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株式会社星野リゾート

ケーススタディ

2013年11月22日

東京オフィスとブライダルサロンを統合し、銀座一等地に理想的な拠点を構築。
合理的なスペース活用を実現した統合移転。

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軽井沢に本社を構える星野リゾートは、今年9月、東京における2大拠点、すなわち営業拠点である東京オフィスと、ブライダル事業の集客施設であるブライダルサロンを銀座に移転統合した。異なる機能を持つ二つの拠点を統合することで、合理的なスペース活用を実現し、結果的に銀座という一等地での拠点構築を可能にした。柔軟な発想による拠点づくりの過程を取材した。

東京の営業拠点に生じた スペース不足による機会損失

外観

星野リゾートは、軽井沢に本社を構える総合リゾート運営会社。同地に温泉旅館を開業した1904年に事業をスタートさせ、八ヶ岳南麓にあるホテル「リゾナーレ」を取得した2001年からは運営分野に特化。現在は、全国で30を超えるホテルや旅館を運営している。

以前は軽井沢にすべての本社機能が集約されていたが、事業が拡大するにつれ、その一部が東京に進出。営業部門や広報部門、ブライダル事業の営業拠点となるブライダルサロンなど、消費地の近くにあってこそ効果的に機能する部門である。初めは都内に分散しながら拠点を構えていたが、やがて集約が進み、近年は営業部門と広報部門から成る東京オフィス(八丁堀)と、ブライダルサロン(恵比寿)の2拠点になっていた。

同社は2013年9月、この二つの拠点を銀座に移転統合。これによりスペース効率、費用効率ともに優れたオフィスを実現することができた。しかし、初めから統合を考えていたわけではなかったという。別々に持ち上がった移転話が、なぜ移転統合に発展したのだろうか。

東京オフィスが移転を検討し始めたのは、事業拡大に伴いスタッフが増え、手狭になったからだった。同オフィスを拠点に活動する営業担当者や広報担当者は外回りが多いため、東京に進出した当初からフリーアドレス制を導入し、効率的なスペース活用を行っていた。ところがワンフロア160坪に対してスタッフが90人を超える頃になると、座席数や会議室の不足が深刻化。会議室は当初の5室から7室に増やしたが、それでも足りない状態となっていた。「お客様や取引先と会うために東京に拠点があるのに、会議室不足から打ち合わせができないというのでは本末転倒でしょう。業務効率が悪いですし、機会損失さえ生み出します。対策として別のフロアを借り増すことも検討しましたが、フロアが分かれることで社員の意思疎通が妨げられるデメリットの方が大きいと判断し、移転に傾いていきました」と東京オフィスの移転を主導した同社企画開発部プロジェクトプロデューサーの馬場義徳氏は話す。

エントランス

移転先を探すにあたっては、交通の便も外せない条件だった。「東京オフィスは、いわば大消費地である東京への営業拠点。全国から営業にやって来るスタッフの移動時間を最小限にするためにも、新幹線や飛行機での移動に便利な立地が望ましいと考えました」と馬場氏。そこで東京駅近辺をはじめアクセスの良好なエリアでの物件探しを始めたものの、「駅に近いほど当然賃料は高く、予算や条件に合う物件を見つけることは難しかった」と振り返る。

ブライダルサロンに求められる 立地バリューと回遊性

エントランス

一方のブライダルサロンは、約17年前、当時新築だった恵比寿のオフィスビルの5階に入居し、東京での営業活動を開始した。しかし、業績が伸びるにつれ、東京オフィスと同様、スペース不足の問題に直面するようになったという。東京ウエディングサロン営業支配人の鈴木貴大氏は次のように話す。「週末になると40組80名以上の来客があり、約90坪のサロンでは対応しきれなくなりました。そこで週末には、有楽町にある東京国際フォーラムで出張イベントを行い、スペース不足を補うとともに、潜在顧客との接触率を高める戦略を採りました。狙いどおりお客様は増えましたが、その分、成約された方々との挙式前の打ち合わせにもスペースが不足するようになったのです」。  ブライダルサロンならではの課題もあった。一つは築年数が経過した建物のクオリティである。「常にターゲットが新しく入れ替わるウエディング市場では、時代のトレンドを反映したサロンであることが必須。近年は洗練されたウエディングサロンが増えているなかで、いかに競争力を保つかは課題でした」と鈴木氏は話す。また、5階ということもネックだったという。「ウエディングは高価な買い物であるだけに、来店のハードルが高くなりがちです。購入意向の低い方にも気軽に来店してもらうには、5階に位置するサロンよりも、路面店の方が効果的だろうと常々考えていました」(鈴木氏)。

エントランス

こうした理由から、ブライダルサロンの移転を検討し始めたのが数年前のこと。移転先エリアとしては、トレンド感のある立地バリューのほか、買い物ついでに立ち寄れる場所であることや、ウエディング関連商材が集まり、顧客が回遊する場所であることも重要な条件だった。ブライダル購入者が回遊する場所としては銀座周辺が有力であり、立地バリューとしても申し分なかったが、予算と折り合う物件に出会うまでには至らなかった。

