業界トップブランドとして、ブランド価値の向上と
「目の健康」のための情報発信を狙った世界初のコンセプトストア。
使い捨てコンタクトレンズ「アキュビュー®」の世界初のコンセプトストアが、10月1日、東京・表参道にオープンした。アキュビュー®の製品情報だけでなく、コンタクトレンズの正しい使い方を啓発する役割も担ったアキュビュー®ブランドの旗艦店である。一般の販売店とは異なり、最新設備を備えたアミューズメント施設のような店舗は、どのようにして作られたのか。同店出店の監修を行ったジョンソン・エンド・ジョンソンにうかがった。
コンタクトレンズの正しい情報を発信する必要性
世界で最初に誕生した使い捨てコンタクトレンズ「アキュビュー®」の世界観を体験できる、世界初のコンセプトストア「アキュビュー® ストア表参道」が、10月1日、東京・表参道にオープンした。これは通常の販売店とは異なり、アキュビュー®に関する情報発信拠点の役割を担う旗艦店である。発売元であるジョンソン・エンド・ジョンソンの監修の下、医療コンサルティング会社のヘルストラストが運営する。
現在、日本のコンタクトレンズ市場の約8割を使い捨てコンタクトレンズが占めているという。その市場をリードしてきたのが、1991年に日本で発売開始されたアキュビュー®である。1995年には、今では主流になっている1日使い捨てタイプの「ワンデー アキュビュー®」が、世界に先駆けて日本で発売された。
アキュビュー® ストア表参道は、アキュビュー®の製品情報だけでなく、適切なコンタクトレンズ装用についての情報発信を目的に誕生した。その背景には、コンタクトレンズが日本では高度管理医療機器に分類されているにもかかわらず、近年はネット通販などにより適切に販売・使用されていないケースが増えている現状があるという。アキュビュー® ストア表参道を監修したジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ビジョンケア カンパニー コマーシャル・オペレーションズ&ストラテジー本部 戦略企画部シニアマネジャーの山本浩司氏はこう話す。
「コンタクトレンズは、医師の指示に基づいて購入・使用いただくことが大切です。ところが眼科での定期検査を受けずに購入・装用を続けるユーザーもおり、眼障害を訴える方が増えています。私たちは、毎日クリアな視界を提供することで、みなさまのクオリティ・オブ・ビジョンに貢献したいという強い思いを持っています。今一度、コンタクトレンズは視力補正のニーズに応える『高度管理医療機器』であり、目の健康のためには眼科での定期検査が重要であること、そして『適切な情報提供』を継続して発信していくことがメーカーの責務と考えました。3年ほど前から社内でもこのような認識を持ち、その具体的な施策を探っていたのです」。
この考えに賛同したのが、ヘルストラストだった。同社が新たにコンタクトレンズ販売店を立ち上げるにあたり、ジョンソン・エンド・ジョンソンが監修する形でコンセプトストアを作ることになったのである。
価格訴求しない店舗 ターゲットに相応しい立地とは
誰に向けて、どのような店を作るのか。ジョンソン・エンド・ジョンソンの担当者とヘルストラストが中心となり、店のコンセプト作りがスタートした。まず考えたのは、ターゲットである。ジョンソン・エンド・ジョンソンのビジョンケア カンパニーでは、コンタクトレンズの購入者を、「目の健康」への意識の高さなどから6つのカテゴリーに分類している。今回は、目の健康を最重要と捉える層、具体的には、価格や利便性よりも、正しい情報や新しい情報に価値を求め、またそういった情報を周りにも発信しようとする志向の高い20代~30代前半の女性をターゲットに設定した。
「店のコンセプトを検討するにあたっては、消費者インタビューを何度も実施しました。普段、コンタクトレンズを購入する際に不満に感じていることを洗い出したのですが、すると、詳しい説明を聞きたいけれども店舗スタッフが忙しそうだとか、落ち着いて座れる場所がない、といった消費者の声がたくさん聞かれたのです。それならばこのコンセプトストアでは、ユーザーの方々のニーズに合わせ、マッチしていない部分を解消し、納得してコンタクトレンズを選んでもらえる店舗にしよう、と方向性が定まりました」(山本氏)。店のコンセプトを議論するうち、消費者へ提供したい体験や情報ツールなどのアイデアが膨らんでいった。それらに必要なスペースを確保するため、店舗面積は当初想定していた坪数を超える160坪になったという。「通常のコンタクトレンズ販売店とは違って、アキュビュー® ストア表参道では当初から商品パッケージを大々的に陳列することは考えていませんでした。平均的なコンタクトレンズ販売店の坪数は20坪~30坪と聞いていますので、160坪は異例の広さと言えます」と山本氏は話す。
