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第3回 アジア主要都市における 都市計画とサステナビリティ

オフィスビルと環境をテーマに取り上げた本特集記事の第1回、第2回では、改正省エネ法等の環境規制の内容や影響、事業用不動産における対策について解説した。今号では、アジア全域に視野を広げ、各都市の環境負荷低減に向けた様々な取り組みをご紹介する。近年、アジアでは、地球環境への負荷をできるだけ少なく、そして利用者に優しい形で建築・都市計画を進めていくグリーン・ビルディング(地球環境に優しい建物)に注目が集まっている。気候変動の抑制において建築物が担う役割を認識し、環境負荷を軽減するために、政府や民間セクターはどのような行動を起こしているのであろうか。 ※本稿は『Sustainability Asia issue1』CB RICHARD ELLIS( 2010年1月発行)より抜粋・和訳したものです。

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気候変動への都市政府の対応

中国、インド、日本(アジアにおいてエネルギー消費量が多い上位3ヵ国)は、建築物のエネルギー効率化の普及を目的とした政策や取り組みに着手しました。また、アジアの他の多くの国々でも、グリーン・ビルディング評価システムが徐々に導入されています。法制度化と産業主導の取り組み、居住者からの需要の増加、サステナブル(持続可能)であることのメリットに対する認識の高まり、そして社会的責任や環境への責務をより一層重視する企業の姿勢を背景に、アジアではグリーン・ビルディング業界が着実に拡大しています。しかし、グリーン・ビルディング革命がスタートしたとはいえ、その前途は依然として遼遠です。このような建物を一度建てたくらいでは、また建物などへ新装置を単純に組み込むだけでは、気候変動に歯止めをかけることにはなりません。

大きな効果をあげるには、より大々的なスケールで、環境に優しい、そして持続可能なデザイン・設計を展開する必要があります。"持続可能な開発"の原則に則り、個々の建物はもちろんのこと、都市計画や都市・地域社会のデザイン・建設が進められなければなりません。国家レベルでのグリーン・ビルディング・スタンダードの導入は、間違いなく、構築環境の持続可能性の向上への大きな一歩となります。

アジアにおいては、ゆっくりとしたペースながらも着実に、持続可能な開発が都市デザインに影響を与え、それを特徴付ける要素になっています。交通システムからエネルギー源、そして安全性の問題や環境問題に至るまで、あらゆる面に配慮した都市計画を通じて、都市化現象や気候変動の影響に対処し、将来の都市デザインに持続可能性を取り込んでいくやり方は、アジアの不動産セクターに対して広範囲にわたる影響を及ぼすものと予想されます。同様に、災害リスク管理戦略の強化のために都市政府が講じている様々な措置も、不動産セクターにとって大きな意味を持つでしょう。都市政府は、すでにアジア地域における気候変動の様々な影響に耐え得る、抵抗力のある都市づくりに努めています。

アジアが取り組む課題のスケール

オフィスビルの環境対策 第3回:図表1 アジアの都市と地方の人口推移と予測

ア ジアの都市計画立案者は現在、人類始まって以来最大規模の、農村部から都市部への人口移動という現象に取り組んでいます。アジアの各都市では、人口が増加 しており、それに伴い天然資源の枯渇、生態系の破壊、公害、社会的不公平の拡大、そして大規模な気候変動が引き起こされています。1950年当時、アジ ア・太平洋地域は、その大部分が田園地帯でした。人口14億人のうち都市部の居住者は2億3,200万人(比率にしてわずか17%)に過ぎませんでした。 しかし、国際連合の推定によれば、2030年にはアジア都市部の人口は27億人(人口全体49億人の55%)にまで膨れ上がると予想されています。これ は、2030年の都市部の人口が2005年対比で11億人以上増加することを意味しており、年平均4,400万人のペースで増えていく計算になります。 2015年以降アジアにおいて見られるであろう人口増加は全て、事実上都市部で発生し、2022年中頃までには都市部と農村部の間で人口逆転が起きる可能 性が高い状況にあります。

人口増加に伴い拡大するアジアの都市。その中には、1,000万人を超す人々が生活する「メガシティ」と呼ばれる 巨大都市に変貌しつつるところもあります。1950年当時、世界中を見渡してみてメガシティと言える場所は、ニューヨークと東京だけでした。しかし、メガ シティの数は1975年には4都市に増え、その内2都市はアジアでした。その後もメガシティの数は増え、2000年には18を記録(内10都市はアジア地 域)、2015年までには22に達する(同12都市)と予測されています。

