仲介賃貸オフィス・貸事務所・貸店舗の記事

Pioneer DJ株式会社

ケーススタディ

2016年3月9日

分離・独立を機に本社オフィスを構築。技術者に優しい執務環境の実現を目指す。

パイオニアDJ

エクイティファンドの支援のもと、昨年春、パイオニア株式会社からの独立を果たしたPioneer DJ。企業としての体制づくりと同時進行で進めた本社づくりであるにもかかわらず、短期間で高質なオフィス構築を成功させた。そのこだわりとプロジェクトマネジメントのあり方に迫る。

DJ機器のトップメーカーが満を持して本社オフィスを構築

井出社長

Clubシーンを華やかに演出するDJ。プレーヤーやミキサー、コントローラーといった機器を駆使して、観客を魅了する彼らはエンターテイナーである。日本ではまだ注目度は発展途上であるが、ひとたび海外に目を向ければ、スタジアムクラスの大会場を満員にする大スターであり、トップクラスのDJともなれば一晩で数千万、年収は数十億円を稼ぎ出すアーティストなのだ。当然のことながら、彼らに憧れるセミプロやアマチュアも数多く存在する。そんなプロの、そして未来のDJにとって欠かせない機器のトップメーカーがPioneer DJである。

同社は1994年、パイオニアのプロSV(サウンド&ヴィジュアル)事業部として設立されて以来、今日では世界のDJ機器のシェア60%以上を誇るまでに成長してきた。まさに「DJシステムといえばパイオニア」と、世界が認める企業となったのである。そして、事業開始から20周年を迎えた2015年3月、世界有数のファンドKKRの支援のもとで分離・独立を果たし、Pioneer DJ株式会社として、DJ機器の企画・開発・製造および販売の専業メーカーに生まれ変わった。

窓際

その同社が2015年11月、竣工間もない横浜アイマークプレイスに、念願の本社オフィスを開設した。「それまでは、新川崎にあったパイオニアの本社に間借りしていたのですが、独立した以上、本社構築は必然でしょう。親離れをして社員の意識を変革するためにも、早急に新オフィスを立ち上げ、新たなスタートを切りたかったのです」。柔らかい口調でそう語るのは、同社の代表取締役社長である井出良明氏である。

社内体制の確立と同時進行で進められた移転先探し

防音室

パイオニアからの分社独立を発表したのは2014年9月のこと。とはいえ、事業部門の独立だけに、管理・間接部門である人事・総務や経理の人材はいない。そこで、パイオニアから管理系業務に精通した社員に転籍してもらった。そして、分社独立発表と同時に物件探しが始まることになる。つまり、社内体制の確立と、移転準備が同時進行するという慌ただしさだった。そのため、実際の候補物件探しに始まる移転プロジェクトは、最初から外部の移転専門家であるCBREに委託することになる。

候補となるエリアは、パイオニア本社がある新川崎に近い、都内の城南地区および、川崎、横浜近辺。従業員の現在の居住地から考えて、通勤の負担が極力少なくて済むようにとの配慮からだ。

そして最もこだわったのは、正社員250名、派遣・請負の社員を含めて300名にもなる従業員が、ワンフロアに入りきれるスペースを確保できることだった。「商品開発を生業とする当社では、社員間のコミュニケーションが非常に重要です。各部門が円滑に交流を深めるためには、階層が分かれるのではなく、以前のオフィスと同様、横移動でのコミュニケーションが可能であることが重要だと考えました」(井出社長)。

防音室

この条件に見合う唯一の物件として、横浜アイマークプレイスを紹介されたのは、2014年11月だった。ワンフロア1,000坪を超える物件は、この地域では数少ない。最寄り駅から徒歩5分の距離は、以前の3分の1。そしてなにより、心機一転の場所にふさわしい新築だったことも、大きな魅力だった。本契約ではないもののすぐさま物件を押さえ、12月には引き続きプロジェクトマネジメントを担うCBREと、移転に向けての打ち合わせが開始された。

技術者の執務空間を最大限に優先したオフィスづくり

オフィス

2015年3月には全社員に移転の方向性を通達し、総務・管理部門と技術部門の人員を核とした総勢十数名のメンバーによる正式な移転プロジェクトチームが始動することになる。そして8月には賃貸借契約を締結し、11月の移転に向けて急ピッチで作業が進められた。

オフィスづくりの最大の課題は、商品開発に必要な多くの試験設備の設置スペースをどう確保するかだった。以前のパイオニア本社には、国内最高クラスといえる試験設備が自社ビル内に整っていた。しかし、独立する以上はその設備を当てにすることは当然できない。そしてもう1つの課題が予算の制約だった。ファンドからの資本参加を得たとはいえ、移転のための予算が潤沢にあるわけではない。

限られたスペースと予算と期限の中で、メーカーとして社員が気持ちよく働ける環境をどう実現するかがキーポイントだった。「最も重視したのは、全社員の7割を占める技術者の執務環境です。当社には、事業部創設当初から掲げている“テクノロジー・リーダーシップ”というポリシーがあります。オンリーワン、プラスワンの商品を開発し、他社にないイノベイティブな商品で人々を驚かそうという理念であり、そのための投資を惜しんではいけません。その分、調整には時間がかかりましたが、多くの制約の中で、最善のものができたと自負しています」(井出社長)。

