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株式会社東京 | 成長ベンチャーに訊く

ケーススタディ

2021年11月16日

東大の大学院生たちが学生時代に立ち上げた、株式会社東京。彼らが独自のアイデアをもとにビジネスフィールドとして着目したのは、誰もが利用するエレベータという空間だ。2017年の創業時から、広告媒体となる製品開発と設置数の増加に力を入れ、収益化を実現したのは昨年から。「エレベータという限られた空間、限られた時間だからこそ、集中できる」。そう語る、代表取締役の羅 悠鴻氏に事業とオフィスの変遷について訊いた。
代表取締役CEO 羅 悠鴻 氏

エレベータという空間を、
オーナーとテナント従業員をつなぐ「ハブ」に。
そして「ビルのOS」に。
限られた場所と時間に可能性を見いだし、
世の中を大きく変えていく。

株式会社東京
代表取締役CEO 羅 悠鴻

株式会社東京

見ていることに気づいた「貼り紙」 エレベータが道を拓くきっかけに

株式会社東京は、ビルのエレベータやエントランスで情報発信をすることができる「エレベータ専用メディア」の運営を生業としている会社です。現在は、避難所マップやビルメンテナンス情報、広告などを発信できるエレベータホールのデジタルサイネージ「東京エレビGO」を自社運営で提供しており、また三菱地所との合弁会社「spacemotion株式会社」では、プロジェクターでエレベータ内に多様なコンテンツを投影する「エレシネマ」というサービスを展開しています。 

どのプロダクトも設置費が無料であるため、オーナーサイドとしては導入時の負担がなく、都内の設置実績は設置待ちを含めるとすでに1,000台に上ります。私たちの会社は、モニターに表示される広告から収入を得るビジネスモデルです。

私はもともと東京大学の理学部の出身で、小惑星探査機「はやぶさ2」の観測責任者であった杉田教授の研究室に所属していました。卒業後は大学院に進み、宇宙生物学を専攻していたのですが、その時に宇宙の生命探査には1500億円ほどの予算が必要だと知ったんです。それで、教授にそれだけの金額を集めるにはどうしたらよいのか質問をしたところ、「アメリカの大統領になるしかない」と言われました。はやぶさ2の予算の10倍に当たる金額なので、日本ではつく可能性がかなり低く、アメリカでも政治レベルの意思決定(ケネディ大政権でのアポロ計画など)があってはじめて出る金額なんですね。僕がアメリカの大統領になるよりは起業して稼いだ方が難易度が低いと思ったので、「じゃあ自分で起業して稼ごう」と思ったことが、創業のきっかけです。

創業を思い立った後は、実際にどのような事業にするのかアイデアを練っていきましたが、ある日学内の研究棟のエレベータに乗ると、「貼り紙」を自然と読んでいることに気づいたんです。しかも内容は英語で書かれていたり、他の学科の情報であったり、自分に関係ないことだとしてもつい目が行ってしまう。その時、エレベータに乗っている時間は本質的に暇で、工夫次第でもっと有効に活用できると思ったことが、今の事業につながっています。

新たなビジネスモデルを構築し シェアオフィスを徹底的に活用

株式会社東京

会社の設立は2017年2月、大学院3年目の時です。私のほか、大学の友人2人と創業し、当初はエレベータのリノベーション事業を構想していました。打ち合わせはカフェで行い、エレベータの模型を作っては、ビルオーナーや不動産管理会社へ飛び込み営業を繰り返し、広告主にもアプローチをする毎日。成約実績はゼロに等しかったものの、ダメもとでメッセージをしたのがきっかけでご縁をいただいた方から紹介が広がり、並行してビジネスモデルのブラッシュアップを続けました。ちなみに、その方は弊社の第1号の株主でもあり、今の弊社のクライアントの大半はその方からのご紹介がきっかけでご縁をいただいています。その後、広告が変わるたびに内装シートを貼り替える従来の商品ではなく、カメラ付きタブレット端末に変更することにしました。これなら、低コストで広告を手間なく変更でき、エレベータ内の防犯カメラとしても利用でき、広告料から収入を得る私たちが設置費も負担すれば、ビルオーナーには無料で防犯カメラを導入いただけることになります。