オフィスビルの環境対策 第4回:図表2 地域別の開発総面積予測

ア ジアのメガシティは、人口そして経済活動の点で小国に匹敵する規模を有しています。一部には、合体して「メガリージョン」を形成し始める動きも見られ、そ れに伴いかつてないほどの都市部への大規模な人口流入が生じ、都市部に定住する人が増えています。日本のメガリージョン(東京・名古屋・大阪・京都・神 戸)の人口は、2015年までに約6,000万人へ増加すると見られています。一方、中国のメガリージョンである香港・深せん・広州の人口は、2010年 には1億2,000万人に達すると予想されています。

アジアの都市の急速な拡大は、社会面そして環境面に大きなインパクトを及ぼしていま す。開発途上国の場合、メガシティのほとんどは、基礎的なインフラ設備の普及を上回るペースで拡大しています。この結果、抑制のきかないスプロール現象が 起きています。オブザーバーの中には、多くの都市は持続不可能な状態にあり、経済的機会の継続的な提供、適切なインフラ設備および住宅の開発・整備、そし て健康的な居住環境の維持という点で根本的な問題に直面している、と考える向きもあります。

図表3:アジアのメガシティ(2007年)

ク リントン気候イニシアティブ(CCI)によれば、世界全体のエネルギー消費量の約75%は都市部が占めており、温室効果ガス排出のうち最大75%は都市活 動に起因しているということです。世界全体で見た場合、エネルギー消費量の大部分は、都市部または都市が機能した直接の結果に起因しています。東アジア は、温室効果ガス排出量が急速に増加している地域です。化石燃料燃焼に由来する世界全体の排出量に占める東アジア地域の排出割合は、2000年当時は推定 18.7%でした。しかし、この先2025年までの間に中国だけで排出量の118%の増加が見込まれており、アジア全域そして世界の他の地域においても排 出量の急増が予測されています。専門家の間では、「温室効果ガス排出量、少なくとも、エネルギー消費に起因する排出(全体の約60%を占める)に注目した 場合、中国はすでに2007年に米国を追い抜いている」との見方が大勢を占めています。

アジアの都市部は温室効果ガスを発生させている地域 ですが、これは裏を返せば、温室効果ガス発生を抑制するために必要な戦略の実施、中でも炭素を主成分とする燃料への依存度を低下させるにあたり、アジアの 都市部が担う役割が重要であることを意味してもいます。また、アジアの都市部では、大部分の人々が、気候変動の影響に起因するリスクに晒されています。

アジアの環境都市(エコ‐シティ)

20世紀末頃、①都市化による環境への負荷の低減、②都市部における天然資源消費の最小化、そして③温室効果ガスの削減や様々な公害発生の抑制を図 る解決策として、「環境都市(エコ-シティ)」というコンセプトが提唱されるようになりました。環境都市は、都市デザイン、都市計画、公共輸送システム、 エネルギーそして建物の建設・運営にあたり、モダンで環境にやさしいアプローチで臨むという考えに立脚しています。広範囲にわたる公共交通システム整備と 自家用車利用の抑制/二酸化炭素排出量の削減の一挙両得を狙った、歩行者専用エリアが特徴の公共交通志向型都市開発(TOD)と、住居用途、工業用途そし て商業用途に使える総合的空間が中心的な柱となります。最適な建物密度に基づいて公共交通システムの有効性が確保される一方で、ヒートアイランド現象を回 避するための工夫が講じられます。環境都市で利用されるのは、発電用風力タービン、太陽電池パネルそしてバイオガスなどの再生可能エネルギーです。将来的 には大規模パーク・システム、コンクリートからの放熱(郊外や農村部に比べて都市部の気温が数度高いのは、このためと言われています)を相殺するために自 然通風装置を備えた緑豊富なオープン・スペースなども、環境都市の一般的な特徴の一つになるでしょう。スプロール現象を抑えるための「スマート・グロー ス」という手法、環境負荷をなるべく減らして生物多様性にも配慮した建物(グリーン・ビルディング)の建設や、環境配慮技術を効果的に採用した既存建物ス トックの改修(グリーン・レトロフィッティング)を奨励するインセンティブも、環境都市に共通して見られる特徴です。

