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建物オーナーが倒産!そのとき、テナントはどうなる!?

建物の賃貸借契約中に、建物の賃貸人であるオーナーが倒産した場合、賃借人はどのような影響を受けるのでしょうか。倒産については、破産、民事再生、会社 更生の3つの手続を、賃貸借契約についてはオーナーが賃貸人として建物をテナントに直接、賃貸しているシンプルなケースを前提として説明します(以下、賃貸人を「オーナー」、賃借人を「テナント」とします)。

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オーナー側から賃貸借契約を解除されるか

オーナーが倒産しても、テナントが建物の引渡を受けていれば、倒産を理由に賃貸借契約を解除されることはありません。オーナーが倒産すると、オーナーが当事者となっていた双方未履行の双務契約については、オーナー側に解除権が発生することになるのですが、この規定は対抗要件(建物賃貸借契約では引渡は対抗要件)を備えた賃貸借契約には適用されないからです。

オーナーの倒産を理由にテナントから賃貸借契約を解除できるか

オーナーが倒産したことを理由にテナントが賃貸借契約を解除することは、特約がない限り難しいと思われます。民法や破産法等に、オーナーが倒産した ことを理由にテナントが賃貸借契約を解除できると言う規定はなく、オーナーの倒産が信頼関係破壊等の解除事由になるとも考え難いからです。

なお、オーナーの倒産時にテナントが賃貸借契約を解除できると言う倒産解除特約がある場合に、テナントが、かかる特約に従い賃貸借契約を即時解除で きるかについては、学説が錯綜している状況ですので、実際に解除する必要が生じたときは、事前に弁護士に相談する等の検討が必要になると思われます。

敷金は返還されるか

多くのテナントはオーナーに敷金を差し入れていると思われます。そもそも敷金は、どのような場合に返還を請求できるのでしょうか。

判例上、敷金返還請求権は、賃貸借終了後、建物明渡しがなされた時において、それまでに生じた賃料、賃料相当損害金、その他のオーナーのテナントに対する一切の債権を控除し、なお残額がある場合に、その残額について発生するものとされています。
ま た、敷金は何の意思表示をしなくても上記債権に充当されます。判例上、建物の返還時に残存する未払賃料債権等は、敷金が存在する限度において敷金の充当に より当然に消滅し、このような敷金充当による未払賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって、相殺のように当事者の意思表示を必要とするものでは ないとされているからです。

では、オーナーが倒産した場合にも、テナントの敷金返還請求権は保護されるのでしょうか。これは、オーナーの 倒産が清算型である破産手続の場合と再 建型である民事再生手続または会社更生手続の場合とで異なるため、それぞれ場合を分けて説明します。なお、いずれの倒産手続においても、賃貸借契約を継続 させたままの状態では、テナントが敷金返還請求権と賃料債権とを相殺して回収を図ることは認められません。

(1)破産手続の場合

オーナーについて破産手続が開始した場合でも、テナントの敷金返還請求権は、その後弁済する賃料額の限度で保護されます。敷金返還請求権は、前述した性質から停止条件付の破産債権になります。

しかし、通常の破産債権者と異なり、賃借人であるテナントは、破産法第70条により、賃料債務を弁済する際に、敷金返還請求権の額を限度として、破産管財人に対して、弁済額の寄託を請求することができます(なお、テナントは、オーナーの破産に乗じて賃料を不払いにしたいと言う誘惑に駆られることが考えられますが、かかる場合には、オーナーによる債務不履行解除のリスクを覚悟する必要があります)。

そして、テナントは、オーナーの破産手続の最後配当に関する除斥期間の満了までに、賃貸借契約を解約し、建物の明渡しを完了して、具体化した敷金返還請求権と賃料寄託額を相殺すれば、破産管財人から賃料寄託分の返還を受けることができます。

このようにして、テナントは、寄託額の限度で敷金の優先回収を図ることができるのです。なお、敷金返還請求権に、寄託による優先回収を図ることができなかった残額がある場合には、原則通り、破産債権として扱われることになります。

但し、上記の除斥期間の満了までに、賃貸借の終了および建物の明渡しが完了しなかった場合には寄託金は他の債権者に対する配当の原資になり、テナントは敷金返還請求権を優先回収できなくなるので注意が必要です。

例 えば、月額賃料が10万円で、オーナーに敷金100万円(賃料の10ヶ月分)を預けていたところ、オーナーに破産手続が開始されため、テナントは、管財 人に対し4ヶ月間賃料の寄託をしたと言うケースで、その後(上記除斥期間の満了前であったとします)賃貸借契約の終了・建物明渡が完了し、この時原状回復 費用等の債務が20万円あったとします。この場合、明渡しにより具体化した敷金返還請求権は80万円(100万円-20万円)、寄託額は40万円(4ヶ月 分)となるため、テナントは、敷金40万円の優先回収を図ることができ、残額の40万円は破産手続の中で破産債権として扱われることになります。

