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キユーピー株式会社

ケーススタディ

2016年7月4日

工場の跡地活用と建て替えを機に拠点再配置でグループ連携強化を図った、
本社ビル建て替え・移転プロジェクト。

キユーピー

キユーピーは2013年10月より、本社ビルの建て替えに伴い、グループの研究開発を集積した施設に仮移転していたが、2016年1月、建て替えが完了した新本社ビルに本社機能を戻した。同時にグループ間の連携を強化するため首都圏の拠点の再配置を行い、新本社ビルを含む首都圏3拠点での新体制をスタート。グループの長期的な発展をめざし、本社ビル内の社員コミュニケーションの活性化、さらには拠点間のシナジー創出を狙った本社ビル建て替え・移転プロジェクトを取材した。

グループ連携の強化をめざし首都圏拠点の再配置を検討

キューピー

キユーピーは2016年1月、東京都渋谷区の本社ビルの建て替えが完了したのに伴い、本社機能を新社屋に移転した。建替期間中は、旧仙川工場跡地(調布市)にすでに開設していたグループの研究開発・オフィス複合施設「仙川キユーポート」に本社機能を仮移転させていた。今回、本社機能が新本社ビル(渋谷オフィス)に戻ったことで、グループ経営の中核を担う渋谷オフィス、仙川キユーポート、グループ研修センター「みらいたまご」の首都圏3拠点体制がスタートした。

一連の建て替え・移転の直接の引き金になったのは、建物の経年化による老朽化である。1968年竣工の旧渋谷本社ビルは、経年化による修繕費の増加が問題となっていた。また、1951年に設立され老朽化が進む旧仙川工場は、周辺を住宅地に囲まれ工場として建て替えることは難しい状況だった。そのようななか、2009年頃から旧仙川工場の跡地活用と旧渋谷本社ビルの建て替えが検討され始めたのである。

応接室

それを機に、首都圏の拠点の全体再編も検討されることになった。キユーピーは、マヨネーズやドレッシングで知られるが、実際にはこれらの調味料事業はグループ売上全体の約4分の1に過ぎず、他にもタマゴ事業、サラダ・惣菜事業、加工食品事業など内食・中食・外食の分野でも幅広く事業を展開している。2005年頃からは、厳しい市場の環境変化を乗り越えるために、グループ経営を本格化させた。「グループが連携して課題を解決し、新たな市場を創造していかなければなりません。このようなグループ経営をさらに浸透させ、グループ間のシナジーを高めるために、都内に点在していたグループ会社や事業所を集約する必要がありました」(キユーピー 経営推進本部総務部渋谷オフィス課ワークスタイル担当 大山比登美氏)

長期的な発展のための首都圏3拠点の役割分担

打ち合わせスペース

拠点再編の第一弾として、キユーピーは2013年10月、旧仙川工場跡地に「仙川キユーポート」を開設した。まずは首都圏に点在するグループ17事業所のオフィス機能をここに集約し、業務の効率化を図りながら、グループ内連携を強化していくこととした。さらに東京都府中市の中河原にある研究所も統合し、グループにおける「ものづくり」の拠点に位置づけた(現在は、新たなグループ会社が加わり「ものづくりと新価値づくり」となっている)。

中河原の研究所は、改修をして、研修センター「みらいたまご」を2015年1月に開設。グループにおける「人づくり」の拠点の位置づけである。

一方の旧渋谷本社ビルは、仙川キユーポート開設と同時に本社機能を仮移転し建替工事をスタート。その直後から、新本社ビルに本社機能を戻すための移転計画の検討にも着手した。仙川への拠点集約を主導した大山氏ら総務部のメンバーが、引き続き担当することになったのである。

ミーティングスペース

仮移転から1年も経たぬ2014年7月には、本社移転プロジェクトの外部パートナーとしてCBREを起用した。実は仙川への移転では、初めての大規模移転ながらプロジェクトマネジメント(PM)を自社内で行っていた。それに対し、渋谷オフィスへの移転では外部パートナーを起用した理由を大山氏は次のように話す。「仙川キユーポートは自社の施設でしたが、渋谷オフィスはテナントでの入居になり、オーナーやゼネコンとの調整作業が煩雑になることが予想されました。コストやスケジュールの管理、交渉等に専門家の助けを得たいと思ったのが一番の理由です。また、仙川への移転の経験から、すべての作業を自社内でやるより、外部に任せたほうが効率的であることも分かりました」。

多層階の問題を解決するフロア割りの工夫とは?

執務スペース

新たな渋谷オフィスは、地上13階建ビル。ここに本社機能と周辺の支店やグループの営業拠点を統合し、営業部門とそれをバックアップするスタッフ部門を一体化させることで、グループにおける「市場づくり」の拠点として位置づけた。

5階から9階まで5層の執務フロアに配置されるのは約700人。ここで課題とされたのが、5層分断による社内コミュニケーション不足の懸念である。「すでに業務を開始していた仙川キユーポートは、都内最大級のフロア面積を有し、しかもグループ会社間の壁をなくしたことで、自然に会話が生まれる回遊性の高いオフィスになっていました。仙川キユーポートのようなオフィス内の回遊性をどう生み出すのか、これが渋谷オフィスの最大の課題でした」(同氏)。