都市政府レベ ルにおいては、官僚主義が複雑にレイヤー化していないこと、また多くのイニシアティブの規模そしてその中身が実際に即したものであることから、取り組みは かなりの成功を収めています。実際、アジアでは既に、多くの都市政府が環境都市の計画・建設に着手しており、程度に差はあるものの、成果を挙げています。

絶 え間なく続く容赦ない都市化の流れに対する持続可能なソリューションとして、環境都市というコンセプトが大々的に注目されたにもかかわらず、2009年中 国では、計画の内容やその進め方に対して懸念の声が上がり、これを受けて幾つかの環境都市計画が中止または規模が縮小されました。野心的な計画でなくとも ポジティブなインパクトを与えることはできると批評家は述べます。こうした点を念頭に置いて、アジアの他の多くの都市政府は、一度限りのプロジェクト・ ベースで、またはアーバン・リニューアル(都市再生)に関する包括的プログラムの一環として、持続可能な都市計画プロジェクトの実行を開始しました。こう した都市政府は、持続可能なソリューションをレトロフィットし、環境へのインパクトの低減を目指しています。香港、上海、北京を含むアジアの幾つかの都市 は、クリントン気候イニシアティブC40に調印しています。このイニシアティブC40は、環境配慮プロダクツの購入コンソーシアムの創設や成功を収めたイ ニシアティブのベストプラクティスの共有を通じて、温室効果ガス排出量の削減にあたる既存都市に対する支援を目的としています。

次なるステップ:気候変動に対して抵抗力のある都市

アジアの都市政府が環境都市の建設や持続可能な都市開発政策の追求に動く中、一歩先を進み、災害管理や災害への備えといった課題への対応に加え、ど のようにすれば気候変動に対する脆弱性を低減することができるのか、その方法について検討し始めた都市政府の姿も見受けられます。こうした政府が目指す究 極的な目的は、いわゆる「気候変動に対して抵抗力のある都市」の構築にあります。気候変動への対応というと、当初は温室効果ガス排出量の削減を目的とした 国家レベルまたは地域レベルでの計画が中心でした。しかしながら、これは部分的な解決策にしかなりません。気候変動に起因する、または気候変動によって深 刻化する洪水、津波または台風などの壊滅的な災害は、長期にわたり都市の成長・発展に大々的な影響を及ぼす可能性があります。したがって、現在、適切な都 市管理や都市計画には、気候変動に対する適応策として災害リスク管理が求められています。

このような新たなアプローチが求められる のは、地球温暖化により極端な天候異変が起きる頻度が増していると考えられるからです。気候変動と異常気象との間の関連性は完全に証明されたわけではあり ませんが、この数年を振り返ってみると、アジア地域は以前に比べて頻繁に激しい洪水、高潮、サイクロン、台風、旱魃そして塩水浸入に見舞われるようになっ ています。

2008年5月にミャンマーを直撃したサイクロンでは、8万5,000人が命を落とし、何百万もの人々が住居を失い、食糧生産に 深刻な影響が生じました。この数ヵ月後には、日本が鉄砲水に見舞われ、約50万人の住民が避難を余儀なくされました。2009年9月には、フィリピン・マ ニラが40年超ぶりの大洪水に直面しました。これは、集中豪雨がもたらしたもので、マニラ市の80%超が浸水被害にあい、数百人の住民が亡くなり、数十万 人以上の住民が強制退去を強いられました。アジアの場合、ほとんどのメガシティは、気候変動の影響に脆弱な沿岸地域に位置しており、地震や気候変動に起因 する自然災害の危険に晒されています。中でも、地震や津波は、インフラ設備や建物の質が悪く、住宅が密集している地域にとっては、大きなリスク要因になっ ています。世界の人口ランキングでトップ10にランクされる都市のうち、東京・横浜、ソウル・仁川(インチョン)、大阪・神戸・京都、メトロマニラ(マニ ラ首都圏)、そしてジャカルタについては、地震のリスクはいずれも中程度から高程度と言われています。さらに、その大半は沿岸部に位置しており、高潮や津 波の被害を受けやすい状態にあります。したがって、これらの都市の場合、気候変動の影響や災害リスク管理の問題へ対処するにあたっては2方向アプローチが 奨励されます。

