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旅行業界 移転ケーススタディ Booking.com

ケーススタディ

2016年4月11日

新カスタマーセンターの構築で事業成長の促進を目指す。

オフィス

オンライン宿泊予約サイト世界最大手「Booking.com」の日本法人、ブッキング・ドットコム・ジャパンが、2016年1月、大崎ブライトコアに新カスタマーサービスセンターを開設した。急成長を遂げる業界の新オフィスは、どのようなポイントを重視し、そしていかなるワークスペースを構築したのか。その過程をおうかがいした

世界最大の宿泊予約サイトを支えるカスタマー・サポート

エントランス

我が国において海外旅行と言えば、かつては大手旅行代理店が企画したパッケージ・ツアーが主流だった。しかし今日では、インターネットの普及やLCC(ロー・コスト・キャリア)の登場などを背景に、旅行を自らプロデュースし、予算に応じた目的地や宿泊先を決め、航空機のチケットを手配する、アクティブな旅行者が急増しているという。ネット上を眺めれば、旅行関連のサイトが数多く立ち上がり、そこでは様々なサービスが提供されている。

こうした中、世界最大のオンライン宿泊予約サイトを運営しているのが、ブッキング・ドットコムである。同社は1996年、インターネットが民間に普及した直後に、オランダ・アムステルダムに設立された。そして創業20周年を迎える今日、世界60ヶ国以上に173のオフィスを展開し、1万人以上の社員を有する企業に成長しており、現在でも、世界のどこかで、毎日のように新たなオフィスが開設している状況にあるという。

世界212の国と地域で85万軒以上の宿泊施設と提携し、1日当たり95万泊以上の部屋が予約される。2014年度の売上は日本円に換算して9120億円と、前年度比33%増を記録し1兆円に迫る勢いだ。手数料収入のみでこの金額を売り上げていることを考えると、宿泊予約サイトのみならず様々なeコマース企業と比較しても、トップクラスの規模を誇っていると言えるだろう。

「私たちのミッションは、観光・レジャー、出張利用等すべての旅行者が、世界中の宿泊施設を、ご予算に合わせて簡単に検索・予約し、最高の宿泊体験ができるようにサポートすることです」。そう語るのは、カスタマー・サービス部門のアジア太平洋リージョナルディレクターであるエフエム・モック氏だ。その言葉どおり、同社におけるカスタマー・サポートの意義は大きい。

宿泊予約だけならWeb上で完結するが、言葉が通じないかもしれない海外に向かう旅行者にとって、頼れる相手はカスタマー・サポートしかない。それだけに、問い合わせや予約内容の変更、クレームまですべてに対応しなければならず、常に電話かメールが入ってくる。2015年に扱ったサービスの4800万件という数字が、その重要性を物語っている。言い換えれば、彼らの対応ひとつで会社の評価が決まるわけであり、質の高いサービスを提供することこそが、企業成長の原動力だと言えるのである。そのために同社では、世界14ヶ所にカスタマーサービスセンター(以下CS)を置き、4,500人のスタッフが365日24時間対応している。65ヶ国の人員で構成されるメンバーは、いずれも英語、およびいずれかの言語に精通したバイリンガルであり、計42ヶ国語に対応している。海外のCSにも日本人スタッフがおり、いつかけても日本語で対応してもらえる。他の言語でも同様だ。

急拡大する人員の確保と執務環境向上のために移転を決意

オフィス

同社の日本法人であるブッキング・ドットコム・ジャパンのCSが、2016年1月、大崎ブライトコアに移転を実施した。日本に進出したのは2009年、渋谷にレンタルオフィスを借り、宿泊施設と提携を結ぶ営業部門1人が駐在する形での業務スタートだった。それが1年後には10名以上に増え、2011年2月には渋谷マークシティにオフィスを借りることになる。

「提携施設様が増えることでインバウンド(訪日客)利用が多くなったのは事実ですが、近年ではそれ以上にアウトバウンドのユーザー数も急拡大しています」というモック氏の言葉を裏付けるように、時差の関係もあって米国とオランダのCSで日本をカバーすることが難しくなり、2013年1月、日本国内のCSが渋谷本社内に4名体制でスタートした。さらに3月には15名、その後もスタッフは増え続け、これまで会議室として使っていたスペースをCSにしても入りきれない事態となる。そのため、7月には事務・営業部門が表参道に転居し、124坪のオフィスをすべてCSとして改装、席数も40席から74席に拡大した。だが、その後も一度の求人募集で10~15名を採用しており、さらに入社後5週間と規定している研修のためのトレーニング・ルームの必要性も高まってきていたという。

「今回の移転の最大の理由は、言うまでもなく手狭になったスペースを拡張するためです。当社にとっては人材が財産ですから、快適に働ける執務環境を作ることは、仕事がしやすいだけでなく、バイリンガルの人材を確保するためにも重要なことなのです」。そう語るのは日本法人総務部長の下島朋子氏である。

