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賃貸オフィス・事務所の記事

転貸借のリスクを防ぐ法律関係を解説

※2020年7月28日更新

建物(本コラムではオフィスを想定しています。)について、建物所有者(賃貸人)から建物を借りている賃借人(転貸人)が、第三者(転借人)に対してさらに転貸借を行う場合、単なる二当事者間の賃貸借よりも当事者が増え、法律関係も複雑になることから、通常の賃貸借では発生し得ない問題やトラブル等が起きる可能性があります。

そこで、今回、建物について転貸借が行われた場合の法律関係につき、概要を整理してみたいと思います。まず転貸借の基本的な構造を整理し、転貸借契約の終了事由および転借人倒産時の敷金の取扱い等について基本的な解説を加えます。

なお、2020年6月19日、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が公布され、新たに「賃貸住宅管理業」の登録制度を創設するとともに、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図ることを目的として「特定賃貸借契約」の適正化のための措置が設けられましたが、本稿では同法には触れておりません。

図1:転貸借契約イメージ図

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転貸借とは?

建物の転貸借とは、上記のとおり、所有者たる賃貸人から建物を借りている賃借人(転貸人)から第三者(転借人)に対して、再度目的物が賃貸(転貸)される場合に、転貸人・転借人間で成立する契約関係を意味します。
転貸借が行われた場合、(1)賃貸人・賃借人(転貸人)間の賃貸借契約(以下「マスターリース契約」といいます。)と、(2)転貸人・転借人間の転貸借契約(以下「サブリース契約」といいます。)という2本の別個の契約が成立することになり、それぞれが相互に与える影響(特に賃貸人・賃借人(転貸人)間のマスターリース契約が終了した場合の転貸人・転借人間のサブリース契約の効力。)が問題になります。

転貸借の要件:賃貸人の承諾

この転貸借について、民法第612条は賃借人(転貸人)が目的物を自由に転貸することを認めておらず、賃借人(転貸人)は、賃貸人の承諾無しには転貸を行うことができず、無断で転貸を行うと賃貸借の解除原因となるとされています。
これは、賃貸借が賃貸人と賃借人(転貸人)の間の信頼関係を前提としているためであり、したがって、転貸借を行う際には、賃貸人の承諾を得ることが必要となります。

なお、この賃貸人の承諾の際には転借人を特定することが通常ですが、転借人を特定しない、一般的・包括的な承諾も原則として有効とされています(但し、包括的な承諾時にオーナーが合理的に想定していなかった属性の転借人等の場合には、事前承諾の効果が制限される場合も考えられます)。

「転貸」と「同居」の違い

この「転貸」とよく似た用語に、「同居」があり、その区別が問題になることがあります。例えば、ある法人が賃借しているオフィスの一部を、その法人の関連会社(別法人)が使用する場合、当該関連会社が法人の「転借人」なのか「同居人」なのかによって、当該関連会社の地位も異なることになります。

具体的には、「転貸」は法律用語であり、適法な転借人は民法および借地借家法の保護が与えられるのに対し、「同居」は法律用語ではなく、同居人の保護について民法および借地借家法が直接の規定を設けていないという点が最も大きな差だと思われます。

この「転貸」と「同居」の区別については、「転貸」といえるためには、第三者である転借人による賃借物件の占有・使用が賃借人の占有とは独立していると認められることが必要であり、賃借人が第三者に賃借物件を使用させた場合でも、それが賃借人の占有に従属している場合には転貸にはあたらないとされています。

これらの転貸にあたらない者による占有・使用のことを、一般に「同居」と呼んでいる場合が多いといえます。すなわち、同居人に別個独立した建物の占有・使用の実態が認められるか否かが区別の基準だと思われ、そして「同居」とした場合、同居人は賃借人からみた場合は履行補助者であり、賃貸人との関係でも賃貸借関係にはないと考えられます。

