050-5447-7862

平日 9:00〜17:30

物件を探す

事業用不動産のあらゆるニーズを網羅するサービスと豊富な実績で、お客様の課題を解決する最適なソリューションをご提案いたします。

お役立ち情報

CBREが手掛けた、さまざまな業種・規模の移転事例のご紹介を始め、オフィスや物流拠点の移転に役立つ資料・情報をご提供しています。

マーケット情報

独自収集したデータを元に、不動産マーケットの市況を分析予測し、市場変化をいち早く捉え、ポイントをまとめた市場レポートを配信しています。
また、物件レポート、業界トレンド情報など、事業用不動産の最新情報、トレンドを配信しています。

CBREについて

事業用不動産の分野において、世界有数の企業であるCBRE。日本国内におけるその強み、拠点、会社概要をご紹介します。

ヘルプ

物件検索の使い方や、会員サービス、よくあるご質問など、当サイトをより便利にご利用いただくための情報をご紹介します。

仲介業者様はこちら

賃貸オフィス・事務所の記事

第8回 アジア不動産業界に おける廃棄物管理

急速な都市化と工業化の代償として、急増した廃棄物をどうするかは、今日アジアが直面している都市環境問題において重要な課題の一つです。本稿では、アジアの国や地域が実施している廃棄物管理とリサイクルの手法を検証し、主に建設やビル運営面において、どのような取り組みが行われているか見ていきます。

※本稿は『Sustainability Asia issue 3』CB RICHARD ELLIS(2011年2月発行)より抜粋・和訳したものです。

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

アジア諸国における廃棄物排出の現状と課題

アジアでは、過去20年間にわたる急速な産業の発展と開発により、これまでにない経済成長と繁栄がもたらされました。しかしながら、大部分の地域において、この進歩は生態系システムに大きな犠牲を強いています。急激な人口増加、都市化および個人消費の増大により、重大な環境問題が生じています。最も顕著な被害は、廃棄物排出の増加によるものと言えるでしょう。

廃棄物管理は今、アジアが直面する主要な都市環境問題の一つであり、膨大な廃棄物の処理に関連する課題は、急速に大きな問題へと発展しています。世界銀行が発行した「中国の廃棄物管理:問題点と勧告(2005年)」によれば、中国は2004年、米国を抜き、世界最大の廃棄物排出国となりました。中国の年間固形廃棄物の量は、2004年のおよそ1億9,000万トンから2030年までに4億8,000万トン以上に増え、150%増となることが予想されています。香港では、2010年1月に環境局局長の邱騰華氏が、香港特別行政区の現在の3つの埋立地は2014~2015年にほぼ満杯状態になることが予想され、"過剰な廃棄物による差し迫った惨事に直面"していると警告を発しました。

これ以外の地域でも、急速な都市化、商業化や人口の増加により、重大な廃棄物の処理問題が生じています。インドでは、町や都市の郊外における廃棄物投棄が無制限に拡大し、その結果深刻な環境問題と公衆衛生の問題が起きています。アジアで3番目に人口が多いインドネシアでも、同様の問題に直面しています。都市エリアでは、毎日約55,000トンの固形廃棄物が発生し、その内50~60%しか収集されておらず、多くの埋立地はごみ捨て場と化しています。実際に今日、多くのアジア諸国では、固形廃棄物の処理とは投棄を意味します。それは主に、公衆衛生や環境を改善する政治的意思や財源が不足していることが原因です。

アジア不動産業界に おける廃棄物管理

アジアが直面する廃棄物問題の甚大さを考えると、社会のすべての構成員は、官民問わず、廃棄物削減に役割を果たしていかなければならないことは明らかです。実際に、廃棄物管理は、地域のすべての主要な企業が、特に不動産運用において、しっかりと取り組んでいかなければならない問題です。企業責任において先駆的リーダーを目指す企業ならば、エネルギー消費によるCO2排出について単に報告するだけではもはや不十分です。事業活動から排出された固形廃棄物は、喫緊に取り組むべき問題です。そのため、この問題はビル建設と管理におけるサステナビリティ分野において、急速に重要度を増しています。

