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暴力団排除条例をふまえた企業の対応

暴力団排除条例の施行の背景

平成19年6月に内閣府より発出された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(以下「政府指針」)において、「暴力団の不透明化や資金獲得活動の巧妙化を踏まえると、暴力団排除意識の高い企業であったとしても、暴力団関係企業等と知らずに結果的に経済取引を行ってしまう可能性があることから、反社会的勢力との関係遮断のための取組みをより一層推進する必要がある」として、暴力団等の反社会的勢力との関係遮断を強化する必要性が説かれている。

従来、暴力団は、不当要求や企業恐喝等の暴力・組織・凶暴性を背景とした手法を通じて企業との接点を持ち、企業から資金や資産を提供させるという態様が主流であった。つまり、違法行為を前提とするアプローチにより、企業対象暴力が行われてきたと言える。

しかし、現在、暴力団の経済活動の手法は大きく変質しており、彼らは、株式市場への投資、第三者割当増資に応じて実質的経営権を掌握して会社を乗っ取ったり、通常の商取引を装って企業と取引したり、無関係な第三者を装って資金調達や事業提携のアドバイザーや仲介者として企業活動に介入し、匿名組合や投資事業組合などを組成して、海外を経由させるなどして出資者が分らない形で犯罪により収奪した資金を洗浄する(マネー・ロンダリング)など巧みな金融スキームも駆使するなどしており、いわば、合法行為を前提として、契約当事者の自由意思によるという形で、自分たちの経済活動を正当化し、活動資金を獲得していると言える。

このように、暴力団を中核とする反社会的勢力の不透明化・巧妙化が進展する中で、彼らの活動を(好むと好まざるにかかわらず)結果的に支えているのが実は「企業や市民」であり、ますますその資金の流れを断ち切ることが急務となっている。そのような中、事業者や市民にも相応の義務を課すことにより、一体となって反社会的勢力を排除するために、昨年4月の福岡県を皮切りに全国で暴力団排除条例(以下「暴排条例」)が施行され、本年10月の東京都・沖縄県をもって、全ての都道府県で暴排条例が施行されることになったのである。

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暴力団排除条例の意義と対策

1.社会的責任から法的責任へ(暴力団対策に関するパラダイムシフト)

これまで、企業の社会的責任(道義的責任)・広義のコンプライアンス上の課題として暴力団排除(反社会的勢力排除)が語られてきたが、暴排条例が「条例」として制定されている以上、当該地域においては法的拘束力を有するのであり、企業にとっては、暴力団排除の取り組みが、正に、社会的責任から法的責任(法令遵守そのもの)へと転換したことを意味する。

2.暴力団排除条例の特徴とその対策

暴排条例は、「社会対暴力団」という構図を前提としており、当該地域社会で事業活動を行なう事業者に対しても、暴力団の活動を助長するような行為や利益(便宜)供与を禁止している。

そして、暴力団と継続的に取引をしたり、暴力団に利益を供与したり、親密な関係を持つことは、当該企業(個人)自体がいわゆる「共生者」や「親密交際者」のレッテルを貼られかねないことを十分認識しておく必要がある。条例に基づく企業名公表処分が下されるような事態になれば、公共事業はもちろん、対民間企業においても、そのような企業との取引を排除することが考えられる。

実際、平成23年9月現在、福岡県警から福岡県に通報された20事業者が暴力団関連企業であるとして、会社・団体名、代表者名、住所、理由が公表されている。その理由として、指定暴力団傘下の組織幹部と「密接な関係を有し、又は社会的に非難される関係を有しているとき」に該当する事実を確認したとか、実質経営者が指定暴力団組織の幹部であることを確認した等となっており、このような形で、実名公表されてしまうことのダメージは非常に大きいといわざるを得ない。

さらに注意すべきは、公表までいかなくても、そのような風評が立つだけでも(例え、それが事実とは異なっているものであっても)同様のリスクを惹起しかねないのが現実である。単に「法令を遵守する」との考え方だけでは十分でなく、そのような厳しい社会の監視の目に耐えうるだけの取組みレベル、説明責任が求められているのである。

また、地域性による若干の相違はあるものの、事業者に対して、努力義務の形ではあっても、契約時の義務として、相手方が暴力団かどうかの確認努力義務、契約書面へ相手方が暴力団等に該当した場合の無催告解除条項(いわゆる暴力団排除条項(以下「排除条項」))の整備、そして、契約解除実施の努力義務まで規定している点が特筆される。