「同居」については、「転貸」のように原則禁止とする法律上の規定はありませんが、賃貸借契約で「同居」が禁止されている場合も多々ありますので、「同居」を検討する場合には賃貸借契約の内容をよく確認し、「同居」が契約上禁止されていれば、「転貸」の場合と同様、「同居」について賃貸人の同意を取得する必要があります。

例えば、乙(賃借人)が甲(賃貸人)から貸室を賃借して、丙(同居人)がその一部に「同居」すると言う場合、甲乙丙(賃貸人・賃借人・同居人)の三者間において覚書等を締結して、「丙(同居人)は、貸室の一部の利用・占有について、乙(賃借人)の賃借権に依存してその全面的な指揮・監督に服し、当該貸室について独自の賃借権、占有権、その他一切の権利を持たず、甲乙間(賃貸人・賃借人間)の賃貸借契約が終了した際には、甲(賃貸人)の指揮監督の下にその占有を甲(賃貸人)に明け渡す。」というような趣旨を約定する例もみられます。

賃貸人、転貸人および転借人間の法律関係

それでは、有効な転貸借が行われた場合の、賃貸人、賃借人(転貸人)および転借人間の法律関係はどうなるのでしょうか。

図2:権利関係図

(1)賃貸人・賃借人間の法律関係

基本的には転貸借の成立によって影響を受けず、従来と同様の賃貸借関係が存続します。

なお、転貸借が成立した場合でも、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することは妨げられないとされていることから(民法第613条第2項)、古い大審院判例で、「転貸借について賃貸人の同意があったにしても、賃借物が転借人の過失によって滅失毀損したときは、賃借人は責むべき事情の有無にかかわらず、賃貸人に対し損害賠償の責任を免れることはできない。」としたものがあります(大審院昭和4 年6 月19 日判決)。

もっとも、この判例には賛否の学説が分かれており、近時の裁判例には、転借人に過失があり、かつ賃借人に転借人の選任・監督の過失がある場合に限り、賃借人の債務不履行責任を認めるとしたものがあり、今後の判例の動向が注目されるところです。

但し、転借人に故意あるいは重大な過失がある場合には, 賃借人の選任あるいは少なくともその監督に過失があるとされる場合が多いとも考えられるので留意が必要です。

(2)転貸人・転借人間の法律関係

通常の賃貸借関係として成立します。転貸人・転借人間の転貸借は、賃貸人・賃借人間の賃貸借の上に成立しているため、賃貸人・賃借人間の賃貸借が例えば賃料不払いによる債務不履行解除等によって終了すれば、この転貸借も終了するのが原則となります(「親亀こければ小亀もこける」)。
但し、借地借家法第34条において、建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申し入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができず、建物の賃貸人がかかる通知をしたときは、建物の転貸借は、通知がされた日から6ヶ月を経過することによって終了するとされています。

なお、賃貸人と賃借人(転貸人)間のマスターリース契約の合意解約の場合や賃借人(転貸人)によるマスターリース契約の更新拒絶の場合には、例外もあり(民法第613条第3項など)、解説を後述します。

(3)賃貸人・転借人間の法律関係

民法第613条第1項は、「賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。

この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。」として、承諾を得て転貸借がなされた場合には、転借人は、マスターリース契約に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対してサブリース契約に基づく債務を直接に履行する義務を負うと規定しています。

この結果、賃貸人は転借人に対し、本来マスターリース契約に基づき賃借人に対して請求することができる賃料の金額を上限として、サブリース契約に基づく賃料を直接自己に対して支払うよう請求することができ、転借人がこれに応じて賃貸人に賃料を支払うと、その限度で転借人は賃借人に対するサブリース契約の賃料債務を免れることになります。

例えば、賃借人が賃貸人に支払うマスターリース賃料が月額20万円で、転借人が賃借人に支払うサブリース賃料が月額25万円だったとします。この場合、転借人が賃貸人に直接支払う義務を負う賃料は、月額20万円にとどまります。転借人は、賃貸人に支払った賃料額については、賃借人に対するサブリース賃料債務を免れるので、残りのサブリース賃料(月額5万円)だけを賃借人に支払えばよいということになります。

