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賃貸オフィス・事務所の記事

業界識者の見解

業界識者の見解 1

「バブル」風説の影に隠れた真の価格下落要因に警戒が必要

早稲田大学
大学院ファイナンス研究科
教授 川口 有一郎

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

「今の市況はバブルではない!」データが示すこれだけの理由

ここ数年、不動産市況がバブルを迎えたとの論調が、マスコミによって喧伝されています。また最近では、不動産実務に関わるプレイヤーにまで、そうした懸念が取りざたされています。

確かに2001年以降、賃貸不動産のファンダメンタル価値(本来的な価値)は、80年代後半のバブル期に匹敵するスピードで急上昇しています。しかし、それは経済が回復しているからで、なぜバブルの再来と騒がれるのか、私には正直なところ分かりません。

その理由を説明する前に、バブルとは何かを定義すると、それは「合理的に説明できない価格の急上昇と急下落」であるといえます。

例えば、賃料1円に対するファンダメンタル価値である不動産価格収益倍率(10年物国債利回り+不動産リスクプレミアム+賃料の潜在的成長率)と、実勢価格収益倍率の格差を見れば判断できるでしょう。先のバブル期である87年には、ファンダメンタル価格収益倍率30に対して、実勢価格収益倍率は60以上でした。つまり、賃料1円に対して30円の価値しかないビルが60円で売買されるという乖離が起きていました。しかし、現在はほとんど格差がない状態なのです。

また、一般に取引時の名目キャップレート(還元利回り・期待収益率)が2.5%を下回るとバブルの芽があるといわれていますが、70年代および80年代後半には、物価変動を加味した実質のキャップレートがマイナス、つまり金利の方が高くなっていたほどでした。しかし、現在は3%程度を維持しています。

これらの点から見て、今日の不動産市況がバブルではないと結論付けられるのです。

一極集中は当然の帰結心理的不安は無為な所業

では、なぜバブル懸念が生まれているのか。最大の誤解は、不動産をまるで債券であるかのように、イールドギャップ(キャップレート-長期金利)のみで議論している点でしょう。不動産にはキャピタルゲインやキャピタルロスがあり、リスクプレミアムや期待成長という変数も含めて価格が決まるものです。ですから、イールドギャップがマイナス、イコール即バブルにはならないのです。

もう一つ、実感値としてのバブル懸念がいわれます。その理由としてあるのが、(1)不動産に対して銀行から様々なルートで資金が流れ込んでいる、(2)地方は下落しているのに東京や一部の大都市圏で価格が上昇していることからの相対的な印象です。

バブル成立には、必要条件としての過剰流動性(カネ余り)と、過大な期待という十分条件の二つが整わなければなりません。

確かに05年秋以降、不動産への銀行の月額貸し出しペースがバブル期に近づき、資金が流入しキャップレートが急激に縮まったことで上昇感はあったでしょう。しかし、これはゼロ金利によって、ようやく不動産価格が上昇傾向を見せたという程度であり、バブルの再来というほどの上昇ではなく、波及効果もありません。

海外からの資金流入も、グローバルな視点から見た不動産サイクルの中で、日本経済が回復基調にあることが評価された結果に他なりません。

そして、さらにいえば十分条件も満たしていません。過去を総括しても、キャップレートがマイナスだった70年代は高度経済成長がそれを吸収した。80年代はその頃と同じ期待(幻想)を抱いたのでバブルが起きた。しかし、人口減少や財政の逼迫など、様々な問題を抱えた今日の日本に、過大な期待を寄せる人はいません。その意味でもバブルは起こらないのです。

また、一部地域の価格の急上昇についてですが、そもそも局地的なバブルなどありえるのでしょうか。大都市と地方都市、あるいは都心でも一部地域への偏りなど二極化が進んでいます。急上昇している銀座を例にとっても、賃料がどんどん上がるスーパーAクラスがある一方、今でも下がっているビルもある。バブルならもっと面的に広がるはずなのに、特定の地域で高い収益性が認められた物件が上昇しているだけでしょう。また、これから見境いなくこの傾向が広がるとも思えません。

