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新たなスタートに向けた本社移転。
先進的でグローバルな働き方を サポートする執務空間づくり。

大手総合商社の双日は、今年7月、築32年のオフィスビルから新築のインテリジェントビルへと本社を移転した。2004年に合併によって誕生した双日が、新たな飛躍に向けた挑戦を果たしていくための移転である。幅広くグローバルな活動を行う商社ならではの先進的で効率的な働き方を推進し、社員が誇りを持って働ける職場環境づくりの過程を取材した。

心機一転の移転を検討

双日は、ニチメンと日商岩井が2003年の経営統合を経て、2004年に合併した大手総合商社。合併以降、本社機能を港区・赤坂のオフィスビルに集約していたが、今年7月、千代田区・内幸町の新築オフィスビルに本社を移転した。移転プロジェクトに携わった人事総務部総務課課長の山口俊之氏は「新たなスタートに向けて本社移転を実施しました」と語る。

移転の検討を始めたのは、2009年1月に人事総務部に異動した直後の山口氏が、当時の部長から検討課題として指示されたのが最初だった。当時の本社ビルは、契約満了まで期間が残っていたが、老朽化が進んでいたことによる耐震性への不安や、ビル2棟30フロアに分かれていたことによる社内連絡の不便、デッドスペースの多さ、近隣のオフィス賃料相場が下落していたことなど、様々な弊害が指摘されていた。

また、机や椅子などの備品・什器は、合併前の2社で使用していたものを持ち寄って使っていたため、使い古されたうえに統一感に欠けていた。社員からは「お客様や学生への印象が悪い」といった不満の声が上がっていたという。備品や什器の刷新は、移転の有無にかかわらず、早急に対処すべき課題ではあった。これらの理由から、旧本社ビルに残るという選択肢と、契約満了を待たずに移転する選択肢の両方について、人事総務部主導で検証を始めたのである。

同年末、検証結果をレポートにまとめ、社長へ報告した。レポートでは、移転と残留のコスト比較やメリットとデメリットの分析、ならびに移転先候補として約20物件を提示。候補物件は、双日らしさが担保できる立地として港区、千代田区、中央区の3区から、延床面積1万坪程度のオフィスビルをリストアップした。この場で移転への判断は下されなかったものの、下落傾向にあった賃料相場を考慮すると移転のチャンスでもあったといえる。その後、候補物件を絞り込み、賃料や契約期間、移転時期等を検討した結果、霞が関の飯野ビルディングに決定。2010年11月に正式に本社移転が承認されたのである。

同社では、今回初めて外部パートナー選定のコンペを実施した。「コスト重視の考え方と、本当にいいオフィスを作りたいという想いから、関連会社を含めた8社から最適なパートナーを選ぶ形にしました」と山口氏。その結果、シービーアールイー(CBRE)が選ばれた(2011年2月)。身内からの売り込みを優遇せず、すべてを同じ土俵で審査し、最適な選択を行う――。この考え方は、プロジェクトマネジメントだけでなく、備品購入などあらゆる場面でも貫かれた。

備品の一新とインフラ整備 快適で先進的なオフィスづくり

新本社ビルとなる飯野ビルディングは、2011年、霞が関に竣工した地上27階、地下5階建の超高層賃貸オフィスビル。双日はこのうち17階から26階の10フロア(延床面積約7,124坪)に入居した。

これまでのように2棟の間を移動する必要がなくなり、社内のコミュニケーション効率は格段に向上。ワンフロアの面積も、旧本社ビルの2倍以上の約712坪に拡大されたことで、多層階に分断されていた部門を同じフロアにまとめたり、連携が期待される部署を隣接して配置できるようになった。

移転を機に目指したのは、グループ役職員が効率よく、気持ちよく、安心して働けるオフィスである。オフィスコンセプトの策定にあたっては、社員アンケートや、選抜メンバーから成る分科会での議論を通じて、社員の声を反映したオフィスづくりを目指した。執務スペースはユニバーサルレイアウトを採用し、壁をなくすことで室内を広く見渡せるようにした。また、机や椅子、什器類を一新し、統一感を担保。机については、「快適なデスク空間が欲しい」という声に応えて、机の横幅を110cmから130cmに20cm拡張するとともに、机と机の背面間隔も約20cm広げた。執務環境の快適さを左右する椅子には特にこだわり、複数社からのサンプルを多数取り寄せ、実際に座り比べて選んだ。