なお、賃貸人が転借人に対してかかる権利を有することによって、賃貸人が賃借人に対してマスターリース契約に基づく債務の履行を請求することは妨げられません(民法第613条第2項)。)。

なお、賃貸人が転借人に家賃支払いを直接請求した場合、たとえ転借人が既に賃借人に払っていたとしても、本来のサブリース賃料の支払時期より早く払っていたら、当該前払いを理由として賃貸人からの請求を拒めません。

また、転借人は、目的物保管義務や、用法違反による損害賠償義務等を賃貸人に対して負担します。なお、実務上は、賃貸人・賃借人間のマスターリース契約の終了が、転借人の地位にどのような影響を与えるのかが問題となりますが、この点についても後述します。

転貸借における敷金の取扱い

敷金とは、賃貸借契約の締結に際して、「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」(民法第622条の2第1項)で、賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡された際には、その債務相当額を差し引いた残額が賃借人に返還されます。

敷金は賃貸借契約に付随するものですので、サブリース契約において転借人が転貸人に差し入れた敷金については、転借人はサブリース契約終了時に転貸人に対してのみ返還を請求することができ、たとえ転貸人が無資力で返還不能であったとしても、直接の契約関係にはない賃貸人に対しては返還請求を行うことができないのが原則です。

マスターリース契約が終了した場合のサブリース契約および転借人の地位

(1)原則

解説しましたとおり、賃貸人・賃借人(転貸人)間の賃貸借契約(マスターリース契約)と、転貸人・転借人間の転貸借契約(サブリース契約)は別個の契約であり、また、サブリース契約はその基礎となるマスターリース契約の上に成立しているため、マスターリース契約が終了すれば、サブリース契約も終了するのが原則であり、その場合、賃貸人は転借人に対して建物の返還を請求できることになります。

これは、マスターリース契約の終了によってサブリース契約が当然に終了するものではなく、マスターリース契約が終了すれば、賃借人(転貸人)の転借人に対する建物を貸す債務が履行不能になるため、サブリース契約はマスターリース契約と同時に終了すると考えられています。

すなわち、サブリース契約はマスターリース契約を基盤として成立かつ存続する、言わば「親亀の上の子亀」のような性質のものであり、「親亀がこければ子亀もこける」のが原則なのです。

しかしながら、転借人にとっては、マスターリース契約の終了等は自らの与り知らないことであり、マスターリース契約が終了する場合に常にサブリース契約も終了し、建物から追い出されてしまうとなると、自らには何の落ち度もないにも拘わらず、不測の損害を被ってしまう可能性があります。そこで、法律および判例は、下記のとおり、一定の場合において、転借人の保護を図っています。

(2)例外1:建物賃貸借の期間満了または解約申し入れ

まず、借地借家法第34条において、建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができず、建物の賃貸人がかかる通知をしたときは、建物の転貸借は、通知がされた日から6ヶ月を経過することによって終了するとされています。

(3)例外2:合意解除の場合

次に、賃貸人と賃借人の間の合意によってマスターリース契約を終了させる場合においてもサブリース契約を同時に終了させるのは余りにも転借人の賃借権(転借権)を害するので、最高裁(最判昭和62年3月24日)は、土地が賃貸された後、当該土地の一部が転貸されて建物が建てられ、その後に土地賃貸借契約(原賃貸借契約)が合意解約されたという事案において、「特段の事情がない限り、賃貸人は転借人に対して合意解除の効果を対抗できず、したがって賃貸人は賃貸土地の明渡を請求することはできない。」と判示しています。

すなわち、マスターリース契約が合意解除によって終了しても、賃貸人は転借人を建物から追い出すことができず、転借人は引き続き建物を使用収益できることになるのです。

2020年4月1日に施行された改正民法第613条第3項では、「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合は、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。」として、上記の判例の内容が明文化されました。

