WELL Building Standard®は、設計、建設、運用のベストプラクティスと、エビデンスに基づいた医学的および科学的研究を組み合わせ、人の健康とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)に影響を与えるさまざまな機能をパフォーマンスベースで測定・評価・認証する評価システムです。
2014年10月発表のv1、2018年5月発表のv2pilotを経て、2020年9月15日に最新版であるWELL v2が発表されました。より良い建物を通じて人の健康をサポートし、向上させるための10のコンセプト(空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ、コミュニティ)で構成されています。あらゆる用途のプロジェクトの評価に使用できます。
健康経営や働き方改革等を目指すプロジェクトにとっては、その目指すべき方向性や達成度をグローバルな指標で評価できることから、わが国でも大きな関心が集まっています。
WELL認証を受けるためには、必須・加点項目を満たしていることを示す書類審査の他、現地にて空気質・水質・光・音・温熱感指標などの環境測定と各種チェックにおいて要件を満たす必要があり、全ての必須項目(Precondition)を満たし、必要な数の加点項目(Optimization)を取得することが必要です。また、点数に応じて、4段階(110~80Points:Platinum、79~60:Gold、59~50:Silver、49~40:Bronze)の認証レベルが設定されています。
なお、認証取得後にも継続的なビルト・エンバイロンメントの維持を求めており、WELL認証の有効期限は3年間で、継続には再認証が必要となります。
出典:Green Building Japan https://www.gbj.or.jp/well/about_well/
関連記事:「企業の未来を拓く健康オフィス」
https://www.cbre-propertysearch.jp/article/wellness_office-index/
CBREにおけるWell-beingの取り組み
弊社CBREは、米国LAのグローバルHQオフィスにおいて、世界で最初(2014)にオフィス用途でWELL認証を取得しておりますが、その際に移転費用の投資額と、従業員のウェルビーイングの改善と生産性向上効果の関係を、3年間のROIで360%と試算しました(関連記事【健康経営を実現するワークプレイスの新潮流「ウェル標準」。】はこちら)。
オランダ・アムステルダムのチームは、2018年に「Healthy Office」というレポートを刊行しました。現地のトゥエンテ大学との共同研究として実施され、CBREアムステルダムのオフィスで124名のワーカーを3つのグループに分け、7か月間にわたり、最初の2か月間は従来環境で就業し、残り5か月に亘って、5つの施策(①グリーンの増加、②サーカディアン照明の導入、③クリームたっぷりのドーナツの代わりにアボカドとほうれん草のスムージー、④瞑想・ヨガ・昼寝・マッサージの導入、⑤軽い運動)を月替わりで実行し、パフォーマンスの定量評価とインタビューで効果を測定しました。タスクパフォーマンスの客観的な数値の改善効果で評価したところ、③アボカドとほうれん草のスムージーが45%と最も効果が高く、次いで瞑想が30%、次いでサーカディアン照明、軽い運動、植物が10~12%という結果が得られました。栄養、メンタルバランス等、人間の生理機能に最も直接的に作用する項目で高い効果が出ており、興味深い結果となっています。
CBRE “Healthy Offices Research”:https://www.cbre.com/netherlands/healthy-offices-research
室内環境と生産性の関係:室内環境が良くなればワーカーの生産性は向上します
ワーカーの生理機能に優しい環境とそうでない環境との比較を創造した場合、結果的に生産性に開きが出る事は想像に難くありません。
これまで数多くの研究がグリーンビルディングと労働生産性を関連づけており、Well-beingなオフィス整備のためには、計画段階からこうした観点を反映する事が重要です。