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クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社

ケーススタディ

2014年1月8日

物理的な空間に限定されない柔軟な働き方と社内外のコラボレーションを促進し、
生産性向上を狙った本社移転。

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医薬品開発営業大手のクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン㈱は、人員増加により手狭になった旧オフィスから、従来の1.7倍の広さを持つオフィスに本社を移転した。ホットデスク制の導入で働き方の流動性を高め、座席数を最適化した一方で、会議室やオープンスペースを十分に確保することにより、コラボレーション空間を活用した社内外とのコミュニケーション向上を狙った。社内の一体感を生み出し、かつ社外へのブランディング機能も備えたオフィスをどのようにつくっていったのか。

社員増加によるスペース不足会議室を改装して座席数を確保

会議室

クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン(以下クインタイルズ・ジャパン)は、世界100ヶ国で医薬品開発営業支援事業を展開するクインタイルズの日本法人。日本全国に7ヶ所の事業所を持ち、製薬企業の医薬品開発を支援する臨床開発事業と、営業活動を支援するコマーシャル事業を展開している。近年、製薬企業で医薬品開発や営業活動のアウトソース化が進み、欧米では早い段階からこれらの活動を支援するビジネスが始まっていた。日本では1993年、クインタイルズが臨床開発事業をスタート。1998年、同社はクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパンを発足させ、コマーシャル事業も開始した。同社の臨床開発事業とコマーシャル事業を合わせた売上は、国内で業界ナンバーワンを誇る。

同社の社員数は約3,000人。そのうちコマーシャル事業部門に属するMR(医薬情報担当者)が約1,700人、臨床開発事業部門に属するモニター(臨床実験を行うスタッフ)が約600人を占める。MRは通常、顧客である製薬企業に営業・駐在し、同社オフィスに顔を出すことはほとんどない。一方のモニターは、オフィスにデスクを構えてはいるものの、医療機関など臨床実験の現場に出向くことが多い。つまり社員約3,000人のうち約2,300人は、主にオフィス以外の場所で活動しているのである。

同社は今年5月、臨床開発部門とスタッフ部門を合わせた約1,200人が在籍する本社オフィスを、社員の増加によるスペース不足に伴い、勝どきから品川へ移転させた。「MRやモニターを中心とした事業規模の拡大に比例して人も増えたため、人員を収容するスペースの確保が喫緊の課題でした」と話すのは、移転プロジェクトを主導した丹野賢一氏。旧本社では、急場しのぎに会議室を改装して座席数を増やしていった結果、深刻な会議室不足に陥っていたという。「当社の業務に会議室は欠かせません。例えば臨床開発部門では、臨床実験を実施する前にクライアントと綿密な打ち合わせを何度も繰り返します。また最近は、社内外のコラボレーションによる業務も増えています。それにもかかわらず会議室不足により会議や打ち合わせができない状態にあり、業務に支障をきたすばかりか、機会損失を招いていた可能性も否定できません」(丹野氏)。

より広い場所への移転の要望は以前からあった。しかし、適切な立地と不動産市場の調査、そして移転コストの適正値の検討を徹底的に行ったため実現までに時間を要したという。2012年5月、先行していた大阪拠点の移転完了の後、東京本社の移転先の詳細調査や費用分析などアメリカ本社への承認申請資料作成を開始、本社移転に向けて本格的に動き出した。

移転先については、各医療機関や顧客企業へおもむく際の利便性を考え、アクセスのよい都心であることを前提に検討。最終的に品川駅から徒歩2分のオフィスビル(3~8階部分)に決定した。品川を選んだのは、羽田空港に近く、新幹線の停車駅でもあるなど交通の便に優れた立地であることが理由。品川は社員の通勤にも便利で、また駅前の好立地であるため、大半の社員の通勤時間が短縮されることになった。「お客様先への訪問や、新幹線や空港を利用した出張などトータルで考えても、多くの社員にとって利便性が向上したと考えています」と丹野氏は話す。

オフィス

アメリカ本社の最終的な承認を得ることが一つの山場だったと丹野氏は振り返る。厳しいコストへの質疑に対し、生産性を高めるために必要なオフィス面積を算出し、移転による効果をあらゆる面から検証し、質疑に対して数字で示すことで理解を得ていったという。2012年10月、アメリカ本社の最終承認を受け、翌年5月の引越に向けた移転プロジェクトがスタートした。

社員間のコラボレーションを促し生産性を高めるオフィス

オフィス
オフィス

新たなオフィスを作るにあたっては、「オフィスとは何か」を再定義することから始められた。「当社の場合、本社に所属する臨床開発部門のスタッフの大半は、臨床実験の現場に出ていることが多い。また、最近はITの発達により、必ずしもオフィスで仕事をしなくても、ネットワークにつながっていれば自宅や外出先からも打ち合わせが可能です。物理的な空間に縛られず、どこでも仕事ができるようフレキシビリティの高い働き方をサポートする要素を加えることは必須だろうと考えました」(丹野氏)。