多層階という建物のハード面は変えられないため、その制限をソフト面で解決するという手法を採った。フロア割りを工夫することで、自然に上下階への人の動きが生まれるようにしたのである。「当初の案では、700人を5フロアで割って均等に配置し、各階の余剰空間を共有スペースに充てようと考えていました。しかし、それでは各フロア内で業務が完結してしまいます。そのため、各階の席の準備率を80%に減らしたうえで執務フロアを4層に減らし、各階の共有スペースを縮小。その代わり、残りの1層をすべて共有スペースに充て、執務フロアのちょうど真ん中に位置する7階に配置したのです。こうすることによって、打ち合わせが必要な場合は必然的に7階の共有スペースを利用することになり、建物内の上下の回遊性を高められるというわけです」(同氏)。

執務フロアの設計においても、面の回遊性を意識した。部門ごとの仕切りを設けず、4人席を並べたオープンなユニバーサルレイアウトを採用。フロア内をフリーアドレスとすることで、情報の流動化を図ろうとした。フリーアドレスはすでに仙川キユーポートで実績があり、「席を固定せずどこでも仕事ができるワークスタイルが、社員に浸透しつつあったことも今回の導入を後押ししました」という。一方、デスクを4人席に統一したのは、仙川での教訓を生かして変更した部分である。「仙川では一部、6人席を並べましたが、真ん中の席はあまり利用されないことが分かりました。人には角を好む習性があり、4人席のほうが座りやすいようです」と話す。

ミニキッチン

各階の共有スペースはあえて少なめに抑えているものの、フロア内のメンバーのみの会議で使用できる会議室を1室設置している。また、簡単な試作や試食ができるよう、各階にミニキッチンも設けた。 「建物内の縦の回遊性を高めつつ、不要な移動を減らして作業効率を高めるという両方のバランスを考えて執務フロアをレイアウトしています」(同氏)。

業務や目的に応じて働く場所を選べる環境づくり

ミーティングスペース
カフェ

共有フロアは、目的に合わせて働く場所を自由に選べるよう設計されている。モニター付きブースや4人掛けテーブルなどが配置された「ミーティングスペース」、機密性の高い打ち合わせに便利な半個室の「ミーティングルーム」、誰でも利用できる「誰でもデスク」、窓際に並べられた「集中スペース」などがある。こうした多目的スペースはなかなか利用されないケースも多いが、ワークスタイル変革を積極的に推進しているキユーピーでは、比較的よく利用されているという。「旧本社ビルでは会議室を中心に配置していたので、打ち合わせには部屋の予約が必要で、会議室不足が問題となっていました。仙川ではオープンなミーティングスペースを多く設置したことで、ちょっとした打ち合わせならサッと集まって行うことができ、物事がスピーディに解決するなど成果が表れていたので、渋谷オフィスでも取り入れました」(同氏)。

執務フロア最上階となる12階に設けられた200席のカフェも、社員食堂として使う昼食時以外は、執務や打ち合わせに利用したり、100インチの常設スクリーンを使って社内イベントに利用するなど、目的に応じたマルチ利用が期待されている。ただし、7階の共有フロアがあるため、昼食時以外のカフェの利用は現状ではまだ少ないという。「社員が目的に応じて働く場所を選べる環境がとても重要だと考えているので、カフェのさまざまな使い方も今後は周知していきたい」と大山氏は話す。

プレゼンキッチン
プレゼンキッチン

3階には、食品メーカーならではの機能としてプレゼン・キッチンエリアを設けた。これまでは試作品を作るためのキッチンと取引先へのプレゼンテーションを行うキッチンが一緒になっており、動線が混同していた。渋谷オフィスではキッチンを2つに分け、プレゼン用のキッチンを新たに設けることで取引先への提案力を強化。また、可動式のガラス壁を動かせばフロア全体でのフェア開催にも対応できる、多機能なつくりにもこだわった。「“アウェイからホームへ”が合言葉です。お得意先に出向いていた従来の営業スタイルから、顧客に来てもらう営業スタイルに変えることで、営業の効率化と提案力強化を図るのが狙いです」と大山氏。プレゼン・キッチンエリアで開催するフェアには多くの参加者が集まるなど、すでに効果が表れているという。

グループ間シナジーを創出するマルチフリーオフィスの推進

外観

拠点間のシナジーを高めるため、マルチフリーオフィスも推進している。渋谷オフィスと仙川キユーポートの連携を強化するためのシャトルバスが1日4往復して両拠点を結ぶほか、移動中のパソコン持ち歩きの負担や紛失等のリスクを軽減するため、両拠点でパソコンの貸し出しを行っている。渋谷オフィスの共有フロアに設けられた「誰でもデスク」は、渋谷オフィスを訪れる他拠点の社員も自由に利用でき、“気軽に来やすいオフィス”の実現に一役買っている。会議やイベントを両拠点で交互に開催し、拠点間のコミュニケーションを深めている。  渋谷オフィスに本社機能が戻って約3ヶ月が経つが、新オフィスに対する社員の反応はおおむね良好だという。「今回の移転をきっかけに、社員のワークスタイルの変革が推進され、新しい価値を創造することで、グループの長期的な発展に貢献していきたい」と大山氏は話す。今後、渋谷オフィスがグループの市場づくりの役割を担えるかどうかは、そこで働く社員の働き方にかかっていると言える。

プロジェクト詳細
企業名 キユーピー株式会社
拠点部門 本社
所在地 東京都渋谷区渋谷1丁目4番13号
移転時期 2016年1月
CBRE業務 プロジェクトマネジメント

 

上記の記事の内容は BZ空間誌 2016年夏季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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