事業用ビルは、建設段階と日常的な業務の両方で大量の廃棄物を排出します。オフィスの主な廃棄物は、紙、パッケージおよび筆記用具などです。また、食べ物やケータリングのごみ、缶、ガラス、プラスチックの飲料ボトル、清掃用品や洗面所からの排水または汚水といった、オフィスのスタッフの日常的な活動から生じる廃棄物も含まれます。またオフィスでは、定期的に処分が必要な、不要となった機器や備品が大量に発生します。

2010年、香港の商業および産業廃棄物は、全廃棄物の22%を占めました。オフィスの廃棄物は、環境に影響を及ぼすだけでなく、不要・過剰な紙などに日常的に多額の資金が費やされることで、企業の収益にも影響します。

一方、建設の廃棄物は、建設、改修、解体のすべての過程から発生します。これには、鉄筋、断熱材、くぎ、電気配線、がれき、煉瓦、タイル、木、アスファルト、タールやタール副産物がありますが、これらは廃棄物フローにおいて、最も過少に報告されています。建設業界はアジアにおいて、天然資源を最も多く消費し、当然のことながら、廃棄物を最も多く排出している業界の一つです。この廃棄物のほとんどは、再生利用されることなく、埋立地に捨てられます。建設資材の非効率的な使い方は、環境に重大な影響を与え、限りある天然資源の枯渇を生み、埋立地において利用可能な限られたスペースは、さらに逼迫していくことになります。

廃棄物管理とリサイクル政策の先進国、シンガポール

建設による廃棄物は、ビルの設計段階で環境への配慮を盛り込み、実際の建設段階でより厳格な資源管理を実行することにより、最小限に抑えることができます。

アジアにおける廃棄物管理とリサイクルで最も進んだ政策を実現したのは、おそらくシンガポールでしょう。シンガポールは約500万人の住民を抱え、1平方キロメートル当たり7,022人と人口密度が高く、天然資源に乏しい国です。このため、廃棄物の効率的な回収・処理システムは、非常に重要になります。同国では、環境庁(NEA)の管轄のもとで、高度な廃棄物管理システムが確立されています。NEAは、同国における固形廃棄物処理施設と運用の立案、開発、管理全般を担当しています。

1970年代末まで、シンガポールは固形廃棄物を処理するため、島の周辺の多くの埋立地に依存していましたが、スペースの制限により、当局は別の処理方法を検討せざるを得ませんでした。焼却による廃棄物からのエネルギー回収は、廃棄物量の90%以上を削減でき、最もコスト効果の高い方法であることが判明しました。これにより、1978年、シンガポール初のWTE(廃棄物からのエネルギー回収)工場が開設されました。

同国の固形廃棄物処理インフラは現在、トゥアス、セノコ、トゥアス南部および沖合衛生埋立地セマカウにある4つのWTE工場から構成されます。シンガポール全体のリサイクル率は、2012年までに60%を達成することを目標に掲げ、2006年に51%、2007年に54%、2008年に56%まで向上しています。

シンガポールは、家庭および商業施設向けに、自発的なリサイクルプログラムを運用しています。リサイクルできる製品の保管にリサイクルバッグや容器が提供され、2週間に一度回収されます。また、廃棄物回収料金制度も実施しています。この業務は、公共廃棄物回収業者(PWC)に委託され、この島の9つの地域における指定された家庭および商業施設にサービスを提供しています。例えば、主に不燃物となる建設および解体廃棄物の場合、NEAは処理される廃棄物1トン当たり77シンガポールドル(57米国ドル)の料金を徴収しています。このシステムは、不動産開発業者が、リサイクルできる廃棄物の分別など、よりよい作業プロセスを通して廃棄物を削減することにより、コスト節約効果が上がるため、インセンティブとなっています。

