空室率は上昇に転じるも、 オフィス床の確保はさらに困難に。
新築ビルは潜在需要の受け皿に
シービーアールイー(株)の調査によると、2018年6月期の札幌市の空室率は、前期(同年3月期)から0.8ポイント上昇し、1.1%となった。今期は、「さっぽろ創世スクエア」の竣工により一時的に空室率が上昇。しかし、それでもなお空室率は低水準を維持しており、引き続き、オフィススペースの確保が非常に困難な状況とな っている。
前述の「さっぽろ創世スクエア」は、市内では貴重な大型面積を確保できる物件であり、これまで潜在化していた100坪を超える大型ニーズの受け皿となっている。そのため、空室の消化は早いものと推察される。また、テナント移転に伴う二次空室は、退去ビル入居企業の増床ニーズで、すぐに消化される傾向が強まっており、市場に空室が出てこない。そのため、郊外から札幌中心部への移転や、市内への新規出店によるオフィススペースの確保が、非常に困難な状況となっている。
大型オフィス移転ニーズの増加
テナント動向としては、コールセンター企業の拡張移転や分室設置、人材派遣企業の立地改善を目的とした移転等、前向きな移転が数多く見受けられた。これらの動きが既存空室消化の後押しとなり、既存物件空室の品薄感を一層強めている。
また、需要の面では、100~300坪の大型需要が増えており、分散した拠点の集約や、既存オフ ィスの拡張を目的としているケースが数多く見受けられる。ただし、市場にはこれらの需要を満たす空室在庫がほとんどないため、2~3室に分けて面積を確保したり、近隣に分室を設置したりして、オフィススペースを確保する動きが多い。さらには、解約予告期間中の潜在空室区画や竣工前の新築ビル計画、オフィスエリア外の物件を検討するケースもあり、空室率の上下動に表れない潜在的な動きも活発になっている。
札幌では空室在庫の品薄感が継続し、特に大型空室が募集に出た場合、一つの空室に対しテナントの入居希望が殺到し、競合することが非常に増えている。オフィススペースの確保には、早急な意思決定が求められるため、オフィス市況を常に注視し、将来予測のもとで、オフィス戦略を前もって準備しておくことが重要であろう。
札幌支店 須江 亮太
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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札幌中心部 | 14,000円~16,500円/坪 | ニーズは強いが、中小規模の空室在庫は少ない。「さっぽろ創世スエア」が竣工し空室率が微増したものの、引き合いが殺到している。 | |
地下鉄西11丁目 | 9,500円~11,500円/坪 | 札幌中心部での品薄な空室状況により需要が流入し、一部のビルで空室が消化されている。 | |
創成川東 | 11,000円~12,000円/坪 | 大型空室が少なく、中小規模の面積を中心とした動きが見られた。 | |
札幌駅北口 | 13,000円~16,000円/坪 | 依然として空室が少ないエリアであり、旺盛なテナント需要の受け皿不足が続いている。 | |
琴似 | 7,000円~8,000円/坪 | エリア全体として新規需要は少なく、目立った動きは見られなかった。 | |
白石 | 7,500円~8,500円/坪 | エリア全体として新規需要は少ないが、一部のビルで空室の消化が見られた。 | |
倉庫・配送センター 既存 |
2,500円~3,000円/坪 | 引き続き空室不足が続いているため、新築物流施設や新規空室に対するテナントからの引き合いは多い。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。