賃貸オフィス・賃貸事務所の記事

NHN PlayArt 株式会社

ケーススタディ

2015年3月23日

分社により誕生した新生IT企業が
社員の働きやすさとさらなる発展を目指し、 虎ノ門ヒルズに本社移転。

ライブラリー

ゲーム事業やコミック事業などを運営するNHN PlayArtは、今年1月、虎ノ門ヒルズに本社を移転した。社員の働きやすさを第一に考え、そのために必要なコストや時間を惜しまないプロジェクトの進め方は同社独特である。コストとスケジュールのバランスを取りながらも、社員の“セカンドホーム”としての空間づくりを目指した本社移転を取材した。

会社の急成長に伴いオフィス拡張・移転をくり返す

受付

NHN PlayArtは、「ハンゲーム」の運営や「LINEゲーム」の開発などのゲーム事業、コミックサービス「comico」などを提供するIT企業。韓国のネット企業大手であるNHNの日本法人として、2000年に設立されたハンゲームジャパン(後のNHN Japan)が始まりである。その後、LINE事業を担う子会社・ネイバージャパンやライブドアとの経営統合を経て、2013年、ゲーム事業が分社化されたのが同社である。社員は、20~30代の若い社員を中心に約500名、グループ全体では約1,300名を抱える。社員が自由に意見を言い合えるフラットでオープンな社風が特徴である。

ITの進展に伴い急成長を遂げてきた同社の歴史は、オフィス移転の歴史でもある。7人でスタートした当時の拠点は、渋谷のマンションの一室だった。2005年~06年頃は1ヶ月で30~50人ずつ社員が増えるほど成長が著しく、当時入居していた恵比寿ガーデンプレイスでは、1フロアから3フロアに増床してもまだ足りなかった。社員数が400人 に達した頃、周辺に分散していたオフィスを大崎シンクパークに統合。さらにネイバージャパンやライブドアと経営統合した2012年には、渋谷ヒカリエに本社を移した。この時、社員数は1,000人を超えるまで増加していた。

受付
受付

その後、2013年の分社により誕生したNHN PlayArtは、2015年1月、すでに手狭になっていた渋谷ヒカリエから虎ノ門ヒルズに新たな拠点を移すべく本社移転した。渋谷ヒカリエには、LINEをはじめとするウェブサービス事業が残ることになった。

移転先の選定にあたっては、同社の原点である渋谷や、最も成長が著しい時期に拠点を置いた恵比寿も候補に挙がったという。最終的に虎ノ門ヒルズに決めたのは、「未来の東京をグローバルに発信していくという虎ノ門ヒルズのコンセプトが、これからさらに成長を遂げようとするNHN PlayArtにマッチしていたから」と、移転プロジェクトリーダーの金在龍氏は話す。また、虎ノ門ヒルズは、優れた耐震性能や、非常時に専用部に対しても電源供給する非常用発電機を備えており、社員の安全性や事業継続性に配慮した施設であることも本社構築の決め手になったという。

CX室主導による徹底した社員目線でのオフィスづくり

カフェ

NHN PlayArtは、社員が働きやすい環境を第一に考える会社だ。「楽しさを創造する=PlayArt」という社名そのものを理念に掲げる同社にとって、「人こそが財産」と考えるからである。この“働きやすさ重視”の考え方は、グループ全体に浸透しており、移転プロジェクトの進め方やオフィスづくりにおいても徹底されている。

まず、移転の狙いである。きっかけは人員増に伴うオフィス拡張だが、真の狙いは別にある。渋谷ヒカリエ時代は、社員数が増えるにつれ個人のスペースが狭くなり、働きやすさが失われたことが大きな課題だった。「社員の多くは企画者や開発者、デザイナーであり、PCに向かっている時間が長い。彼らにとってオフィスは、自宅と同じくらい長時間滞在する“セカンドホーム(もう1つの自宅)”なのです。社員が快適に仕事に取り組める場所にすることが、今回の移転の最大のミッションです」と金氏は話す。

移転プロジェクトがスタートしたのは2014年1月。通常、オフィス移転は総務部が中心となって進めることが多いが、同社では「CX室」が担当した。日本ではあまり聞き慣れないが、CXとはCulture Experienceの略であり、企業文化を育成し、外部に向かって発信する役割を担う部署である。つまり企業ブランディングが主な役割で、人事や総務、広報など様々な部署の担当者が兼任で加わるほか、デザイナーも所属する。企業文化やそれを担う「人」は、環境によって創られるという考えから、オフィス空間の戦略立案もCX室の仕事に含まれる。今回の移転プロジェクトは、このCX室のメンバーを中心に進められた。

コストとのバランスを重視する一方で、社員にとっての快適さを追求するために必要なコストは惜しまないのも、同社のオフィスづくりの大きな特徴と言える。社員が毎日使うデスクやパーティションはあえて既製品を使わず、素材にこだわってオリジナル品を特注した。そうなれば当然コストがかかり、社内や本社の説得や承認に時間を要するのではと懸念されるところだが、同社ではコストをかける理由を明確にすることで説得の突破口とし、目指すオフィスを実現していった。「プロジェクトを進める上で大事にしたのは、ストーリーです。どんな小さなことにも、『これが必要なのは社員の働きやすさのため』という明確で一貫したストーリーがあれば、社内に異論があったとしても合意を得やすいからです。社内の意見に耳を傾けることは大事ですが、それらを相加的に反映させても目指すオフィスはつくれません。目指す方向に社内を説得し、進めるためにも、私たちにはストーリーが必要でした」(金氏)。

