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東京コカ・コーラボトリング株式会社

ケーススタディ

2013年1月22日

震災をきっかけに耐震性の優れたビルへ本社移転。
従業員の働き方を変える新しいワークスペースを実現。

コカ・コーラ商品の販売会社である東京コカ・コーラボトリングは、震災後、本社ビルの安全性確保を最重要課題とし、2012年9月、耐震性の優れたオフィスビルへ本社移転した。これを機に、フリーアドレス制の導入やペーパーレス化の推進など、従業員の働き方を変革する様々な施策を実施。新しいワークスタイルへの転換を実現した本社移転を取材した。

従業員の安全性確保のためBCPに強いビルに本社移転

東京コカ・コーラボトリングは、東京エリアの自動販売機や量販店向けに日本コカ・コーラの商品を提供する販売会社である。2012年9月、東京・芝浦にあった本社機能を、同じく芝浦にある大規模オフィスビル「シーバンスS館」に移転させた。

移転の引き金になったのは、昨年の東日本大震災だった。旧本社ビルは新築計画がもち上がっており、従業員の安全のためにも新耐震基準を満たしたビルへの移転が最重要課題となり、本格的に本社移転の準備をスタートさせた。

本社は、都内26営業所のヘッドクオーターとしての機能に加え、法人向け営業部隊も所属している。従業員は約400人。場所の選定にあたっては、営業活動がしやすいように、交通アクセスの良さを前提条件とした。ビルについては、高い耐震性を確保していることはもちろん、ワンフロアの広さも重視した。というのも、旧本社ビルではオフィスが多層階に分かれており、社内コミュニケーションが取りにくい環境だったからだ。移転プロジェクトを主導した取締役常務執行役員、管理統括本部長の弓削進志氏は次のように話す。「特に問題だったのは、調達・物流を管理するサプライチェーン部門と営業部門が離れていたために、製品の調達・物流計画と製品の展開をうまく連携させることができなかったことです。部門間のコミュニケーションを強化し、生産性を高めることは緊急の課題でした」。

これらの要件をもとに、品川や西新宿を含む複数のオフィスビルを検討した結果、旧本社ビルに近いシーバンスS館の2フロア(5・6階)への移転を決定。2012年4月、経営企画室、総務部、情報システム部、戦略調達部、法人事業部、財務管理部のスタッフから成るプロジェクトチームを立ち上げるとともに、移転先選定からワンストップで依頼していたシービーアールイー(CBRE)をプロジェクトマネジメントの外部スタッフとして迎え、5ヶ月後の9月の移転に向けて動き出した。

フリーアドレス制の導入で従業員の働き方を変革

移転のきっかけは耐震など安全性の確保だったが、同社は今回の移転を機に、従業員のワークスタイルの変革を狙った。その柱となった施策が、執務空間のオープンスペース化によるコミュニケーションの強化である。部門間の壁をなくして風通しを良くするとともに、部門ごとに長テーブルを置き、フリーアドレス制にした。固定席と固定電話を廃止する代わりに、従業員にはモバイルPCと携帯電話を支給し、無線ネットワークを使ってどこでも好きな場所で仕事ができるようにした。「一部の部署を除き、一日が終了すると各自の書類を個人ロッカーにしまい、テーブルの上には何もない状態にして帰宅するというルールにしています。翌朝出社したら今日必要なものは何か、つまりその日にすべきことを考えることから始める。そういう働き方に変えてほしいと考えました」(弓削氏)。伝票や書類の多い経理部門などフリーアドレスにそぐわない部門は、例外的に固定席を設けた。

フリーアドレス制を導入するにあたり、プロジェクトチームでは、在席率の低い営業部門の席数を減らすことを考えていたが、役員の承認が得られなかったという。「旧本社ビルでは固定席と固定電話があり、ごく一般的な日本型のオフィスでした。働き方を変えるといっても、急激にやりすぎると弊害が出ると役員は心配したのです。いま考えればその通りで、調整しながら少しずつ変えていくべきだろうと思います」とプロジェクトメンバーの福島亨氏(管理統括本部総務部部長)は話す。

旧本社ビルでは会議室の数も不足していたため、新本社ではどこでも気軽に打ち合わせができる環境を整えた。執務スペースには可動式ホワイトボードを25枚配置し、自分たちのテーブルで会議をする際に使ったり、隣接する部門との間仕切りに使えるようにした。また、シャープのインフォメーションディスプレイ「BIG PAD」も導入し、パソコンにつなげば画面を映しながら打ち合わせができるようにしている。

