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アスクル株式会社

ケーススタディ

2013年8月14日

関東全域への当日配送サービスをめざし、
販売戦略と拠点戦略の両輪で最前線の通販ビジネスを展開

オフィス用品の法人向け通販でナンバーワンの座を誇るアスクルは、今年7月、国内最大級の規模をもつ新たな物流拠点「埼玉物流センター(仮称)」をオープンさせる予定だ。新規事業として取り組みをスタートさせた個人向けネット通販事業「LOHACO」の強化を図る。なぜ今、個人向けなのか、なぜ新拠点なのか、なぜ埼玉なのか。新規物流拠点開発の背景を取材した。

アスクル株式会社
ECR本部 ECR戦略企画
部長才田 啓三

都市型の拠点展開で当日配送サービスを推進

ZOOM UP! 物流拠点戦略 / アスクル株式会社 埼玉物流センター(仮称)

オフィス用品の法人向け通販のパイオニアとして、アスクルは独自のサプライチェーン戦略と物流管理によって飛躍的に売り上げを伸ばし、今やナンバーワンの座に就く。創業は1993年。大手文具総合メーカーであるプラス株式会社の一事業部として、首都圏の事業所を対象にオフィス用品通販「アスクル」を稼働した。

その後サービスエリアを拡大し、1997年にプラスグループの一員として分社独立。創業当時文房具が中心だった品揃えは、現在では文房・事務用品やOA/PC用品、生活用品、オフィス家具から建設現場・物流現場・研究所向けの工具・理化学用品まで拡大。「お客様のために進化する」を企業理念に、ワンストップショッピングのサービスと、社名である「明日来る」はもちろん、今日では「今日来る」当日配送サービスなど、同社の強みを活かした事業展開によってシェアの拡大を図ってきた。

現在では、アスクルは仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡の6ヶ所に物流センターを設けており、それぞれオフィス集積地に近い各センターからの当日配送を推進している。拠点展開の考え方について、アスクルのECR本部ECR戦略企画部長、才田啓三氏は次のように説明する。

「大消費地から30分から1時間以内のところに拠点を設け、例えば東京では、お台場のセンターから港区や千代田区、中央区といったオフィス集積地への30分配送を可能にしています。物流拠点をオフィスが集積するエリア近くに置くという典型的な都市型であることが、当社の拠点展開の基本戦略になっています」。

作業の効率化を進め配送のスピードアップに磨きをかける

ZOOM UP! 物流拠点戦略 / アスクル株式会社 DCMセンター(東京・晴海)

拠点戦略については、売り上げの伸びに伴い、まず東京と大阪の2大拠点の規模の拡大が図られた。まず2002年に東京の拠点を辰巳からお台場へ移転して施設を広げ、次いで大阪も2006年に6,000坪から2万坪へと一気に拡大した。

 東京、大阪のほか、福岡、名古屋、仙台など大消費地に近いところで拠点展開を順次拡大させていった。今後についても新拠点の設置が検討されており、これらのネットワークが全国に完成すると、アスクルでなく「今日来る」当日配送サービスがより広範囲なエリアで可能になる。サービスを広げ、事業を広げる、戦略的にはこういうかたちで進められている。

 顧客からの発注に対し、どれだけ早く発送するか。アスクルは物流センターでの作業の効率化を進め、配送のスピードアップにも磨きをかけている。現在、注文を受けて最短20分で出荷できるという。

 「ピッキング工程の効率化に加えて、積極的に進めたのが入荷や梱包の改善です。大阪と、新設する埼玉の新拠点においては、日本で初めて、フランス製の自動梱包機『I-pack』を導入。これは、箱に入った商品の高さを瞬時に測り最適な大きさで自動梱包するもので、作業全般の効率化が期待できる最先端のマテハンです」(同氏)。これに加えて、埼玉の新拠点では新たなデジタル・ピッキング・システムを採用し、後述する7万アイテムの商品構成に対応していく。

