近年、オフィス賃貸借契約において、CPI(消費者物価指数)連動型賃料や経済指標連動型賃料が提示されるケースが増えています。物価上昇や市場変動を背景に、賃料を固定せず調整する仕組みとして導入が進む一方、テナント側にとっては判断の難しい条件でもあるためご相談も増えてきております。
特に再契約の場面では、仲介会社を介さず、テナントとビルオーナーが直接交渉するケースも多く、こうした賃料条件を初めて提示され戸惑うご担当者様も少なくありません。条文の意味を十分に理解しないまま合意してしまったり、将来の賃料変動リスクが見えにくい条件を受け入れてしまったりする懸念もあります。
本記事では、新規契約・再契約を問わず、テナントが賃料条件を確認する際に共通して押さえるべきポイントを整理します。CPI連動型賃料等の特徴を踏まえつつ解説し、実務判断の参考となる視点を提供します。
【資料ダウンロード】契約前におさえるべき5つのポイント

CPI連動型賃料の契約条件の設計において、テナントとして特に着目すべきポイントをまとめました。賃料変動リスクをどこまで許容しどこで抑えるのかを明確にし、リスクをあらかじめ固定化しておくことが非常に重要です。
CPI連動型賃料の注意点
① 指数連動=オフィス市場連動ではない
物価指数連動型賃料における注意点の一つは、「指数連動」と「オフィス市場連動」が必ずしも一致しないという点です。CPIは全国平均の物価動向を示す指標であり、オフィス賃料のように、個別ビルごとの需給関係や立地、競争環境といった要素によって形成されるオフィス市場の動きを直接反映するものではありません。そのため、市場賃料が横ばいで推移している局面であっても賃料が上昇したり、周辺ビルの賃料が下落している状況でも賃料が上昇したりする可能性があります。
② 業績と無関係に固定費が上昇する
指数連動型賃料では、会社の業績やオフィスの利用状況にかかわらず、物価が上昇すれば賃料も連動して上昇する仕組みとなります。そのため、インフレ分を自社の商品やサービス価格に転嫁しにくい業種においては、業績とは無関係に固定費負担が増加し、収益構造に影響を及ぼす可能性があります。
③ 条件次第では「青天井」になり得る
物価指数連動型賃料にキャップ(上限)が設定されていない場合、インフレが加速する局面において、想定を超える賃料上昇が生じる可能性があります。問題となるのは「CPI連動に合意すること」そのものではなく、賃料改定の条件設計が十分に整理されていない点にあります。上限や調整ルールを設けないまま導入した場合、将来の賃料リスクを適切に管理できなくなるおそれがあります。
④ 将来賃料の水準が読みづらく、予算説明に苦慮しやすい
CPI連動型賃料は、将来の賃料水準が物価動向に連動して変動するため、契約締結時点で「数年後の賃料がいくらになるか」を明確に示すことが難しい側面があります。その結果、社内の予算策定や中期計画、経営層への説明において、将来賃料の見通しを定量的に示しづらく、説明や合意形成に時間を要するケースも想定されます。社内の計画策定や経営判断において、この不確実性自体が大きなハードルとなる場合があります。
賃料連動の成否を分ける条件設計
テナントにとって最大のリスクは、将来コストの不透明性(=管理不能リスク)にあります。単に「CPI連動」という条件に合意するだけでは、インフレが加速した局面において賃料が事実上青天井となり、想定を超える負担増につながるおそれがあります。その結果、年度予算や中期経営計画におけるコスト管理が難しくなり、意思決定や社内説明に支障をきたす可能性も否定できません。 だからこそ、これまでに整理してきた各ポイントを踏まえ、賃料変動リスクをどこまで許容し、どこで抑えるのかを明確にしたうえで、リスクをあらかじめ固定化しておくことが非常に重要です。
今後、CPI連動型賃料を含む変動型の賃料条件は、さらに増えていく可能性が高いと考えられます。その際に重要なのは、「連動するかどうか」そのものではなく、どのような条件設計のもとで連動させるかです。賃料条件の成否は、連動の是非ではなく、条件設計の中身によって決まると言っても過言ではありません。
以下のような状況に心当たりがある場合は、専門家への相談を検討するタイミングかもしれません。
- CPI連動条文を初めて提示された
- 社内説明用の賃料見通しが作れない
- 条件が妥当か確信が持てない
CPI連動型賃料の基本的な考え方と、契約時にテナントが必ず確認すべきポイントを分かりやすくまとめた資料を公開しています。詳細は、以下より資料をダウンロードしてご確認ください。

不安や疑問がある場合は、ぜひCBREにご相談ください
CBREでは、契約条件の整理から賃料改定シミュレーションとその比較資料のご提供、意思決定までサポートいたします。

