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賃貸オフィス・事務所の記事

にわかに動き出した企業の拠点戦略、その背景は?

大久保 寛

シービーアールイー リサーチ 大久保が語る
昨今の市況と各セグメント別の投資動向

シービーアールイー株式会社
リサーチ エグゼクティブディレクター 大久保 寛

企業の設備投資意欲が上昇 本格的な景気回復の兆し

実質GDPの推移と内訳

実質GDPの推移と内訳

景気回復を受けて、企業の拠点構築の動きが活発になってきました。オフィス、物流施設、店舗などのアセット全般において、業務効率や生産性の向上を目的とする投資が増えています。  その背景にあるのが、企業の設備投資意欲の高まりです。上のグラフは、GDPの対前年同期比の伸び率と、その内訳を示しています。折れ線グラフがGDPの対前年同期比、棒グラフがその内訳です。これを見ると、2008年から始まったリーマン・ショックを境に、GDPの対前年比が大きくマイナスに振れていることが分かります。その後、2010年頃から徐々に回復し始め、2011年に東日本大震災の影響で一時下落したものの、2013年からまたプラスに転じています。

GDPの伸びの内訳を見ると、2013年9月期(Q3)までは「個人消費」や「公共投資」が牽引しています。これはつまり、2013年までは「消費税増税前の駆け込み消費と公共投資(いわゆるアベノミクスの「第2の矢」)が効いただけで、本格的な景気回復とは言い難いのではないか」という見方を裏付けています。それが2014年3月期(Q1)になると「企業の設備投資」がプラス要因として目立って表れてきています。ようやく企業の投資活動が増加に転じてきたことで、景気が本格的な回復軌道に乗ってきたと言えるでしょう。景気の先行指標とされる「機械受注」が上向いていることからも、企業の設備投資は今後も盛り上がっていくことが予想されます。日本政策投資銀行による直近の調査でも、2014年度の企業の国内での設備投資は前年比15%増と、24年ぶりの高い伸び率になることが予想されています。

企業が設備投資に意欲的である理由の1つに、積み上がった企業の手元資金の有効活用が挙げられます。日本の上場企業の手元資金は過去最高水準にあります。これまでのモノの価値が下がり続けてきたデフレ下では、投資するより貯金するほうが正義だとして、企業は現預金を蓄積してきました。ところが、安倍政権のインフレ政策が奏功し、経済がインフレに転じると、今度はお金の価値が下がっていきます。現金の保有はかえって損になるばかりか、今の低金利では預金を殖やすこともままなりません。インフレへの転換の可能性が高まっている今、手元資金の有効活用に迫られた企業が、生産設備への投資をはじめ不動産の購入や賃借を含めた拠点構築への投資に向かっていると考えられます。

さらに、企業にはROE(株主資本利益率)を改善し、自社の株価を上げようとする狙いもあります。デフレ下で現預金を貯め込み、借り入れが少なかった日本企業は、ROEが低く、株価も他国に比べてやや弱めの状態でした。この状態を改善すべく、政府は株価対策にかなり積極的です。今年6月に公表された成長戦略(いわゆる「第3の矢」)においては、企業のコーポレートガバナンスを強化することを目的とした「コーポレートガバナンス・コード」の策定を盛り込みました。また、日本取引所グループは本年1月より、新たな株価指数「JPX日経インデックス400」を創設しています。この指数は、組み入れる企業の評価指標としてROEなどが示す資本効率にも着目しています。運用資産に占める株の比率を引き上げることが検討されているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)においても、日本株投資に当たっては企業の資本効率や収益性を重視する方針を明らかにしています。このような一連の動きを背景に、企業は自社の株価を高めるためにも、ROEの改善を緊急の課題として捉えているのです。

リーマン・ショック前の2006〜07年にも、好景気による不動産価値の高騰が懸念された時期がありました。今の状況とよく似ているという見方もありますが、現在は当時に比べて金利水準も低く、またオフィス賃料なども上昇基調に入ったばかりです。さらに直近の日銀の短観(全国企業短期経済観測調査)で大企業全産業の設備投資計画が前年度比7.4%増と前年度の2.5%を上回るなど、企業の投資意欲の高まりを見ても、本格的な景気回復はまさにこれからと言えるでしょう。  次からは、アセットごとの市場概況を解説します。

