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清水建設株式会社 「Shimz Creative Field」|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ

2021年11月4日

清水建設株式会社 「Shimz Creative Field ®」

清水建設は2021年5月、本社の17階の設計本部フロアの全面リニューアルを完了し、アフターコロナを見据えたオフィス空間に進化させた。最大の特徴は、リモートワーク下における社員の一体感醸成とパフォーマンス向上を支えるデジタル技術の存在だ。感染症対策と働き方改革のサポートに最新技術を活用し、ニューノーマル時代の新しいオフィスを実現した同社の挑戦を取材した。

アフターコロナを見据え本社フロアを大改修。
デジタル技術でコミュニケーションを醸成し、一体感のある“ワークフィールド”を実現。

清水建設株式会社 「Shimz Creative Field ®」

多様な働き方を価値創造につなげる、本社一部フロアの全面リニューアル

コロナ禍をきっかけに、人々の働き方は大きく変わった。半ば強制的にリモートワークが導入されたことで、個人にとっては時間と場所を選ばない働き方の選択肢が増え、その一方で、対面コミュニケーションの減少による生産性の低下、メンバーの孤立、姿が見えないことによるマネジメントの難しさなど、新たな課題も生じている。

多くの企業がニューノーマル時代の新たなオフィスのあり方を模索する中、清水建設が今年5月に完了した、本社の一部フロアの全面改修はそのソリューションの一つに挙げられるだろう。この改修で同社は、本社をコミュニケーションの核として、サテライトオフィスや自宅などで勤務する社員をデジタル技術で結び、あたかも一つのオフィスにいるような感覚で一体感を持って仕事ができる大きな“仮想”空間を作り出した。個人の多様な働き方を創造力に変えるという意味を込めて、「Shimz Creative Field®」と名づけられた新オフィス。デジタル技術でつながった広がりのある執務空間を、ワークプレイスならぬ「ワークフィールド」と捉えている点がユニークである。

今回のオフィス改修の狙いはもう一つある。本社ビルで実践したことを、アフターコロナにおけるオフィス提案活動に活かしていくことだ。その実証実験の場として選ばれたのが、設計本部が入居する4フロアのうちの1フロア、本社17階である。その理由について、同社設計本部長 専務執行役員の大西正修氏は次のように話す。「設計部隊にとって、リモートワーク中心の環境でクリエイティビティをどう発揮するかは大きな課題でした。自分たちの職場を価値創造の場にする狙いはもちろん、オフィス提案の説得力を高めるためにも、まずは自分たちが実践してみることが大切だと考えました」。

次からは、同社設計部門がコロナ禍前から抱えていたオフィスの課題、さらにアフターコロナを見据えた改修までの経緯とその内容を詳しくみていこう。

部署を超えた専門家同士の連携と働きがいの向上が課題だった

清水建設株式会社 「Shimz Creative Field ®」

同社の設計本部には850人が所属し、4フロアに分かれて仕事をしている。担当案件は首都圏に限らず全国に広がっており、「最近はプロジェクトが大型化している」と大西氏。プロジェクトの遂行には、意匠設計、構造設計、機械・電気設計など各部署の担当者が密に連携する必要があるが、専門領域の高度化を重視した縦割り組織のため、部署を超えたチームワークに難があったという。大西氏は、「従来のレイアウトは部署ごとに分かれていたので、部署を超えて人が集まるにはミーティングルームの予約が要り、気軽に集まれない状況でした。横串の連携をどう高めていくかは課題でした」と話す。

一方、全社的には働き方改革を通じて「働きがい」に注目が集まり、2019年の中期経営計画では「働きがい指数」の数値目標が設定された。「設計本部でも、自分が好きで選んだ設計の道でやりがいを感じ、社員が自律的に働く環境づくりの必要性を感じていました」と大西氏は振り返る。

