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株式会社ブリヂストン

ケーススタディ

2014年10月20日

「真のグローバル企業」の本社として事業継続性を担保し、
次の飛躍に向け、チームワークとコミュニケーションを活性化。

ブリヂストンは2013年11月、京橋に新築された「東京スクエアガーデン」に本社を移転した。本社に相応しい事業継続性を担保し、そこで働く社員のチームワークとコミュニケーションを活性化させるのが狙い。今回の特別企画、拠点構築ケーススタディのトップバッターは、タイヤ・ゴム会社として「真のグローバル企業」「ダントツ」を目指すブリヂストン。そのブリヂストンが次の飛躍のために行った本社移転を取り上げる。

築61年を経た旧本社ビル耐震性能と事業継続性が課題

1931年、福岡県久留米市で創業したブリヂストンは、当時から製品の輸出を積極的に推進し、現在では25ヶ国170ヶ所の生産拠点を持ち、150ヶ国以上でサービスを提供するグローバル企業へと拡大を遂げた。2006年以降、経営目標として「タイヤ会社・ゴム会社として、名実共に世界一の地位の確立を目指す」と掲げている。その一環として、2013年11月、事業継続性をはじめとするグローバル機能のさらなる強化を目的に、東京・中央区京橋の本社ビルから、同じ京橋の東京スクエアガーデンへ本社を移転させた。旧本社ビルは、耐震補強工事を実施していたものの、すでに築61年が経過。ビルの耐用年数が迫ることから、移転計画が持ち上がった。

「1951年にブリヂストンビル(旧本社ビル)が竣工して以来、当社にとって本社移転は、実に半世紀以上ぶり。全く初めてのプロジェクトと言っていいでしょう。しかも、グローバル化をさらに推進させようとする当社の中枢となる場所ですから、失敗は許されません。そんな中、まずベンチマークとなったのは、当社の『CSR22の課題』です。当社グループは『CSRは経営そのもの』という考えの下、CSR活動全般のレベルを上げることを目指して日々の事業活動を行っており、この取り組みは当社グループの『あるべき姿』へと繋がっています。また、2012年からは経営改革の第2フェーズとして『コミュニケーション・チームワーク・ボトムアップ』を打ち出しており、これらを具現化することで、本社に要求される新本社ビルの仕様を導き出していきました」。こう語るのは、今回のプロジェクトを中心となって進めていった、同社 総務・不動産管理ユニットの下村和恒氏である。「移転先の選定にあたっては、高い耐震性能と3日間以上の非常用電源を確保できるなどBCP面や、マーケットの賃料相場と比較して妥当な賃料であること、移転により社員の通勤環境が大きく変わらないこと、地域のランドマークとしての視認性が高くブランドイメージの向上に寄与することなどを要件としました。これらを満たす物件群についての調査・抽出を、プロジェクトの協力会社であるCBREに依頼したのです」(下村氏)。最終的に、これらに合致するビルとして候補に挙がった物件を検討した結果、東京スクエアガーデンに決定したのである。

同ビルにおいては、ビル内に自家発電機を設置することで、停電時にも通常時の70%程度の電源を供給することができる。この、非常時にもある程度の執務が可能となる点や、旧本社ビルの近隣にあった他部門が入居するビルとのアクセスを維持できること、ビル外壁へのロゴ看板設置により丸の内側や東京駅からの視認性が高まることなどが、最終的なビル選定の決め手となった。2012年9月、取締役会において新本社移転が承認されたのを受け移転プロジェクトがスタート。移転スケジュールは、ちょうど1年後となる2013年10月〜12月と決められた。

「真のグローバル企業」「業界においてダントツ」を目指すためには、「チームワーク・コミュニケーション・ボトムアップ」の実現が不可欠だとして、新本社のオフィスコンセプトを「チームワークとコミュニケーションの活性化」と設定。このコンセプトの実現に必要な8つの主要テーマを定め、テーマ別にワーキングチームが立ち上げられた。ワーキングチームには、関連部門よりメンバーを選出し、以降、オフィス空間に求められる具体的な仕掛けや機能をチーム単位の分科会で検討していった。

コミュニケーションを重視し 生き生きと働ける空間に

まず検討したのが、フロア配置である。今回の本社移転では、24階建ビルの最上部5フロア(20〜24階)に約1,300人が入居する。オフィスコンセプトを具現化するには、組織や機能をどのように配置すべきか、様々なシミュレーションを実施。その結果、5フロアの中間となる22階に受付や応接会議室、食堂など“人が集まる”機能を集約、さらにブランドコミュニケーションスペースを設け社内外のコミュニケーションの活性化を図ることとした。

「各階のオフィスレイアウトで最も意識したのは、チームの内外を問わず、いつでも、どこでも、誰とでも、場面に応じてミーティングや作業ができる空間づくりです。当社は旧本社からの特徴として、組織単位のマネジメントを中心とした『濃密なコミュニケーション』は得意とするところです。これと、組織を横断した『幅広いコミュニケーション』を両立させた、活発なチームワークを促す空間を構築したい。そういった理由から、執務スペースの周辺に、①オープンスペース、②セミオープンスペース、③セミクローズスペース、④クローズスペースといった4つのスペースを配置しました」(下村氏)。

