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賃料変動率に見るバブル期と現在

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2006年9月1日

バブル期においては、かつてないほど急激に賃料が高騰した。しかしそのピークは、全国一律ではなく、各都市のマーケットの需給バランスや、経済的要因によって、異なる様相を示す。ここでは主要都市の賃料変動率と空室率の経年推移をたどり、過去の状況を詳細に検討することで、昨今のバブル感を冷静に捉えたい。

東京

東京 賃料変動率・空室率

東京の賃料が急激に上昇した年は80年、87年、91年である。これは次ページの地価変動率の商業地でのピーク年とほぼ連動する。特に、85年から87年にかけて激しい上昇が見て取れるが、85年はプラザ合意が成され、円高不況への対応からバブル経済の発端とされる金融緩和政策が行われた年。東京では他の都市とは異なり、タイムラグなく、まさにこの年を境にオフィス賃貸市場が大きく変化したことが分かる。

バブル期には、87年、91年と賃料変動率のピークが2回あった。87年から90年にかけては、空室率の低下とともに賃料変動率が低下。賃料上昇期ではあるが、まず、テナントニーズを集めた高額賃料のオフィスが市場から消え、比較的グレードや立地の劣るビルが後に残ったため、その上昇率は10%程度に落ち着いたのだろう。90年は、円・債権・株のトリプル安と、経済のほころびの一端が見え隠れしていたことも、抑制の一因となったと考えられる。興味深いのが91年の再ピーク。すでに時代は空室率上昇の兆しが見えていたが、逼迫した市場に出回った物件は、継続するバブル感と旺盛な企業の増員意欲を背景に、超強気な賃料設定を行った。これが如実にグラフに反映されている。

バブルの清算がとりあえず終息するのは97年頃。以降は、10年近く見慣れたマーケットが続く。すなわち、空室率は若干の上下動はあるものの5%前後で推移し、賃料は毎年ジリジリと低下を続けるといった状況である。

さて、現在の東京はどうか。参考までに、05年の年間データと、最新06年6月期の四半期データとの変動率をグラフに示した(グラフ右端、紫で表示)。空室率は低下しているものの、賃料低下傾向は継続し、下落率はさらに拡大。近年、市場に変化が出てきているとはいえ、巷で言われるようなバブル感は一部の地域、物件に限定される。市場の動きが最も顕著な東京においても、このようなマクロのデータ上には、表面化していない。

横浜

横浜 賃料変動率・空室率

横浜のオフィス賃料バブルは91年である。当時のマーケットの逼迫度合いは東京以上で、賃料変動率の38%上昇という数値は、全都市の通年での最高値である。同年の空室率は極端に低く、ゾーン別に見ても、横浜西口、関内、新横浜がそれぞれ0.1%、0.6%、0.2%という状態で、僅かな空室に需要が集中し、超強気な賃料設定が行われた。バブル崩壊後は、東京から1年遅れで賃料低下局面に入るが、僅か1年のバブルだったためか、賃料変動率のマイナス傾向は東京よりも小幅にとどまっている。

直近の空室率は4.0%と、近年の低下基調を継続。場所によっては2%前後と需給が逼迫している。ここに示してはいないが、近年の3ヵ月毎の賃料変動率を見ると、市場が限定されているためか平均賃料の底打ち感は東京を上回っている。

六大都市(東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸)における地価と変動率の推移

横浜 賃料変動率・空室率

高度経済成長期を中心とした都市への継続的な集中は、土地の需給バランスにおいて常に需要過多の状況を創出し、都市の地価はほぼ一貫して上昇を続けていくこととなる。

グラフ点線は財団法人日本不動産研究所がまとめている六大都市(東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸)の市街地価格指数(2000年を100)を時系列で示したものである。

これを見ると、バブル経済期の地価、特に商業地の上昇が際立っていることが視覚的にも確認される。ここからはバブル経済期の特異性のみがうかがえるが、これを対前年変動率で見ると異なる傾向が見出せる〔グラフ実線〕。

対前年比で見たときの地価(3用途平均)の変動が最も高いのは1961(昭和36)年、次いで高いのは1973(昭和48)年、バブル経済期の1988(昭和63)年は三番目である。また、1961年に最も上昇しているのは工業地、1973年は住宅地、1988年は商業地とそれぞれ用途も異なっている。

地価の高騰は、実需に加え投機的な資金が大量に流入することで発生する

(以下『不動産白書2006』10ページに続く)

