リアルオフィスとの相互補完を目的に、メタバースを導入する企業が増加。近未来の働き方を いち早く取り入れる狙いも。
クラスター株式会社
メタバースオフィス
働き方が多様化する中、リアルオフィスを補完するものとして注目されているのがメタバース、いわゆる「仮想空間」である。実際、コロナ禍以降、社内のコミュニケーション活性化やイベント実施を目的にメタバースオフィスを活用する企業が増えている。所有でも賃貸でもないメタバースのビジネス利用について、その現状や可能性、市場拡大に向けた課題について、日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を開発・運営するクラスター株式会社、亀谷拓史氏に話をうかがった。
コロナ禍2年目から メタバース空間を利用する企業が増加
コロナ禍を経て、所有でもなく賃貸でもないオフィスのあり方として、「メタバースオフィス」が注目されている。メタバースオフィスは、メタバース、いわゆる「仮想空間」に作られた疑似的なオフィスのことで、そこに出社した社員たちは、自身の分身であるアバターを通じてお互いにコミュニケーションを取ることができる。
この、メタバースのプラットフォームを提供しているのが、日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を開発・運営するクラスターである。元々一般ユーザーに開放していたclusterの機能の一部をビジネス利用にも開放し、メタバースでのオフィス構築や社内イベント実施などをサポートしている。国内外で提供されている他のプラットフォームは特定のデバイスに最適化したものが多い中、clusterはスマートフォン、 VR、パソコンのどのデバイスを使っても体験できることが強みだという。
メタバースのビジネス利用を後押ししたのは、いうまでもなく新型コロナウイルス感染症の流行である。同社ビジネスプランニング本部エンタープライズ事業部マネジャーの亀谷拓史氏によると、同社がビジネス利用の拡大を狙ってスマートフォン対応を完了させた2020年3月に、ちょうどロックダウンが始まり、社内イベントや会議、ミーティングをメタバースで取り組もうとする企業が急増した。最初の半年で1,000件近くの問い合わせがあったという。とはいえ、「コロナ禍1年目は、Zoomやウェビナーを導入した企業が多かった印象です。ただ、これらのツールはコミュニケーションが一方通行になりがちです。リアルで会えない中で組織への帰属意識をどう高めるのかを模索し始めた企業が、2021年頃からメタバースに興味を持ち、clusterをご利用いただくケースが増えていきました。今では世界で最も企業取引実績が多いプラットフォームの一つと自負しています」(亀谷氏)。
Zoomやウェビナーが「2Dでのコミュニケーション」であるのに対し、メタバースは「3Dでのコミュニケーションが可能」と亀谷氏は違いを説明する。「アバターとして存在するメタバースでは、身体性を持つ、ということが大きく違うんです。例えば近くにいる人と会話できます。ヒソヒソ話も近くに行けば声が聞こえるし、離れれば聞こえなくなるのはリアルと同じです。通りすがりの人と偶発的な会話が起きるなど、リアルオフィスに近いコミュニケーションが可能です。一方、聞かれたくない話をする時は、1on1の部屋を作ってそこで会話することもできます」。
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