シンガポール不動産業界における廃棄物管理

建設から発生する廃棄物がかなりの量であることが認識されたことから、廃棄物管理は現在、建築・建設庁(BCA)が管理するシンガポールのGreen Mark建築物認定スキームの重要なファクターとなっています。このスキームでは、廃棄物管理機能を採用する建築物にポイントが与えられます。例えば、空気輸送による廃棄物回収システム、2重シュート廃棄物処理システム、他にも、環境面で持続可能かつ、建設廃棄物を最小限にする建設手法や資材のリサイクルやその導入を奨励する等が挙げられます。

シンガポール政府により導入される、廃棄物管理に対する積極的かつ革新的なアプローチは、ライオンシティにおける多くの不動産開発業者や土地所有者に浸透しています。シンガポール最大の土地所有者の一つであるCity Developments Limited(CDL)は、1990年代後半以来、企業の社会的責任の取り組みの一環として、サステナブルなビジネス手法を導入し、グリーン・アウトリーチ・プログラムを推進してきました。また、この戦略の重要な要素に、廃棄物管理を位置づけています。

アジア不動産業界に おける廃棄物管理

CDLのCSR最高責任者であるEsther An氏は次のように語っています。「シンガポールにおける廃棄物管理の重大さを考えれば、シンガポールの主要な土地所有者として、当社は商業用地で発生する廃棄物を責任を持って管理し、当社の環境への取り組みに則って運用することが重要と考えています」。

2005年から、CDLはシンガポールにおける全事業用ビルのテナント向けに、紙のリサイクルプログラムを確立しました。すべての新入居テナントには「プロジェクト:エコオフィス」キットが配布され、テナントにリサイクルを奨励し、啓発するため、リサイクルコーナーを設け、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を促進しています。テナントの本プログラムへの参加率は、2005年の68%から、2009年には90%以上に上昇しました。CDLはリサイクル企業と協力し、使用済みの紙をリサイクルし、環境に配慮したオフィス環境を創るため、テナントとともに他の環境奉仕プログラムにも取り組んでいます。

シンガポールではリサイクルは自発的に進められていますので、さまざまな奉仕活動従事プログラムを通して、テナント間でリサイクルを啓発、奨励、促進するには時間と努力を要します。それでも、テナントの本プログラムへの参加率が高いことは、とても励みとなります」とAn氏は述べています。

シンガポールで初めて"BCA GreenMark Platinum Award"を獲得した、民間商業開発のシティ・スクエア・モールなど、多くのCDLの不動産は環境配慮型の機能を備えています。特に、廃棄物管理に関連するものでは、リサイクルのために、乾燥したごみと水気を含むごみを区別する2重シュートの空気輸送による廃棄物収集・処理システムがあります。

同社はまた、環境への影響と資材廃棄物を削減するため、サスティナブルな建設・設計方法を採用しています。プレハブおよびプレキャスト工法など、効率的な建設方法が採用され、開発においてできる限りリサイクル資材を活用しています。CDLの建設ビルのほとんどは現在、プレキャストまたはプレハブ工法が使用され、オフサイトでテストし、その後現場に運ばれ、体系的に組み立てられます。これにより、建設廃棄物を削減し、建築現場で発生する熱、騒音、汚染も少なくなります。

台北政府による廃棄物削減とリサイクル戦略

その他の地域でも、特に台湾の台北は、廃棄物管理とリサイクルの地域リーダーとして高く評価されています。台北市政府は、一般家庭と業界に対し、発生するごみの量により料金を徴収し、指定されたごみ袋で出さなければ回収しません。リサイクル可能な製品の分別が義務付けられており、ごみの収集サービスは1週間に2回程度、ごみ収集トラックが30種類以上の廃棄物を回収し、整理します。

この戦略により、同市は発生する廃棄物の量を削減し、廃棄物のリサイクル率を向上させることに成功しました。1997年、台北で発生する1人当たりのごみの量は、1日1.14キログラムと記録的な量に達していました。しかし 2008年末までに、0.52キログラムと半分以下になりました。