オフィス
オフィス

世界各地に展開される同社のグループのオフィス群は、各都市でも一等地のハイグレードビルに入居している。もちろん、優秀な人材を集めやすくするためだ。加えて、同グループには、従業員1人当たりのスペースから、内装、什器備品までを細かく規定したグローバルガイドラインが存在する。例えば、「いつでも水分が取れるよう、オフィス内に水場を用意する」といった具合である。こうしたガイドラインは、ブランド力を高めるために2013年にグローバルスタンダードが規定されたが、渋谷マークシティ内のオフィスはこれらの条件を満たしていなかった。そのことも含め、2014年末には新オフィスを探すことが急務となった。移転先の条件は、ワンフロアで500坪程度の広さがあること。これは旧オフィスの3倍の広さである。そして、移転に際し今いる社員の負担が極力少ないことと、バイリンガルなスタッフを採用しやすいことであった。

移転に当たってはCBREの協力を求め、当初は渋谷近辺で候補先を探したが条件に見合う物件がなかった。その後はエリアを広げ、都内の山手線内外から横浜まで、50件近い物件をリスト化。その中から十数ヶ所に候補を絞ったところで、アムステルダムのリアルエステート部門専属の社員が2名来日し、1日半かけて内覧を行い3ヶ所に絞られた。その後、オフィスから45分で、どこまでが通勤可能圏内かをシミュレーションした結果、現在の大崎ブライトコアが選ばれた。広さに加えて新築だったことも、大きな決定要因だったという。

世界的レベルのオフィス環境の実現に向け時差を超えた週1のミーティング

食堂

オフィスの最終候補が絞られたのは2015年3月。その直後から、4月の最終契約を待たずに移転に向けてのプロジェクトがスタートした。メンバーはPMの中心となるアムステルダムのリアルエステートチーム、アジア地域のカスタマー・サポートを統括するモック氏とCSのチームリーダー、日本の総務、およびCBREのメンバーという陣容である。彼等によりオランダ、シンガポール、日本を股にかけた時差を超えるテレビ会議が週に1回のペースで催されプロジェクトの情報が共有された。また、細部の調整に関しては、夜中であってもメールが行き交っていたという。「当社の組織はオープンでフラットな関係なので、お互いが主張すべきことは主張する、というスタンスで臨んでいました。それに、物件はもちろん、ファシリティなどにも詳しい、外部の専門家が加わってくれたことで、内装などの細かい点も、比較的スムーズに進めることができました。11月までのわずか9ヶ月で移転を実施できたのは、こうした点が大きかったのでしょう」(下島氏)。

働きやすさと遊び心が融合した快適さに溢れたオフィス空間

食堂
休憩室

こうして誕生した新CSには、現在、約100名のサポート・スタッフが在籍している。内部を見ると、ガイドラインに規定されたとおり、音量や酸素濃度までが守られている。また、会議室の壁には世界各地の観光地の写真を散りばめた中に会社のロゴマークをあしらった、ディスティネーションウォールと呼ばれるグローバルで統一されたデザインが施されている。

その一方で、執務空間の内装の自由度が高いのも特徴だ。各国のオフィスも、グローバルに沿いながらローカルの特色を取り入れているという。このオフィスでは、山手線をモチーフに構成された。またミーティングルームには、国内外の都市名がネーミングされている。例えば、2つのトレーニング・ルームは三田と早稲田、打ち合わせ用のスペースには六本木や銀座、休憩室には秋葉原の名を冠し漫画やゲーム機まで置かれている。動物のオブジェを置いたリラックススペースは上野、食堂には渋谷と浅草をイメージしたテーブルのレイアウトを施すといった具合に、遊び心が溢れている。これらは、移転を社内発表した夏以降、社員の意見を取り入れた結果である。休憩中に仮眠したいという要望に応え、ファーストエイドの救護室にはリクライニングチェアを用意した。また、6割以上を女性が占める人員構成の中、育児中の女性のために安心して搾乳も保管できる冷蔵庫まで完備しているほどだ。「シフトで決められた休憩時間以外、席を立てない彼らに、いかに時間を有効に使ってリフレッシュしてもらえるかが大切なのです」(下島氏)。

リラックススペース
ミーティングスペース

彼らが使用する椅子や机はオランダから輸入したもので、天 板は最大140㎝まで昇降する。長時間座ったままだと心身ともにストレスが溜まるので、立った状態でも業務ができるようにするためだ。食堂に自販機を入れたほか、執務室内にコーヒーマシンを設置。食堂で提供される弁当は無料で、ベジタリアンなどのニーズにも対応している。時間をかけずに気軽にリフレッシュするための、至れり尽せりの配慮である。

「2020年の東京オリンピックに向けて、インバウンドの需要がさらに増えることは間違いありません。また、国内旅行で当社のサービスを利用するユーザーも急激に増えています。こうしたニーズに対応するために、宿泊先の登録数をさらに拡大する予定ですし、当然、カスタマー・サポートも忙しくなるでしょう。そのためにも、今後もオフィス環境のアンケートを続けて、より良い環境を提供していきたいと思っています」(下島氏)。

現在、140名超まで対応するこのオフィスが手狭になる日も、そう遠くないかもしれない。

上記の記事の内容は BZ空間誌 2016年春季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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