マスターリース契約が合意解除で終了した後の賃貸人・転借人間の法律関係については、最高裁判例がいうところの「対抗できない」の意味をいかに解するかの問題となり、見解が分かれていますが、賃貸人がサブリース契約上の転貸人としての賃借人(転貸人)の地位を引き継ぐとする下級審裁判例があり、学説上もこの見解が有力です。

なお、賃貸人が転貸人としての地位を承継する場合に、賃貸人がサブリース契約上の敷金返還債務をも承継するかという問題がありますが、この点について直接判断した裁判例は見当たらず、今後の学説および判例の展開が期待されるところです。

なお、改正民法のもとでも、これらの点は引き続き解釈に委ねられています。

(4)例外3:更新拒絶の場合

上記の合意解除と似たケースとして、マスターリース契約が賃借人(転貸人)の更新拒絶によって終了した場合について、最高裁(最判平成14年3月28日)は、一棟のビルを所有し賃貸していた会社が、賃借人からの更新拒絶によって賃貸借(マスターリース)が終了したとして、ビルの一室の転借人に対して貸室の明渡し等を求めた事案において、

①賃貸人が当初から賃借人が第三者にビルを転貸して安定的な賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し、賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約の締結当初から承諾していたものであり、

②当該転借人が、上記目的の下に賃貸借契約が締結され、転貸(および再転貸)の承諾がされることを前提として転貸借契約を締結しているときは、賃貸人は、信義則上、賃貸借契約(マスターリース契約)の終了を転借人に対抗できない

としています。 この更新拒絶によるマスターリース契約終了後の賃貸人・転借人間の法律関係についても、上記最高裁判例からは必ずしも明らかではありませんが、合意解除の場合に準じて考えることになると思われます。

(5)賃借人(転貸人)倒産時の法律関係

なお、賃借人(転貸人)が倒産した場合には、サブリース契約の法律関係およびサブリース契約に基づく敷金の取扱いが問題となりますが、この点は、建物オーナーとテナントの間の二者間の賃貸借契約において建物オーナーが倒産した場合と基本的に同様です。

マスターリース契約が終了した場合のサブリース契約継続の方策

上記のとおり、一定の例外はあるものの、マスターリース契約が終了した場合にはサブリース契約も同時に終了するのが原則です。

このようなマスターリース契約の終了時にも、転借人がサブリース契約に基づく自己の賃借権を維持・継続するために転借人が採りうる方策としては、事前に賃貸人、賃借人(転貸人)および転借人の三者間で、「マスターリース契約終了時には、サブリース契約上の賃貸人の地位および敷金返還債務は賃貸人に承継され、サブリース契約は引き続き存続する。」旨を合意しておくことが考えられます。

また、このような合意がなかった場合でも、上記の判例の考え方等を踏まえて、賃貸人に対して転貸借契約の継続を主張することも考えられますので、かかる事態が生じた場合には、弁護士等の専門家に相談することもご検討ください。

著者プロフィール

西村 直洋(にしむら なおひろ)氏

長島・大野・常松法律事務所パートナー
1991年東京大学法学部卒業、1993年弁護士登録、1998年Harvard Law School卒業
1998年~1999年Davis Polk & Wardwell(New York)勤務

川口 裕貴(かわぐち ひろき)氏

長島・大野・常松法律事務所アソシエイト
2011年京都大学法学部
2013年東京大学法科大学院卒業、2014年弁護士登録

※本稿は、当然のことながら、転貸借の法律関係の全てについて説明したものではありません。また、契約の内容や事実関係によって結論が異なってくる場合もありますので、実際の事案では、専門家に相談することが必要です。また本稿の説明についても、判例、解釈、運用が確定していない部分も多くあり、本稿の説明は絶対的なものではありません。執筆者および当社は本稿の説明についていかなる責任も負うものではありません。

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