2008年、台湾の全体的なリサイクル率は約42%であり、米国、フランス、イギリスなどの主要な先進国の数値を上回っています。台湾では、固形廃棄物の主要な処理方法は焼却であり、埋立地での処理は、補助的な手段に過ぎません。同国の24の焼却炉はすべて、WTE(廃棄物からのエネルギー回収)タイプを使用し、ごみの焼却から発生した熱は電気に転換され、台湾電力に販売されています。

日本における自治体と民間企業の取り組み

日本は、廃棄物管理とリサイクルに関する立法において、アジアのベストプラクティスと言えるでしょう。日本は廃棄物および資源管理の統合的なアプローチを採用してきました。過去10年間にわたり、資源の効率性は向上し、自治体の廃棄物排出が少なくなり、埋立廃棄物は劇的に減少しました。

2000年に開始した政府の「循環型社会」の取り組みにより、数多くの新しい規制が生まれました。例えば、循環型社会形成推進基本法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、再生資源利用促進法、そして容器や包装、家電製品、建設資材、食料、車、環境配慮型製品の購入をターゲットとした特定の法律等があります。市民、NGO、民間企業の役割と責任に加えて、国や県、地方自治体の役割と責任が明確にされてきました。

東京の廃棄物は主に4つに分類されます。資源ごみ(例:古紙、ガラス瓶、缶、ペットボトル)、可燃ごみ(例:台所のごみ、木や草、紙くず)、不燃ごみ(例:陶磁器、金属)、粗大ごみ(例:家具、ふとん、粗大ごみ処理料金が必要な大型電化製品)です。家庭、建設現場のいずれも、資源ごみは、紙の場合72%、コンクリート99% 、木材80%(2006年現在)というように、高いリサイクル率を達成しています。

自治体の当局は、大規模事業所にリサイクル計画を提出させ、企業に古紙のリサイクルや廃棄物最小化プログラムを実施することを要求しています。法律により、容器や包装のリサイクルや、オフィスでの古紙のリサイクルを促進した結果、東京で排出された一般廃棄物の量は、1989 年の613万トンから 2005年には445万トンへ減少しました。コンクリートのごみの高いリサイクル率(2006年現在99%) は主に、建設および解体廃棄物の再資源化を定めた建設リサイクル法(2002年)の効果によるものと言えます。

日本の事業者による廃棄物管理およびリサイクルにおける優れた実績は、包括的な規制体制によるサポートで進展が可能であることを示しています。2010年7月、富士通グループは、全国371の全オフィス系事業所において、機密文書や一般の紙ごみ、産業廃棄物の、廃棄処分時の埋立・単純焼却をゼロにすることを達成したことを公表しました。

同社は、機密文書と一般古紙をセットで回収・処理する国内初の「全国ペーパーリサイクルシステム」を構築することにより、この問題に取り組みました。また産業廃棄物においては、OA機器類は自社のリサイクルセンターで処理し、その他の廃棄物も確実なリサイクルプロセスで処理しており、合わせて産業廃棄物のゼロエミッションを実現しました。

廃棄物処理では後れを取る都市、香港

香港はアジアで最も先進的都市の一つであるにも関わらず、廃棄物管理とリサイクル戦略の実施に関しては、あまり進歩していません。経済協力開発機構(OECD)がリリースした調査結果によれば、香港は2010年、645万トンのごみを排出しました。これは20年前の2倍以上に相当し、1人当たりの数字に換算すると、人口700万人の各々が、固形廃棄物921㎏を発生させたことになります。これは、建設廃棄物や有害廃棄物を除いた数値であり、香港は世界で最も無駄の多い場所という不名誉な称号が与えられてしまいました。埋立地に捨てられた廃棄物の半分は、200万世帯以上の家庭から発生し、2番目に大きな廃棄物発生源は商業・産業部門であり、約22%となっています。それ以外は建設および特殊廃棄物を合わせたものです。

