企業のコスト抑制の動きに伴い、オフィス需要は減退傾向。
高額賃料物件は苦戦
日本国内の景気動向指数は、5月を底に、2ヶ月連続で改善しており、経済活動の再開は順調に進んでいる。一方、2020年度の企業業績は大幅な悪化が予想され、コスト抑制は喫緊の課題となっている。また、在宅勤務推奨を継続する企業は多く、リモートワークが定着しつつあるなか、オフィスの稼働率が大きく下がっており、賃貸オフィスに対する需要は減退の一途をたどっている。オフィスの稼働実態に合わせたフロアの縮小や、より小規模なオフィスへの移転を決めるなど、コスト抑制への取り組みと合わせて実行に移す企業が大きく増加した。
このような動きを示すデータとして、2020年9月期の空室率は、前期(同年6月期)と比べ、グレードAは0.2ポイント上昇の0.9%、Aマイナスは0.1ポイント低下の0.9%、グレードBでは0.1ポイント上昇の0.7%となった。高額賃料物件ほど苦戦しており、手頃な規模と価格の物件へのニーズが高まりつつあると言えよう。
予想される賃料相場の軟化
2021年上期に竣工を迎える大型新築ビルについては、新型コロナウイルスの感染拡大前に、ほぼテナントを確保しているため、募集面積は残りわずかである。しかし、それ以降に竣工する大型ビルは、大型テナントの誘致に苦戦するであろうことから、賃料相場の軟化が予想される。
また、オフィスの分散化やサテライト化の動きも表れつつある。都心部の大きな支店を、営業エリアごとの営業所単位に分散させ、かつ拠点への出勤体制を柔軟にすることで必要な時だけ使えるサテライトオフィスとして、運用を始める事例が見られるようになってきた。“密”を避けつつ、営業効率を高める取り組みが始まっていると言えよう。
これらの動きは、オーナー側にも大きな影響を与えており、新型コロナウイルス感染拡大前までの強気な姿勢は影を潜め、新規テナントの誘致もさることながら、既存テナントの流出防止のための対策が課題となっている。
新型コロナウイルス感染拡大により、働き方が大きく変貌するなかで、オフィスの在り方が問い直されている。従来のオフィスに回帰する企業がある一方で、オフィスに出社する目的を“再定義”しようとしている企業も多くなるなか、今後、テナントに対して、どのようなビルやオフィスを提案していくかが重要になるだろう。
ビル営業本部 三好 孝治
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
---|---|---|---|
主要3区大規模ビル | 35,000円~48,000円/坪 | 全体的な需要の落ち込みから引き合いが少なくなっているものの、賃料水準は横ばいである。 | |
主要3区中小規模ビル | 22,000円~30,000円/坪 | 館内需要が少ないため、二次空室が顕在化しつつある。 | |
周辺7区大規模ビル | 28,000円~40,000円/坪 | 引き合いの減少を受けて賃料設定の低下傾向が見られる。 | |
周辺7区中小規模ビル | 18,000円~28,000円/坪 | 主要3区を含む高額賃料エリアからの受け皿になりつつあり、空室は発生するものの堅調に推移している。 | |
23区内大規模ビル | 16,000円~23,000円/坪 | 江東区や大田区など製造業が立地するエリアで空室の増加が顕著である。 | |
23区内中小規模ビル | 13,000円~17,000円/坪 | 中小企業を中心に需要は底堅く大きな変動はない。 | |
立川 | 11,000円~18,000円/坪 | 空室状況に大きな変動はなく、一定規模の需要は続いている。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
(注)主要3区=千代田、中央、港周辺7区=新宿、渋谷、文京、豊島、品川、台東、目黒23区内=左記10区を除く東京都内
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。