050-5447-7862

平日 9:00〜17:30

物件を探す

事業用不動産のあらゆるニーズを網羅するサービスと豊富な実績で、お客様の課題を解決する最適なソリューションをご提案いたします。

お役立ち情報

CBREが手掛けた、さまざまな業種・規模の移転事例のご紹介を始め、オフィスや物流拠点の移転に役立つ資料・情報をご提供しています。

マーケット情報

独自収集したデータを元に、不動産マーケットの市況を分析予測し、市場変化をいち早く捉え、ポイントをまとめた市場レポートを配信しています。
また、物件レポート、業界トレンド情報など、事業用不動産の最新情報、トレンドを配信しています。

CBREについて

事業用不動産の分野において、世界有数の企業であるCBRE。日本国内におけるその強み、拠点、会社概要をご紹介します。

ヘルプ

物件検索の使い方や、会員サービス、よくあるご質問など、当サイトをより便利にご利用いただくための情報をご紹介します。

仲介業者様はこちら

賃貸オフィス・事務所の記事

企業の災害対策プログラム <リスクマネジメント編>

2004年10月、土曜日の夕方に発生した新潟県中越地震。住民の被害は大きく、交通機関もストップし、また、この地域に所在している企業の活動は すべて停止した。完全復旧までには、相当の時間がかかると予想されている。そんな中、1週間経過した時点で、すでに操業再開した企業もあれば、目処がつかない企業もあった。この差はどこから来るのだろうか?

工場設備や生産しているものの種類の違い等もあるが、企業が災害復旧計画(Disaster Recovery Plan:DRP)を事前に用意していたか否かが、立ち直りの差に大きく関係してくるものと考えられる。地震の到来を防ぐことはできない。それならば、発生直後からの迅速なリカバリプランが、人にも企業にも必要だ。非常事態を想定して、綿密な災害復旧計画を立て、それに基づいた準備と訓練をしておくことが 要求される。

社員とビジネスという企業の財産を、いかに守るか。事起きたとき、すばやく立ち直りビジネスを再開することが、企業のリスクマネジメントにとって重要である。

文 ワークプレイス・リサーチ・センタ 代表 小田 毘古
http://www.odahiko.com/

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

DRPとBCP

災害が起こることを想定して準備するプログラムは、次の三つから構成される(図表1)。

(1)Emergency Preparedness(事前準備)

人命の被害をミニマムにするために、事前にできることを最大限準備しておく。建物の耐震対策はもとより、防災組織をつくり、設備・備品、緊急連絡網、非常食を用意し、計画的な防災訓練、救護訓練などをきめ細かく行う。

(2)Disaster Recovery Plan〈DRP〉(災害復旧計画)

DRPは、避難を中心とする初期対応と、その後の建物や通信網などのインフラ復旧が主なものである。

(3)Business Continuity Plan〈BCP〉(事業継続計画)

 企業の事業が立ち直るための計画であり、これに基づき、必要なインフラ復旧の優先度と事前に準備するものも違ってくる。BCPは、それぞれの事業 部門が立案する必要があり、工場ならば生産ラインをどのようにして稼働にもっていくか、顧客サービス部門ならばお客様の被害を復旧させる手段、体制を考え ておく。また、そこで働く従業員とその家族のサポートも、BCPにおいては重要である。それぞれの事業部門は、施設・総務・人事部門との密接なコミュニ ケーションを行い、BCPを固めるとともに、インフラ担当部門はBCPに必要な事前準備と復旧計画を作成し、災害に備える。この準備と災害発生時の迅速な 対応が、お客様の企業に対する信頼度に差をつけると言っても過言ではない。

部門調整はFM担当者の腕の見せ所

例えば、停電に対する自家発電は何時間必要か、情報途絶を予想して衛星電話を用意す るか、バックアップのデータセンタを設けるかなどは、すべてBCPの要求に基づいてインフラ部門が準備する。事業部門によって要求が異なり、すべてを満た すためには膨大な費用がかかることも間々ある。この調整のために、FM担当者には専門的な知識も必要である。

ただし、いくら事業部門が3日以内の立ち上げを要求しても、新潟県中越地震の例を見ると、周りの道路や通信インフラが対応しておらず、一企業が自家発電 などで復旧しても外とのつながりが機能せず、仕事にならない場合もある。このことを想定して、必要かつ企業ブランドを傷つけない範囲の投資に抑えておくこ とも大切である。

DRPの具体的手順

災害が起きたら第一に考えるべきことは、可能な限り従業員および会社資産の安全とセキュリティを確保し、ビジネス運営の継続と迅速な復旧を図ることである。DRPの具体的な進め方を、ある外資系企業の例を中心に紹介する。

1.方針策定-災害が起きたら、まず対策本部(図表2)

図表2 Disaster Recovery Planのポイント

方針1:全社対策本部を中心とした復旧

緊急事態発生後、被災した事業所とビジネスの復旧作業を円滑に効率よく行うため、全社対策本部を企業内の現地に近いしかるべき事業所内に設置す る。災害状況等、必要な情報はすべてこの全社対策本部に集め、災害復旧計画(DRP)をベースに復旧作業を行う。各ビジネス部門は、個別の復旧プラン (BCP)を策定し、全社対策本部の支援を受け、復旧作業を行う。

方針2:事業復旧の優先度

最優先するものは、従業員およびその家族を含めた人命の安全である。

  • 人命の安全確認の後、被災した事業所のインフラ復旧を行う。
  • 事業部門の業務復旧は、原則として早急な顧客支援が必要な業務を優先する。被災状況や各事業部門のBCPに定めた方針等をベースに、災害対策本部長(社長)の決裁により決定する。各事業部門の責任者と担当者は、BCPを常に最新のものにしておく。