入居によるメリットをプレゼンし オーナーに分割借りを提案

執務スペース
会議室

東京オフィスとブライダルサロンがそれぞれの移転先探しに難航していた頃、ある画期的なアイデアにたどり着く。それが二つの拠点を統合するという案だった。統合することで予算内での物件の選択肢が増えるほか、スペース効率が高まる効果も期待できる。「東京オフィスで執務スペースや会議室が必要となるのは平日の昼間。一方で、ブライダルサロンに来客が多いのは、平日の夜や休日です。平日はブライダルサロンのスペースをオフィスの打ち合わせスペースとして活用し、休日はオフィススペースをブライダルサロンとして使うことで、限られた空間でありながらスペース不足を解消できると考えました」と馬場氏は話す。

とはいえ、片やコストと交通利便性を重視する執務スペース、もう一方はグレード感と立地バリューが不可欠なブライダルサロン。物件探しにあたっては豊富な情報量を持つCBREに依頼していたが、それでも一筋縄ではいかなかった。当初、ブライダルサロンは路面であることを重視していたものの、「必ずしも路面でなくても、サロンにイベントの要素を組み込めば、顧客を呼び込めるはず」(鈴木氏)と方針の変更なども行われた。

CBREに物件探しを依頼してからちょうど1年後の2012年末、今回の移転先となる銀座の高速道路下の物件に出会うこととなる。1階部分をエントランススペースに、2階部分をサロン並びにオフィスとして活用する約390坪の物件である。「CBREからこの物件を紹介された時は、正直『しめた!』と思いました。高速道路の下というのは、一般的にはネガティブなイメージがあるかもしれませんが、『変わった立地』であることが逆に星野リゾートらしい。また、銀座でこれだけのワンフロア面積が確保できるのは珍しいですし、あったとしても賃料が高くなるのは必至。その点、高速道路下であることで、理想的な立地と面積、コストパフォーマンスを実現することができました」(馬場氏)。

外観

ただし、決定までにはクリアすべき問題もあった。当初提示された床面積は約700坪と必要面積よりもかなり広かった。同社は分割借りを希望したが、残りスペースの貸し出しが難しくなるという理由で、オーナー側が難色を示していたのだ。そこで同社とCBREは、星野リゾートが入居することによるメリットをオーナー側にプレゼンテーションし、説得を試みた。「ブライダルサロンを併設する我々が入居することで、ビルや街に華やかな雰囲気を付加できることを、写真やイメージを使って伝えました。ビルに入居するためにプレゼンを行ったのは初めてのことですが、これによりオーナーさんに好意的に判断いただけたと思います」と馬場氏。CBREも残りのスペースに別の顧客を仲介することで貢献し、無事に分割による賃貸にこぎつけた。

メリハリのあるデザインで サロンとオフィスの同居を可能に

ブライダルサロン
ブライダルサロン

新たな拠点の最大のポイントは、オフィスとブライダルサロンを融合し、合理的なスペース活用を実現することだった。会議室は従来の7部屋のままだが、平日はブライダルサロンにある24の打ち合わせスペースも併用できるようにした。ただし、接客スペースであるブライダルサロンは華やかに、一方のバックオフィスである執務スペースはシンプルにすることでデザインのメリハリをつけ、サロンとオフィスを区別。サロンの家具は新調しながらも、オフィスには旧拠点での家具を流用するなど徹底した割り切りで費用効率を図った。

もう一つこだわったのは、結婚準備の楽しさを感じてもらえるサロンにすること。旧サロンには単なる打ち合わせスペースしかなかったが、新サロンでは大きなイベントスペースを設けるとともに、利用客が自由に使える情報スペースやカフェも併設した。「成約されたお客様に結婚式当日までの準備を楽しんでいただける空間を提供することが、我々の競争力にもつながると考えました」と鈴木氏。サロンでは落ち着いて商談ができるよう、開放感がありながらもプライベートな空間を演出している。

情報スペース
情報スペース

移転してまだ1ヶ月だが、銀座という好立地の影響で集客にも手ごたえを感じているようだ。また、東京のオフィス部門とサービス部門が初めて隣り合わせに入居することで、好ましい相乗効果も見られるという。「オフィスのスタッフがサロンでの接客を目の当たりにすることで、サービスに対する意識が高まります。一方でブライダルのスタッフからすれば、営業や広報のスタッフに接することで会社全体の流れが見えるようになりました。お互いに同じフロアに入ることで、東京のオフィスとしての一体感が生まれ、仕事にもいい刺激が生まれているように感じます」と馬場氏は話す。

合理的なスペース活用を追求しながらも、接客業として接客スペースを大事にするという集中と選択により、東京での理想的な拠点をつくりあげた今回の移転統合。大消費地である東京での営業・広報活動を加速させ、星野リゾートのさらなる発展の原動力となることが期待される。

プロジェクト詳細
所在地 株式会社星野リゾート
拠点部門 東京オフィス及びブライダルサロン
所在地 東京都中央区銀座1-11-1
施設・階数 東京橋ビル 1~2階
使用面積 約390坪
拠点人員 約130人
移転時期 2013年9月
CBRE業務 拠点リロケーションに向けた物件紹介・仲介
  • オフィスとブライダルサロンの融合という困難な 案件に対する適切な物件紹介
  • ビルオーナーにテナント使用イメージのプレゼン テーションを実施

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2013年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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