しかも、上昇しているといっても、バブル時に10万円/坪だった賃料が急激に下落して、いまはやっと3万円/坪に回復したという程度のものです。前例を超えればバブル再来かもしれませんが、成長するアジアの中で唯一、近代的なインフラを備え、ポテンシャルの高い東京のオフィスビルの賃料が、3万円/坪でMAXだとしたら、かえって困る人が多いのではないでしょうか。

その意味で私は、現在はむしろ健全な方向に向いていると感じています。

バブルでなくとも下落は起こる問題は金融と不動産の「格差」

では、バブルではないから価格の下落はありえないかというと、そうではありません。その最大の不安材料が金融行政と不動産行政の格差です。

先日、金融庁は2005年度に発動した金融機関に対する行政処分件数が、前年度比で約3倍の250件と発表しました。その中で、REITや私募ファンドに対して業務改善命令が出されているのですが、その原因の一つに挙げられるのが金融行政の論理と不動産実務のビジネス慣行との格差です。

統計的にみると、現在の日本の建物の多くは建築基準法を満たしていないといわれています。例えば、専用住宅を一部店舗に変えたり、確認を受けていない看板があったりすることが、街のあちこちで見かけられるといわれています。また、日本の多くの土地の境界は確定していません。

これは、従来の不動産・建設業界のビジネス慣例では見過ごされてきたことであり、監督官庁も実害がなければ不問に付してきた節があります。しかし、プロセスを重視する金融の視点では、実害がなくてもルール違法はアンフェア、確定していないものは不適格。つまり融資できないことになるのです。

REITや私募ファンドにとって、ファンドに組み入れる時点では見過ごされたものが、出口ではペナルティが課されるとなると、買い手は資金調達ができないという事態も想定されます。もちろん、REITの場合は売らなければ問題はないですし、あるいはフルエクイティで買う投資家が現れればいいのですが、現実には考えにくいでしょう。

この「新しい規律」は無視できないほどの大きな影響力を持っていると思います。日本の建築規制などの不完全性という、想定外の「壁」の出現により、不動産への融資が遮断される可能性が出てきたように思います。不動産金融市場がより規律あるものに進化することは歓迎すべきことですが、従来はエンフォースメントされなかったものが猶予期間もなく突然強制されると、市場はちょっとしたパニックになるかもしれません。

また、先ごろ日銀はゼロ金利の解除を発表しました。1970年以降、日銀が金利を上げた過去4回は、いずれも世界経済が乱調に入るタイミングと一致していました。前回のバブル崩壊も、不動産融資の遮断がなければ、あんなに急激な下落はなかったかもしれません。今回の融資ルートの動脈硬化プラス金利上昇となれば、流動化は一気に鈍化する危険性を秘めているのです。

定期的なリバランスが支える健全な不動産市場

政府は、ゼロ金利政策を解除した後のGDP成長を3%と試算しています。仮に今後20年間、年平均で4%成長すれば、日本の不動産は80年代バブルの水準に戻ります。3%成長ということは、不動産価格が今以上に上昇すると予測しているのと同じです。

一方、統計的に見ると、10年タームにおけるボラティリティ(ビルの価値の変動)は、日本の場合、30~80%の変動率であり、最大では±80%の幅で上下がありうると思われます。

我々日本人は、前回のバブルにおいて、第二次世界大戦敗戦と同等の約1000兆円の富を失いました。二度と同じ失敗を繰り返さないためにも、投資家としてすべきことは、「超短期転売」と「買い持ち」(バイ&ホールド)との決別でしょう。

値上がりが始まったからといってキャピタルゲイン狙いの超短期転売を繰り返せば、バブルは必ず再来します。また、一方で買ったら永久に保持し続けるというバイ&ホールドは、不動産の供給を細らせ、根拠もなく価格を押し上げる結果を招きます。

期限のない投資は、投資とはいえません。定期的に保有している不動産の価値を見直し、5~7年くらいでリバランスするような市場になれば、需給関係がある程度の変動性でバランスし、流動性が維持されることになります。

最後に、風説に踊らされず、きちんとした論理を持ち、プレイヤー全員が規律のある行動をとることが、不動産流通市場の健全な姿だと考えます。

業界識者の見解 2

カネ余りの金融市場が不動産市場をゆがめ
新たな形のバブルを引き起こす

株式会社ネットワーク88
代表 幸田 昌則

史上空前の空家率が物語るマンション・貸家の供給バブル!