排出されたごみのおよそ半分が埋立地で処分され、残りはリサイクルや他の手段により処理されています。埋立地に投棄するごみは、1人当たり1日で台湾の0.52kg、韓国の0.44kgと比較し、香港では1.28kgに達しています。1997年に市の最後の焼却炉が閉鎖された後、香港では、リサイクルの他に、埋立が唯一の廃棄物処理方法です。処分料金の徴収や製品責任スキームなど、廃棄物削減に重要となる対策はまだ実施されていませんが、2006年、建設廃棄物の埋立処理料金課金が実施され、この取り組みにより、埋立廃棄物が50%削減されました。環境保護署(PD)は、自発的な取り組みですが、企業で発生する廃棄物を削減・管理する方法を無料でアドバイスするプログラム、WasteWiseスキームを導入しました。

アジア不動産業界に おける廃棄物管理

香港の環境グループは、個人や事業者が過度の廃棄物の排出を控え、ごみの分別を推奨するために、政府が固形廃棄物の処分料金を徴収しなければならないと考えています。Friends of the Earth(HK)のディレクター、Edwin Lau氏は次のように語っています。

「これまで政府は一般の人々と民間部門に、廃棄物削減を奨励するために、主に自発的なスキームを実施してきました。しかしながら、法的な規制はほとんど存在しないため、その結果、香港は台湾や韓国などアジアの他国に後れを取っています。同時に、廃棄物の山は蓄積し続けているのです」。

長年、香港において、廃棄物管理とリサイクルの法律の整備を求める活動をしてきたFriends of the Earthは、政府は「生産者責任」などの廃棄物回避戦略に重点を置き、廃棄物の料金徴収の実施、埋立禁止の義務付け、ユーザーフレンドリーかつ包括的なリサイクルシステムの導入を行うべきであると述べています。

Lau氏は、企業部門は特に不動産運用において、廃棄物管理に重要な役割を担っていると考えます。「不動産開発業者と土地所有者は、建設および解体の廃棄物を削減する低廃棄物アプローチにより、建設を行うべきです」と彼は言っています。「また、テナントが廃棄物の分別とリサイクルをしやすいように、各フロアとビルの中央ごみ処理エリアにごみの分別施設を置く場所を指定するべきです」。

Friends of the Earthは、不動産所有者が、テナントを対象とした、廃棄物削減およびリサイクルガイドラインを確立することを推奨しています。特に多くの場合、環境へのダメージが最も大きい電子電気廃棄物についてガイドラインを作成し、すべての廃棄物を回収し、政府認定のリサイクル会社に引き渡すようにすべきです。廃棄物の料金徴収の法律も鍵となります。Lau氏はこう語っています。「業界のガイドラインを設定することもできますが、これは法律による強制より効果が少ないでしょう。企業が排出する廃棄物に対し、処分料金を支払わなければならないことを知れば、廃棄物を慎重に削減することによって、料金を抑えたいと思うはずです」 。

One Island Eas(t 港島東中心)のケース

香港は、日本やシンガポール、台湾などの例に示される、廃棄物管理とリサイクルに関して後れを取っているため、不動産開発業者や香港特別行政区の一部の事業者グループが、これをリードする責任を担ってきました。香港の大手不動産開発業者のSwire Propertiesは、テナント、顧客、建設請負者に対し、構内や建設地で多様な廃棄物管理プログラムを実施することにより、廃棄物を管理し、削減するようサポートしています。同社は設計や資材選定プロセスにおいて慎重に考慮し、また建設中は請負者と密接に協力し、廃棄物を削減しています。

新しいプロジェクトでは、3次元のダイナミックな設計モデリングソフトウェア、ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)を採用しています。BIMは設計の不具合を検知し、これにより、建設中発生する廃棄物の量を最小限にします。超高層ビルのOne Island Eas(t 港島東中心)の建設では、当該プロジェクトに関する3,000以上の不具合が発見され、250㎥の廃棄物の発生を回避しました。また、このシステムを使用することにより、プロジェクト完了後、すべての関連設計図や文書を電子形式で不動産管理チームに転送することができ、紙の消費を大幅に削減することもできました。

