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オルビス株式会社

ケーススタディ

2012年6月3日

オルビス株式会社:西日本流通センター

化粧品通信販売大手のオルビス株式会社はこの2月、西日本では同社初の物流拠点となる「オルビス西日本流通センター」を、兵庫県西宮市に開設した。これまで関東3拠点体制を貫いてきたにもかかわらず、なぜ今、新拠点展開に踏み切ったのか。そこには顧客第一主義を実践する同社ならではの成長戦略があった。

オルビス株式会社 フルフィル・CRM推進部長 芳永 直樹氏

新拠点における新システムの導入でさらなる顧客満足度向上を目指す
 

オルビス株式会社
フルフィル・CRM推進部長
芳永 直樹

化粧品通販のパイオニアとして利便性の高いサービス体制を構築

ポーラ・オルビスグループの基幹ブランドであるオルビス株式会社は1984年に設立された。訪問販売を中心に事業を手掛けてきたポーラとは異なり、通信販売をメインチャネルとして、オイルカットをコンセプトとした化粧品、栄養補助食品、ボディウェア等の商品展開で、着実に事業を拡大。グループ連結では化粧品業界第3位の売上規模となっている。

同社が通信販売を本格的にスタートさせたのは1987年のこと。従来から化粧品は、肌との相性、発色などが重視され、そのため、使ってみなければ自分に合うかどうかがわからない。つまり、通信販売には適さない商材と思われてきた。こうした顧客の不安を解消するため、同社では事業開始当初から、

  • 受注時:電話・インターネット・携帯電話・自動受付電話・FAX・郵便など、顧客のライフスタイルに合わせた多様な形態の注文方法
  • 無料お試しサンプルの提供
  • 配送:最短翌日お届け
  • 支払い:クレジットカード・代引き(現金・電子マネー)・自動引き落としの他、コンビニエンスストアや郵便局での振込みなど、後払いも可能な、多様な支払方法
  • 返品:顧客の都合により、開封済みであっても30日間は返品・交換自由 しかも、これらにかかる配送費、支払手数料、返送料などをすべて無料とする

など、顧客の不安や不便、不満を取り除き、負担を軽減する利便性の高いサービスを提供してきた。

その甲斐があって、『日経ビジネス』誌が実施するアフターサービス満足度ランキングでは、ネット通販部門3年連続第1位を獲得、2011年度JCSI(顧客満足度指数)調査においては通販業界第1位を獲得するなど、高い顧客満足度を誇っている。

さらなる顧客満足度向上を見据えて関西での物流新拠点開設を決意

オルビス株式会社:西日本流通センター

同社は通販事業開始当初から、物流業務はすべて3PLにアウトソーシングしてきた。委託されたのは㈱流通サービス。生協の個配などエンドユーザー向けのB to Cビジネスに実績があり、そのノウハウを評価しての判断だった。

顧客からの1件当たりの注文点数は、平均すると約5点程度。これに無料サンプルや販促物を合わせた計10点程度が一般的な一小口となる。これを1日当たり実働レベル7~7.5時間で1万件を出荷できる能力、というのが同社が物流センターに求める一つの基準だったという。売上の拡大に伴い出荷件数がこの能力を上回った時は、施設を拡張するのでなく、別に1万件が捌ける施設を追加するというのが同社の考え方だ。これなら、売上に大きな変動があっても、一つの拠点の稼働を抑えることで、コストのロスを防ぐことができる。こうした判断から、流通サービス社との提携により、これまで埼玉県加須市の「騎西流通センター」、同羽生市の「羽生流通センター」、千葉県八街市の「千葉流通センター」の3拠点で、全国への配送業務を行ってきた。

その関東3拠点体制の見直しが検討され始めたのは2年前のことだ。同社では、顧客の声をサービスや商品に反映させるため、年間約9万件に及ぶ意見や感想をデータベース化したり、顧客を対象とした定期的な満足度調査を実施しているが、その内容を分析すると、パソコン・携帯電話を含めたWebを利用した顧客の満足度にバラツキが見え始めた。"もっと早く配達して欲しい"という声が目立ってきたのだ。「ネット専業通販最大手の2社が、相次いで"送料無料化""即日配送"を打ち出したのがちょうどこの時期です。そのために、注文時にネットを利用されるお客様にとって、当社の競合優位性が薄れてきました。これが、新たな物流システムを構築するべく動きだした理由でした」フルフィル・CRM推進部長の芳永直樹氏は、当時の状況をこう分析する。

