仮想通貨で金融の未来を変える。
ネットで世界とつながりながら、チームの一体感を醸成できるオフィスをつくりました。
QUOINE株式会社
社長室長
紺野 勝弥氏
会社の急成長にスペースが追いつかない 4つのサテライトオフィスでしのぐ
QUOINE(コイン)は、ブロックチェーンテクノロジーを基盤とした次世代の金融サービスを提供するグローバルフィンテック企業です。「すべての人に届く金融サービスを提供する」をミッションに掲げ、仮想通貨取引プラットフォーム「Liquid by Quoine(リキッド)」を開発・運営しています。創業は2014年、仮想通貨に可能性を感じた当社CEO栢森加里矢とCPOマリオ・ゴメス・ロサダが出会い、シンガポールで事業を始めました。栢森はソフトバンクグループでアジア営業や投資マネジメントに従事した人間。一方、マリオはクレディ・スイスで日本CIOおよびアジア債券IT責任者を務めた金融のプロです。当時、金融の知識や経験に裏打ちされた仮想通貨取引所が存在しないことを知り、「自分たちなら仮想通貨を金融ビジネスに昇華できる」と確信したのが創業の理由と聞いています。
日本での事業は、株主の方のマンションの一室をお借りして始めたのがスタートです。その後、2016年7月からは野村不動産の賃貸オフィスビル「PMO平河町」のワンフロア約60坪を借りました。初めは広く快適に使っていましたが、仮想通貨のマーケットの拡大に伴い会社も急成長し、国内勤務の社員だけで50人ほどに増え、オフィスが手狭になりました。移転先を探す間にも人員は増え続けたので、周辺4ヶ所にサテライトオフィスを設けてしのいだほどです。ただでさえ狭い空間に、エンジニアの要望を取り入れて個室を設置したため、オフィスが一層狭くなってしまいました。
平河町を選んだのは、最寄りの永田町駅と赤坂見附駅に複数の路線が通っていて、どこへ行くにもアクセスが良かったからです。社員の大半は、エンジニアをはじめ、送金作業を行うオペレーション部門や総務など内勤ですが、社長や役員は外回りがメイン。特に立ち上げの段階では、パートナー企業を募り、マーケットを作っていかなければならないため、外回りの人たちが移動しやすい立地を重視したと言えます。
金融ベンチャーとしての立地選択 オフィス環境は一体感醸成を重視
日本での出来高が増えてきたため、2017年11月に日本に本社を構え、続いて2018年6月に、現在入居する京橋エドグランの19階にオフィスを移転しました。このビルを選んだのは、東京駅から徒歩5分、しかも京橋駅直結の利便性が大きな要因ですが、他にも理由があります。渋谷や六本木に本社を構えるベンチャー企業は多いのですが、私たちはそれをしたくなかったのです。なぜなら、私たちは仮想通貨のテクノロジーを駆使して金融の未来を変えていきたい、そのために金融会社として成長していける立地にこだわりたかったからです。ただし、丸の内や大手町では賃料が高すぎます。同じような空気感を持ちつつ手頃な場所を探していたところ、このビルを見つけたというわけです。内見で眺望の素晴らしさに感動し、即決しました。
オフィス面積は、ワンフロアの半区画で410坪。実はこの半分の広さでも十分かと思いましたが、これまでの成長スピードを考えればすぐ一杯になると予想し、当初から広めに借りることにしました。 2018年10月末現在で社員数はおよそ110人。最大で140人まで大丈夫と思っていますので、まだ多少の余裕があります。広めに借りたぶん、ソファを置いたフリースペースやカフェテリアを設置するなど、社員がリラックスしながら働ける環境を整えました。カフェテリアでは月に一度、会社がケータリングを呼んでチームランチを行うほか、プレミアムフライデーは社員がカフェテリアで一杯楽しむ日になっています。社員数が増えるにつれ、顔と名前が一致しなくなってきているので、いろんな人と話す機会を設けることでチームビルディングに活かすことが狙いです。
プレゼンスペースには特にこだわりました。会社のミッションやビジョンを共有するための全社会議や、社員の家族を会社に呼ぶイベントのほか、新サービスを立ち上げる際の記者発表会もそこで行っています。また、仮想通貨業界では、スタートアップ企業が独自の仮想通貨を発行して資金を集めるICO(イニシャル・コイン・オファリング)という仕組みがありますが、仮想通貨を発行する企業と投資家が交流して意見交換するミートアップの場としても活用してもらっています。社内にこうしたスペースがあることで、日本の社員が海外のプロジェクトにも興味を持つ絶好の機会になっています。
今後の事業拡大を狙うのは モバイルが普及したエマージング市場
現在、東京本社をはじめ、シンガポール、ベトナム、フィリピンなど世界に7拠点を展開しています。社員数はグローバルで約330人。約70人だった昨年10月に比べると、1年で4~5倍に増えています。ベトナムのオフィスも東京本社と同じタイミングで移転しました。私たちは特にオフィスのグローバルスタンダードを設けているわけではなく、オフィスづくりは各拠点に任せています。ベトナムでは、「リキッド」というブランドにちなみ、流体を意識したデザインのデスクを採用したようです。東京本社よりも若い社員が多いベトナムらしく、先進的なデザインのオフィスになったのではないかと思います。
今後の展開としては、仮想通貨事業の展開地域を広げていきたいと考えています。仮想通貨の最大の利点は、世界中どこでも誰にでも安く送金できること、そして、銀行口座を持たない人でも、スマートフォンを財布代わりにすれば仮想通貨のサービスを受けられることです。そう考えると、仮想通貨を使った金融サービスは、日本よりもむしろ海外で、特にモバイルが普及しているエマージング市場に適していると言えます。まずはアメリカやフィリピンなど、仮想通貨事業のライセンスを取得して事業を拡大していきたい主要な国々では、オフィスを構えて人材を配置し、各国当局としっかりコミュニケーションを取りながらやっていくことになると思います。
極端な話、ライセンスが必要なければ、世界のどこか1ヶ所にオフィスを構え、あとは自宅で作業するエンジニアたちがネットで有機的につながればビジネスは可能です。しかし、実際にはそうもいきません。対面のほうが現地当局との調整はスムーズですし、社内のチームビルディングや一体感の醸成のためにもオフィスは必要です。実はコインチェック事件の後、ユーザーに「仮想通貨はあなたにとってどのような商品ですか」と質問したことがありました。すると4,000人近くから回答があり、「可能性」「未来」「価値」など仮想通貨に未来を感じられる言葉をいただいたのです。このオフィスには、それらの言葉を壁にデザインした一角があります。ユーザーも私たちのプロダクトや会社を支持してくださっている、私たちが進む方向は間違っていない――そうした想いでつながれるのも、オフィスを構えるメリットかもしれません。