『不動産白書2006』(株式会社生駒データサービスシステム発行)「第1章 特集-不動産温故知新」より抜粋

大阪

大阪 賃料変動率・空室率

東京と比較して大きく異なるのは、非常識な賃料上昇、つまりバブルが起こった時期である。東京の賃料変動率ピークの87年は、大阪ではむしろ抑制傾向にあり、そのピークは91年、92年と、かなり遅れたものとなっている。91年の変動率は、対前年比11.3ポイントの急上昇。ピークは92年で、賃料上昇率19.3%を記録。空室率の推移から判断するに、91年の需給バランス逼迫による賃料急上昇後、翌年に募集に出された空室が、さらなる賃料上昇を後押しした恰好だ。その賃料上昇がはたして適正だったかどうかについては、後の状況が証明する。グラフに示された紺色のボリュームが示すように、年毎の賃料下落率の水準は際立って大きい。

最新の状況を見ると、06年6月期の空室率は6.8%とここ数年ではもっとも低い数値である。バブルというには程遠いが、いくばくかの回復傾向が見られるといったところか。

名古屋

名古屋 賃料変動率・空室率

基本的には大阪のスケールダウン版といった様相であるが、大阪とは異なる部分に、名古屋オフィス市場の底固さが表れている。あくまでマクロデータに基づくものだが、例えば91年から92年にかけ、大阪では需要逼迫に伴い新たな募集をさらに強気で貸し出そうとしたのに対し、92年の名古屋では、すでに賃料変動率を低下させている。もちろん賃料は上昇しているものの、少しでも空室が出始めると、すぐさま対処するオーナー気質を反映したものであろう。また、93年から賃料下落期となっているが、バブルの後始末も少なく、以降、現在まで下落率が低水準で推移していることなど特筆すべきポイントだ。全国各都市で長期的に比較すると、名古屋オフィスマーケットは健全性が際立っているといえる。04年以降は、賃料上昇率、空室率ともに好調に推移。最新調査の6月期は空室率6.8%で、低下傾向が続く。

地方4都市

地方4都市 賃料変動率・空室率

地方都市の賃料変動率は、いずれも90年に一旦低下する。この年は、トリプル安に端を発する金融不安、加えて総量規制に起因する市況停滞による賃料の踊り場であった。対して91年はいずれの都市でも賃料の急上昇が起こる。当時の弊誌の記述を見ると「いつまで続くか懸念されている好景気も意外と底堅く、企業活動は堅調。人員採用や設備投資意欲になって表れており、それに伴いオフィスマーケットでは空室率が軒並み各都市で低下。賃料も急上昇」とある。ただし、あまりの急騰ぶりに、当時、好立地志向の強かった銀行・証券などの金融機関は、それまでの高賃料水準下での精力的な店舗拡大路線を手控えだした。一般企業でも、高賃料を嫌い郊外型拠点に転換する動きが出始めたのもこの時期である。再びバックナンバーから引用すると、「オフィス市場の現状は、先行き不透明さにとまどいを感じながらも、それがいまだ顕在化していない」とある。はたしてこの記述から、今、学ぶ必要はあるやなしや。以下、都市別に見る。

札 幌

91年に空室率は0.5%まで低下。同時期に賃料が急上昇したが、94年以降は、賃料変動率はマイナス傾向が続き、空室率も上昇傾向に。現在は需要拡大局面に入り、最新の6月期の空室率は6.8%まで低下した。

仙 台

89年に政令指定都市となった後、空室率は91年、92年ともに0.2%と逼迫。バブル崩壊後も、東北支店経済の後押しによって比較的好況であったが、98年、99年の大型供給の影響で悪化傾向に。以降、供給抑制が図られ、現在8%台まで空室率が低下。仙台駅周辺では品薄感も拡がる。

広 島

バブル期以降、供給抑制が続いた上に企業業績回復による需要拡大が進んだが、金融不安等による地方拠点縮小で、空室率は97年以降上昇傾向に。最新市況では、四半期毎の空室率は5期連続で低下。07年の新規供給計画が市場にどう作用するかが注目される。

福 岡

91年には13%強の賃料上昇を記録し、地方都市で最も高騰したのが福岡だ。その分、バブル崩壊後の賃料調整が若干見られるが、需給バランス自体は安定。逆に、バブルの後始末が済んだ97年以降に需要が鈍化し、03年には11.8%まで空室率が上昇した。最新の空室率は8.4%と改善傾向。賃料下落も落ち着きを見せる。

※当該タイトルにおけるグラフは、1978年~1995年については『季刊オフィスジャパン 1998 SPRING 創刊20周年記念号』所収「オフィス市場"20年"変遷史(PARTⅡ:賃料・空室率で見る20年)」、1996年~2006年については弊社発行『オフィスマーケットレポート』よりデータを抽出、これを元に編集部にてグラフ化した。また、賃料変動率は通年データの前年比であるが、グラフ右端、紫で示した2006年6月の賃料上昇率は、2006年4~6月の四半期の平均賃料と2005年通年の平均賃料とを比較したものである。最新の動向として、参考として掲載した。

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上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2006年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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