ビジネスモデルをそのようにシフトしてからは、秋葉原の会員制シェアオフィスを拠点とし、社員を採用するようになりました。交通至便で、広い共用スペースと設備が利用できる上、スタッフが増えてもその分の会員費を追加するだけです。固定のオフィスを借りるよりコストパフォーマンスがよく、最終的にはメンバーが15名に至るまで利用していました。しかもそのシェアオフィスは、著名企業出身のエンジニアさんが利用していたり、交流会も開かれたりするなど、ビジネスで分からないことがあった時には気軽に周りの方に相談できる場所でした。もう、ずっと居続けたいと思ったくらいです。

倉庫は「会社の魂」が宿る場所 未開拓の地へ営業機能とともに移転

株式会社東京

私たちは設置オペレーションを完全に内製しているため、扱う部材が増えれば当然置き場所が必要になります。はじめはシェアオフィスの棚で間にあっていましたが、次に個室を借り、最終的にはシェアオフィス近くの約15坪の倉庫を借りることに。しかし、そこもすぐに手狭になってしまいました。秋葉原のシェアオフィスを営業拠点として残し、倉庫のみ移転することも考えましたが、開発業務も行っていた倉庫は、いわば会社の魂が宿る場所です。ロジチームと営業/開発チームとのコミュニケーションに支障をきたさないことが最優先であると判断し、 2021年4月、倉庫と営業拠点を兼ねる新たなオフィスとして、新宿御苑の現在のビルに移転しました。

移転先候補としては都内23区で、私たちが営業面で未開拓のエリアを中心に検討しました。悩ましかったのは、倉庫としての機能や賃料相場を重視しすぎると営業エリアを外れ、日々の営業活動で移動コストがかかってしまうことです。私たちのビジネスモデルは、製品を導入いただくことそのもの以上にアフターフォローが大切です。特にビルオーナーには、設置後に設置物件で現物をご覧いただきながらご活用のアイデア出しをしたり、さらなる活用方法のご提案をしたりする必要があります。そのため、倉庫としても営業拠点としても機能する立地を慎重に探し、この物件を見つけることができました。

めざすのは「ビルのOS」 エレベータの可能性をさらに追求していく

弊社は創業後4年間は製品開発と設置件数の増加に力を入れてきたので、売上が生まれるようになったのは広告出稿が増え始めたこの1年ほど前からです。収益化ができた今となっては、投資対効果で評価ができる、いわば「金融商品」になれたので今の例えば10倍にメンバーをスケールさせることができる状態です。それだけ増えた時にはまた新たなオフィスが必要になるかもしれませんが、単にタスクをこなすだけでなく、オフィスに来ることで社のメンバーが刺激を受けられるような場をつくりたいです。それがメンバー個人個人にとってオフィスの存在がメリットとなるならば、場に対しての投資は惜しまないつもりです。

また、今後はエレベータをビルオーナーとテナントの社員さん個々人をつなぐ、コミュニケーションのハブにしていきたいと考えています。さらにその先にはスマートフォンのようにインタラクティブなデバイスへと変態し、最終的にはビルにおけるOSのような存在になるようにプロダクトを発展させていこうと考えています。確かにエレベータは移動の際に、わずかな時間だけ滞在する空間です。しかし、今はモバイルインターネットの世界でも、検索機能よりもレコメンド機能がメインとなっているサービスが主流になってきているので、エレベータの滞在時間の短さはそこまでデメリットにはならないんだというのが我々の仮説です。実はエレベータをコミュニケーションを創発する空間にしたいという風に思いついたきっかけには、創業初期に試みた実証実験があります。当時自分が住んでいたマンションでエレベータ内に小さな黒板とチョークを設置して、住民のコミュニケーションが生まれるかを観察していたのです。エントランスホールにもホワイトボードはあったはずなのですが、面白いことにエレベータ内の黒板の方にだけ書き込みがあるという結果になりました。アイデアをかたちにしていくには、試行錯誤していくしかありません。私たちはこれからも、エレベータという空間の可能性に着目していきたいと考えています。

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2021年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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