並行して、ターゲットにアプローチするのに相応しい場所の選定も進めていった。有力候補として期待されたのは、原宿表参道、銀座、丸の内、横浜などのエリアである。最終的に原宿の複合ビル「YMスクウェア原宿」3階への出店が決まった。2014年12月のことである。
出店にあたりマネジメントすべき業者の数に圧倒される
プロジェクトは、監修を担当するジョンソン・エンド・ジョンソン社内から選抜されたメンバーと、店舗運営を担うヘルストラストが連携を取りながら進められた。また、プロジェクトマネジメントを担当する外部パートナーとして、CBREを起用した。
ビジョンケア カンパニーにとって店舗出店に伴う監修は初めての経験であり、内装工事を含むプロジェクト進行は試行錯誤の連続だったという。「事前に詰め込める知識は詰め込んだものの、実際にプロジェクトが動き出すとその通りに進むものではありません。壁紙1つ決めるにも、どこからサンプルを取り寄せればいいか、どのようなクライテリアで相手先を絞り込めばいいのか、途方に暮れる状態になったのも事実です。特に、マネジメントすべきベンダーの数の多さに圧倒されました。最終的にCBREにプロジェクトマネジメントを依頼し窓口が1つに絞られたことで、スケジュールのコントロール面でも、また費用面でも、プロジェクトの『可視化』が進み、非常にやりやすくなりました」(山本氏)。
アメリカに本社を置くジョンソン・エンド・ジョンソンには、ブランド管理に厳しい規制が設けられており、時差のある本社とのやりとりにも気を使ったようだ。「当社としても世界初のコンセプトストアの監修だけに、アメリカ本社の関心も高く、様々なアイデアが寄せられました。アメリカ本社の意見も踏まえながら、オンタイムデリバリーでプロジェクトを進めていくのは非常にチャレンジングでした」と山本氏は振り返る。
ゆったりとくつろげる店内情報をセルフで引き出せる仕掛け
10月1日、ついにアキュビュー® ストア表参道がオープンした。店内にはアキュビュー®全商品のラインアップが展示されているほか、来店者がリラックスしてカウンセリングを受けられるよう、白とブルーを基調としたインテリアに心地よいソファが多く配置されている。目玉となるのは、日本初上陸となるジョンソン・エンド・ジョンソンの独自開発による瞳の分析シミュレーター「EYE DEFINE® STUDIO」である。分析結果をもとに、専門スタッフが1対1でカウンセリングするほか、「ワンデー アキュビュー® ディファイン® モイスト」の装着イメージをモニターで確認したり、その瞳を引き立てるアイメイクをバーチャルで体験できる。このほかにも、パッケージを載せるだけで製品特長がビジュアルイメージ付きで表示されるタッチ式のデジタルサイネージテーブル「Discover ACUVUE®」など、最新のコミュニケーションツールを設置し、来店者が興味ある情報をセルフで引き出せる仕掛けにもなっている。
このコンセプトストアが目指すのは、コンタクトレンズの正しい情報、すなわち「目の健康」に関する情報を発信することで、アキュビュー®のブランド価値を高めていくことである。必ずしも売上を伸ばすことが目標ではないが、効果測定についてはシビアに考えているという。すべての来店者にアンケートに答えてもらい、「この空間をどう感じたか」「アキュビュー®への親近感がどれくらい増減したか」といった項目への回答スコアにより、効果を測っていく。
「このコンセプトストアは、アメリカ本社はもとより、ジョンソン・エンド・ジョンソンがビジネスを行っている世界60ヶ国の仲間たちが注目しています。この店舗の展開次第では、他の国でもコンセプトストアを設置する可能性があるかもしれません」と山本氏。コンタクトレンズの適正使用のための啓発活動を継続することで、そのトップブランドとしての地位をより強固なものにしていくアキュビュー®。その情報発信拠点として、世界初のコンセプトストアにかかる期待は大きい。
プロジェクト詳細 | |
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企業名 | アキュビュー® ストア表参道 |
所在地 | 東京都渋谷区神宮前4-31-10 |
施設 | YMスクウェア原宿 |
移転時期 | 2015年10月 |
CBRE業務 | プロジェクトマネジメント |