まずは、前述したように、持続可能な都市環境の構築、建物のエネルギー効率の向上、非化石燃料の利用、アーバン・スプロール現象の最小化、広範囲にわたる公共交通網、廃棄物の再利用、水およびその他資源の節減を通じて温室効果ガス排出量の削減を図ることが求められます。

さ らに、これに並行して、各都市は、気候変動の影響や気候変動が原因で増加傾向にある極端な事象や災害の頻度や強度を最小限に抑え管理するために、適応計画 を展開することが必要です。2008年に世界銀行が発表した『気候変動に強い都市-気候変動の影響に強い都市づくりと自然災害の危機管理を強化するための 手引書』の中では、気候変動の影響への対応や災害リスク管理にあたり各都市が採用できる措置について触れられていますが、そうした多くは既にアジアの都市 政府により実行されています。

結論

アジアにおいて、都市化の進展や建物密集地域の拡大は、向こう数十年間にペースの大幅な加速が見込まれます。これに伴い、アジアの都市は、気候変動やそれが原因で発生頻度や強度が増している自然災害の影響をより一層受けやすくなると予想されます。

都 市部が被る影響の程度は、気候変動の影響に強い都市づくりのために都市政府が採用する措置の成否に大きく左右されることになるでしょう。気候変動が喫緊の 脅威であると理解している都市政府は既に行動を起こしており、都市管理戦略に適応対策を盛り込んでいます。まだ行動を起こしていない都市政府は、迅速に行 動し、気候変動に関連した災害に対して脆弱な都市部の問題点を洗い出し特定する必要があります。

将来、都市の成長・発展に際しては、コンパクトで効率性の高い、歩行者にやさしい都市づくりに重点が置かれるようになるでしょう。自家用車の利用、郊外生活そして廉価な燃料を前提とした20世紀の都市開発戦略は、持続可能な都市計画へ変えていく必要があると思われます。

建 築物も、気候変動に関する重要な適応対策の一つです。グリーン・ビルディングに関する条例や基準、そして奨励措置の実施を通じて、アジアの都市政府は既 に、資源効率が高く、温室効果ガス排出量の削減に繋がるグリーン・ビルディングの設計・建設を求めています。政府の新たな政策において気候変動をはじめと する環境問題への対応が謳われる中、アジアの不動産業界はこの先、迅速に行動し、新たな建物の建設や既存建物の改修の際には、グリーン・ビルディングの慣 習を採用しなければならないでしょう。

建物の建設・運営は今後一層重要になりますが、建物が建設されるロケーションも同時に重要に なってくると思われます。海水面が上昇し、洪水が以前に比べて定期的に起きるようになっている状況下では、低平地は開発には適さないでしょう。低平地以外 のエリアも、土壌浸食や森林火災、その他自然災害の影響を受ける可能性、または、気候変動の影響を低減するために、護岸や堤防、その他新たなインフラの整 備が必要になる可能性は否定できません。

気候変動の影響に対する都市の抵抗力を確保するために、都市政府は、気候変動の影響の管理、災害リ スク管理そして持続可能な開発を一体化する必要があります。エネルギー効率の向上、化石燃料に対する依存度の低下、持続可能な都市計画、公共輸送システ ム、廃棄物再利用そして天然資源の有効利用に関連した気候変動緩和計画は、気候変動や極端な気象事象(高潮や台風などは、今後、発生頻度・強度ともに増 加・拡大が予想されます)がもたらす影響への対応を目的とした、新たなインフラ建設などの適応対策と併せて実施していく必要があるでしょう。

気候変動の影響をコントロールするための各都市政府の戦略

制度的仕組みの創設

将来に向けた都市計画に気候変動管理や災害管理を適切に組み入れていくには、マルチステークホルダー委員会のような調整メカニズムが必要になります。シンガポールでは、このような協議的なマルチステークホルダー・アプローチを通じて、国家気候変動戦略を策定しています。副首相が議長を務める閣僚レベルの気候変動委員会が、リーダーシップをとって進めています。

