賃貸オフィス・賃貸事務所の記事

住友電装株式会社

ケーススタディ

2011年9月8日

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / 受付

住友電装の旧狭山工場から、2010年10月事務部門が分離されて大宮事務所が新設された。

45年にわたり工場と同居してきた、同社生産部門の中核的な存在のオフィスが、交通アクセスに優れた都心部オフィスビルへと移転したものである。今回の移転プロジェクトケーススタディでは、関東エリアの拠点戦略を再構築し、ビジネスの機能強化を図る同社のケースを取材した。

拡大する事務部門手狭な執務環境が課題

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / サインボード

自動車用・機器用ワイヤーハーネス等の製造販売を行う住友電装は、世界32ヵ国に拠点を展開するグローバル企業。日本国内では、三重本社、東京本社に加え、全国各地に製作所や工場、営業所等設けている。

かつて、国内拠点の一つである狭山工場(埼玉県)には、本田技研工業(株)向け製品の試作品製造部門と、国内外の製造拠点を統括する事務部門が設置されていた。狭山工場は、45年前に購入した土地に建てられた自社工場だったが、同社は昨年10月、そこから事務部門を切り離して大宮事務所を新設するとともに、製造部門を近くに立地する狭山物流センターに統合。空いた狭山工場は更地にし、土地を売却したのである。

この移転の背景には、それまで必要に応じて建て増しを繰り返してきた狭山工場が、拡大傾向にある事務部門の人員を吸収しきれず、手狭になってきたことがある。近年は、海外での現地生産が進み、増加する海外拠点を統括する事務部門は拡大の一途をたどっている。当時、狭山工場の製造部門は量産前の試作品を製造するスタッフだけが残っており、約60人の製造部門に対して事務部門が約200人と、事務部門の人数のほうが多い状況になっていたのである。当然、限られた執務スペースは手狭になり、執務環境も決して良いとは言えない状態だった。

実はこの執務環境の問題は、5年程前から表面化していた。しかし、経済情勢などを理由に、具体的な対策が講じられるまでには至らなかった。2010年はじめ、同社の業績が比較的好調に推移したのを機に、改築や移転を含めた具体的な検討に入ることになった。

従業員の交通の便を考慮し大宮のオフィスビルに決定

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / 会議室

当初は、工場を建て直し、そこに狭山物流センターを統合する案も検討していた。しかし、様々な選択肢を検討していくうちに、狭山物流センター内に製造部門のスペースを確保できることがわかった。狭山物流センターは、狭山工場から車で数分の場所に4階建倉庫の1階から3階まで(約17,000m2)を賃貸していたが、スペース効率を高めることで、そのうちの約1,500m2を製造部門に充てることが可能になったのである。事務部門については、製造部門と関わりの強い設計、品質保証等を担当する一部のスタッフのみ狭山物流センターに配置し、それ以外のスタッフ約160人が新設する事務所に移転することにした。そうして昨年4月より、事務部門の移転先探しが本格化した。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / 会議室

新事務所の候補地選定にあたっては、従業員の通勤の利便性を最大限に考慮した。従業員の多くは、狭山工場が45年間立地していた狭山周辺に住んでおり、そこからあまりに離れた立地への移転は従業員の賛同を得にくいと考えたからだ。最初、狭山から至近の川越が候補に挙がったが、適当なオフィスビルがなく断念。自宅から通勤できる許容範囲ギリギリの距離として、大宮が最終候補に残った。いくつかのオフィスビルを検討した結果、駅からのアクセスがよく、必要面積1,500m2を二階層で賃貸できる大宮センタービルに決定した。今回の移転プロジェクトのリーダーであった、同社東部事業本部生技管理室長の清水弘文氏は、「元々の狭山工場の事務所がワンフロアだったので、社内コミュニケーションの観点からも、ワンフロアかそれに近い形が望ましいと考えていました」と話す。

大宮に決めたもう一つの狙いは、顧客である本田技研工業(株)に対するビジネス拠点としての機能強化にあった。本田技研工業(株)は、新車種の開発拠点である研究所を栃木県に設けており、ここに対する営業活動が住友電装にとって非常に重要なものとなっていた。狭山から宇都宮までのアクセスの難を解消するためにも、宇都宮まで新幹線ですぐの大宮は好立地だったのである。また、海外の製造拠点の統括部門として、海外への人員派遣や海外研修生の受け入れも頻繁に行っていることから、そのような場合のアクセスの利便性も考慮した。

従業員への丁寧な説明で社内の移転合意を形成

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / オフィス

移転先が決定した昨年6月から、いよいよ移転プロジェクトがスタート。同年10月の三連休を引っ越し期日に設定し、事務部門の大宮への移転と、製造部門の狭山物流センターへの移転を同時並行で進めていくことになった。本来なら、余裕をみて別々に実施したいところだが、「製造部門と事務部門はITでつながっているため、どちらか片方だけを移転させ、次に残った方を移転ということができませんでした」(同社東部事業本部第2事業部生産技術部技師の重田哲也氏)ということで、タイトなスケジュールとなったのである。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / 役員室

