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AIG損害保険株式会社

ケーススタディ

2018年7月2日

合併で誕生した国内最大の外資系損保会社が、
企業文化の融合を目指し合併前の同居を実現。
チャレンジに満ちた全国拠点統合プロジェクト。

AIG損害保険株式会社

今年1月、AIU損害保険と富士火災海上保険が合併し、AIG損害保険が誕生。合併に先駆け、両社合わせて全国に約200ある拠点のうち、同一都市に存在する45拠点の統合を実施した。そのチャレンジの1つに、一刻も早く両社の企業文化を融合させ一つの会社として機能させるため、合併前の段階での同居開始を目指したことが挙げられる。合併時期が定まる前から動きだした全国の2社拠点統合プロジェクト。そのチャレンジの行方を追った。

経営統合と拠点統合を同時進行。前例のない一大チャレンジ

AIG損害保険株式会社

世界最大規模の保険グループAIGグループ傘下のAIU損害保険と富士火災海上保険は、今年1月に合併し、AIG損害保険として業務を開始。合併に先駆け、両社はそれぞれが全国に有する拠点を統合し、2016年11月から順次、同居をスタートさせた。

合併前の拠点数は、2社合わせて約200。拠点の機能によって「本社」「地域事業本部」「支店」「SC(サービスセンター)」「その他拠点」に分類されるが、そのうち大多数を占めるのは、代理店営業を行う支店と損害サービスセンターが同じビルにある拠点である。企業向け商品に強みを持つ旧AIUが、県庁所在地を中心とする拠点網で業務を行ってきたのに対し、個人向け保険商品を幅広く提供してきた旧富士火災は、全国にくまなく拠点を展開し、地域密着型の業務を行ってきた。合併を機に拠点の重複を見直し、ファシリティコストを削減するとともに、同居による業務効率化を図るため、全国200以上の拠点を約150拠点に集約する大規模な拠点統合を実施したのである。

この拠点統合は、対象拠点数の多さもさることながら、ゴールを合併前に設定したことで過去に例を見ない大きなチャレンジとなった。通常は合併が完了してから拠点統合に進むというステップを踏むのに対し、AIG損保は、合併の準備と拠点統合を同時並行で進めたのである。会社を1つにするだけでも多大な労力を要するにもかかわらず、拠点統合を急いだ背景には、マネジメントの強い思いがあったという。拠点統合プロジェクトのメンバーであるAIG損害保険株式会社コーポレートリアルエステート部 部長の衣笠朋子氏は次のように話す。「大きく異なる両社の企業文化を融合させるために、できるだけ早く同じ場所で業務を行わせたいというマネジメントの要望がありました」。

2013年7月に両社の取締役会において合併準備について決議され、以降、入居に至るまでのチャレンジに満ちた拠点統合プロジェクト。その一部始終を見ていこう。

45都市90拠点が統合対象。「入居日未定」のまま移転先確保

AIG損害保険株式会社

拠点統合に関する議論が本格的に動きだしたのは、商品やサービス面での方針が固まり、合併後の人員や体制がある程度見えてきた2014年末のことである。この時点で、合併時期は未定だった。

まず、どのように拠点統合を進めていくか。この時点で唯一決まっていたのは、「同一都市に存在する拠点は一つに集約する」ということ。全国約200拠点の自社ビルと賃貸ビルを一つずつ評価したうえで、統合先ビルの選定計画を立てた。新たに借りる場合は、この時点で入居可能な物件を確保した。

計画の概要は次のとおりである。東京本社は、統合前の神谷町、丸の内、錦糸町の3拠点から、統合後は神谷町と錦糸町の2拠点に機能別に集約する。全国主要7都市に設置されていた14の地域事業本部は、まず大阪のみ1拠点に統合する。その他のエリアは適した移転先が見つからなかったため、旧富士火災の自社ビルに営業部隊を集約し、旧AIUが借りていたビルに損害サービス部隊を集約する。結果、同一都市での重複を避けるため統合の対象となったのは、全国45都市の90拠点となった。

「合併時期が定まらず、入居日を決められない状況のなかで、移転先を確保していくのは困難を極めた」と衣笠氏。そこで、すでに取引のあるビルオーナーに事情を説明し、協力を仰ぐことにしたのだ。「結果的に入居まで1年もの間、スペースを空けて待っていただいたケースもあります。当時は不動産市場がそれほど逼迫していなかったとはいえ、お取引先のご協力に関して非常に感謝しています。また、仲介業者さんにお任せすることも難しく、私たちから直接、お願いさせていただきました」(衣笠氏)。