気候変動戦略の策定

気候変動戦略の策定は、都市政府が緩和対策・適応対策を通じて気候変動の影響を低減するにあたり、そのロードマップの基礎となります。東京都気候変動対策方針には、東京都が向こう10年間に実施を計画している気候変動緩和戦略の基本的枠組みが詳しく説明されています。

国民意識の喚起

都市政府は、気候変動に対する国民の意識を高める政策を実行し、国民の意識を行動やライフスタイルの選択に結びつけることが必要です。フィリピン・ダグパン市では、市の災害調整評議会のテクニカル・ワーキング・グループが地域社会と連携し、市民生活における安全文化の創造にあたっています。高リスク地域に生活している市民は、地震や洪水、そして津波や高潮のリスクに晒されている度合いを評価し、自分たちの置かれた脆弱な状態に対する理解を深めています。

温室効果ガス排出に関する報告

都市は、正しい政策を計画できるように、自らが排出している温室効果ガスについて知る必要があります。フィリピン・マカティ市は2004年から、輸送や廃棄物・エネルギー消費に起因する温室効果ガス排出を測定し始めました。緩和対策の実行にあたり、この種の情報は主要な排出源の特定のために利用されます。

災害リスクを管理するシステム構築

災害リスク管理にあたり、都市は、気候災害だけでなくその他の自然災害を念頭に置いて、一体化したアプローチで臨む必要があります。ベトナムの首都ハノイでは、国家災害管理部門が、災害軽減・災害管理を目的とした2001~2020年国家戦略・行動プランを策定しています。

エネルギー・セクターに起因する影響の低減

アプローチとしては、発電効率の向上、クリーン・エネルギーの利用、官民パートナーシップの構築、発電コストの引き下げが挙げられます。シンガポールでは、ガス火力発電所においてコンバインドサイクル方式のガス・タービンを採用した結果、同国全体で見た場合、発電効率は2000年の37%から2004年には44%へ上昇。また、二酸化炭素排出量を大幅に減らすことができました。

輸送セクターに起因する影響の低減

輸送に起因する二酸化炭素排出量は、クリーン燃料やグリーン・ビークル(環境に優しい乗り物)の普及、効率が良くクリーンな公共輸送の構築、燃料効率の改善、そして都市部における自動車利用の制限を通じて減らすことが可能です。ジャカルタでは、一部の主要道路には「スリー・イン・ワン」規制が導入されており、朝夕のラッシュアワー時には乗員が3名以上の車以外は通行が認められません。このような規制に加えて、バス専用レーンにおける低公害バスを利用した高速・高頻度運行の交通システムが実施されています。

構築環境に起因する影響の低減

都市は、エネルギー効率の良い建物の設計を普及させ、エネルギー効率の高い技術や保全慣行を採用していく必要があります。シンガポールでは、政府が、グリーン・マーク構想の下、建設業界に対してグリーン・ビルディングを求めており、刺激策や規制を併用し、デベロッパー、設計者そして建築業者の環境意識の向上にあたっています。シンガポール以外のアジアの国々においても、それぞれ独自のグリーン・ビルディングに関する条例・規制を策定・導入しており、このような行動は、国により程度は異なりますが、成果を挙げています。

都市緑地の拡大

都市林には、気候変動を和らげる効果があり、アジアにおける多くの都市計画活動のコア構成要素となっています。マカティ市は、民間セクターやNGOとの連携の下、1990年代初頭以降、大気汚染の軽減を主要目的とした植林政策を実施しています。当局の推定によれば、追加緑化は一年間に約25,000キログラムCO2eqの抑制につながっています。

インフラ投資

都市は、状況の変化に迅速に適応し、自然災害や気候変動の影響を軽減するうえで必要なインフラへ投資していかなければなりません。マニラ首都圏ナボタス市当局は、洪水に対して脆弱な地域に護岸を建設し、ポンプ場を設置するプログラムに着手しました。この計画は、洪水被害の減少や地域の経済再活性化に貢献しています。

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース

中国

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:中国
クリーン・エネルギーにおける米国のパートナー

2009年11月、バラク・オバマ米国大統領と胡錦涛中国国家主席は、クリーン・エネルギーに関する米中協力強化策を発表しました。これに含まれるのは、ビルや産業施設、消費家電のエネルギー効率改善に向けた両国の協力を図る、新たな米中エネルギー効率行動計画の実施です。米中両国政府は民間企業と協力し、エネルギー効率の良い建築基準や評価システムを開発するとともに産業エネルギー効率を評価し、産業施設のエネルギー効率検査員を育成し、エネルギー効率の良い消費者製品の試験手順と測定基準を統一し、省エネラベリング制度における最善の業務慣行を共有し、新設の米中エネルギー効率フォーラムを毎年召集しています。