現在、我が国の住宅市場では、全国で650万戸を超える空き家を抱え、空き家率12%超という異常な事態が起こっています。地域別にみると、平成15年の統計におけるトップの大阪市では、総住宅数145万8050戸に対して空き家数25万5400戸と、空き家率は17.5%に上っています。

以下、この空き家率の高い都市を順番に挙げていくと、千葉市、仙台市、名古屋市、広島市、京都市と地方大都市が名を連ね、しかも、これらほとんどの都市で、調査する年毎(5年毎)に空き家率が上昇しているのです。ちなみに、東京23区は10位で空き家数49万1450戸。平成10年からの5年で空き家率はやや改善(-0.2ポイント)したものの、11.2%という状況。つまり、足りないと思われがちな大都市圏ほど住宅が余っているのです。

その主因となっているのが、近年に起こったマンション供給ラッシュです。首都圏における新築分譲マンションの供給は、ピークこそ2000年の10万戸弱ですが、94年から継続して高水準を維持。近年も依然として毎年8万戸台をキープしています。また、アパートなどの貸家着工数も99年から増え続け、04年、05年とも15万戸を上回っています。さらに建売住宅でも、04年には70万戸を突破し、05年もそれに近い数字で推移しているのです。

最近のある新聞発表によると、築後1年以内を除く東京都心部の賃貸マンションの空室率は、4.5%とありました。この数字だけ見れば、住宅市場は健全かに思えます。しかし、新築を含むと8.3%に上昇、1年以内の新築のみでは、なんと30%もの空室があるのが実態です。地域的な需要の強弱、人口の増減はあるにしろ、マクロで捉えると、今後人口は明らかに減少傾向に入るにもかかわらず、高度経済成長期を上回る勢いで住宅が供給されている。80年代後半が価格上昇のバブルであったのに対し、現在は、供給過剰のバブルの時代を迎えているといえるのです。

超低金利と金融緩和が支える未曾有の供給過剰

では、なぜこのような事態が起こったのでしょう。一つには、景気低迷と経営環境の変化により、企業から多くのマンション建設用の種地が市場に供給されたことが挙げられます。しかし、売れ続けなければ供給はストップするはず。これらの物件が作られ続け、売れ続けた理由は、近年の超低金利にあるのです。

数年前までは沈静化していた不動産業への銀行からの融資が、ここ数年で急増しており、現在では50~60億円の融資など当たり前といわれています。この資金をバックに開発が行われています。さらに買い手側から見ても、賃貸で月15万円の家賃が払えるなら、金利が安いため新築マンションや戸建が十分買える。言い換えれば、超低金利は家賃を割高に見せる効果があり、多くの人が100%ローンかオーバーローンでさえ住宅を購入できるのです。加えて、新築には各種の優遇ローンが認められている。そのため、一般には新築価格の80~85%で推移するといわれる中古マンションが、現在では50%程度に下落しています。価格について詳しくは後述しますが、この新築価格と中古価格の乖離が、現在の市場価格の構成がいびつなものであることの一つの証左といえるでしょう。

徹底した新築マンションへの需要の集中。そして、仮に100戸のマンションが建設されると、周辺の賃貸住宅の方々が主に購入者であることから、新たな空き家が出現するのです。

また、銀行に預けていても利息がつかないのでアパート経営でもしようという人が増え、貸家が増えました。つまり、銀行のお金が様々なかたちで不動産関連に流れ込み、超低金利と金融緩和が供給バブルの後押しをしたといえるのです。

大量供給でも、分譲価格や賃料が下がらない不思議

これだけの大量供給が行われれば、本来なら新築マンションの分譲価格や賃貸住宅の家賃は当然下がるはずなのに、依然として高止まりで維持されています。

その理由の一つは、低金利のため月々の住宅ローンの支払額が家賃以下になり、買いやすいため、デベロッパーの言い値で販売できてしまうことです。金利が高ければ値を下げなければ売れない。つまり、本来の需給関係なら買い手市場になる。これを低金利が支えることで供給者側にとってメリットのある売り時が続いているのです。