さらには、不動産事業者に対しては、不動産を譲渡等しようとする者に対して、対象物件が暴力団事務所の用に供されることがないかの用法確認(努力義務)、事務所利用目的の場合の譲渡・工事禁止、契約時の事務所利用禁止や用法違反時の契約解除条項の整備(努力義務)を規定しているなど、特別の言及がなされている点にも注意が必要である。

暴力団排除条例の適用事例と企業が対応すべきこと

1.暴力団排除条例の適用事例

(1)大阪府の事例

暴力団の組織運営に利用されると認識しながらマイクロバスを貸したとして、大阪府警捜査4課は、府暴力団排除条例にもとづき、府内のレンタカー会社の営業所長と山口組幹部に府公安委員会名で指導書を交付したと発表している。営業所長が、山口組の会合に同社のマイクロバスを貸与したという事例であり、その目的を知っていたことによって条例違反として指導の対象になったものと思われる。

(2)広島県の事例

広島県警捜査4課は、広島県内の50代の医師男性に対し、マンション一室を貸している指定暴力団共生会系の組長に家賃や光熱費を請求していないとして、広島県暴力団排除条例に基づき、利益提供を中止するよう文書で勧告したと発表、4月施行の同条例による勧告は初めて。同条例におけるこの事例の場合、期限までに勧告に従わなければ、意見聴取を経た上で、「関係者」として名前や住所を県警HPなどで公表するとのことである。

このように、暴排条例は、業種や業態を問わず、暴力団等の利することとなる商取引そのものを禁止するものであり、特に「情を知って」取引を行う場合は、これらの事例のように指導・勧告、企業名公表の対象となることから、あらためて、そのような疑わしい取引の存否の確認や全役職員への周知徹底が求められると言える。

2.暴力団排除条例において企業が対応すべきこと

(1)反社会的勢力排除条項の整備

多くの企業においては、現時点においても、排除条項が有効に活用されているとは言い難い状況にあり、いまだ導入していない企業や、排除条項を整備している企業でも、暴力団等に該当した場合でなければ適用できない条項となっているなど、反社会的勢力の不透明化・巧妙化に対応できていないのが現状である。

宮城県では、排除条項が規定されていない取引において暴力団等と関係を持ってしまった場合には、条例違反となる可能性があるとHP上に明記するなど、暴排条例においては、例え「努力義務」となっていても、限りなく義務化されたものと考えるべきである。

排除条項については、不動産流通4団体(全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会、不動産流通経営協会および日本住宅建設産業協会)が策定した、不動産売買に係る暴力団排除条項について、紹介しておきたい(当該条項は、警察庁HP参照)。

売買契約書モデル条項[PDF形式/63KB]

媒介契約モデル条項[PDF形式/66KB]

売買契約書モデル条項の解説[PDF形式/29KB]

これらを確認頂ければ分かる通り、反社会的勢力の定義(属性要件の範囲、行為要件)、表明保証、無催告解除、損害賠償請求および被請求の拒否、違約金および制裁金など、排除条項の骨格をふまえた内容となっており、大変参考になるものと思われる。

なお、本モデル条項は、双務契約であるとはいえ、不動産業者にとって有利となるような内容と言ってよく、一方で、そのような内容でしか反社会的勢力が契約を締結できないとなると、契約時点で身分を隠す(偽る)、名義貸し、行為要件へ該当するなどの行為を行えば、それらが判明した場合に課される違約金・制裁金の支払い、原状回復義務の履行、不当原因給付として既に払った代金が返還されないなど相当の経済的損害を被ること(排除効果)が容易に想定できることから、そもそも契約を躊躇するようになり(予防的・けん制的効果)、結果的に暴力団等の反社会的勢力を排除できるのではないだろうか。そして、このような意欲的な取組みが、今後、実績を積み上げながら、他の業界にも拡がっていくことも期待したいと思う。

(2)契約内容の再検討

排除条項自体は、相手が反社会的勢力であるとする確証なくして適用は困難であり、反社会的勢力の不透明化・巧妙化の実態をふまえれば、現実的にはハードルが高い。

ただし、実は、疑わしいと判断した場合に関係を解消できればよいのであり、反社会的勢力との理由以外の事由により「合理的に関係を解消する」ことを考える、すなわち、「解約・解除に必要な措置」を出来る限り多く講じておくということが必要であり、継続的関係をいつでも分断できるための契約形態にするという、例えば以下のような観点からの見直しが必要である。