業務効率化を意図した拡張移転が増加傾向

1.オフィス

民間機械受注(4四半期先行)と東京23区オフィス稼働率

民間機械受注(4四半期先行)と東京23区オフィス稼働率

近年の東京23区オフィスマーケット

近年の東京23区オフィスマーケット

年別テナント移転理由の割合

年別テナント移転理由の割合

オフィス移転は、リストラのための移転を除き、経営にとっては前向きな「投資」と考えられます。実施に当たっては景況感に大きく左右されるため、景気が停滞気味だったこれまでは、工場再編など収益に直結する領域への投資に比べ、もっぱら後回しにされる傾向にありました。しかし最近は、拡張移転や新設、館内増床など、いわば「オフィスへの投資」が増えており、景気回復に伴う企業体力の改善がここでも見られます。

本社移転では、分散されていたオフィスを統合することで、迅速な意思決定や円滑なコミュニケーションを可能にし、事業の効率化や生産性向上を図る動きが顕著です。東京においては2012年に大量の新規供給が行われたこともあり、より新しくより大きなビルへの統合移転のニーズが顕在化しました。

統合移転の動きは以前からありましたが、以前はリストラ統合の意味合いが強かったのに対し、最近は増床を伴う拡張移転である点が大きな違いです。右下のグラフは、オフィス移転の理由を時系列で比較したものですが、これを見ても、「新設」や「拡張移転」など積極的な移転が増え、「縮小移転」、つまり消極的な移転が減っていることが分かります。

その背景には、景気回復により、企業が右肩上がりの事業計画を描けるようになったことがあります。これまで人員を絞ってきた結果、業務は増えているものの人手不足の状態であり、どの企業も人員増強とそれに見合う器の確保が課題となっています。また、国内の人口が減少傾向にあることから、将来の雇用の確保も懸念材料です。採用に少しでも有利に働くようにと、いまだ比較的割安感がある都心の好立地に移転するケースも増えてきています。

もう1つ、このタイミングでのオフィス移転や新設を後押ししている要因に、賃料の先高感が挙げられます。いずれ拡張移転が必要であるなら、賃料がまだ安い今のうちに移転先を押さえておこう、と考える企業が増えているのです。また、賃料の先高感はビルの建て替えにも影響を与えています。もう一度、オフィス移転理由のグラフを見ていただくと、近年「建替」による移転が増えていることが分かると思います。市況の好転を意識し、これまで所有・運用してきた老朽化したビルを建て替えることにより、資産の競争力を高めようとするビルオーナーが増えていることが推察されます。

今年から2017年にかけて、東京ではオフィスビル新規供給の計画が目白押しです。ただ、1つ懸念されるのは、震災からの東北の復興と、東京オリンピック開催を控えた東京の再開発が重なることで、建築費のさらなる高騰が予測されることです。建築費の高騰により新規供給の計画が後ろ倒しになれば、移転を望む企業に対して優良ビルが不足する可能性もあります。移転を検討している企業にとっては、あまりゆっくりと構えてはいられない状況であるかもしれません。

