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T&D保険グループ

ケーススタディ

2016年6月29日

原点回帰でさらなる業務効率の改善を目指した、
グループゆかりの地への本社機能移転。

アキュビュー

太陽生命と大同生命を中核に据えるT&D保険グループは、組成後間もない2006年に、グループ経営の効率化を目指し、本社機能を集約した。そしておよそ10年後の2016年1月、再びグループの本社移転を実施した。10年の間にどのような課題が発生し、そして、いかなる解決策を求めての新拠点構築だったのか。その経過をたどってみる。

グループの競争力強化を目的に本社機能の再移転を決意

T&D保険グループ

ともに100年以上の歴史を持つ太陽生命、大同生命の2社が、それぞれ個人および法人営業の強みを生かすべく、全面的な業務提携を発表したのは1999年のことである。その後、関連会社の合併・統合を進めながらT&D保険グループとしての事業を展開。2004年にはT&Dホールディングス設立とともに、主要企業である太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命を子会社化し、グループとして新たな歴史を刻み始めた。その後もさらに子会社を増やし、現在ではT&Dホールディングスの傘下に、保険および保険関連事業7社、資産運用関連事業7社、総務・事務代行関連事業4社の、計19社を擁する一大グループに発展している。

その間、2006年には分散していたリソースの共有によるグループ各社の連携強化と業務の効率化を目指し、浜松町に完成した新築ビルをほぼ1棟借りして本社機能を集約させた。具体的には、会議室やサーバー室の共同利用、統一什器の一括導入、ビル保全の一元管理、秘書機能の統合などである。「本社機能の統合により、グループとしての一体感が各社に浸透したことは実感できました。しかしその一方、スペースの問題で、主要企業の1つであるT&Dフィナンシャル生命の本社機能を一拠点にまとめることができず、一部で非効率さを残すこととなりました。また、各社で組織変更を重ねるにつれて手狭になり、リフレッシュコーナーなどが執務室に変わり、フリーなコミュニケーションが取りづらいレイアウトになるといった課題が出てきたのです」そう語るのはT&Dホールディングスの総務部課長である加藤洋一氏だ。まさに、長期的な観点から見ればフレキシビリティに乏しい、1棟借りのデメリットが顕在化したケースと言える。

そのため、社内では次第に、「社会のニーズ変化に素早く対応し、新しいソリューションを創造する力の強化がグループとしての競争力を左右する。そのためには迅速な意思決定ができる、フレキシブルな情報交換が可能な環境づくりが必要不可欠だ」という認識が高まっていった。そのため2014年4月、T&Dホールディングスの総務部担当役員を座長とした「グループ本社検討プロジェクト」が組成され、グループ各社が参画する形で、新しいワークプレイスの構築に向けた準備が開始された。

エントランス

グループの再生を図るための新たなワークプレイスの構築には、最新のオフィスビルへの本社機能の移転が、大きなトリガーになる。折しも、かつて大同生命が居を構えていた日本橋のビルが、再開発により「東京日本橋タワー」として2015年4月に竣工する計画が進んでいた。日本橋といえば、グループの中核をなす太陽生命と大同生命の両社にとってゆかりの地である。そこに誕生する大型新築ビルなら、グループの新たな船出にとって、これ以上ふさわしい拠点はない。同ビルへの移転という機運が一気に高まったことは想像に難くないだろう。

 

各社の意識の共有を図るべく当初から外部PMを導入

会議室

こうしてプロジェクトチームが本格的にスタートした。今回の移転に関しては、地権者として入居できるスペースを長期的に有効活用するために、T&Dホールディングス、太陽生命、大同生命の3社の本社機能を移転することとした。主要企業であるT&Dフィナンシャル生命については、これまで分散していた本社機能を別の新たなビルに集約して、社内の効率化を図ることを優先。結果的にグループの拠点が分かれることになるが、最新のICTを導入し、有効活用することでカバーできるとの考えがあっての決定だった。そのため、メインである「グループ本社検討プロジェクト」のメンバーは、座長をはじめとしてT&Dホールディングス、太陽生命、大同生命の関連部門の部課長クラスを中心に構成された。それでも総勢は30名を超え、月1~2回のペースで行われた全体会議は、移転までに30数回実施されたと言う。

このプロジェクトチームの傘下に、プロジェクト全体の進捗をコントロールするプロジェクトコントロールミーティング、設計工事を統括するデザインコントロールミーティングを設け、グループを横断する取り組みの足並みをそろえた。さらに、特定の課題を集中して解決するために、システム、危機事態対応、広報、引越の各ワーキンググループを設置し、グループの連携の円滑化を図るという体制が確立された。

また、2006年の移転の経験から、専門家のノウハウの必要性を認識しており、スタート当初から外部プロジェクトマネジメント(PM)をCBREに委託した。その際、CBREがまず実施したのが「ワークプレイスストラテジー」という手法である。組織の集合体であるグループ各社が、成功のためにあるべきワークプレイスのイメージを共有する必要があったからだ。そのためにインタビューやアンケートに基づいたコンセプトづくりが必要不可欠なのである。