双日には来客や、関係者を招いた打ち合わせ、海外との会議が多いのにもかかわらず、旧本社ビルには会議室が不足していたことも問題だった。そこで新本社ビルでは、会議室を従来の51室から80室に増やし、テレビ会議等の設備も充実させた。

また、ニーズをヒアリングして席数の異なる会議室や打ち合わせブースを数多く設けることで、用途や状況に応じて臨機応変に使い分けられるようにした。「会議室の稼働率を上げるには、様々な予約方法を組み合わせるのが効果的です」と山口氏。

多様な予約方法は、他企業のオフィスを視察してヒントを得たという。また、「会議室以外にも、気軽に集まって打ち合わせができるスペースが欲しい」という社員の意見を反映させて、旧本社ビルにはなかったカフェテリアを新設した。カフェテリアはエレベーターの乗り換え階である21階に設置し、高層階と中層階の社員が交流できるマグネットスペースとしても機能している。

ICTツールやインフラを整備することで、社員の先進的な働き方をサポートしているのも大きな特徴だ。すべての会議室にモニターを設置してパソコン画面を映し出せるようにしたり、テレビ会議が行えるようにした。また、Wi-Fi完備により社内のどこでも仕事ができるようにした。

「旧本社ビルの頃から、パソコンを持ち歩いて仕事する社員が多かったのですが、プロジェクターの台数が少ないなど設備が追いついていませんでした。新本社ビルでは、先進的で効率的な働き方ができる環境を整えました」(山口氏)。

5割廃棄、2割外部保管でオフィス内文書を7割削減

今回の移転では、コスト削減とスペースの有効活用も大きなテーマとなった。実は旧本社ビルに比べて、新本社ビルの総面積は2割近く減っている。これは、移転を機に徹底的に無駄を排除し、オフィス内文書の削減活動を行った結果である。具体的には、文書全体の5割を廃棄、2割を倉庫で保管、3割をオフィス内で保管することで、オフィス内文書量を70%削減した。「この文書管理を継続させ、業務の効率化とペーパーレスを図れるかは今後の課題です」と山口氏は語る。

オフィスレイアウトの策定には、多部門にわたる社内調整が必要だったことから、少なからず苦労もあったようだ。当時はビルが検査済証の交付を受ける前の仮使用の状態だったため、室内工事を行うにも申請手続きが必要であることを考慮すると、レイアウト策定を通常より2~3ヶ月前倒しで進めなければならないという事情もあった。

レイアウト策定にあたっては、事業拡大や人事異動等を理由にスペース拡大の要望が各部署から寄せられたが、「すべてを受け入れていては決まらないため、人事総務部で策定する戦略に基づき、必要最低限のスペースを最大限有効に活用するようにしました」と山口氏は話す。また、すべての従業員に同じオフィス環境を与えられるよう公平性を重視。「旧本社ビルでは、会議室や倉庫を持つ部署がある一方で、持たない部署があるなどの差がありましたが、今回はそうした既得権や優先権を徹底的に排除しました」。

引っ越しは、7月14日~16日の1週末に実施した。3,000人規模の移転をわずか1週末・3日間で完了させるのは至難の業だが、オフィス内文書を徹底的に減らしたことや旧本社ビルで使用していた備品や什器をすべて処分し、事前に新しい備品や什器を搬入しておくことで可能にした。

ほぼ全社員が満足 社員が誇れる職場へと変革

移転後は社員からの不満の声はほとんど聞かれず、「ほぼ全社員が満足していると感じています」。移転1ヶ月後には、社員の家族を職場に招待するファミリーイベントを開催、約700名の社員家族が新オフィスを訪れた。同業他社や取引先企業もオフィスの評判を聞きつけて視察にやって来た。彼らは口々に「自社にはないスタイルや雰囲気、コンセプトを持ったオフィスだ」と評価しているという。

旧本社ビルは建物自体が古く、グローバルに事業展開する総合商社の顔としてもインパクトに欠けていたが、今回の移転で双日が目指したのは、双日という新しい社風や文化を創造していくための基盤を整備し、「ここから新しい双日を創り上げていく」というメッセージを内外に発信することだった。それに相応しい器を用意することができたと山口氏は感じている。

移転直後に、佐藤洋二社長が経済誌のインタビューで次のように話している。「最近一番感動したことは、新社屋移転で目にした社員の笑顔」。社員が生き生きと働く姿こそが、本社移転の成功と、今後の飛躍を期待させる何よりの証しだろう。

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2012年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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