方針3:クライシス・コミュニケーション

マスコミを中心とした社会とのコミュニケーション対応を誤ると、企業の存続をも揺るがす二次的なクライシスに発展する可能性がある。本部長、広報の許可なくして、個別、単独判断での社会的コミュニケーションを行わない。

2.災害深刻レベルの定義による行動

災害が発生した場合の深刻レベルを以下のように定め、それに基づいたアクションをとる。

MINOR Interruption(レベル1)

全社および各事業所で、4時間以内に復旧可能な軽微な機能低下で、影響を受ける人数も少ない場合。

(例) 全体ではなく、限られた単独コンピュータの機能損失等の軽微なハードウエア損傷/ 地震・火事・雷・水害等による2時間以内の電力供給停止/2~3時間程度の全社通信回線の停止/地震・火事・雷・水害等による一部の従業員の住宅被害

MAJOR Interruption(レベル2)

復旧に4~48時間を要する事業所機能の部分的停止で、相当数の関係者に影響が出る場合。

(例) 4時間以上48時間未満の電力供給停止/4時間以上48時間未満の通信インフラ機能停止/国内地震震度5以上の圏内に事業所・オフィス・多数の従業員住宅・重要顧客がある場合

CATASTROPHIC Interruptions(レベル3)

事業所全体の壊滅的被害で、主な通信関係サービスが機能しない。部分的機能回復でさえ、相当日数を要する場合。

(例) 地震・火事・水害等で事業所の設備が完全に破壊され、大々的な設備交換、補修を要する場合/電源・空調等の電気的設備が2日以上使用できない場合/通信途絶で外部との接続が全くできない(2日以上)場合

新潟県中越地震や阪神淡路大震災は、まさにCATASTROPHIC(大惨事)レベルであり、レベル3の対応が必要となる。災害による事業所機能停止、深刻レベルとその影響は、下記(図表3)のように、一覧表にしておくことが望ましい。

3.通報および初期対応

通報および初期対応について、フローチャートで全体の流れを説明し、それぞれの責任と判断基準を明確にしておく(図表4)。これによると、深刻レベル1程度は総務部内で処理し、レベル2以上となると全社対策本部設置で対応することとなる。このフローが機能するかどうかの検証のために、仮想訓練をしておくことも必要である。

4.インフラ復旧

被災した事業部門や機能が復旧計画を実行できるよう、被災場所のインフラを早急に立ち上げる。担当役員のリーダーシップの下、インフラ担当部署(総務、施設、環境、人事、経理、法務、情報技術、広報)は総力を結集してインフラ確保等に努める。
総務部長は、インフラ復旧計画の企画、立案を行い、原則的には災害対策本部長(社長)の承認のもと実施するが、実行案の規模が小さい場合や、急を要する場合は、自らの判断(権限委譲)で実行する。

1.MALO(最低限の業務水準)実行のための条件

MALO(Minimum Acceptable Level of Operation)は、各事業部門のBCPに定義する必要がある。事業所毎のインフラとしての必要項目には、次のようなものがある。

  • 人命の安全を保つことができる
  • 建物の安全確認がされている
  • 電力が供給されている
  • 通信回線が機能し、情報サービスが使用できる
  • 輸送、交通手段が確保されている

さらに、以下の2点もあれば望ましい。

  • 水が供給されている
  • ガスが供給されている

2.被災した事業所のインフラ確保のために必要なリソース(人・設備)

2-1) 地震等被害が広域に及ぶ場合、人命の安否確認のため、人事部門が中心となって対策本部の指示、支援を受け対処する。

2-2) 建物損壊、火災でのスプリンクラー放水後の水の除去等復旧処置は、施設担当部署を中心に進める。施設担当部署は、外部リソース、インフラ関連企業との日頃 のコミュニケーション、復旧リソース一覧表等を準備して、いつでも復旧に短時間で取り組めるようにしておくことが大切である。

2-3) 通信回線、情報サービスは、情報部門のBCPに従い復旧計画を実行する。

3.インフラ確保達成のためのステップ

被災した事業所のインフラ確保を達成するためのアクションをステップに分け、優先順位を付けておく。同時に、各ステップを誰が責任を持って実行するかを明 確にする。責任者は氏名だけではなく、復旧チームの中での役割を明記する。当該人物に連絡が取れない時に、チーム内での役割分担が明確でないと代行する場 合に支障が予想される。

4.インフラ確保が計画通り達成されているかどうかの判断基準

復旧計画に従って復旧が実施された結果、インフラ確保が予定通り達成されたかどうかの評価を行う。この際、何をもって達成と判断するかをあらかじめ決めておき、災害時の混乱の中で冷静な判断をするための基準とする。

5.インフラ確保が達成できない場合の処置

所定の期間内に、被災した事業所のインフラ確保が達成できないことが判明した場合の手順について、手続きを明確にしておく。達成が不可能であることを知ら せるべき人・グループは、そのことによる影響を一番受ける事業部門・機能であるのは当然だが、検討する代替案も併せ、できるだけ早い時機に伝え、途中経過 も継続報告する。

5.復旧後の全体の評価

復旧作業全体をレビューし、DRPがいかにうまく機能したか、またはしなかったかを評価し、その結果を、既存のDRPに反映させることで、さらに実用的なDRPを未来の災害に対して準備する。

どの企業も災害対策マニュアルを用意し、組織も存在する。しかし、それらが機能するかどうかを検証しているところは少ないのではないだろうか。 “お飾り”になっているこれらの体制を生きたものにするためには、定期的な仮想訓練やトレーニングが必要だ。この機会にやってみられることをお勧めした い。

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

上記内容は オフィスジャパン誌 2004年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

記事を探す

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。
ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は右記のフォームからお問い合わせください。

物件相談フォーム