AIG損害保険株式会社
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理想を具現化したモデルオフィス。現場の意見を取り入れて改善を重ねる

AIG損害保険株式会社

2015年末、拠点統合計画が両社の経営会議で承認され、拠点統合プロジェクトが正式にスタートした。プロジェクトの体制としては、合併プロジェクト(同社では最先端プロジェクトと命名)の下に、営業や損害サービスなど機能軸で分けられたファンクションチームと、拠点統合など機能軸横断で活動するクロスワーキングチームが配置された。新しいオフィスをつくるにあたっては、旧AIUと旧富士火災のメンバーで構成されたファンクションチームの要望をくみ取り、現場のオペレーションを考慮しながら進められていった。

では、どのようなオフィスにするのか。実は、拠点統合プロジェクトが正式にスタートする前の2014年夏、統合後を意識したモデルオフィスを神谷町に設置した。これは、「新生AIG損保で実現させたい働き方の理想」を具現化したもので、旧AIUと旧富士火災の双方の社員に提示してコンセンサスを得る狙いもあった。オフィスのコンセプトは、「機能別、目的別のオフィスデザイン(個人が働く場所を自ら選択可能なオフィス)」で、社員が活動的かつ積極的に動くことができ、社員同士の交流や協力から新しい発想が生み出されるような“最先端のオフィス”である。モデルオフィスの構築を担当したAIG損保 コーポレートリアルエステート部の白尾誠章氏は、「最新のオフィス傾向を調査し、CBREさんにもアドバイスをいただきながらつくりました」と話す。完成したモデルオフィスは、マネジメントからも一定の評価を得た。これをもとに現場の意見を取り入れ、現場の状況に即した形で統合対象拠点に展開していくことにした。

その後、レイアウトを改善し、最終的には将来のフリーアドレス導入を見越したユニバーサルデザインを採用した。また、その日の気分や目的に応じて働く場所を選べるよう、カフェ形式のベンチシートやオープンミーティングスペースなど多様なスタイルのワーキングスペースも全社で初めて導入した。

「一刻も早く同居を開始したい」 その要望をかなえた会社別ゾーニング施策

AIG損害保険株式会社

最終的に、AIG損保の始動は2018年1月1日と決まった。また、合併に先立ち2017年4月からは、新会社発足までの準備期間として、合併前の2社が同じビルでの勤務を開始し、新会社とミラーリングした組織体制で運営することとなった。新体制の早期実現と新たな企業文化の早期構築を目的とした前倒し統合である。

この段階でようやく、拠点統合プロジェクトのゴールが定まったのだが、これで話は終わらなかった。一刻も早く両社の企業文化を融合させるため、前倒し統合前に、会社は別々のままフロアを同じくしての同居を先行できるか検討することとなった。そこで拠点統合チームが考え出したのが、旧AIUと旧富士火災の社員を完全に分けて配置する「会社別ゾーニング」だった。両社の顧客や情報が混在しないよう、間に緩衝地帯を設けて“見えない壁”にしたレイアウトとすることで、2016年11月からの先行同居を実施した。対象となった拠点のうち、統合移転作業が遅れてオープン日に間に合わなかった拠点は一つもなかった。

衣笠氏は、「合併に先駆けて拠点統合するという、誰も実現したことのないことを成し遂げたという自負はあります」と感慨深げに話す。拠点統合後の社員アンケートでは、新しいオフィスに好意的な意見も寄せられており、ひとまず成功と言えるだろう。同居を先行させたことで、当初の期待どおり、合併後は新会社の業務を円滑にスタートさせることができている。今後はフリーアドレスの実現や、さらなるペーパーレス、ICT環境の整備を進め、働く場所のフレキシビリティーの向上、働き方の変革をさらに加速させていきたい考えだ。

企業名 AIG損害保険株式会社
施設 全国45ヶ所の拠点再構築
開設時期 2016年8月以降順次
CBRE業務 45拠点の移転・新設プロジェクトマネジメント

※掲載写真は、構築したオフィスの一つの大阪府吹田市の江坂オフィス

上記の記事の内容は BZ空間誌 2018年夏季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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