賃貸オフィス・賃貸事務所の記事

さくらインターネット株式会社

ケーススタディ

2017年9月19日

大阪のランドマークに本社移転!社員の働きやすさと働きがいの実現、
さらには顧客接点の強化でビジネス創造を狙う。

執務室

データセンター事業を展開するさくらインターネットは、2017年6月からグランフロント大阪の新本社で業務を開始した。新オフィスは35階のワンフロアだが、現状では半分だけをオフィスに利用し、残り半分は将来のオフィス拡張を見据え未工事のまま残されている。この大胆な本社移転の背景にある同社のオフィス戦略と、社員の働き方改革を伴うプロジェクトの全貌を取材した。

人員増・オフィス拡張を見据え梅田のランドマークビルに本社移転

執務室

レンタルサーバやクラウドサービス大手のさくらインターネットは、1996年の創業以来、データセンター事業に特化することで、「高品質なサービスを低価格で提供する」ことをモットーとしてきた。ビジネスの規模や企業の成長に合わせたサービスラインアップを用意し、今では法人約19万4000社、個人約27万8000人の顧客を抱える(2017年4月現在)。大阪本社と東京支社の2事業所には、それぞれ開発やカスタマーサポート、営業、広報宣伝、総務をはじめとするバックオフィス担当のスタッフが勤務するほか、東京、大阪、石狩(北海道)のデータセンターにも技術スタッフが常駐する。3~4年前から東京エリアが主要開発拠点になっているが、「大阪で起業したからには、大阪に貢献したい」という田中邦裕社長の強い想いから、大阪に本社を置き続けている。

今年6月には、大阪本社をそれまでの堺筋本町から、梅田のランドマークであるグランフロント大阪に移転した。移転の主な理由は、建物の老朽化と人員増によるスペース不足である。旧本社ビルに入居してから10年以上が経ち、当初160坪・約50人体制でスタートした大阪本社は、人員増に伴いビル内での増床を繰り返した結果、230坪・約90人体制へと拡大。同社管理本部 情報システム室 室長の武中洋親氏は、「一昨年から全社的に採用を増やしており、今後さらに社員が増えることを考えると、旧拠点でのさらなるオフィス拡張には限界がありました」と話す。また、近年は技術系の勉強会や、サービスを紹介する顧客向けイベントをオフィス内で開催する機会も増えていたという。「イベント開催のための会議室や設備が不足していたほか、社内では、建物が古いためお客様を招待しにくいという声も上がっていました。お客様に来ていただきやすいオフィスにしたいというのも、移転の大きな理由です」(武中氏)。

それでは、移転までの経緯を振り返ってみよう。移転先の選定を本格化させたのは2015年12月。その1年後に控えた創業20周年に向けて、同社は様々な社内改革に取り組んでいたが、本社移転もその一環として進めていくことになった。まずは武中氏がCBREに物件の情報収集を依頼。交通の便がよく立地バリューも高い梅田周辺を移転候補地と定め、従来の倍の広さとなる400坪程度の物件を探していった。梅田ならデータセンターが置かれている堂島にも近く、往来しやすいことも理由の1つだった。とはいえ、「梅田周辺の空室率は2%と低いうえに、新規オフィスビルの竣工予定もほとんどなく、物件探しは難航しました」と武中氏は話す。

セミナー室

状況が動き出したのは、2016年8月。大阪を代表する大規模ビル・グランフロント大阪が候補に挙がり、当初はワンフロアの半分を借りるつもりで交渉を進めていたが、「将来を見据えて広めに借りよう」という田中社長の一言で交渉が一気に進展。同年秋には、グランフロント大阪の35階ワンフロア約850坪を借りることで合意した。そして、創業20周年を迎えた12月には、契約を結ぶとともに、本社移転の社内発表に至ったのである。

創業20周年に向け働き方改革と並行実施

執務室

本社移転の動きと並行して進められた社内改革の1つが、働き方改革である。2015年頃から、社員の働きやすさと働きがいを実現する職場づくりに意欲的に取り組んでおり、例えば東京支社では、エンジニアの意見を取り入れたエンジニア専用フロアを設けたほか、大阪本社では開発チームがスピード感を持って仕事に取り組めるよう、あえて本社ビルとは別にエンジニアのための拠点を設置した実績もある。そうした流れを受け、2016年9月には全社横断型の「さくらのワークスタイル・ワークプレイス構築プロジェクト」がスタート。大阪本社勤務の営業部 大角幸正氏をリーダーに、全国の拠点から20人超の希望者が集まり、働きやすいオフィスについて議論を重ねてきた。

本社移転の社内発表後は、このプロジェクトから切り出す形で、大角氏をはじめ大阪勤務のメンバーを中心とする移転プロジェクトが発足。付き合いのあったコンサルティング会社にプロジェクトマネジメントを委託するとともに、コンペによって設計会社や施工会社を決定した。プロジェクトのメンバーが新オフィスのコンセプトや実現したい職場環境を議論し、デザインに反映させていった。とはいえ、自分たちでゼロからオフィスを作り上げるのは初めての経験であり、苦労も多かったと大角氏は振り返る。「実現したいアイデアが後から後から出てきたため、一旦デザインが上がってきた後も、様々な変更を加えていくことになりました。自分たちの要望を現実とすり合わせていく中で、コストやスケジュールの管理にも苦心しました」。