同社は廃棄物削減において建設請負者と密接に協力し、建設前に廃棄物管理計画を提出することを求めています。建設中、請負者は再生利用に適した物を分別し、政府の規制に沿って、それ以外のすべての廃棄物を処分しなければなりません。業界平均水準の70~80%と比較して、One Island East建設地では、約99%の解体廃棄物が再利用・リサイクルされました。請負者が義務を果たすように、同社は各プロジェクトで、独立した環境コンサルタントによる定期的な監査を実施しています。

開発事業者、管理会社、テナントが協力し廃棄物を削減

Swire Propertiesの技術サービスおよびサステナビリティチームは、テナント、ポートフォリオ・マネージャー、ビル管理チームと緊密に協力し、すべてのオフィスビルとモールにおいて、廃棄物管理プログラムを開発・実施しています。同社は請負者による廃棄物の分別プロセスをサポートするため、テナントにリサイクル容器または色別の袋を配布しています。廃棄物が中央回収室に運ばれると、請負者はリサイクルできるものを、紙、プラスチック、缶などに分類し、その後、これらの廃棄物は指定されたリサイクルセンターに送られます。

これまで数年間にわたり、同社はテナントと協力し、使用済みの調理用油、生ごみ、電子電気廃棄物や蛍光灯のリサイクルなど、さまざまな廃棄物管理プログラムを率先して進めてきました。Swire Propertiesは現在、すべてのオフィスとモールについて、回収・処分・リサイクルされたすべての固形廃棄物に関して報告書を公表しており、今年から同社のホテルについても報告する予定です。ビル管理チームは定期的に廃棄物分別手順を監視しています。

Swire Propertiesの環境マネージャーのAmie Lai氏は次のように語っています。

「アジアの固形廃棄物の急増と香港の埋立地の限られた容量を考えると、廃棄物管理は、香港の喫緊の環境課題の一つです。私たちは、地域の廃棄物を削減するための包括的な削減・リサイクル制度を積極的にサポートしていきます」。Lai氏は、リサイクルのための廃棄物の分別と処理には、スペースの利用と作業プロセスの周到な計画が必要であるため、同社の主な課題の一つは、テナントに廃棄物リサイクルを日常的な業務の一環とするよう意識を高め、説得することだと言います。テナントは多くの場合、リサイクル容器や関連設備を設置する構内のスペース不足に関する懸念を表しています。今後、同社はテナントにおける分別とリサイクルの意識向上をさらに推進していくことを、大きな目標に掲げています

香港HSBCが展開する先進の廃棄物管理策

HSBCは、香港において、主要な不動産所有者かつ事業者であり、廃棄物管理を戦略的な優先事項として位置付けています。同社のアプローチは主に4つの領域で展開されています。再生可能またはリサイクルできる製品の使用、廃棄物の最小化またはリサイクル、環境に配慮した形での廃棄物処理、そして環境上適正な手法を採用するサプライヤーや請負者との提携です。同社は消費と廃棄物を削減するために、紙、缶/缶詰、プラスチックボトル、新聞/段ボール、さらにガラス瓶やポリスチレンなど、オフィス機器や使用済み製品をリサイクルしています。また、古いプリンター、コピー機、スキャナー、ファックス機に代わって、多機能複合機を使用する、マネージド・プリントサービスを開始しました。さらに、有機廃棄物処理システム、GoMixerを試験的に運用し、有機的な台所のごみを有機肥料に転換する新しい技術を採用しました。

アジア不動産業界に おける廃棄物管理

香港HSBCのオペレーション&環境サービスシニアマネージャーのBarnabas Leung氏は次のように語っています。

「私たちは、"トップダウン"と"ボトムアップ"の両方のアプローチをとっています。経営陣は廃棄物削減目標を設定し、システムを確立し、取り組みに投資しています。同時に、"グリーン・アンバサダー"として自発的な活動を奨励することによって、従業員の意識を向上させ、環境に関連する活動を計画し、徐々に影響の輪を拡大しています」