自動梱包システムは、緩衝材の大幅な削減やガムテープ不要の簡単パッケージなどエコ配送も実現。また、将来的に人材確保のリスクをなくし、深夜の稼働率を上げるためにもマテハン化は必須だという。

BtoBとBtoCを同一インフラで出荷365日稼働する物流センター

ZOOM UP! 物流拠点戦略 / アスクル株式会社 埼玉物流センター(仮称) 大阪DMC(大阪・舞洲)

アスクルは前述したように、近年個人向けネット通販事業の強化を進めてきた。そんななか2012年4月にヤフーと業務・資本提携し、BtoC(個人向け)サイト「LOHACO」を立ち上げた。BtoB(法人向け)とBtoC(個人向け)の物流について、才田氏は次のように語る。

「物流面は、既存の物流センターから、BtoBもBtoCも同じ設備、同じピッキング方法、同じ梱包で出荷を行っています。発注は、BtoBのお客様は月~金の平日9時~5時が多く、BtoCのお客様は早朝や夜間がメインで、曜日でいうと土日祝日が多くなります。つまり、当社から見れば、企業のお客様がお休みの時、個人のお客様に変わるため、双方の稼働を上手く組み合わせることができれば、物流センターの効率的な活用が実現できると思います」。

企業向けは日祝日休みだが、個人向けは日曜に集中することから、日曜に受注して日曜か月曜に届ける体制をとる。物流センターは365日稼働ということになった。

またアスクルの既存センターの商品在庫数は通常3万アイテムだったところ、埼玉の新拠点では、それに4万アイテムをプラスし、BtoC事業をメインに7万アイテム使える設計になっている。

「当社のBtoBが企業様のオフィスの備品庫であるように、BtoCは家庭のバックヤードでありたいと考えます。例えば水やお米、洗剤など必要なものを午前10時までに注文すれば、夕方には時間を決めて持ってきてくれる。しかも1回の注文が1,900円以上なら、送料は無料。そこが『LOHACO』の強みであり、商品もこれまでの品揃えでは足りないものを増強して現状の16万から今夏には20万アイテムに増やす計画です。しかもワンストップで買える。これは競合他社にはないメリットと言えるでしょう」と才田氏は確信している。

ZOOM UP! 物流拠点戦略 / アスクル株式会社 埼玉物流センター(仮称) 大阪DMC(大阪・舞洲)

BtoCについては、大阪と埼玉の新センターで主に展開される。都道府県別売り上げシェアを見ると、やはり首都圏、近畿圏がメインだ。戦略的には、BtoBと同じく、まず消費地に近いところで、そして今後の売り上げの伸びに応じて地方で展開する。現時点では、埼玉が立ち上がるまで、お台場のセンターでBtoC事業に対応している。

2万坪で7万アイテム対応の保管設備国内最大級の規模を誇る埼玉の新物流センター

埼玉物流センター設立の狙いは、BtoC事業のレベルアップを図るためである。考え方としては、当日・翌日配送商品を3万アイテムから7万アイテムに倍増すること、次いで、センターの中の効率化、例えば保管効率、出荷効率を上げること。大阪のセンターは2万2000坪で3万5000アイテムに対応しているが、埼玉物流センターでは2万坪で7万アイテムまで対応できる。保管設備から商品調達の方法まで、すべてを効率化して、同じ坪数でできるだけ多くの商品を扱って売り上げを伸ばしていく。新拠点はBtoC事業を効率的に拡大させる。

新センターを開発するに至った経緯は、すでにBtoB事業において首都圏のセンターの稼働率がかなり切迫していたことが挙げられる。そこで、BtoC事業の強化を進めるうえで既存施設をリ二ューアルするか、新たに拠点を設けるか、選択肢が二つあったが後者を選択。それがなぜ埼玉なのか。才田氏は次のように語る。