プロジェクトメンバーとして、人事総務、設備の担当者、製造部門の受け入れ先である狭山物流センターからセンタ ー長、小山製造技術センター(栃木)からIT担当者など計10名を選出。それに伴い「人事総務」「設備」「物流レイアウト」 「IT」の4つの分科会を設置した。また、外部パートナーとしてシービー・リチャードエリス(CBRE)にプロジェクトマネジメントを依頼。同社関東人事総務部次長の北出正司氏は、「引っ越しまで時間的余裕がなく、また我々にオフィス移転のノウハウもマンパワーも不足する中で、専門家のサポートを受けられるのは心強く感じました」と話す。CBREが2年前、親会社である住友電気工業(株)の移転プロジェクトを支援した実績や、今回の大宮センタービルへの仲介からワンストップでサービスを受けられる点も決め手となったようだ。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / トイレ

プロジェクト推進にあたっては、まず社内の合意形成から始められた。最も懸念された大宮への通勤の便の問題を中心に従業員への個人面談を行うとともに、従業員向け説明会を4回実施して、丁寧な説明と要望の聞き取りに努めた。同社関東人事総務部の山中一起氏は次のように話す。「狭山から大宮までは約20キロの距離ですが、その間に流れている荒川を越えると、知らない街に来るような感覚が強くなります。その辺の違和感を乗り越えて納得してもらう必要がありました。また、工場から賃貸オフィスビルへの移転にも戸惑いが見られました。また、賃貸ビルでは他の入居企業への配慮も必要だということを説明しました」。従業員からは他にも、「通勤時の服装は自由で良いのか?」「事務所内では動きやすい作業服で仕事をしたいのでロッカーを設置してほしい」といった質問や要望が上がったという。

働きやすい環境と企業の"顔"としてのグレード感

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / 廊下

手狭な執務環境がそもそもの移転のきっかけだったことから、大宮事務所のオフィス作りは「従業員が働きやすい環境」を一番に重視。執務スペースはゆとりを感じるレイアウトにするとともに、人事異動による人員増を見越したレイアウトにも配慮した。自社所有工場と違い、賃貸ビルではレイアウト変更に伴う室内工事にも様々な制約やコストが生じるからである。

従業員から要望の多かったカフェテリアスペースも設置し、昼食時には仕出し弁当を提供することにした。というのも、元々狭山工場には社員食堂があり、それを使い慣れていた従業員からは「昼食を事務所内でとりたい」という声があったからだ。また、このカフェテリアスペースは単なる福利厚生のみならず、ホワイトボードやLAN環境を整備し会議室として使うこともできる。さらに、休憩室も打ち合わせに利用できるようにしたりと、あらゆるスペースを多機能に有効利用できる工夫が施されている。

ビジネス拠点としての機能を高めるため、来客を迎えるための受付スペースや応接室を新たに設置。事務所の顔となる部分はコストをかけて整備する一方で、カフェテリアスペースや会議室には狭山工場で使用した備品を流用するなど、メリハリをつけた運用を行っている。また、今回の移転を機に社内のペーパーレスも促進。全会議室にプロジェクターを設置し、紙利用の削減を狙った。

オフィス移転プロジェクト事例 /株式会社住友電装株式会社 / 食堂

大宮事務所への移転により執務環境は改善され、従業員にも好意的に捉えられているようだ。「狭山工場時代に比べ、執務環境に対する労働組合からの要望事項もかなり減りました」と山中氏。懸念された通勤の利便性については、移転により従業員の平均通勤時間が約45分延びたものの、従業員から不満の声はほとんど聞かれないという。移転前は「勤務中は事務所で食事をとりたい」という声があったことはすでに述べたが、今では従業員の半数近くが昼食に出かけているといい、オフィスの周辺環境を楽しんでいる様子がうかがえる。

自社工場からオフィスビルへ移ったことで、関東地区のビジネス拠点としての機能が備わってきたようだ。北出氏は「厚木や小山、茨城など拠点が点在するなかで、大宮事務所は名実ともに関東地区の中心拠点としての位置付けになりつつあります」と語る。全国展開する同社のネットワークにおいて、地域の核を担うモデルケースとしても期待されている。

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2011年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

他カテゴリの記事を読む

関連記事

双日株式会社

ケーススタディ

2012年12月1日

新たなスタートに向けた本社移転。 先進的でグローバルな働き方を サポートする執務空間づくり。 大手総合商社の双日は、今年7月...

シスコシステムズ合同会社

ケーススタディ

2012年9月5日

ネットワークのリーディングカンパニーである米シスコシステムズの日本法人、シスコシステムズ合同会社は、2012年6月、東京都内の2ヵ所...

エナックス株式会社

ケーススタディ

2012年6月8日

2011年10月、リチウムイオン電池の研究開発会社であるエナックスは、営業部門と技術部門を統合する本社移転を実施。 こ...