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機械器具製造業 C社

ケーススタディ

2011年8月22日

社員の“安全確保”と“業務復旧”を目指して─。
迅速かつ的確な判断が可能にした、短期間でのオフィス移転。

去る3月11日に起きた東日本大震災では、非常に多くの企業が被害を受けることとなった。地震発生から約2週間後の3月24日に東京商工リサーチが 発表した調査結果によると、「震災の影響を開示した上場企業のうち70%以上が実際に被災」しており、被害内容は多い順に「建物損壊」(33.1%)、 「ライフライン・インフラの被害」(12.8%)、「生産ラインの被害」(12.1%)などとなっている。

サプライヤが被災することで、おびただしい数の企業が受けた間接的被害も甚大である。特に東北地方は自動車部品や半導体などハイテク工場の集積地でもあり、日本経済に与えた影響は計り知れない。

今回は、東日本大震災で被災したある企業が、社員の安全確保および業務の早期復旧のため、迅速かつ適切な判断で移転を完了させた一例を紹介したい。

予期せぬ震災被害・・・社員への“安全配慮”と“業務継続”の観点から、早急な移転を決断

各種組み込み機器の製造を手がけ、全国に支社および営業拠点を持つ機械器具製造業のC社は、過日の東日本大震災で被害を受けた企業のひとつである。
特に、被災地域周辺に位置する同社の東北支社では、沿岸部から距離があったために津波の被害こそ免れたものの、本震の際に、入居するテナントビルに直接的損害を被ってしまった。

築年数が30年を経過していたこともあってか、ビルの壁面には無数の亀裂が入り、地盤の液状化により駐車場のアスファルト面が波打ったように崩壊す るなど、その被害は決して無視できないものであった。絶え間なく余震が続く中、社員は損傷したビル倒壊の恐怖に大きな不安を抱えながら業務を行っていたと いう。

こうした事態を深刻に受け止めた同社では、社員の安全確保および業務の早期復旧に向け、東北支社の一刻も早いオフィス移転を決断した。

安心・安全な職務環境を求めるも、一方では“賃料コスト“も重視

同社の行動は迅速だった。地震発生の翌週には移転先に関する情報収集を開始。ほどなく建物や交通インフラの被害が比較的軽微であった市街地中心部への移転が妥当と判断し、具体的な物件の検討に入る。

今後も大規模な余震が予想される中、移転先は十分な耐震性能を備えた物件であることが第一条件であった。しかし同社はここで難題に突き当たってしまう。移転計画の陣頭指揮に当たった総務部長のM氏は、当時の状況についてこう明かしている。

「耐震設備の整ったビルとなると、選択肢は築浅物件に絞られます。しかも移転先が市街地中心部であることを考えると、賃料負担が増すことは容易に想像できました。一刻も早い移転が求められる緊急事態とはいえ、さすがにコスト面を度外視するわけにもいかなかったのです」

加えて、地震後の混乱が続く状況下での情報収集は容易ではなく、賃料相場や空室状況、物件情報を把握することは困難を極めた。

「そうしている間にも、損傷した隣のビルの取り壊し作業が始まり、工事の振動を地震と勘違いして怯える女性社員もあらわれました。先行きが見えぬ中で従業員の精神的負担は日に日に増しており、一刻も早く安心できる職務環境を整える必要がありました」(前出M氏)

震災後の混乱で、自社のみでの情報収集に限界を感じたC社は、以前同社グループ企業の物件仲介で実績のあったシービーアールイー(以下、CBRE)に移転のサポートを打診する。スピーディで的確な業務が、役員層から高評価を得ていたのである。

状況を鑑みたスピーディな情報提供と物件紹介が、意思決定を促進

依頼を受け、前出M氏らより要件を詳細にヒアリングしたCBREは、迅速に同社希望エリア内で耐震構造を備えた築浅ビルの選定に着手。震災後、CBREでは市街地中心部の代表的なオフィスビルの被災状況を独自に調査・情報収集し、いち早く把握していた。

そしていくつかの物件の中から同社の要件に適合した候補を絞り込み、翌日には6棟ほどを提案。各ビルオーナーへ手配の上、一週間以内にすべての物件を内見するに至った。

「CBREさんの提案もあり、この内見には多くの役員も参加しました。決定権者にダイレクトに訴えた結果、安全性、立地、賃料コストなどにおいて最 適な物件をスピーディに選定し、コンセンサスを得ることができました。限られた時間の中で役員判断を迅速に得られたことは、その後の社内決裁などの調整を スムーズに遂行する上で、重要な意味をもちましたね」(前出M氏)

こうして、同社は移転先の物件をとある1棟に絞り込んだ。市街地中心部の大通りに面し、十分な耐震性能を備えた築浅ビルである。
これは、移転決定よりわずか1ヶ月足らずというスピーディな決断であった。物件選定は通常、数ヶ月~1年を要する工程である。同社の意思決定がいかに迅速であったかは想像に難くない。

候補物件

市街地中心部の大通り沿いに位置する物件

  • 面積:ワンフロア200坪
  • 竣工:2006年(築5年)
  • 賃料:9,000円/坪

同ビルは築浅で好立地ながら、賃料は周辺相場よりやや低めに設定されていることから、他社からの引き合いもいくつか来ていた。そこでCBREはM氏 に代わり、一刻も早い移転を希望している同社の目線に立ち、オーナーに対し、C社が全国展開の優良企業である点や即入居による空室消化のメリットを示唆。 結果、4月入居の契約を締結するに至ったのである

わずか2ヶ月での移転を実現させた、「社員の安全を守りたい」という強い意志

こうして、移転準備を整えた同社は、4月中には内装を仕上げ、ゴールデンウィーク中に引越し作業を完了。震災発生からほぼ2ヶ月後の5月初旬には、新オフィスでの業務を再開させたのである。
「通常であれば1年はかかる」という移転プロジェクトをこうした短期間で成し遂げた陰には、スケジュール管理、各種調整の段取りのよさとともに、なによりも“社員の安全を守らなければいけない”という同社の必死の思いがあった。

市街地中心部にオフィスを移した同社は、交通インフラの復旧とともに業務を再開させた。さらに近隣エリアに代替サプライヤを確保することで、途絶えていた仕入れや納品についても復旧の見通しを立てることができたという。

「今回の経験を経て、BCPの重要性を改めて認識しました。本社では、BCPと密接にかかわってくるCRE、すなわち危機管理の観点からみた拠点配 置について、全国的に見直しをしていこうという動きが出てきています。CBREさんは全国展開されており、また早くからCRE戦略を標榜されていることか らも、今後どのような提案をいただけるか期待しています」(前出M氏)

同社は、止むに止まれぬ緊迫した状況下で、常に適切な判断を意識しながら、社員の安全確保および業務の早期復旧を果たした。この背景には、危機管理能力の高さはもちろん、必要に応じて臨機応変に対応できる社内の体制づくりがあったことがうかがえる。

被災地での業務は現在も困難な状況が続いているが、同社の社員は一丸となって業務に取り組むとともに、地域の復興に向けて尽力しているという。

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