そのような中、昨年4月にコロナ禍における第1回目の緊急事態宣言が発令され、出社率が1割程度に減少。その後、3割程度まで戻ったものの、突然リモートワーク中心の働き方に移行したことで、同社でもコミュニケーション不足による生産性の低下や、マネジメントの難しさに直面したという。その後、9月に会社が健康経営を宣言したのを機に、フリーアドレス化やサテライトオフィスの増設などを通して、自分たちに合った多様な働き方を実現していこうという気運が全社的に高まっていったという。そして10月、本社を実証実験の場としたニューノーマル時代のオフィスづくりが正式にスタートし、翌年5月のGWを期限とする17階設計本部のオフィスリニューアル(対象人員は約300人)が進められていったのである。

位置情報システムの活用で、フリーアドレスにおける課題を解決

清水建設株式会社 「Shimz Creative Field ®」

設計本部が目指したのは、「異なる専門領域の社員が気軽に意見交換ができ、試行錯誤のなかで最適解を探し出せるような場づくりです」と、プロジェクトの推進を指揮した同設計本部 副本部長 プロポーザル・ソリューション推進室長 執行役員の藤本裕之氏は語る。従来のレイアウトは、真ん中のテーブルを囲むように部署ごとのユニット(固定席)が配置されていたが、リニューアル後は横の連携を意識してフロア全体でフリーアドレスを導入し、打ち合わせ席を全席数の27%から54%へと倍増させた。また、多種多様なミーティングを誘発するための仕掛けとして、図面をみんなで確認できる大型モニタを設置した打ち合わせスペースを増やしたほか、通りすがりの人もふと足を止めて会話に加われるような円形テーブルを通路近くに配置している。

フリーアドレスの導入で懸念される「誰がどこにいるのか分からない」という問題に対しては、位置情報システムの活用で解決を図った。社員が持つタグを天井に設置されたセンサーが感知し、座席配置を示したフロアのレイアウト図に表示するシステムを導入。社員はパソコンやスマートフォン、タブレットからこのレイアウト図にアクセスして、上司や同僚の所在を確認できる。氏名を入力すれば所在を検索したり、直接電話をかけたりすることもできる。

さらに、このシステムは勤務地にかかわらず利用できるため、テレワーク中の人も、同じ空間にいるような感覚でオフィスの状況が把握できるという利点もある。相手の状況がリアルタイムで分かれば、タイミングを見計らって気軽にコミュニケーションすることもできる。藤本氏は、「所在を示すだけなら、映像ほどリアルではないので社員の抵抗感も少ないようです。働く場所も時間も自由に選べる“ワークフィールド”の一体感を醸成するのに、大いに役立っています」と話す。

オフィスの利用状況や対面コミュニケーション量を分析し、働き方改革をサポート

清水建設株式会社 「Shimz Creative Field ®」

この位置情報システムは、働き方改革のサポートツールとしても様々な形での活用が期待される。まず、これを使ってオフィス内の利用状況を分析し、ワークプレイスの改善につなげられるのが一つ。例えば、ある用途のスペースの利用率が高い場合、利用したい時に利用できない機会損失が起きている可能性があるため、「同様のスペースをもっと増やそう」といったフィードバックに活かせる。二つ目に、対面コミュニケーションの量を分析することで、社員が自身の働き方を振り返り、より自律的な働き方へのセルフマネジメント支援に使える。例えば、コミュニケーションに使った時間は業務時間の何割か、部署や職位を超えたコミュニケーションだったのかが可視化されるため、「自分は同じ部署の人としか話してないな」などと、エビデンスに基づき自分のコミュニケーションの実態を見つめ直すことができるのだ。そして三つ目に、万が一、新型コロナウイルスの感染者が出た場合には、濃厚接触者を瞬時に割り出すこともできる。

その他、館内設備の制御にも位置情報システムが使われていて、同社が開発した建物オペレーティングシステム「DX-Core」と連動させることで、より高度な設備制御が可能となっている。従来は室温や室内のCO2濃度をセンサーが感知して空調・照明設備を制御する仕組みだったが、位置情報を活用し、室温・CO2濃度の変化に先んじて、人の密度で制御するフィードフォワード制御を追加することで、快適性・健康性・省エネ性をより向上させることが可能となった。