「東日本全体を見ると、埼玉に拠点を置くと多くのエリアの配送を効率化することができます。例えば北関東は現在仙台から出荷していますが、埼玉になると距離が縮まる。同じように東京北部は東京が、東京都下は横浜がカバーしていますが、こちらも埼玉の方が近い。名古屋から出荷している長野・山梨も、圏央道、中央道、関越道を使えば遠くない。それらのエリアの中央に位置する新拠点として、埼玉が最適ではないかと。同センターではBtoB事業も合わせて行うため、消費地に近く近隣の事業所数が多いこともメリットとして挙げられますし、ワンフロア7,000坪の形状や設備性能の面も決め手となりました」。

同社はこれまで、物流センターはすべて賃貸施設で確保してきた。それに対し、今回の埼玉物流センターでは自社保有に踏み切った。その理由を聞く。

「これまで物流センターを構築してきた時期は、売り上げの伸びが急成長しているなかでした。賃借なら拡張しやすいですし、仮に売り上げに計画差が生じた場合でも対応がしやすい。今回購入を決めた理由の1つはヤフーさんとの提携と、もう1つは当社の売り上げが2 0 0 0 億円を突破し、BtoB事業は特に安定成長の段階に入っていること。10年15年のスパンで考えれば、物流センターは賃借より購入で確保した方が、コストメリットが高いと判断しました」。

今、通販業界では物流物件が取り合いになっているという。早めに拠点を押さえ、なおかつ自社仕様で効率化が図れるということであれば、賃借より買ったほうがリーズナブルである。賃借拠点が多い競合他社の状況と比較しても、購入によりコスト構造が変わり、優位性を出すこともできる。

販売戦略と物流センターの両輪で新拠点の稼働率を向上

埼玉物流センターは、地上3階建。屋根に太陽光のパネルを設置し、壁面緑化で外観を演出。全館LED照明を採用するなど、環境と経済性に配慮した。

「建物はオリックス不動産株式会社が建設中の物件を開発途中に購入したもので、もともとマルチテナント型に作られており、余分な工事も発生しました。しかし、結果としては望み通りのセンターを構築できそうです。新拠点ができるタイミングで3万アイテムから7万アイテムに倍増させますが、もちろん、朝10時までに受けた注文は、当日18時~21時に配送、もしくは翌日配送というサービスレベルは堅持します」と才田氏。

アスクルは、フルフィルメント事業についても戦略上進めていく考えだ。フルフィルメント事業についてアスクルでは次のように考える。

「事業としては、出店企業とアスクルが共存共栄するかたちを模索しています。商品選定、在庫管理のリスクをシェアし、その代わりにアスクルが安く物流サービスを提供する。この事業は、出店企業に物流の効率化や購買機会の増大といったメリットをもたらし、同時にアスクルは物流インフラの稼働率を向上できる。お互い売り上げが増えるという、共存共栄のモデルが確立できればベストでしょう」(同氏)。

また、アスクルは自らの物流インフラを使って、ヤフーショッピングの出店企業にも物流サービスを提供していこうとしている。在庫管理のリスクはあるが、フルフィルメント事業は拡大戦略や他社との差別化における有効な手段といえよう。

最後に、目前に迫った7月の新拠点オープンに向け、才田氏に意気込みを聞いた。

「ヤフーさんの言葉で“爆速”という言葉がありますが、今まさに、この爆速で物事が進んでいる状態です。埼玉の拠点選定は昨年7月、そこからマテハンの設計を行い、商品を入れて、今年7月に稼働。あり得ないほどのスピードで事業が進められています。まずは確実にオープンさせることが第一。その上で、アイテムをどうするかでお客様へのサービスを向上させ、コストも落とし、売り上げがつくれる物流センターにしていきたいです」。

近年のeコマースの世界は、半年、いや3ヶ月のサイクルで絶え間なく進化している。戦略の決定から一刻も早くセンターを立ち上げ、売れる土壌、戦える環境をつくることが重要だ。

「まず販売戦略があり、それに応じた物流センターをつくるのが通常の流れ。我々は販売戦略に対して物流センターがそれを乗り越え、再び販売戦略が追いつく。これを繰り返して伸びていきます」(同氏)。販売戦略と物流センターの両輪で、事業を進化させていく。これが、アスクルの物流拠点戦略である。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2013年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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