会議室

こうして導き出されたコンセプトは「社会のニーズ変化に素早く対応し、新しいソリューションの創造を促すワークプレイス」。これを基に、「環境改善」「ペーパーレス」「働き方・意識の改革」といった、移転を成功につなげるキーワードを抽出していった。「今回の本社移転は、引越して気分が変わればそれでいい、といった安易なものではありません。ですから意識改革を進める上でも、共通認識を持つことが重要でした。幸い、各社の社長が率先して推進していったため、全社的な周知にも時間はかかりませんでした」(同氏)。

無駄を徹底的に省くことで創造性に富んだ執務環境を実現

執務スペース
執務スペース
ミーティングスペース

具体的な取り組みとしてまず挙げられるのがペーパーレス化だ。紙ベースの文書の削減は、引越費用や移転後のスペースの削減ばかりでなく、「働き方を変える」上でも重要なポイントになる。そこで、引越以前から文書量を減らした業務の進め方を体験できるよう、これまで1人が2台使っていた机袖の個人ワゴンを一律1台に減らした。さらに、PDF化や不要な文書の廃棄、外部倉庫への移管により、全体量を7割削減することに成功したのだ。これに伴い、新オフィスのキャビネットスペースも半分程度に抑えることができた。加えて、移転後の複合機はオンデマンド型を導入し無駄な印刷を抑制するようにした。これにより、コピー機としての使用枚数は以前と比べて半減し、プリンターとしての使用枚数も以前の3割にまで削減することに成功している。

また、以前のビルには30室あった共同会議室を20室に抑え、有効に活用できるよう予約システムを新たに構築。予約後10分を経過しても入室しない場合は自動的にキャンセルされるが、そのかわりに空いている会議室は、ドア前のパネルを操作すればその場で予約ができる。さらに会議室エリアの入口には、会議室の予約状況が一覧できるデジタルサイネージを設置して利便性を高めている。

コラボレーション・スペース
コラボレーション・スペース

会議室を減らした分、執務室内の随所に、いつでも気軽に打ち合わせができるフリーのコラボレーション・スペースを用意している。最新のICTを導入し、無線LANを張り巡らせた社内は、ノートパソコンを持ち込めば、いつでもどこでもすべての情報を取り出せるため、情報連携・意思決定のスピードを高めることができる。さらに、会議室やコラボレーション・スペースにはディスプレイやホワイトボードを備え、壁のどこにでもアイデアを書き出せるようにしている。こうした、時間やスペースの無駄を排除したオフィスにおける新しいワークプレイスで、働き方を変えるというイメージを共有するために、説明会を実施したり、ドラマ仕立てのDVDを制作・配布して、意識改革が促進されるように努めたという。

「当グループは、風土や文化はもちろん、ビジネスモデルを異にする、独立した企業で構成されており、決裁も個別に行われます。そのため、1つの手法を押し付けるよりも、コアな部分のみを統一し、細部については各社が独自に判断できるように自由度も持たせました。これにより、グループ内の調整に時間を取られて各社での準備が遅れるということが起きずに済んだと思います。幸い、当初からコンセプトを共有していたため、設備やレイアウトを含め、おおむね同じレベルの環境を整えることができました」(同氏)。

周到な準備が成功をもたらす新拠点での生産性も向上

オフィス

コンセプトを明確にし、各社が情報を共有しながら、それぞれの役割に応じた部会やワーキンググループを確立したことで、周到な準備をすることができたのだろう。移転に際して課題となりやすい要素も、大きな障害なくクリアできた。

例えばスケジュール管理では、マスタースケジュールのほか、引越などの個別のスケジュールについてもグループで共有し、問題の兆しが見えた段階で早期に対応をしたため、大きな問題に発展することはなかった。コスト面も、見通しを更新して、常に情報を共有していた。

さらに移転後のビルの運用をスムーズに行うため、入居予定のほぼ1年前から、各社の総務部門を集めて「新ビル運用検討会」を設けた。そして、ビルの防災センターと密に協議を重ね、駐車場、エレベータ、セキュリティーカード、空調、照明などの運用についてのルールを決め周知徹底するなど、混乱を最低限にとどめるように配慮したという。実際の引越に際しては、会社ごとに日程が異なるため、先行した会社の経験を後の会社の実施に反映できるよう情報の共有が図られた。

引越において、特に顧客の個人情報の紛失は絶対に避けなければならないポイントの1つ。そのため、梱包には1つ1つバーコードが貼られ、社員立ち会いのもと、オフィスとビルからの搬出で2回、搬入においてもビルとオフィスの2回のチェックを行いながら搬送するという入念な対策が施された。口で言うことは簡単だが、これは並大抵の作業ではないだろう。

オフィス

「入念な準備と情報共有、細心の注意が功を奏して、移転は無事に終了しました。言うまでもなく、本社移転は業務改革の大きなチャンスです。まだ、移転からわずかな時間ですが、おかげさまで、働きやすくなったと好評です。生産性も向上しているようです。グループゆかりの地に戻り、これから腰を据えて、お客様により良いサービスが提供できる体制づくりに励むつもりです」そう語る加藤氏の表情は、自信にあふれていた。

プロジェクト詳細
企業名

株式会社T&Dホールディングス
太陽生命保険株式会社
大同生命保険株式会社

拠点部門 本社、東京本社(大同生命)
所在地 東京都中央区日本橋2丁目7番1号
施設 東京日本橋タワー
移転時期 2016年1月
CBRE業務 プロジェクトマネジメント

 

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上記内容は BZ空間誌 2016年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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