同社は、従業員がオフィスのさまざまな廃棄物を適切に処理する方法を理解するうえで役立つ、社内廃棄物リサイクルガイドを作成しました。また、オフィスの中央廃棄物管理プログラムを実施し、従業員のデスクにある個別のごみ箱をなくし、中央廃棄物回収ポイントを設置しています。

Leung氏は次のように語っています。

「サービス業者と連携することは重要です。私たちは、ビル施設管理会社や清掃請負業者と協力し、廃棄物の適正な処理を行っています」。サービス業者は、作業に適していることを保証するため、HSBCの資格審査リスク管理プロセスで合格しなければ、選定されません。サービス業者との契約には、環境に関する条項や条件が含まれます。サービス業者が実施するすべてのリサイクルおよび廃棄物管理手順を同社が終始一貫して監視することは不可能ですが、廃棄物管理およびリサイクルサービス会社に対し、ランダムの抜き打ち検査を実施しており、HSBCに報告データを提出させています。

アジアの環境マネジメントにおける企業の責任

2011年現在、オフィスでの廃棄物ゼロを達成可能とする製品、技術、プロセス、組織は十分に確立されています。しかし、個人またはオフィスレベルで、廃棄物を最小限にし、再利用を奨励するために、実行できることはたくさんありますが、企業の購買戦略に、幅広い環境マネジメント方針の一環として取り込まなければならない場合があります。環境配慮型の物資調達、あるいは一部または全部がリサイクル材料から作られたオフィス製品を購入することによって、オフィスからの廃棄材料市場は活性化し、オフィスのリサイクルスキームは発展するでしょう。

アジアのすべての国は、廃棄物管理とリサイクルの重要性を確かに認識していますが、規制の基準と実施状況はマーケットによって大きく異なります。日本、韓国、シンガポール、台湾などの国は、アジアの他の国よりかなり進歩しています。このような違いにより、特定の市場で分別された廃棄物が実際にリサイクルされているか、あるいは再び一緒にされ、埋立地に捨てられているのか不明なため、多くの事業者にある種の混乱が生じています。シンガポールでは、このプロセスが透明化されており、簡単に追跡・管理できますが、特に東南アジアなどの他の市場では、文書記録を追跡したり、分別された廃棄物が実際にリサイクルされているかを確認したりする方法はありません。

しかしながら、アジアで増大する廃棄物の社会的、財政的、環境的な影響が悪化し続ける中で、職場や建設プロセス中に発生する廃棄物は、政策立案者からますます注目を集めることでしょう。アジア各地域の異なる状況下で効果的に実施することが課題になりますが、実際、廃棄物管理の階層制「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の重要性は、地域全体で徐々に認識されつつあります。

多くのマーケットにおいて、オフィスと建設の廃棄物の適正な管理とリサイクルは、自発的なものとされ、企業の社会的責任とサステナビリティへの取り組みの一環として、企業が推進していますが、法的な規制も間近に迫っています。今後数年間に、シンガポールや日本のような国々は引き続き、規制の枠組みを強化し、特に中国やインドなどの他の国は、それに追いつき始めるでしょう。後れを取りたくない企業は、事業を展開する市場で廃棄物管理とリサイクルの法律に関する最新情報を入手し、オフィスにおいて、できる限り廃棄物ゼロを達成するように、今まさに取り組んでいかなくてはなりません。

Sustainability Asia Issue3

Sustainability Asia Issue3

本稿の原文( 英文)が掲載されている『Sustainability Asia issue 3』は、こちらからダウンロードできます。

Sustainability Asia Issue3(英語版)
Sustainability Asia Issue3(日本語抜粋版)

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

上記内容は オフィスジャパン誌 2011年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

記事を探す

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。
ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は右記のフォームからお問い合わせください。

物件相談フォーム