具体的には、①執務デスクの周辺に、必要に応じて即座にミーティングできるオープンミーティングセットを配置した。②フロアの四方の角には、セミオープン形式の多目的スペースを配置。簡単なミーティングや、出張者のタッチダウンオフィス、リフレッシュスペースとしても活用できるようにした。③コア側を中心に、ミドルハイトのパーティションで囲われたセミクローズ型のコミュニケーションスペースを配置。ホワイトボード仕様の壁面や、PC投影用のスタンドモニターの設置により活発な議論を促す空間とした。④クローズ型の会議室にはテレビ会議用の回線を敷設し、一定数のスタンド型モニターやモバイルプロジェクターを設置することで、ペーパーレス会議はもちろん、遠隔地とのテレビ会議にもスピーディに対応できるようにしている。

ワンフロアの面積は約1,000坪であり、この大空間にメリハリをつけ視認性を高めるため、3つのテーマカラーを設定し柱や家具・カーペットなどに反映されている。皇居方面を望むエリアは、皇居の森をモチーフにしたグリーン。日本橋方面を望むエリアは、歴史と賑わいに溢れた街をモチーフにしたオレンジ。ベイエリア方面は、海と空をモチーフにしたライトブルー。旧本社から続く「京橋」という街への愛着が感じられる、従業員にとって親しみやすい空間を意識した。また、執務エリアにはユニバーサルレイアウトを採用するとともに、執行役員室やミーティングテーブルは可動式とし、組織変更に応じて柔軟に変えられるようにしている。

本社機能を支援する ICT環境とセキュリティの構築

新本社においては、チームワーク、コミュニケーションの活性化のためのICT環境の整備も重要な課題だった。社内基幹システムの無線LAN化や、海外からの出張者用に公衆無線LANを配備し、IP電話とWEB電話帳を活用したダイレクトコミュニケーション活性化の仕組みも導入した。

セキュリティ面では、本社機能を支えるための高度かつきめ細やかなセキュリティ管理の実現を目指した。「まず、社員や通常の来訪者とVIPの入退館のフローを完全に区分しています」と下村氏は説明するが、自社ビルや1棟借りであればまだしも、一般的な賃貸オフィスビルにおいて、ここまでの体制を構築することはなかなか難しいだろう。また、万が一の事態に備えて、社員や通常の来訪者の入退館履歴を集中管理する「在館者確認システム」を導入。万が一、災害が発生した際には、ビル防災センターと連動して在館者数やその氏名をリアルタイムで確認できるようにしている。

受付やレセプションスペースは、「ステークホルダーとのコミュニケーションの場」と位置づけ、来訪者へのもてなしに加え、企業のブランドメッセージを発信できる空間とした。22階の総合受付は、ホワイトを基調とした空間にコーポレートカラーの赤をポイントとして配置。空間を斜めにデザインすることで、22階の眺望と相まって「ブリヂストンの未来」を感じさせる狙いがある。レセプションスペースには、本社らしく世界各国の拠点が一覧できる「ワールドマップ」や、タイヤをモチーフとしたレセプションソファを設置。また、展示スペースにはブリヂストンの企業理念や取り組みをディスプレイを用いて表現している。さらに22階の食堂は、社員食堂としての活用に留まらず、社内外の各種打ち合わせやパーティ、イベントの会場として活用するなど、ステークホルダーとの様々なコミュニケーションを可能にしている。

企業理念である「最高の品質で社会に貢献」を持続的に推進するため、本社に相応しいオフィス構築を目指した今回の移転。それは単なる最新技術の導入といった単純なものではなく、創業当時から培われた考え方や文化、いわゆる「ブリヂストンらしさ」を昇華させた姿だ。新本社の役員会議室には、旧本社時代から約40年間、様々な意思決定が行われてきた大テーブルが、決断する熟慮断行の場の象徴としてそのまま移設されたという。「変らぬもの、みがくもの」。「真のグローバル企業」「ダントツ」を目指すための舞台が整った同社が、これからどのような「つぎの景色」を見せてくれるのか、期待したい。

小泉 浩

本社移転 マーケットの今



シービーアールイー株式会社
ビル営業本部 エグゼクティブディレクター 副本部長 小泉 浩

これまでは、事業効率化のためにオフィス移転できるのは業績好調な一部業種や企業に限られており、賃料負担能力の低い企業は移転をしたくてもできない状況が続いていました。しかし、景気が回復した今、業種や規模を問わず企業に余力が生まれ、積極的な理由によるオフィス移転が産業全体に広がっています。旺盛な移転マインドは、今年新規供給が予定される床の約8割がすでに内定済みであることからも明らか。6月に開業した虎ノ門ヒルズは、港区内ワンフロア1,000坪クラスの供給としては唯一だったこともあり、需要が集中しました。来年以降も、2015〜17年にかけてかなりの供給が予定されていますが、2015・16年竣工のビルのうち約3割の床が消化。今年の供給分が未曾有の需要の高まりにより埋まってしまったため、先物を押さえようとする企業が現れているのです。竣工前の物件に対するこれほど高い内定率は、過去例がありません。将来起こり得る建築費高騰や開発計画の遅れ、それによる供給不足や賃料高騰などのリスクも、こうした動きを加速させている要因だと言えます。さらに驚くことに、旧赤坂プリンスホテル跡地に2016年開業予定のオフィスビル2万3000坪のうち2万坪に入居テナントが決まっています。2年後の先物予約であり、しかもボリュームも大きいことから、今だからこそテナント有利に交渉が進められたようです。このように、先見性のある企業はすでに活発な動きを見せています。現時点で大量供給が見込まれるからといって、決して悠長には構えていられない状況と言えるでしょう。

 

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2014年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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