これほどの完成在庫を抱えながら、マンションデベロッパーがこれまで延命できた大きな要因には、買い手としての不動産ファンドの存在があると私は見ています。現在、一部のファンドでは、新築マンションをまとめて購入して賃貸に回すという手法をとっています。主に売れ残った物件の最終取得であるため、大幅ディスカウントとなっているようですが、売り手にとっては、利益は見込めなくとも、少なくとも資金の回収はできるでしょう。それを、ファンドが高級賃貸マンションとして貸し出しているわけですが、彼らの多くは収益性を重視して賃料を決定しているので、おおむね相場の2~3割り増しの設定になっています。これが、賃料が下がらない要因の一つ。ただし、これら物件群の入居率は低水準なことが多く、極めて危うい状況ということができます。

また、先に述べた大量供給によって潤ったデベロッパーやアパート専業メーカー、住宅メーカーは、近年、こぞって上場しました。彼らは株式公開したことで、常に株主からの利益拡大の圧力がかかっています。そのため、供給を休みたくとも休めないのです。

2005年以降、全国で450棟の超高層ビル建設(オフィス・住宅含む)が計画されていますが、うち300棟が首都圏に供給される予定です。このボリュームにはたして心配はないのか。不動産業は裾野が広いため、小泉政権の政策の下、経済活性化の大きな原動力となったのは事実ですが、行き過ぎれば必ず値下がりの原因になるはずです。

一時的な需要拡大で解消されたオフィスビルの空室率

一方、オフィスビルに目を転じると、2003年問題として懸念された空室率も、今日では急速に回復しています。一時は10%を越えていた平均空室率が、今では逼迫した状況ともいえます。その背景にあるのが、景気回復に伴う求人の増加です。景気低迷時に経費削減のためリストラを断行した企業が、その回復とともに、団塊世代の大量退職が起こる2007年問題に合わせて、積極的に求人を行っています。そのため、将来需要をも含めた事業スペースの確保に、オフィス移転需要が急増しているのでしょう。

それ自体は結構なことですが、一方で二極化が進んでいるのも事実です。例えば、地方でも北海道では札幌、九州では福岡など、そのエリアの中核都市の空室率改善には目覚しいものがありますが、そこから広く周辺地域に波及してくわけではなく、あくまでも局地的な現象にとどまっています。

つまり、人口減少が著しく、今後の消費マーケットの成長が望めない地方では、特に希少性の高い一等地で、さらに安定した収益性が望める物件でない限り、需要は生まれないはずです。にもかかわらず、一等地とはいえ、大阪の御堂筋のように、全国でも事業所の減少が最も大きいエリアの地価が上昇するといったことは、カネ余りによる所業以外のなにものでもないように思われます。

カネ余りの現実が第2のバブルを呼び起こす

改めていうまでもなく、不動産業界は金融で動かされています。繰り返しになりますが、金融が本来の需給バランスをゆがめる根源なのです。

リゾート地である軽井沢では、5年前に3億円だった物件が、今年始めに13億円で売買されました。この間、いくつもの転売があったのですが、その中にエンドユーザーは不在であり、いわゆる業者間の「転がし」による価格の上昇です。銀行のカネ余りが、業界への巨額融資となり、前回のバブル期の再現ともいえる状況が起こり始めているのです。

戦争等で破壊される危険の少ない日本では、長期的に見ればオフィスも供給過剰になることは必然でしょう。こうした中、カネ余りだからといって実需のない不動産の取引が連続すれば、いずれ第2のバブルを引き起こすことになるのです。

不動産に携わるそれぞれのプレイヤーが、先の需要を見越して、賢い選択をしてくれることを望んでやみません。

業界識者の見解 3

広域化、多様化する不動産取引
不動産証券化も、商品設計力が試される時代に

メリルリンチ日本証券株式会社
不動産ファイナンス部
部長 根岸 憲一

不動産ローンの借り手とCMBS投資家の仲介役

弊部の事業は二つから成り立っています。一つは、不動産ファンドなどの不動産投資家に対し、ノンリコースローン(借主の信用力に頼らず、不動産の収益力のみを評価する貸付)を提供する融資事業。もう一つは、そのような貸付を裏付に、CMBS(商業用不動産担保証券)と呼ばれる不動産証券化商品を組成する証券化事業です。これは、ローンを償還リスクの異なるクラス毎に切り分けた上で格付けを取得し、金融商品として金融機関などの機関投資家に販売するもので、1件のローンだけを対象にCMBSを組成することもあれば、複数のローンを束ねて一つのCMBSを組成することもあります。