長方形の専有スペースは4区画に分かれており、一方の端には企画・営業・管理部門、エントランスや会議室のスペースを挟んで技術者がいる開発部門があり、その先には電波暗室や無響室などいくつもの実験設備が集められている。その大量の電力消費に対応するため、キュービクル式高圧受変電設備をオフィス内に設置しているほどだ。技術者用には、大きめの机や棚を新調し、1人当たりのスペースも管理部門スタッフの1.5倍の広さを用意した。もちろん、机は製品チームごとに島を作り、打ち合わせがしやすいように配慮している。さらに、オフィス内には簡単な打ち合わせができる、多くのミーティングスペースが設けられた。各スペースにはホワイトボードに加え大型ディスプレイが備えられている。設計図面などを、集まったメンバー全員が見られるようにするためだ。

以前はパイオニアの他部門と共有することが多かった会議室は、新オフィスでは6室を用意したほか大会議室まで設えたことで、会議がしやすくなったという。「こうしたスペースを作ったことで、以前の1,000坪弱の使用面積から1,067坪と広くなったにもかかわらず、執務スペースは若干、手狭になりました。このスペースに対応するため、引越前の書類や機材の廃棄は大変でした」(井出社長)。

その言葉通り、一部はPDF化したものの書類は85%削減することとし、引越用のダンボール箱で300箱程を破棄した。また、これまでは部署ごとに所有していた試作品や他社製品も共有するなどして大幅に削減した。これにより破棄した機器類はダンプカー10台分程にもなったという。

オフィス

こうして、プロジェクトチームが発足してから8ヶ月あまりの11月に、無事、移転が完了した。「事務作業は大変でしたが、プロジェクトマネージャーのアドバイスから早めにプロジェクトをスタートしたことで、短期間での本社構築が可能になりました。レイアウトが以前のオフィスに似ているせいか、違和感なく、初日の昼ごろには皆が新オフィスに馴染んでいました。前オフィスは研究棟だったため窓が少なかったのですが、今はみなとみらいの眺望が楽しめ、精神衛生上も良くなったと思います(笑)」(井出社長)。

テストスタジオ完備の新オフィスで2020年には株式上場を目指す

テストスタジオ

実は、今回の移転には、もう1つ大きな課題があった。それが音質テスト用のスタジオを、どうするかだった。プレーヤーやミキサーといった機器の開発には、実際に大音量の音を出してのテストが必要であり、そのためのスタジオが不可欠なのである。だが、一般のビルにスタジオを設えるには、大規模な防音設備を導入しなければならず、コストがかかる上に、天井高もかなり低くなってしまう。そのため、当初は車で20~30分かかってもいいから、近場の倉庫街で施設を構築しようと考えていたほどだ。だが、その心配は杞憂に終わった。運良くビルの1階にちょうど良い空室があったのである。しかも、幸いなことに同ビルは、1階と2階の間に免震設備が設置されているため、階高が高くさらに天井のコンクリート層が厚くなっている。下は地面、上は厚いコンクリートに加えて免震ゴムを設置するための空間があるため、必然的に防音効果が高く音は漏れにくい。このために低コストで、100dBの音量でも心配のいらない専用スタジオを完備することができたのだ。技術者にとって、開発した製品のテストをすぐに行えるメリットは計り知れない。

加えて、みなとみらい地区の取り決めでビルの1階は人のにぎわいを創出する用途が求められており、このためスタジオの周りに大きな企業ロゴや機器をディスプレイしたショールームを設置することとした。それにより宣伝効果はもちろん、社員にとっても誇らしい空間に仕上げることができたのである。

ショールーム

「当社は、独立時からの公約として、2020年にはDJ関連業界では初の株式上場を目標に掲げています。そのためにも、世界のClub文化を盛り上げるとともに、社員が一丸となって素晴らしい商品を開発し、業績を拡大していきたいと思います」。そう語る井出社長の表情には、自信がみなぎっていた。

プロジェクト詳細
企業名 Pioneer DJ株式会社
拠点部門 本社
所在地 神奈川県横浜市西区みなとみらい4-4-5
施設 横浜アイマークプレイス
移転時期 2015年11月
CBRE業務 本社移転に向けた物件紹介・仲介プロジェクトマネジメント

 

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は下記のフォームからお問い合わせください。

上記内容は BZ空間誌 2016年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

仲介賃貸オフィス・事務所の記事を検索

よく読まれている記事

関連記事

スケッチャーズジャパン合同会社

ケーススタディ

2017年6月20日

汐留のランドマークにショールームをオープン! 日本市場でのさらなる飛躍を目指す シューズブランドの本社兼ショールーム移転プロジェクト。 ア...

旅行業界 移転ケーススタディ Booking.com

ケーススタディ

2016年4月11日

新カスタマーセンターの構築で事業成長の促進を目指す。 オンライン宿泊予約サイト世界最大手「Booking.com」の日本法人、ブッキング・ド...

オリジン電気株式會社

ケーススタディ

2016年3月14日

長年居を構えた自社ビルからの移転を機に、 社員の意識改革も狙った6年越しの本社移転プロジェクト。 社員の安全と事業継続性の確保、また事業部...