全社初のフリーアドレス導入、社長を交えた座談会で社内説得

ロッカー
会議室

ワンフロア約850坪のうち、半分は将来の拡張に備えて未工事のまま残し、現時点では約440坪を使ってオフィスづくりを進めていくことになった。本社移転の狙いの1つに、拠点集約による社内コミュニケーションの向上があった。大阪エリアはそれまで、大阪本社と堂島データセンター、エンジニアが勤務する開発拠点の3ヶ所に分かれていた。開発拠点は、前述のとおり「社内ベンチャー」をイメージしてあえて本社ビルの外に置いていたが、「他部門メンバーとの交流があった方がアイデアが生まれやすいという考え方を重視した」と大角氏。そこで、開発チームを本社ビルに戻すとともに、オフィス内の壁をなくしてフリーアドレスを採用することで、部門の垣根を越えた連携を行いやすくした。これは、同時期に行われた組織改革において、縦割りの組織を改め、プロジェクト単位での働き方を推進していく動きとも連動している。

同社がフリーアドレスを採用するのは、大阪新本社が初の試みだった。そのため「社内の抵抗は少なくなく、理解を得るのに苦労しました」と大角氏は打ち明ける。社員の懸念には、自分の荷物はどこに置くのか、固定席がないと内線電話が取れない、などが挙げられたという。幸いにも田中社長の理解が得られていたため、社長を交えた座談会や、プロジェクトメンバーが中心になり自分の言葉で社員との対話を重ね、フリーアドレス実施に対して前向きな空気に変えていった。「何かを実現しようとする時、問題点を潰していくネガティブ・アプローチではなく、それを実現することでどんな良い面があるかにフォーカスするポジティブ・アプローチが当社のやり方です。フリーアドレスに関しても、懸念される問題点はとりあえず横に置き、『他部署との交流が増えるといいよね』といったポジティブな面に目を向けていきました。また、『もし運用がうまくいかなければ固定席に戻せばいいし、オフィスはその都度変えていけばいい』という社長の考え方も、社員の背中を押したと思います」(大角氏)。

カウンター
休憩ブース

フリーアドレスを導入すれば、固定席の袖机は廃止され、デスクまわりの荷物や書類はロッカーに収容することになる。そのため、ものの削減も課題だった。ロッカーサイズを意識できるよう40センチ四方の段ボールのモックを制作し、その中に納まる分量にものを減らすよう社員に働きかけた。「ものの削減は比較的スムーズに進んだと思います。フリーアドレスが決まったのは引っ越しの3ヶ月前でしたが、IT企業として元々ペーパーレス化が進んでいたことや、いざ決まったら前向きに取り組む社風も功を奏したと思います。私自身、荷物は従来の3分の1に減りました。新オフィスではキャビネットの数も減らしましたが、それでも空きがあるほどです」(大角氏)。さらに、デスクトップPCも原則として全員ノート型パソコンに入れ替えた。パソコンのメーカーやモデル、スペック、メモリ容量は普段から社員自身で選ぶことができるが、そんなところにも社員の働きやすさを尊重し、創造性と生産性向上を支援しようとする同社の姿勢が表れていると言える。

法人・個人顧客にスペースを開放、年間200イベント開催が目標

セミナー室

新オフィスでは、来客向けイベントスペースも広く確保した。54名を収容できるセミナールームに加え、エントランス付近には約130坪のオープンスペースを設け、打ち合わせテーブルを設置して来訪客に自由に使ってもらうほか、イベントも行えるようにした。オープンスペースは、なんとオフィス面積の約3分の1を占める。「ここで年間約200のイベント開催が目標」と大角氏。自社サービスを紹介するイベントはもちろん、法人・個人を問わず、社外主催のイベントにも無料で提供していくという。

同社がイベント開催に力を入れる背景には、自社の広告宣伝およびオープンイノベーションにつなげたいという狙いがある。武中氏は次のように話す。「エンジニアの方々に私たちのサービスを好きになってもらうには、テレビCMを打つよりも実際に触ってもらったり、うちの技術者とコミュニケーションしてもらったりする方が効果的です。イベント来場をきっかけに、私たちのことをもっと知ってもらえればと思っています。また、当社のお客様には、エンジニアやネットビジネスを展開する方々が多いので、業界を越えてお客様同士が交流できる場を提供することで、新たなアイデアやビジネスの創造を支援していきたい。私たちがそのハブになれればという思いです」。

イベント会場なら、グランフロント大阪にも立派なカンファレンスルームがある。しかし、「グランフロント大阪のレンタルスペースでは、明確な目的がないと利用しづらく、お客様同士が自然とつながれる場にはなりにくい。もっと気軽に来ていただくには、無料で開放されたオープンスペースが必要だと考えています」(武中氏)。このオープンスペースは、いずれはお客様であれば誰でも利用できる場所に発展させていく予定だという。

執務室

社員が働きやすい職場環境を実現し、さらなる生産性向上と企業の成長を目指した今回の大阪本社移転。インフラ事業者として、データセンターサービスを提供するのみならず、厳しい競争環境の中でともに新たなビジネスを創造する“ハブ”としての役割も担う覚悟だ。残りの約400坪は、将来の成長に合わせて、執務空間やオープンスペースなどに柔軟に活用していく予定だという。グランフロント大阪というビジネス最先端に新本社を構えた同社の今後の挑戦に注目したい。

プロジェクト詳細
企業名 さくらインターネット株式会社
施設 本社オフィス
所在地 大阪府大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪タワーA 35階
人員 407名(うち大阪本社 約90名)
開設時期 2017年6月
CBRE業務 オフィス移転仲介

 

上記の記事の内容は BZ空間誌 2017年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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