つまり私どもの事業は、ローンの借り手である不動産投資家と、CMBSに投資する不動産証券化商品の投資家との橋渡しをするようなものです。両者の需要を理解することが求められますし、結果として両者の動向を観察できる立場にあるわけです。

昨今、CMBSの対象である不動産、また、不動産投資家や不動産証券化商品の投資家の間で、様々な動きが出てきています。ここでは、不動産市場および不動産金融市場で、最近目にしている変化についてお話したいと思います。

多層化が進む不動産投資家

まず、不動産市場の動向ですが、全般的に売り手市場が続いていると思われます。4~5年程前までは、都心部のオフィスや住宅などの箱型不動産(オフィスや共同住宅等)が中心に取引されていました。取得競争が激しくなるにつれ、投資対象の範囲が地方の中核都市へと広がり、一方で倉庫やショッピングセンター、ビジネスホテルなどのオペレーション型不動産への投資も盛んになりました。今では地方のオペレーション型不動産の取得競争も激しくなり、キャップレートが低下しています。

このような状況を踏まえ、最近よく、不動産の価格が"バブル"の様相を呈している、という議論を耳にします。ただし、値上がり益や含み益などを狙って投資がなされていたバブル経済時とは異なり、現在の取引価格の上昇は、収益目標であるキャップレートの設定を下げることにより引き起こっています。このため"バブル"状態にあるかは、実取引のキャップレートが適正な範囲内にあるかどうかで判断すべきと思われますが、画一的に断ずるのはなかなか困難です。

キャップレートとは、目標とする投資リターンであり、投資リターンは投資によるリスクに見合うべきものです。そして、リスクとは投資に伴う不確実性であると考えます。不確実性は、同一物件に投資しても、投資家の能力や経験により異なるはずです。例えば、同じ地方のマンション投資であっても、その地域で何度もマンション経営をしている方と都心のオフィスビル投資しか経験したことがない方とでは、効率よく稼働率を保てるかどうかには差があります。誰が投資するかにより、不確実性の度合い、つまりリスクが変わってくるのです。

投資家の投資経験や運営能力にかかわらず、一様にキャップレートが低下し、横並びの水準で売買がなされていたら、中にはバブルを思わせる、リスクに見合わない金額での投資がなされているといえるのかもしれません。オペレーション型不動産では、さらにこれら実力の差が、顕著に収益力に現れます。立地と建物の構造・設備というハード面が揃えば、比較的一定の結果が期待できる箱型不動産への投資と違い、オペレーション型不動産は、事業運営のノウハウというソフト面が事業の成否を左右し、運営者の能力や経験により、同一不動産でも収益力が大きく変わってくるからです。

競争原理に基づいて行われる不動産売買では、特に現在のような売り手市場においては、競合相手よりもキャップレートを下げて購入しなければなりません。価格の上昇は必然なのですが、仮に隣り合う不動産が同水準のキャップレートで取引されていても、買い手の投資経験、運営能力、地域への精通度などの差によっては、一方は投資リスクに対し適正な価格で購入していながらも、他方は投資リスクに見合わない値段で購入されていることがあるわけです。

金利上昇&デフレ脱却地方物件の取引も動き出す

金利が上がると不動産プレミアムは縮小するため、最近の金利上昇は不動産投資に影響を与え得ます。不動産プレミアムというものがあって、これは不動産投資に伴うリスクを負うことにより、得ている投資リターンを指します。全くリスクをとらない投資として、国債の購入が考えられ、これにより得られるリターンの割合をリスクフリーレート(risk free rate)といいます。リスクフリーレートには10年物新発国債の利回りを用いることが多いのですが、現在のこの水準はだいたい2%です。これに対し、不動産投資により得られるリターンが5%だとすると、差の3%が不動産プレミアムとなります。