(2)民事再生手続の場合

(以後は、再生手続における敷金返還請求権の取扱いを述べますが、会社更生手続においてもほぼ同様の取扱いになります。)

オーナーについて民事再生手続が開始した場合でも、テナントの敷金返還請求権は、手続開始後に賃料を弁済した場合には、弁済額(但し手続開始時の賃料6ヶ月分が限度)について保護されます。
民事再生手続の場合には、破産のような寄託請求と言う制度はありませんが、テナントの敷金返還請求権は、手続開始時の賃料の6ヶ月分に相当する額の範囲内で、手続開始後の賃料弁済額を限度として、共益債権として扱われるので、テナントは共益債権者として敷金の優先回収を図ることができるのです。

例えば、月額賃料が10万円で、オーナーに敷金100万円(賃料の10ヶ月分)を預けていたところ、オーナーに民事再生手続が開始されたが、テナントは手 続開始後に6ヶ月以上賃料を支払ったと言うケースで、再生計画の効力発生前に賃貸借契約の終了・建物明渡しが完了し、この時原状回復費等の債務が20万円 であったとします。この場合、明渡しにより具体化した敷金返還請求権は80万円であり、このうちテナントは賃料6ヶ月分に相当する金額(60万円)につい て共益債権者として優先回収を図ることができ、残額の20万円は民事再生手続の中で再生債権として扱われることになります。

上記は再生計画の効力発生前に敷金返還請求権が具体化した場合ですが、再生計画の効力発生時までに賃貸借契約の終了による明渡しが完了しておらず、敷金から差し引かれるテナントの未払い賃料等の債務がある場合にはどうなるでしょうか。

この場合に、テナントの敷金返還請求権がどの範囲で権利の変更(※)を 受けるかについては、(1)権利変更先行説(敷金返還請求権も再生計画認可確定時に権利の変更を受け、その後、不動産明渡し時に権利変更後の債権額から未 払賃料等が控除されると言う考え方)と(2)当然充当先行説(再生債権である敷金債権は、再生計画認可確定時ではなく、不動産明渡し後、まず未払い賃料等 が控除され、控除後の残額について権利の変更を受けると言う考え方)に分かれています。

再生計画では、いずれの考え方も見受けられるようですので、具体的事案では、どちらの処理の可能性もあることに御留意下さい。

(※)民事再生手続では、再生債権は再生計画により、例えば、再生債権元本につき70%の免除を受け、残額を10回の分割払いにすると言うような権利の変更を受けます。

(3)破産手続中の不動産譲渡の場合

上記とは別に倒産手続中に、賃貸借の目的である不動産が任意に譲渡されることも考えられますが、この場合でも、新所有者(以下「新オーナー」)が敷金契約を承継し、敷金返還債務を引き受けると考えるのが判例です。

但し、再生手続の計画認可決定確定後に不動産が譲渡された場合、一般的には敷金全額が新オーナーに承継される(いったん再生債権となった敷金返還請 求権が通常の債権に戻る)と取り扱われているようですが、再生計画によって減額された後の敷金返還請求権を新オーナーに対して有することになると言う考え 方もあるので、再生計画でどう扱われているか注意が必要です。

最後に

近時の経済状況により、今まで遠いものであった倒産と言う事態が身近なものになっています。一口に倒産といっても、状況によっては上に述べたような 法制度上の保護を受けることができる場合もあります。どのような制度があるのかを知らずに損をすることがないよう、オーナーが倒産した場合でも、専門家に 相談するなどして、落ち着いて対応することが大切です。

※本稿は、オーナー倒産時の法律関係の全てについて説明したものではありません。また、契約の内容や事実関係によって結論が異なってくる場合もあり ますので、実際の事案では、専門家に相談することが必要です。また本稿の説明についても、判例、解釈、運用が確定していない部分も多くあり、本稿の説明は 絶対的なものではありません。執筆者および当社は本稿の説明についていかなる責任も負うものではありません。

著者プロフィール

西村 直洋(にしむら なおひろ)氏

長島・大野・常松法律事務所パートナー
1991年東京大学法学部卒業、1993年弁護士登録、1998年Harvard Law School卒業
1998年~1999年Davis Polk & Wardwell(New York)勤務

村田 晴香(むらた はるか)

長島・大野・常松法律事務所アソシエイト
2003年~2004年St.Norbert College交換留学、2004年上智大学法学部卒業
2007年慶応大学法科大学院卒業、2008年弁護士登録

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