そこで出てきたキーワードは、「コラボレーション(協働性)」。オフィスとは、人と人が出会う場所、それは、お客様であり、社員同士でもある。また「モビリティ(流動性)」の視点から、固定席からホットデスク(フリーアドレス制)へ移行。本社オフィスの大半を占める臨床開発部門において、従来からの一人1席の固定席を廃止し、その時々のプロジェクトの状況や個々の業務内容によって最適な場所で仕事ができるホットデスク制を導入した。社員の働き方をを分析し、臨床開発部門の社員に必要な座席数を設置し、デスクの占有面積を最適化(結果として減少した)する一方で、流動性を高めることで将来の人員増強にも柔軟に対応できるようにした。

オフィス
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もう一つ重視したのが、十分なコラボレーションスペースの確保である。「先ほども述べたように、必ずしもオフィスで仕事をする必要がないのなら、オフィスは何のためにあるのか? それは人と人が出会うためではないか、と考えました。人と人が出会い、コラボレーションすることで生産性を高めていくのが、私たちが目指すオフィス機能の一つです。フレキシビリティの高い働き方が本当の意味で機能するためにも、十分なコラボレーションスペースが必要だと考えました」と丹野氏。会議室を十分に確保するとともに、社員同士が集えるオープンスペースやキャンティーンスペースも配置。また、会議室の壁を可動式にして、MRなど普段は社外にいるスタッフが50~200人規模で集まる際には大空間をつくれるようにした。会議室の数は、旧オフィスでの会議室の利用実態を詳細に調査・分析したうえで、社員数に対する適切な数を算出している。

また、移転に際して不要な書類は廃棄もしくは外部倉庫へ移し、加えて電子化することで書類削減にも努めた。セキュリティに関しては、クインタイルズがグローバルに運用しているセキュリティシステムのカード1枚で、ビル側のセキュリティにも対応できるよう構築した。セキュリティシステムの統合は関係各社の調整が大変だったが、「この方法が社員にとって最もシンプルで、コストをかけずに運用することができると判断しました」と丹野氏は話す。

目指す会社像を共有できるのがパートナーの条件

オフィス

プロジェクトを開始するにあたっては、タイトなスケジュールとコストマネジメント、各方面にわたる関係者の調整をスムーズに進めるため、CBREをプロジェクトマネージャーとして指名した。パートナーを選ぶ際に重視する点について、丹野氏はこう話す。「個人的には、どちらを向いて仕事をするのかが大事だと常々思っています。我々がパートナーに期待するのは、『これこれこういう理由で実現不可能です』とプロの知識を持ち出して我々を説得するのではなく、それらの知識を総動員して実現の可能性を探り、ゼネコンや建設業者を説得してくれることです。その点、CBREの担当者は我々と同じ方向を見て仕事をしてくれ、期待通りにプロジェクトを進めることができたので感謝しています」

また、移転プロジェクトに関わった広報部長の宮之原博之氏は、「オフィスをどうつくるのかといった技術論ではなく、クインタイルズ・ジャパンという会社はどんな会社で、将来はどんな会社にしたいのかという経営サイドの想いを理解しようと努めてくれました。我々のことを深く理解したうえで、最適なオフィスの提案をしていただいたのは、まさにプロの仕事だと感じました」と感想を述べた。

来客を迎える場所としてブランディング効果も期待

オフィス

本社移転が完了して約半年が経つが、「以前に比べて働きやすさは格段に向上している」と丹野氏。会議室が増えたことで顧客や取引先など外部の人を招きやすくなり、この半年の来社数は旧本社時代に比べて大幅に増えた。リクルーティング専用の部屋を新設したことで、採用面接者の数も順調に伸びている。以前は外に場所を借りて実施していた製薬企業の担当者向けのセミナーも、移転後は社内で開催できるようになり、コスト削減効果はもとより、ブランディング効果も期待できる。

また、大勢の社員が集まる社内向けミーティングを社内で開くことで、一体感の醸成にも一役買っている。「先日、アメリカからCEOをはじめ役員がずらりと来社した際に、このオフィスで200人規模のタウンホールミーティングを開催しました。ミーティングの様子を中継し、ライブで各階のコラボレーションエリアで放映するとともに、大阪事務所ほか全国の拠点とウェブ回線でつなぐことで、品川の本社を中心に社内が一つになりました」(宮之原氏)。

オフィス

ホットデスク制を導入したことについては、「固定席を持たない働き方に慣れるには、もちろん時間が必要です。社員一人ひとりが柔軟に働き方を選択し、生産性の向上につながるよう、今後も継続的にサポートしていきます」と丹野氏。フレキシビリティが高く、社員同士のコラボレーションを実現するための理想的な器を手に入れたいま、器に合った働き方を進めていくことで、理想のオフィスを築いていくことができるだろう。

プロジェクト詳細
所在地 クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社
拠点部門 本社オフィス
所在地 東京都港区高輪4-10-18
施設・階数 京急第1ビル 3~8階
使用面積 約3,000坪
拠点人員 約1,200人
移転時期 2012年10月~2013年5月
CBRE業務 包括的プロジェクトマネジメント
  • 設計者選択、調達支援、基本設計、実施設計マネジメント、及び施工マネジメントを実施
  • 引越時に関しては綿密な移転計画を立案し、滞りなくオフィス移転を実施

 

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上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2013年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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