リスクフリーレートが一定で、不動産投資によるキャップレートが低下すると、不動産プレミアムが縮小します。また、金利が上昇していく環境にあると、やはり不動産プレミアムは縮小します。欧米と比べると、日本の不動産プレミアムはまだ確保されている状況にあり、多くの不動産投資資金が海外から流入しています。しかしながら、不動産プレミアムが一定割合以下になった場合、そのリターンが不動産投資に伴うリスクに見合わないと判断され、資金の流れが少なくなっていく可能性があります。

物件取得時のキャップレートが低下傾向にあり、金利が上昇傾向にある現在、一定の不動産プレミアムを確保するには、期中のキャッシュフローを改善することが有効な手段の一つだと考えられます。必要なリノベーションの施工、賃料の増額交渉、優良テナントの誘致、有利な条件でのノンリコースローンの調達などが挙げられるでしょう。このような方法で、市場全体の不動産プレミアムが縮小する環境の中でも、効率よくリターンを上げていくことが可能です。

デフレ脱却についてですが、これは私どもが見ている範囲に限定しても、その傾向が目につくようになってきています。都心では高層ビルの建設が多く見られるようになりましたし、好立地のオフィス物件においては賃料の上昇や空室率の低下が進んでいます。買主も以前は在京の不動産ファンドなどが中心でしたが、今では地方で実需の投資がなされるようになっています。それも県庁所在地などの核都市のみならず、郊外の産業道路沿いの流通拠点なども取引されています。

このように不動産市場が広がってくると、多種多様な物件を対象に、様々な投資経験や能力をお持ちの方が取引を行うようになります。不動産投資家と、不動産証券化商品の投資家との橋渡しを行う私どもにも、不動産投資家の投資戦略の実現性や物件の質、市場に対する先見性など、あらゆる観点から精査できる目利きが求められるようになっています。

高まるCMBS投資熱の裏にシビアなリスク判断の目

次に、不動産金融市場の動向ですが、CMBS投資に変化が出てきました。98年にCMBSが日本に登場して以来、CMBSのスプレッドは継続して縮小してきました。これは不動産市場および不動産金融市場が整備、拡大してきたことと、金利が低水準で推移してきたことに因るところが大きいと思われます。ところが今年に入り、スプレッドの拡大が見られるようになってきました。これは金利上昇局面におけるボラティリティの増加、超大型案件の登場による需給バランスの変化、姉歯事件など不動産関連不祥事の発生などが影響したと考えられます。

全般的にどのCMBSもスプレッドが拡大していく中、弊社がアレンジし、7月7日にクローズしたJML Maynds信託受益権(単一不動産を裏付としたCMBSの発行額として今年最大、共有物件を裏づけとしたCMBSとしては過去最大;編者注)は、かなりタイトなスプレッドで完売することができました。特にシングルAからシングルBまでの各クラスは、昨年同月に発行されたCMBSに大変近いスプレッドでご購入いただけました(中にはJML Maynds信託受益権の方がタイトなクラスもありました)。

全般的にスプレッドが拡大している中、JML Maynds信託受益権のスプレッドが一年前の水準で売れたことや、同時期に販売された同格付クラスの販売状況を見ても、案件毎に需要の大きさが異なる市場になってきたことを感じています。

不動産金融市場は今後も発展の見込み

今後、不動産プレミアムがどこまで維持できるかという問題はありますが、近年はキャッシュフローを重視した不動産取引が確立されており、また不動産の流動性も飛躍的に向上しています。まだ市場に流通していない不動産のストックもあることを考えると、突然に不動産市場や不動産金融市場が縮小することはないだろうと考えます。

CMBSの対象物件が多岐にわたるようになり、また不動産証券化商品への投資家の目は、より案件を峻別するようになっています。私どもに求められるのは、不動産投資家の戦略を理解したノンリコースローンを提供し、同時に、魅力あるCMBSを投資家に提供していくことです。これまで以上に、不動産および不動産金融双方における目利き、知識、経験、が求められ、そのような能力のある人材をそろえた組織づくりが、今後、重要だと考えています。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2006年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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