eコマース戦略実現のための 物流拠点の構築に積極投資

2.物流施設

首都圏 主な物流施設の開発計画

首都圏 主な物流施設の開発計画
No. 物件名称 事業主 エリア 所在地 竣工年 竣工月 延床面積
(㎡)
1 MFLP久喜 三井不動産 内陸 埼玉県久喜市 2014 7 74,521
2 プロロジスパ−ク常総 プロロジス 内陸 茨城県常総市 2014 11 38,367
3 MLP八千代物流
センター
日本ロジスティクス
ファンド投資法人
内陸 千葉県
八千代市
2014 12 58,177
4 グッドマン水江 グッドマンジャパン 湾岸 神奈川県川崎市川崎区 2014 12 59,261
5 ロジポート橋本 ラサール不動産投資顧問/
三菱地所
内陸 神奈川県相模原市緑区 2015 1 158,725
6 ランドポート厚木金田 野村不動産/
野村不動産投資顧問
内陸 神奈川県
厚木市
2015 1 38,660
7 グッドマン市川 グッドマンジャパン 湾岸 千葉県市川市 2015 4 75,579
8 GLP綾瀬 グローバル・ ロジスティック・ プロパティーズ 内陸 神奈川県
綾瀬市
2015 4 68,642
9 GLP座間 グローバル・ ロジスティック・ プロパティーズ 内陸 神奈川県
座間市
2015 6 130,000
10 レッドウッド生麦物流
センター
レッドウッド・グループ 湾岸 神奈川県
横浜市鶴見区
2015 9 62,120
11 レッドウッド佐倉 レッドウッド・グループ 内陸 千葉県佐倉市 2015 10 83,039
12 プロロジスパーク
市川3
プロロジス 内陸 千葉県市川市 2015 10 60,000
13 GLP八千代 グローバル・ ロジスティック・ プロパティーズ 内陸 千葉県
八千代市
2015 10 71,610
14 MFLP日野 三井不動産 内陸 東京都日野市 2015 10 212,760
15 本牧物流施設開発事業 三菱商事都市開発 湾岸 神奈川県
横浜市中区
2015 10 70,639
16 GLP狭山日高Ⅰ グローバル・ ロジスティック・ プロパティーズ 内陸 埼玉県日高市 2015 12 41,818
17 プロロジスパーク吉見 プロロジス 内陸 埼玉県
比企郡吉見町
2015 12 102,371
18 守谷ロジスティクス
センター
オリックス不動産 内陸 茨城県常総市 2016 4 47,818
19 GLP狭山日高Ⅱ グローバル・ ロジスティック・ プロパティーズ 内陸 埼玉県日高市 2016 5 85,539
20 ランドポート柏沼南 野村不動産 内陸 千葉県柏市 2016 55,392
21 プロロジスパーク
習志野5
プロロジス 内陸 千葉県習志野市 2016 64,600
22 プロロジスパーク
千葉ニュータウン
プロロジス 内陸 千葉県印西市 2016 127,523
23 ロジスクエア久喜 シーアールイー 内陸 埼玉県久喜市 2016 43,800
24 ランドポート八王子Ⅱ 野村不動産 内陸 東京都八王子 2016 36,322

荷動きが活発化している物流業界では、使い勝手の良い物流施設への投資意欲が高まっています。宅配便市場首位のヤマトホールディングスは、中核都市圏を多頻度幹線輸送でつなぎ、宅配サービスの当日配達を実現することを目的とした「厚木ゲートウェイ」や、海外市場の玄関口となる「羽田クロノゲート」を稼働させ、サービスの品質向上や配送のスピードアップに努めています。

一方、荷主企業でも物流システムの統合や強化が進み、高機能で大型の物流施設のニーズが高まっています。その背景にあるのが、eコマースの拡大です。アマゾンや楽天など従来のeコマース企業に加えて、コンビニやアパレルなどの多くの小売り企業がネット通販事業への進出や拡大を目指しており、より効率的な物流拠点の構築に向けた投資を増やしています。これら小売り企業は、リアル店舗へ商品を届ける物流網をすでに確立していますが、個人宅への小口配送がメインのeコマースを強化するには、eコマース専用の物流拠点の構築が必要だと考えています。即日配送に対応できる物流センターを増やしたり、個人向け宅配便を遅くまで受け付けられるよう、宅配業者の拠点の近くに物流センターを設けたりする事例が増えています。拠点選定に関して言えば、いわゆる一般的な“物流適地”であるかどうかよりも、自社のeコマース戦略を実現するのに相応しい物流拠点を構築して、自社のeコマースの競争力を高めようとする傾向が強まっています。

昨今は物流施設の賃料も上昇傾向にあり、地域や施設によってはリーマン・ショック前の水準に戻りつつあります。元来、物流施設は注文建築や自社倉庫が一般的だったため土地や建物の購入も選択肢の1つとなり、今後、賃料のさらなる上昇が見込まれるなら、土地を購入して自前の施設を建てようと考える荷主企業も増えてくると考えられます。ただし一方で、建築コストの上昇のほか、めぼしい物流立地には応札が殺到する傾向にあるなかで土地取得コストも上昇しているため、逆に自前主義だった企業が大型施設を賃借する事例も、見受けられるようになってきています。