位置情報システムは、海外のスタートアップ企業のHaltian社とQuuppa社の技術を採用した。実は、社内でも独自の位置情報システムを開発していたが、「なかなか成果が出ていなかったので、今回はオフィス改修のスケジュールに間に合わせるために海外技術を使いました」と藤本氏。前出の海外技術を導入した理由は、「数十センチ単位の高精度測位ができること」。自社開発の「DX-Core」と組み合わせた設備制御サービス事業の国内展開も視野に入れている。

※個人情報保護ポリシーに基づき処理された資料

科学的根拠に基づく感染リスク評価手法と対策を、順天堂大学と共同開発

ハ清水建設株式会社 「Shimz Creative Field ®」

ニューノーマル時代のオフィスづくりで重視したことがもう一つある。安全でウェルネスな環境を実現することだ。あらかじめ感染リスク低減策を盛り込んだ建物づくり「Pandemic Ready」を推進するため、順天堂大学感染制御学 堀賢教授と「感染リスク・アセスメントツール」を共同開発した。これを用いて、医学的見地に基づき感染リスクを評価し、的確な対策を織り込んだ。

順天堂大学と同社は、2009年の新型インフルエンザのパンデミック以来、感染リスクを低減する病院内部の空間や施設運用のあり方について共同研究を進めてきた。今回の新型コロナウイルス感染拡大を受け、オフィス向けに「感染リスク・アセスメントツール」を策定した。これは、感染対策を①接触、②飛沫、③エアロゾル(マイクロ飛沫)、④空気の「四つの感染ルート」と、①運用、②建築・設備、③什器・備品の「三つの対策手法」を組み合わせて体系的・総合的に分類したもので、100項目以上で評価する。すぐに実現可能な運用も含めたソリューションを提示できるのが特徴だ。今年5月には、順天堂大学とマイクロ飛沫の挙動解明などを推進するため共同研究講座を立ち上げた。室内での浮遊状況やウイルス活性残存時間などを明らかにし、「感染リスク・アセスメントツール」に順次フィードバックしていく。また、今後のオフィス向け感染対策技術の開発や設計にも活かしていく予定だ。

まずは「自分たちで実践してみる」ことを目的に行われた今回のオフィスリニューアル。リニューアル後も、社員が自分たちで職場環境を良くしていくための活動として「17ジチカイ」を実践中だ。例を挙げると、リニューアルを機に設置した約100鉢の観葉植物を交代で世話する「いきものがかり」活動や、展示スペースの活用を検討したり、オフィスレイアウトを自分たちの使いやすいように改善したりする活動がある。「こうした自主活動を通して帰属意識を高めていってもらえれば」と、藤本氏は活動の狙いを話す。

本社17階のリニューアルと同時に、横浜と千葉にそれぞれ80席を有するサテライトオフィスを開設した。今夏には、社員の通勤経路に位置する主要駅前に4ヶ所のサテライトオフィスを構える予定で、本社を核とする「Shimz Creative Field」はまだまだ広がっていきそうだ。また、本社のリニューアルもこれで終わりではなく、使用感をフィードバックしながら、来年5月には設計本部4フロア全てに広げていく予定だという。

オフィスリニューアルを終えて、大西氏と藤本氏は、「新型コロナウイルス感染症が収まったら、ワクチンが行き渡ったとしても、以前のような出社率や働き方に戻るのかは疑問です。オフィスワークでもリモートワークでも、大事なことは健康でウェルネスな環境づくりです。我々はゼネコンとして、アフターコロナの働き方を模索する企業に対し、建築、空間、環境をトータルでサポートしてきたい」と抱負を語った。

ハ清水建設株式会社 「Shimz Creative Field ®」

プロジェクト概要

企業名 清水建設株式会社
施設 本社オフィス設計本部フロア他
所在地 東京都中央区京橋2-16-1
オープン 2021年5月
規模 本社オフィス17階・11階 約950坪 対象人員 約690人

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2021年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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