  • 自動継続にしない
  • 長期契約にしない
  • 継続的に取引する義務を負わないことを明記する
  • 契約更新の際には必ず審査を実施する
  • 解除・解約事由を出来る限り追加する
  • 再委託先も管理する

(3)反社チェック体制の整備

例えば、東京都の暴排条例においては、「事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする」(第18条)として、疑わしい場合に反社チェックを行うことを努力義務として規定している。

そもそも反社チェックとは、反社会的勢力への該当性だけでなく、「関係をもってよいか」との観点から、十分な調査をふまえた組織的な判断により、相手を見極めるということであり、以下のような認識が不可欠である。

そして、そのためには、それを支える役職員の高い意識やリスクセンスを高めるための社風の醸成が不可欠であり、そこには経営トップの強い関与が不可欠である。さらに、自社で問題ないと判断したとしても、最終的には、レピュテーション・リスクに耐えうるレベルが求められることを認識し、社会の要請を見誤らないことが重要である。

例え、暴排条例において「疑わしい場合」にチェックを行うよう務めると規定されているとしても、それは最低限のレベルなのであって、現実の社会の要請は、新規取引開始時や定期・不定期に「常に注意を払う」(政府指針)形で、反社チェックを組織的に行っていくことにあり、「知らずに結果的に」(政府指針)関係をもってしまったことすら容認されない可能性があるとの強い危機感をもって取組むことが求められているのである。

  • 企業が反社会的勢力を100%認知することは不可能との厳しい前提に立つこと
  • 反社会的勢力の侵入が、「人」を介して、組織の弱さや例外的な取扱い等の「隙」を突いて生じている現実を強く認識すること
  • 反社会的勢力との関係の端緒は日常業務の中に潜んでいると認識すること
  • 反社会的勢力との関係の端緒を、組織的に、いつでも、どこからでも認知でき、それを見極め、速やかに排除できるための仕組みを構築すること

著者プロフィール

株式会社エス・ピー・ネットワーク
警視庁・道府県警の出身者をはじめ、企業危機管理に伴う法務・労務・財務・広報やサイバーセキュリティの専門家で構成されるクライシス・リスクマネジメント専門企業。
反社会的勢力への実務対応から企業不祥事等に伴う緊急対策支援に至る「直面する危機(クライシス)」対策に数多くの実績を有し、実践から導かれた理論に基づき「潜在する危機(リスク)」の発現を未然防止するためのコンサルティングと人的支援を展開、コンプライアンス徹底の見地から、企業のコンプライアンス態勢の確立にも積極的に取り組む。
従来の枠に留まらない危機管理的視点からの実践的なコンプライアンス態勢及び内部牽制態勢の構築を多くの企業で手がける。時代の流れを先取りした先駆的企業危機管理論には上場企業や株式公開を目指す企業の他、証券会社や監査法人からの支持も厚い。

芳賀恒人
東京大学経済学部卒。
大手損害保険会社で、上場企業や官公庁向けコンサルティング等を経てエス・ピー・ネットワーク入社。
企業のリスク抽出・リスク分析ならびにビジネスコンプライアンスを中心とする実践的内部統制システム構築を専門分野とするリスクアナリストとして、数多くの企業危機管理に関する事例を手がけるほか、大学での危機管理理論の講義も行うなど幅広く活躍している。とりわけ、企業の反社会的勢力排除の内部統制システム構築・運用支援、排除計画の策定・排除実務支援、「SPNレポート〜企業における反社会的勢力排除への取組み編」等の取りまとめ、犯罪対策閣僚会議下の「暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム」での報告、反社会的勢力排除に向けた企業の取組みに関する各種コラムの執筆・講演など、反社会的勢力排除の分野を中心に数多くの実績を有する。

※免責事項
本稿は、当然のことながら、暴力団排除条例を踏まえた企業の対応に関する全てについて説明したものではありません。
また、契約の内容や事実関係によって結論が異なってくる場合もありますので、実際の事案では、弁護士、警察、各地の暴追センター、専門会社等の外部専門家 に相談することが必要です。また本稿の説明についても、判例、解釈、運用が確定していない部分も多くあり、本稿の説明は絶対的なものではありません。
著者及び当社は本稿の説明についていかなる責任も負うものではありません。

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