自社の自由にできるよう 土地や建物を保有する

3.店舗

東京 主な小売店舗の開発計画(延床面積1,000坪以上)

施設名 エリア 面積
(推定坪数)
事業主 OPEN
キラリトギンザ 銀座 5,015 オリックス不動産など 2014年秋
(仮称)銀座五丁目計画 銀座 15,035 東急不動産 2015年秋
銀座六丁目地区市街地再開発計画 銀座 44,740 銀座六丁目10地区市街地再開発組合 2016年11月
(仮称)サッポロ銀座ビル再開発事業 銀座 2,140 サッポロ不動産開発 2016年夏
(仮称)表参道計画 表参道 2,920 東急不動産 2015年1月
(仮称)八分目プロジェクト 表参道 1,120 アッシュホールディングス 2015年9月
表参道プロジェクト 表参道 3,025 ヨドバシカメラ 2015年
ヒューリック新宿ビル建替計画 新宿 2,940 ヒューリック 2014年10月
(仮称)新宿中村屋ビル 新宿 1,940 中村屋 2014年9月
新宿東宝ビル開発計画 新宿 16,760 東宝 2015年
新宿駅新南口ビル(仮称) 新宿 33,580 JR東日本 2016年
渋谷駅南街区プロジェクト 渋谷 35,545 東京急行電鉄 2017年
渋谷駅地区 道玄坂街区開発計画 渋谷 17,850 道玄坂一丁目再開発組合 2018年

eコマースの発達や業態の拡大により、競争が激化しているリテール業界。小売業界全体のパイが伸び悩む中、新規出店を伸ばすことでシェアを拡大しようとする傾向が強く、出店意欲は旺盛です。また、最近は個人消費が持ち直したことで、海外ブランドの出店希望も増えています。ただ問題は、受け皿が不足しがちであること。東京に限らず、大阪や名古屋においても、商業集積地への供給がテナント需要を満たせない状態が続いています。

新規出店が難しい状況では、老朽化した設備の改修や店舗改装、建て替えなどを行うことで、ハードの競争力アップに対応することになります。店内改装や設備改修を機動的に行うために、借りるよりも保有するほうが話が早い、と考える企業も散見されます。これからインフレが進むと資産価値が上昇する一方で、賃料の上昇により賃料負担が増すことを考えると、保有したほうが収益増加につながるという判断もあるでしょう。

高島屋は今年、賃料負担を減らして収支を改善させるため、一旦は証券化した新宿店の建物部分を買い戻しました。また、日本に進出する外資系小売店のなかには、自社のブランディング戦略を滞りなく実践するために、土地や建物の保有にこだわる企業もあります。企業にとって直接の売上をつかさどる店舗という拠点だからこそ、自社のやりたいように施設を魅力化できるよう、土地や建物を保有する。景気回復を背景に、このような投資が可能な土壌ができたと言えます。

以上、アセットごとの拠点構築トレンドを見てきました。冒頭でも述べた通り、好景気により企業の業績が改善する一方で、資産効率の向上というプレッシャーも高まっており、企業の不動産投資はこれからも増えていくでしょう。この傾向を捉えて「2006年頃のようなバブルの再来では」と懸念する声もありますが、闇雲で無謀な投資は少ないように思いますし、少なくとも今のところの傾向としては、投機ではなく、あくまでも実需に基づいた投資であると見受けられます。重要なことは、企業の戦略に沿った投資を行うことでしょう。CBREは、不動産の専門家として常に客観的な視点からのアドバイスを心掛けています。効果的な拠点構築のために、ぜひ専門家の目をご活用いただければと思います。

それでは次ページ以降、CBREが仲介や開発コンサルティング、プロジェクトマネジメントを手掛けた、ブリヂストン、イケア、トランスコスモス各社の拠点構築を、ケーススタディでご紹介しましょう。

※順次公開予定

 

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上記内容は オフィスジャパン誌 2014年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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