旅行業界
2016年1月の観光庁の発表によると、2015年の訪日外国人旅行者は過去最高の1973万7千人に上った。これは前年比47.1％の増加であり、政府が観光立国を目指し目標とした訪日客1000万人を突破した2013年から、さらに掲げた2020年に2000万人という数字を、わずか2年でほぼ達成したことになる。訪日客の多くは東アジアからで、もっとも多い中国の499万人、韓国400万人、台湾368万人と、3ヶ国だけで全体の約3分の2を占める。彼らによる「爆買い」は、連日報道されるとおりで、ホテルや小売業、外食産業に大きな利益をもたらしている。一方、日本からの海外旅行者だが、2014年は1690万人と、2012年来の微減傾向にある。円安やエボラ出血熱などの伝染病に対する不安が影響していると見られる。
我が国で、観光を目的とした海外旅行が自由化された1964年以来、業界をリードしてきたのが、航空券や宿泊先を仕入れて販売する旅行代理店だ。パッケージ・ツアーが隆盛を極め多くの日本人が海外旅行を余暇に取り入れたが、収益性が低いビジネスモデルゆえに、代理店数は1997年以降、減少傾向が進んでいる。こうした流れに対抗すべく、代理店最大手の「JTBグループ」は、分社化により国内旅行を強化。一方、東武トラベルとトップツアーによる「東武トップツアーズ」のように、統合合併を果たし、新社屋に移転するケースもある。「日本旅行」や「ANAセールス」も同様に体制強化を目指して移転している。もう1つの大きな流れが、ネット系代理店の登場だ。国内・海外を問わず多様化する旅行ニーズに対応すべく、既存の代理店の商品仲介だけでなく、宿泊先予約に特化するなど、様々な形態のサービスを提供することで近年、急速に成長してきた。2014年には楽天が「楽天トラベル」を完全子会社化し、グループ全体を本社ビルに統合して体制強化を目指すほか、「Loco Partners」も拡張移転を果たした。またこの分野では、宿泊予約サイト最大手の「Booking.com」や「トリップアドバイザー」など、外資系企業の参入も多く、群雄割拠の状況にある。
| 1 | 2015年3月、高級旅館・ホテルの予約サイトrelux（リラックス）を運営するインターネット総合旅行代理店「Loco Partners」が港区新橋の新橋菊栄ビルに拡張移転 |
| 2 | 2015年1月、長く新橋駅前に拠点を構えてきた大手旅行代理店「日本旅行」が日本橋ダイヤビルに本社移転 |
| 3 | 2016年1月、オンライン宿泊予約サイト世界最大手「Booking.com」が、カスタマーサービスセンターを渋谷から大崎ブライトコアに大規模拡張移転 |
| 4 | 2014年3月、全日空グループの旅行代理店「ANAセールス」が、新橋・汐留からフロントプレイス日本橋に本社移転 |
| 5 | 2014年12月、旅行情報・比較サイトを運営するカカクコムグループの「フォートラベル」が、近隣から恵比寿ファーストスクエアに本社移転 |
| 6 | 2015年11月、大手旅行代理店「エイチ・アイ・エス（H.I.S.）」の渋谷本店が、マルイシティ全館リニューアル後の渋谷モディ地下1階に移転リニューアル |
| 7 | 2014年3月、「オーバーシーズ・トラベル」が入居ビルの解体に伴い本社業務部・営業部を中央区銀座の銀座大栄ビルに移転 |
| 8 | 2014年4月、「楽天」がオンライン旅行予約サービス大手の「楽天トラベル」を吸収合併し完全子会社化、2015年6～9月、グループ全体が二子玉川の楽天クリムゾンハウスに本社移転 |
| 9 | 2015年4月、2013年合併の「東武トラベル」と「トップツアー」が「東武トップツアーズ」に社名変更し、同時に本社を東京スカイツリーイーストタワーに移転 |