ライブラリー

1つひとつのストーリーを大事にしながら進めるやり方は、理想ではあるが、コストだけでなく時間もかかる。レイアウト図面だけでも「何度も描き直した」(金氏)という。スケジュール管理やコスト管理を徹底するためにも、優秀なプロジェクトマネジメント(PM)会社が必要だったと金氏は話す。基本設計に先立ち、PMを担当するCBRE、設計会社やデザイン会社に対し、韓国本社へのオフィスツアーが実施された。NHNの歴史や社風、働き方を知った上で、設計やデザインを進めるためだ。「オフィスづくりも家づくりと同じで、住む人や使う人に深く関わっています。だからこそつくる側にも、社員がオフィスでどう過ごすのかを見て欲しかったのです」と金氏は話す。同社のオフィスづくりへのこだわりは、まさに「自分の家族のために家をつくるように、オフィスをつくる」という考えに基づくものであった。

頻繁な組織変更や席移動。どの席でも不便を感じない配慮

オフィス
オフィス

社名にもある「PlayArt=楽しさを創造する」をオフィス空間として具現化するために、「Park Museum」というコンセプトを設定。楽しさのある場所としての公園(Park) と、アートのある場所としての博物館(Museum)の要素を兼ね備えた空間という意味である。ニューヨークのセントラルパークのように、虎ノ門に都会のオアシスを出現させることを意図した。

執務空間は、約1,000坪のフロアを4等分したワークステーションを、コミュニケーションスペースで区切ることで、左右対称のレイアウトとした。コア側にはパントリーやコピー機、会議室などを均等に設置。同社では組織変更や席移動が度々あり、こうしたレイアウトにすることで、どの席に移動しても不便さを感じないようにするためである。フロアは22階と23階に企画・開発やクリエイティブ部門などを配置し、21階の一部に管理部門などを配置している。

渋谷ヒカリエ時代に課題だった個人のスペースは、デスクを従来の1,400mmから1,600mmへと20cm拡大し、ゆとりを持たせた。また、目隠しのためのパーティションは3つの高さのパターンで検証し、姿勢を正せば全体が見渡せ、PC業務に集中する時は周りの視線が気にならないような高さに調整。新たに両サイドにもパーティションを追加し、周りとのコミュニケーションを大切にしながらも、社員にとって快適な空間を追求した。椅子はアーロンチェアで統一。オリジナルデスクの天板は人工ではなく突き板を使用、また、素材を吟味して作ったパーティションには、檜の香りが漂う檜のマグネットを貼るというこだわりようだ。

サウンドルーム
サウンドルーム

デザイナーや開発者、企画者など役割の異なる社員同士が活発にコミュニケーションを取ったり、仕事の集中力を高めるためにリラックスできる場として、カフェを設けた。併設のライブラリーには、世の中のトレンドをいち早くキャッチできるようにと、国内外の雑誌約100種類がストックされている。また、長時間にわたってPCを使う社員のために、マッサージ室も完備。東京タワーが一望できる眺めの良い場所には、ゲストのための会議室を配置し、同社社員と連携してシナジー効果を生み出す取引先や協力会社にも配慮している。

韓国本社には、社員専用の銀行、授乳室、旅行会社や結婚相談所まであるという。これらはすべて、社員が用事を近くで済ませることで仕事に集中しやすくするためである。「日本でも会社が同規模にまで成長したら、韓国本社のような施策をぜひ具現化したいですね」と金氏は話す。

チューニングにより進化し続けるオフィスづくりはこれからが本番

会議室

虎ノ門ヒルズでの営業開始(1月5日)に先立ち、昨年12月下旬には、新本社で「セカンドホームパーティ」を開催した。社員1人につき、大切な人を3人まで招待できるという社内イベントである。引越直前の最も忙しい時期にこのようなイベントを開催した狙いについて、「新本社で業務を開始するにあたり、社員のモチベーションを高めたかったからです。自分の大切な人たちが新本社を見て『すごいね!』と言えば、人の心理として鼻が高いでしょう。社員に会社を好きになってもらう施策を考えるのも、CX室の役割です」と金氏は話す。

リラックスルーム

取材時は移転後1週間しか経っていなかったが、新オフィスの社員の評判は上々だという。しかし、新オフィスはまだ完成していないと金氏は言う。「ようやく器が整っただけで、オフィスはこれからチューニングをくり返して進化していくもの。これからが私たちの本当の仕事です。私たちが世の中に良いサービスを提供していくために、まず社員に良いサービスを受けてほしいのです。社員が笑顔で仕事に打ち込める環境を提供していきたい」。社員のためを考え尽くしてつくられたオフィスで、NHN PlayArtとして再出発した同社がどのような成長と発展を遂げていくのか、今後が楽しみである。

 

プロジェクト詳細
企業名 NHN PlayArt 株式会社
拠点部門 本社
所在地 東京都港区虎ノ門1-23-1
施設 虎ノ門ヒルズ森タワー
移転時期 2015年1月
CBRE業務 本社移転に向けた物件紹介・仲介
プロジェクトマネジメント

 

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2015年春季号 掲載記事 掲載当時のものです。

他カテゴリの記事を読む

関連記事

日本水産株式会社

ケーススタディ

2015年4月6日

50年ぶりの本社移転を改革のチャンスと捉え、生産性の高いワークプレイスを構築。 今後100年の発展を見据え、空間創造にチャレンジ。 “ニッ...

クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社

ケーススタディ

2014年1月8日

物理的な空間に限定されない柔軟な働き方と社内外のコラボレーションを促進し、 生産性向上を狙った本社移転。 医薬品開発営業大手のクインタイル...

ネットワンシステムズ株式会社

ケーススタディ

2013年10月2日

東京駅駅前の最高立地と最先端ICT活用で、 新しいワークスタイルを魅せる「Innovative Office」を構築。 “生産性向上”を“お...