オルビス株式会社:西日本流通センター

顧客満足度調査の内容を分析すると、特に配送サービス(送料無料・翌日配送・時間帯日時指定・サンプル付加)に対する満足度が高かったが、そのなかで最も高い評価を得ていたのは、送料が無料であることだった。だが、送料はすでに完全無料を実現している。これからさらに出来ることは配送のスピードアップしかない。出荷実績を分析すると、顧客は関東と関西の都市圏に集中しており、ほぼ半々の比率で分布している。関西圏に拠点を持てば顧客との距離を縮めることができ、これまで陸送では翌々日配送となっていた九州エリアも、陸送で翌日配送できるようになる。首都圏なら、即日配送も可能だ。また、BCPの観点からも関西と関東の2拠点の構築は理に適っている。「差別化が図りにくくなったという危機感が、2拠点制に踏み切るきっかけだったのです」(同氏)。

立地・拡張性・耐震性などを考慮し最適な物流拠点を決定

こうして物件探しがスタートした。いくつかの候補が上がったが、最終的に決まったのは、流通サービス社が自社所有する「西宮北物流センター」だった。西宮北インターから約1kmで、隣には発送を依頼しているヤマト運輸の主管拠点があるという恵まれた立地にある。規模の面でも西日本で扱うアイテム数から必要なスペースを約1,900坪と判断していたが、同センターの2フロアを使えば、その面積になる。しかも、アウトソーシング先の所有物件なので、取り扱い件数に波動があっても、ダイレクトに利用スペースの増減を交渉できることによる融通性も魅力だった。BCPの観点から、震度7以上にも耐えるという 耐震性能も大きな決め手となった。こうして、オルビスにとって初の関西拠点となる「西日本流通センター」の概要が固まってきた。

コスト削減と業務効率化を実現する新出荷システムを導入

オルビス株式会社:西日本流通センター

物件探しと同時進行で進められたのが、作業効率を向上させるための新たな出荷ラインシステムの構築だ。従来の拠点では、すべてがマニュアルピックだった。だが、取り扱うアイテムは2,000点以上あるため、全体を同一ラインで通すと数百mと長くなり、時間がかかる上に、必要な面積も大きくなり、コストがかさむことになる。

そこで、新システム構築には、仕様、1日当たりの出荷件数、アイテム数、平均ピック数、コストなどの条件を提示してコンペを実施。最終的に椿本チエイン社との共同開発で構築することになった。

その新出荷システムの特徴は、デジタルピッキングとカートピッキングのハイブリッドラインの導入だ。化粧品は季節性が高い商品で、季節によって売れ筋が大きく変化する。また、同社では毎月、通販用カタログを会員向けに発行しているが、その巻頭で紹介した拡販商品が売上の7~8割を占めるという。

そこで、ABC(活動基準原価計算)分析による商品特性に応じて、その時期の売れ筋であるA品と、それ以外の定番商品であるBC品を分類。出荷頻度の高いA品(約420アイテム)は、倉庫中央にある、従来よりもライン速度を2倍にしたQPS(クイック・ピッキング・システム)の作業エリアで、集中的にピッキングする。一方、出荷頻度がBC品(約1,700アイテム)については、カートピッキングで60件分をまとめてピックし、それをコンピュータ管理によるDAS(デジタル・アソート・システム)で顧客別に仕分けし、多品種少量品に対応することとした。こうすることで、例えば売れ筋だけの商品の注文にはQPSだけで対応できるため、大幅な時間短縮が可能になる。

オルビス株式会社:西日本流通センター

この出荷システムの導入により、関東3拠点におけるマニュアルのラインと比較すると、宅配便タイプの梱包の生産性が1時間当たり1,200件から1,800件に、メール便が同じく1,600件から2,000件にと、出荷能力が約1.5倍にアップ。同時に使用スペースを約20%、稼働人員を10%削減するなどの効率化を実現できた。ちなみに、このシステムが稼働しているのは1フロア950坪で、もう1フロアは現在、ストックヤードとして利用されている。

