関内・川崎で大型空室が顕在化。空室率は上昇傾向で推移。
企業はオフィスの在り方模索
シービーアールイー(株)の調査によると、2020年9月期の横浜市オールグレードの空室率は2.0%となり、対前期(同年6月期)比0.2ポイント上昇した。移転やオフィスの在り方について模索中の企業も多く、決定までに時間がかかり空室が顕在化したことが要因である。しかし、コスト削減の観点から早々に横浜拠点を撤退する企業も出てきている。
一方でサテライトオフィスの機能として、神奈川の拠点をそのまま残す企業も増えている。
エリア別に見ていくと、「横浜駅周辺」エリアの空室率は前期から0.6ポイント上昇の4.5%となった。自社ビルとして利用していた物件が空室として顕在化したことが要因の一つだ。また、オフィスに集客する来店型業態の解約等も相次いだ。このように空室が多くなったため、一部のオーナーは募集賃料の見直しを始めている。しかしながら、大型の空室区画は限られているため、まとまった床が確保しにくい状況が続く。
「みなとみらい」エリアの空室率は0.5%と、前期から横ばいであった。当該エリアにおいては、コロナ禍前から移転を検討していたテナントが決まり、空室が消化された。
「関内」エリアは横浜市役所が利用していた民間の賃貸ビルの空室が顕在化し、空室率に影響を及ぼし始めている。テナントを早期に確保するために、新たな誘致策を実施し始めているオーナーも見受けられる。
「新横浜」エリアは、ワンフロアで100坪以上の面積が確保しにくい状況が依然続いており、全体としては低水準の空室率を維持している。
「川崎」エリアは、一部のビルで数千坪が空室となり、空室率に大きな影響を及ぼしている。また、数年先にエリア外への移転を表明している企業や川崎市庁舎建て替えに伴い、川崎市が賃借している民間ビルからの移転があることから空室率の上昇が予想される。
都内近郊の新たな拠点に
働き方の改革に伴い、コスト削減の観点や新型コロナウイルス感染拡大へのリスク分散などから都内で本社機能を構える企業は賃借面積を減らし、近郊の主要都市に新たに拠点を構える動きも見られ始めている。そのため、大型面積が確保可能・賃料が安い・都内へのアクセスが良い、神奈川エリアは選択肢の一つになることが多い。加えて、助成金が手厚く、今後、オフィスエリアとして、さらに注目が集まるだろう。
横浜支店 佐藤 亮子
- 現在募集中の横浜市の賃貸オフィス
- 現在募集中の川崎市の賃貸オフィス
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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横浜大規模ビル | 19,000円~28,000円/坪 | 大型解約が出たことで、空室率は上昇。テナント動向は緊急事態宣言解除後も鈍っており、大型の需要はほとんど見られない。 | |
横浜中小規模ビル | 14,000円~17,000円/坪 | 本来、空室として顕在化する前に決まる予定だった区画が、コロナ禍でキャンセルとなり、空室が顕在化した。 | |
関内大規模ビル | 12,000円~16,000円/坪 | 大型空室が顕在化し、空室率に大きな影響を及ぼしている。 | |
関内中小規模ビル | 10,000円~13,000円/坪 | 新型コロナウイルスの影響により100坪未満の契約キャンセルが一部に見られたが、マーケットへの大きな影響はなかった。 | |
新横浜大規模ビル | 12,000円~15,000円/坪 | 100坪以上の空室が出たものの、以前からの需要により一部空室が消化され、需給動向に大きな動きはない。 | |
新横浜中小規模ビル | 10,000円~14,000円/坪 | 20~30坪程度の空室消化は進むも、空室率を下げるほどのインパクトはなかった。 | |
川崎 大規模ビル | 13,000円~23,000円/坪 | 大型空室が顕在化し、空室率に大きな影響を及ぼしている。 | |
川崎 中小規模ビル | 12,000円~18,000円/坪 | 駅前ビルにわずかながら空室が増えている。しかし、コスト削減移転や新規出店する企業もあった。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。