窓際にはファミリーレストランのブースのようなスペースを多数設置。すべてのブースにモニターを設置することで、パソコンによるペーパーレスな打ち合わせを可能にした。食堂の代わりに設けたリフレッシュメントスペース(通称「コークステーション」)にもモニター付ファミレスブースを並べ、ランチで利用するほかにも、気軽にミーティングができるようになっている。

資本関係にあるコカ・コーラのアトランタ本社から役員が来日することも多いため、会議室には2台のスクリーンを設置することで、日本語と英語の二言語表記を可能にしている。また、役員会議室には同時通訳ブースを初めて導入して、海外からの来客にも万全の体制を整えた。

新たなワークスタイルの導入と同時に進めたのが、書類の大幅削減である。引越前には書類削減キャンペーンを4回にわたって実施し、法定保管文書以外の書類を50%削減。引越に際しては、各自が持ち運べる書類を段ボール箱1個に定め、残りは倉庫での保管、もしくは電子ファイル化を推し進めた。また、それまで50台あった複合機やプリンターを17台にまで減らし、コピー枚数の削減によるペーパーレス化及びコスト削減も推進。こうした削減効果もあり、移転先のスペースを従来の約3分の2の広さに縮小した。「スペースは縮小しましたが、部門間の壁がないため狭さは感じません」と弓削氏は話す。他にも営業車両を60台から31台に減らし、その代わりにレンタカーやカーシェアリングを推進するなどして、大幅なコスト削減を実現した。

コカ・コーラの爽やかさを体現した新本社

新しいオフィスづくりにあたっては、東京コカ・コーラボトリングらしさを体現すべく、ブランディングにも徹底してこだわった。「移転に先立ち、先進的だと評判の他社のオフィスを見学したところ、会社ごとに社風や特徴をうまくコンセプトに落とし込んでいて、とても参考になりました。当社の場合は、コカ・コーラの爽やかさと、日本で最初にコカ・コーラを導入した会社であるという誇りを表現したいと考えました」と弓削氏は話す。

受付周辺は、コカ・コーラの楽しさを表現したミニショールームの様相を呈している。まず目に入るのは、日本で最初にコカ・コーラの販売を始めた創業者である故高梨仁三郎氏の銅像。そして奥には、旧式の自販機とタッチパネル式最新型自販機が展示されているほか、その時期のキャンペーンディスプレイも施されている。

同社にとって創業者である高梨氏の存在は大きく、旧本社の時と同様、新本社でも氏の役員室を再現し、従業員が自由に出入りできるようにしている。アトランタ本社にも、コカ・コーラの発展に貢献した人物の部屋がそのまま残されてあるそうで、同社の象徴的な人物をブランディングにうまく活用している様子がうかがえる。

また、移転に際して机や椅子などの什器を一新。明るい色の什器を導入することで、爽やかな雰囲気を演出している。

従業員への丁寧な説明で移転への理解を得る

フリーアドレス制や書類の大幅削減など、新しいワークスタイルへの変革を前面に押し出した新本社のコンセプトに対して、「そうはいっても、従来のように固定席で仕事をするのが日本人には向いているのでは」といった異論も社内にはあった。それでも大きな混乱もなく移転を完了できたのは、従業員への丁寧な説明を繰り返した結果だと弓削氏は振り返る。当初は課長級以上の管理職だけを集めて説明会を行う予定だったが、全従業員への説明会へと変更。引越を目前に控えた8月上旬、3時間の説明会を4回に分けて開催した。「働き方を変えるには、やり慣れた方法を捨てなければなりません。それだけでは、とても受け入れられるものではないでしょう。捨てる代わりにこんなことができるようになる、こんなメリットがある、とあわせて伝えるようにして、理解を得ていきました」(弓削氏)。

新本社に移転して2ヶ月以上が経つが、「大きなクレームは出ておらず、おおむね満足してもらえていると思います」と弓削氏は話す。移転後に来社した社外取締役や株主からの評判も良く、日本のコカ・コーラシステムの中核を担う会社としての存在感も示せているようだ。

オフィスがオープンスペース化したことで、職場に緊張感が生まれるとともに、ファミレスブースでは頻繁にミーティングが行われるなど、社内コミュニケーションが活性化されているのを感じるという。「オープンなので、誰と誰がミーティングをしているのかや、誰がリーダーなのかがよく見えるようになりました。異なる部署同士が集まって打ち合わせしているのを見ると、まさにそれが狙いだったのでうれしいですね」。

元々家族的な雰囲気があり、風通しの良い社風だったという同社。移転を機に新しいワークスタイルを取り入れ、さらなるコミュニケーションの強化を図るなかで、その効果をどのように業績に結びつけていくのか。今後の発展が期待される。

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2012年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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