北京では補助金の提案

北京の地方政府は省エネルギー各プロジェクトに補助金を出す提案をしています。省エネルギー率15~25%で実施されるプロジェクトには、投資総額の20%に相当する補助金が支給されます。省エネルギー率が25%を超えるプロジェクトには投資総額の30%相当が支給されます。

香港

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:香港

グリーン・ビルディング協会発足

地域市場におけるグリーン・ビルディングの需要喚起を政府や専門家組織が模索する中で、2009年11月に香港グリーン・ビルディング協会が発足しました。同協会は商圏環境保護協会、BEAM協会、プロフェッショナル・グリーン・ビルディング協議会、建築産業評議会の代表者で構成される独立機関です。同協会は発足イベント直後に、以前のグリーン・ビルディング表示施策「BEAM」の新バージョンである「BEAM Plus」を発表しました。この新施策は同協会のビル認定基準を上げるもので、2010年4月に発効します。BEAM Plusは、新築ビルの周辺地域に及ぼす影響やエネルギー効率、炭素排出により重点を置きます。エネルギー使用量がウェートの35%を占めると同時に、換気への影響は25%を占めます。炭素排出量とピーク時の電気需要が削減可能な開発は、高い評価を受けるでしょう。

エネルギー効率法は懸案に

香港の邱騰華環境長官は、エネルギー効率の改善を建造物に義務づける法律の実施を2009年10月に発表しました。香港を珠江デルタの模範的なグリーン・シティにしたいという政府の意向を邱騰華長官は表明しています。これより先に邱騰華長官が行った発表によれば、面積10,000平方メートル超の新しい政府系建造物の全てにおいて、公認の「グリーン」認定計画に準じた環境パフォーマンスの認定を受けることが義務づけられます。これらの建造物はLEEDあるいはBEAMの少なくとも2番目に高い認定基準への適合が求められる予定です。

開発者への新たな要求

香港市区重建局は2009年6月、エネルギーと水の節約、環境に優しい建材使用、緑地の増加、再生可能廃棄物施設の追加、建築廃棄物および環境公害の削減を再開発プロジェクトに参画する開発者に義務づけることを発表しました。これらの諸原則は、開発者が確実に従うように入札条件として明記されます。この措置によって建築費に2~3%が上乗せされますが、同局では、初期の付帯費用として割に合うものと見込んでいます。

韓国

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:韓国
韓国が描く「持続可能な成長」の青写真

2009年7月6日、韓国の国家戦略研究所は、環境に焦点を当てた新たな経済成長枠組みのもとに2013年までに840億米ドルの出費を求める「緑色成長(Green Growth)」の国家5ヵ年計画を公表しました。この出費によって年間GDPが4%上がり、180万人もの雇用が創出されると政府は見込んでいます。環境に優しい建築認定制度の採択、エネルギー効率の良い評定制度の普及、緑の豊かな家屋、オフィスビル、校舎の増築といった諸施策を含むこの5ヵ年計画には、グリーン・ビルディングが対象に入っています。

グリーン・ビルディングを奨励するソウル

ソウル市では、グリーン・ビルディングの奨励を目的とした様々な施策が明らかにされています。同市はグリーン・ビルディングの不動産取得税、登録税、地方税を認定の度合いに応じて5~20%引き下げました。さらに同市はグリーン・ビルディングの認定料を助成するとともに、グリーン・ビルディングのエネルギー効率基準を満たす住宅用建造物に対して容積率10%のインセンティブを提供しています。

INGタワーはグリーン改修が完了

2009年5月、韓国の既存のAグレード指定オフィスビルに対する話題性の高いグリーン改修プロジェクトが初めて完了しました。2009年第3四半期にKB不動産信託がING REIMから買収したINGタワーは、同国で初めて米国グリーン・ビルディング協会のLEED-EB認定を取得しました。この建造物のエレベータと換気設備には大掛かりな修復・改良工事が施され、エネルギー使用量を20~35%削減するとともに年間の炭素排出量も350トン削減します。