独自のWMS(倉庫管理システム)で品質管理を徹底

もうひとつの目玉が、独自に開発したオルビス専用WMS(倉庫管理システム)だ。これは商品の品質管理を徹底するものだ。例えば「保管品質」については、温湿度計の設置による空調管理を徹底することで、高品質で鮮度の高い商品を提供できる。また、デジタルピッキングに加えて、全品をスキャン検品することで誤出荷率を10万分の1にまで極小化し、さらに「トレーサビリティ」システムの導入により、商品の製造情報と、顧客の情報を紐付ける計画も進んでいる。こうすることで、例えば万一、商品に不具合が見つかって顧客からのクレームが入った場合、その商品が、いつ、どこで製造されたものかがわかるため、同時期に作られた製品を発送した顧客に対しても、すぐに対応ができる。「スピーディーな商品発送に、このような品質管理による革新性を持った価値を提供することで、お客様からの信頼を獲得し、満足感、さらにはロイヤルティの向上につなげていきたいと思っています」(同氏)。

オルビス西日本流通センター
所在地 兵庫県西宮市山口町阪神流通センター2丁目2(株式会社流通サービス・西宮北物流センター内)
延床面積 1,900坪
構造・規模 耐火建築物 地上6階建(倉庫部3層)
交通 中国自動車道 西宮北ICより約1Km

さらなる顧客満足度向上に向け今秋完結する次世代物流戦略

オルビス株式会社:オルビス騎西流通センター

こうして誕生した「オルビス西日本流通センター」は2012年2月、本格稼働を開始した。これに伴い、関東にある3つの物流拠点のうち、八街にある「千葉流通センター」はこの3月にすでに閉鎖しており、「羽生流通センター」も9月に閉める予定だ。同時に「騎西流通センター」を拡張、集約することで、従来からの関東、東北、北海道、沖縄エリアへの配送を賄う。これにより、2拠点体制による同社の次世代物流戦略が完結することになる。こうすることで、関東の3拠点で合計6,000坪あったスペースを、東西合わせて4,300坪に縮小できる。つまり固定費の圧縮が可能になるのだ。

オルビス株式会社:オルビス騎西流通センター

も ちろん騎西に誕生する「東日本流通センター」には、この新物流システムとWMSを導入する計画で、発送能力も1.5倍に向上する。さらに、関東圏、関西圏は即日配送を実現。これまで翌々日配送だった九州を陸送による翌日配送に、北海道と沖縄は、航空便を利用することで、同様に翌日配送することが可能になる。

「関西に新拠点を持つことで、作業効率の改善はもちろん、配送のスピードアップといったサービスの向上が可能になったことに加え、配送コストの削減、さらにBCPの観点からも、より良い物流戦略が実現されることになるのです」(同氏)。

本来、2011年10月オープン予定だった「西日本流通センター」だったが、東日本大震災の影響で、2012年2月にずれ込んでしまった。だが、この震災を機に、それまで関西拠点新設に懐疑的だった一部の意見もなくなり、社内が一丸となっての開設準備が進むこととなった。

オルビス株式会社:オルビス騎西流通センター

「Web通販は化粧品業界でも今、注目を集める販路であり、異業種からの参入もしやすい分野。特に当社にとっては、資本力のある製薬、化学系企業が大きな競合となることが予想されます。一方で、新規顧客を増やし続けることが難しいのも事実です。当社は、これまでのノウハウに加え、今回の物流再構築を、成長戦略のひとつとして、これからもサービスの向上に努めていく所存です」。将来に向けての展望を、芳永氏はこう語る。。

顧客満足度No.1企業の、さらなる成長への第一歩である物流拠点の新設。それがオルビスの競合優位性をどこまで高めるか。注目が集まるところだ。

オルビス騎西流通センター
所在地 埼玉県加須市鴻茎3200-2(株式会社流通サービス・騎西物流センター内)
延床面積 2,330坪
開設年 2004年

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上記内容は オフィスジャパン誌 2012年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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