、飲食店の店舗の場合には厨房設備や冷蔵庫などの設備を撤去せずにそのままの状態で次のテナントに賃貸借するような場合です。

居抜きによる賃貸借が行われる理由は、退去する前テナント側からすると居抜きで退去できれば設備の解体費用や処理費用がかからずに済むというメリットがありますし、また入居する次のテナント側からすると内装や設備を購入する必要がなく直ぐに使用できるためコストや時間を節約できるというメリットがあるからです。

前テナントから引継いだ「放置物、残置物」の引継価額

居抜きによる賃貸借契約を締結する場合、前テナントから放置物、残置物(以下「残置物等」といいます。)を引継ぐことになりますが、有償で引継ぐケースと無償で引継ぐケースがあります。これらのケースにおける残置物等の税務上の引継ぎ価額はそれぞれ次のようになります。

1.有償(時価)で引継ぐケース

残置物等について前テナントに購入代金を支払って引継ぐケースでは、引継いだ残置物等の購入代金をもって資産に計上することになります。
例えば、時価20万円の資産を20万円で購入した場合には、資産の取得価額は20万円になります。

資産引継ぎ時の仕訳

2.無償で引継ぐケース(法人が引継ぐ場合)

残置物等について無償で引継いだケースであっても、法人が前テナントから資産価値のあるものを無償で引継いだ場合には、税務上は資産を引継いだ時の時価で譲り受けたものとして経理処理することになります。
例えば、無償で引継いだ資産の時価が20万円だったとすると、資産の取得価額は20万円になります。そして、この時価20万円の資産を無償で譲り受けたとして20万円の受贈益(利益)が計上されます。

資産引継ぎ時の仕訳

3.時価よりも低額で引継ぐケース(法人が引継ぐ場合)

残置物等についてその資産の時価よりも低額で引継いだケースであっても、税務上は資産を引継いだ時の時価で取得したものとして経理処理することになります。
例えば、譲り受けた資産の時価が20万円で前テナントからの購入価額が10万円だったとしても、資産の取得価額は20万円になります。そして、この時価20万円の資産を10万円で譲り受けたとして時価と購入価額との差額10万円の受贈益(利益)が計上されます。

税務上、法人が行う取引は全て時価で行われるものとされるため、上記1.2.3.いずれのケースにおいても法人が引継いだ残置物等の引継ぎ価額は、残置物等を引継いだ時の時価になります。

資産引継ぎ時の仕訳

引継いだ「放置物、残置物」の耐用年数

税務上、個々の資産の購入価額が10万円以上となる場合には、購入価額を一時の経費とすることができず資産に計上して、その使用可能期間にわたって経費を配分する減価償却をしなければなりません。引継ぐ残置物等が複数ある場合において、前テナントとの譲渡契約で残置物等の購入価額を総額でいくらとしてしまうと、個々の資産の取得価額が10万円以上かどうかわからないという問題が生じてしまいます。そのため、できるだけ個々の資産ごとの購入価額を明示しておくのが良いでしょう。

引継いだ残置物等を資産計上する場合、その資産の耐用年数(資産計上した金額を経費として配分する期間)は次のようになります。

1.中古資産に適用する耐用年数

前テナントから引継いだ資産は使用されたことの無い新品の資産ではなく、既に使用済みの中古資産です。中古資産を取得して事業の用に供した場合でも、原則として新たな資産を取得した時と同じように法定耐用年数により減価償却をすることになります。
しかし、既に事業の用に供してから相当の期間が経過している場合など法定耐用年数だと実情に合わないことが多いことから、実情に合った耐用年数である中古資産用の耐用年数が認められています。

2.中古耐用年数

中古耐用年数とは、中古で取得した資産があと何年使用できるのかという使用可能期間を見積り、これを残存耐用年数として減価償却費を計算する方法(見積法)です。
しかし、中古資産の使用可能期間の見積りが困難な場合には、簡便的に次により計算した年数を残存耐用年数とする方法(簡便法)が認められています。

(イ)法定耐用年数の全部を経過している場合
法定耐用年数×20/100=残存耐用年数
例:法定耐用年数の全部を経過した資産(法定耐用年数10年)を引継いだ場合
10年×20/100=2年

(ロ)法定耐用年数の一部を経過している場合
(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20/100)=残存耐用年数
例:事業供用後3年を経過した資産(法定耐用年数10年)を引継いだ場合
(10年-3年)+3年×20/100=7.6年→7年(1年未満切捨て)

3.中古資産の使用可能期間の見積りが困難な場合

中古資産について簡便法による残存耐用年数を使用できる要件である「耐用年数の見積りが困難な場合」とは、その見積りのために必要な資料がないため技術者等が積極的に特別の調査をしなければならないこと又は耐用年数の見積りに多額の費用を要すると認められる場合をいいます。
したがって、通常中古で取得した資産についてあとどのくらい使用できるのかは分からないため、ほとんどの中古資産に簡便法による残存耐用年数が適用できるものと考えられます。

中古耐用年数適用に際しての留意点

1.前テナントから引継ぎ資産の経過年数を確認する

簡便法により残存耐用年数の計算をするためには引継資産の経過年数を算定する必要があります。そのため前所有者(前テナント)から引継いだ残置物等について個々の資産ごとに事業の用に供した日を確認しておく必要があります。

2.中古耐用年数は資産取得初年度に適用する必要がある

中古資産の見積法又は簡便法による残存耐用年数の算定は、中古資産を事業の用に供した事業年度においてのみすることができます。したがって、事業の用に供した事業年度に法定耐用年数を適用したときは、その後の事業年度で見積法又は簡便法による残存耐用年数に変更することはできません。

著者プロフィール

木村 篤志(きむら あつし)氏
木村会計事務所 代表

1973年生まれ。1999年税理士登録。大手会計事務所を経て2005年に独立開業

※免責事項
本稿の内容について、契約の内容や事実関係によって結論が異なってくる場合がありますので、実際の事案では、必ず専門家に相談することが必要です。
なお、本稿に記載されている事項については平成22年4月に施行されている税制および同時点で一般的に妥当と認識されている事由に基づき執筆しており、今後税制その他の事由に変更があった場合には記述内容が変わることがあります。
執筆者および当社は本稿の説明についていかなる責任も負うものではありません。

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