空室率は引き続き1%台で推移。 募集賃料の底上げが続く。
既存テナントへの増額交渉も継続
シービーアールイー(株)の調査による、2020年3月期の仙台市内中心部の空室率は1.9%と、前期(2019年12月期)より0.1ポイント上昇した。今期は、新規開設、拡張移転、館内増床等の前向きな動きが多くを占めたが、一方で縮小移転、館内減床、仙台市からの拠点撤退といった後ろ向きな動きも一部で見られた。
マーケット全体として、募集賃料の底上げは続いており、前述の後ろ向きな動きによって発生した空室も、従来より高い水準で賃料設定されることが多い。
引き続き、テナント企業に対する賃料増額交渉も、積極的に行われている。賃料の増額を避けるために移転を検討しても、周辺の募集賃料水準が上がっているため、移転を断念するケースもある。結果として、空室が顕在化した後も、次震のテナントが決まらず、リーシングが長期化する事例が出始めている。その原因として、募集賃料の増額がくりかえし行われたことで、周辺ビルの継続賃料相場とのギャップが大きくなったことが挙げられる。また、2011年の東日本大災前後に移転したテナントは、現在と比べると、かなり割安な賃料で入居していることが多い。その後、継続賃料の増額改定が行われているとはいえ、高騰している現在の募集賃料との乖離幅が、大きくなり過ぎたことも考えられる。
新築ビルのテナント誘致は順調
今年1月に竣工した「仙台花京院テラス」、6月竣工予定の「仙台宮城野ビル」、10月竣工予定の「新仙台ビルディング」などの新築ビルは、テナント誘致が順調に進んでいる。空室率の低下で、築浅の大型ビルは、空室がない状況が続いており、大型面積を必要とし、かつBCPを重視するテナントの需要を、うまく誘致することができた結果と考えられる。
仙台の開発計画は続いており、来年も2棟の竣工を控えている。その後も、青葉区中央の「(仮称)NTT仙台中央ビル」「さくら野百貨店跡再開発」など、高層ビルの供給が複数予定されており、仙台のオフィスマーケットの循環、活性化が大いに期待される。
なお、テナントの前向きな需要を低下させる形で、新型コロナウイルスの影響が見え始めている。早期に収束し、市場に与える影響が軽微であることを願う。
仙台支店 後藤 拓己
- 現在募集中の仙台市の賃貸オフィス
- 現在募集中の郡山市の賃貸オフィス
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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仙台市中心部 | 13,500円~16,500円/坪 | テナントの入れ替わりはあるが空室率は低位のままである。今年竣工のビルの順調なリーシングとともに中心部の新陳代謝も進んでいるものの新型コロナウイルスの影響による需要の低下が見え始めている。この影響が長引けば、空室率や賃料単価に影響を与えると思われる。 | |
郡山市 | 9,000円~11,000円/坪 | 移転・新規開設ともに案件が少なく、空室率は横ばい。既存テナントの拡張や一部撤退等の動きが見られたが、全体に影響を与えるほどではない。 | |
盛岡市 | 9,000円~11,000円/坪 | エリア内での移転事例は引き続きあるものの空室率に変化を与えるほどの動きはなく、マーケットは停滞している。そのため賃貸条件も変化は見られない。 | |
倉庫・配送センター・ 注文建築 |
3,000円~5,000円/坪 | 需要は底堅く、既存物件の空室率は引き続き低い。今年に入り新規倉庫開発計画が出てきており、計画段階で内定する先が多く、テナントは早期の判断が求められる。コロナの影響は今のところ見られず、需要のみに視点を置けば需給がよりひっ迫する状況になると思われる。 | ー |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。