台湾

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:台湾
LEEDゴールド取得を目指すTAIPEI 101

TAIPEI 101を所有する台北ファイナンシャル・センター・コーポレーション(TFCC)は、完成すれば世界一高いグリーン・ビルディングになるとプロジェクトパートナーが言う18ヵ月の修復作業をSL+Aインターナショナル・アジア社、シーメンス、エコテック・インターナショナル社に委託しました。ビル所有者たちは、米国グリーン・ビルディング協会の既存建物用LEEDに準じたゴールドレベル、すなわち維持管理基準の認定を目指す予定です。TFCCはこのプロジェクトに6千万ニュー台湾ドル(180万米ドル)を投資予定であり、その省エネルギー効果は年間で2千万ニュー台湾ドル分に相当すると考えられます。

シンガポール

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:シンガポール
ゼロエネルギービルの完成

シンガポール初の改修済ゼロエネルギービル(ZEB)が2009年10月のシンガポール・グリーン・ビルディング週間に完成しました。グリーン・ビルディングのデザインと技術で全面改修したものとしてはZEBが東南アジア初の建造物、とシンガポール建設局は謳っています。3階建て校舎を改造したZEBは教室とオフィスを収容した、グリーン・ビルディング技術の試験施設です。ZEBのデザインは、それに匹敵する従来型建造物をエネルギー効率において40~50%上回ると推測され、年間の需要量を満たす約207,000kWhを太陽電池パネルによって産出する見込みです。

フィリピン

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:フィリピン
評定システムまもなく実施へ

フィリピン・グリーン・ビルディング協会は、グリーン・ビルディング評定制度の実施を2009年8月に発表しました。フィリピンの民間セクターは同国独自のグリーン・ビルディング評定制度となるBERDE(生態系に即応する優秀なデザインの建造物)というシステムを開発中です。最大手開発企業10社を含む国内の建設業界の約15%が、BERDEを2009年内の試験運用時に使うことを約束しています。

インド

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:インド
SEZのエネルギー効率

インド政府は2009年7月、産業用および非産業用特別経済区域(SEZ)のエネルギー効率改善を目的とした草案指針を明らかにしました。この草案によれば、SEZ内の建造物は太陽光発電システムの導入、産業用の自動車使用削減、徒歩と自転車使用の奨励、空地のうち75%の景観美化によって、エネルギー保全建築基準への適合が求められます。またインド・グリーン・ビルディング協会(IGBC)は、各都市全体に緑化評定システムを開発するプロジェクトも発表しています。この評定の目的は、エネルギーや水の節約、汚染抑制といった国家の優先事項を満たすためのグリーン・ビルディング基準に、都市の様々な種類の建造物を適合させることです。

ベトナム

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:ベトナム
VGBCがグリーン認証制度を導入

2009年6月、ベトナム・グリーン・ビルディング協会(VGBC)はベトナム全土の各プロジェクトにグリーン・ビルディング認証を与える試験的プロジェクトを開始しました。Lotusの名で知られるこのグリーン・ビルディング査定施策は、エネルギー、水、素材の節約、廃棄物と汚染の効果的管理と削減、利用者の健康促進、周辺地域に対する影響の各項目に基づき建造物を査定します。VGBCによれば、Lotusは国際的なシステムをベースとし、ベトナムの不動産事業にあわせて設けられました。現在ハノイに建設中の国連グリーンハウスは、Lotusのグリーン認証を取得した初のプロジェクトとなる予定です。

インドネシア

アジア各都市のグリーン・ビルディング関連ニュース:インドネシア
グリーンシップ・ガイドライン実施

2009年9月、グリーンシップが実施されました。これは同国が本格的グリーン・ビルディング評定ツールを設けるうえでの無期限のガイドラインで、2008年のインドネシア・グリーン・ビルディング協会発足を受けての動きです。同協会のラナ・ユスフ・ナシル設備・技能担当委員長によれば、グリーンシップは「第一歩」であり、環境に優しい建造物に関する望ましい特徴を挙げたリストを含む一方で、スコアや評点、標準的基準は含まれません。ジャカルタのファウジ・ボウォ知事の発言では、緑化基準考案に関する検討を2009年中にまとめ、2010年に実施する見込みです。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2010年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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