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地域の省エネルギーに 貢献するオフィスビル

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2014年1月21日

最新環境技術とエリアエネルギーマネジメント

江戸の昔、東海道で日本橋から京都に向かうとき、最初に渡る橋であった「京橋」。その地名をもつ街、文化の中心であった京橋の街の伝統は、今もそこここに受け継がれている。今年3月にこの地に誕生したオフィスビル「東京スクエアガーデン」は、古くから循環型社会を形成してきた江戸のまちづくりに倣い、最先端の環境配慮型まちづくりの実現を目指す。

出典:東京建物株式会社

1.はじめに

東京スクエアガーデン

東京建物株式会社は、明治29年の創業時より、今では一般的となった住宅ローン、オフィスビルの区分所有、事業受託方式をはじめ、定期借地権方式、不動産の証券化・小口化の各事業形態において、いずれも先駆的な取り組みを推進してきた。

環境対策についても同様で、都市開発を行うデベロッパーとして、地域ぐるみ、まちぐるみで環境対策に取り組む開発を目指し、新しい施策を導入している。特に最近竣工した3つのプロジェクト(中野セントラルパーク、東京スクエアガーデン、大手町タワー)は、規模の大きさ、高い環境対策技術の導入、広大な緑の創造といった点から注目を集めているが、中でも同社がプロジェクトマネジメント業務を担った東京スクエアガーデンにおいては、他では見られない“地域を交えたエネルギーマネジメントシステム”の構築とその効果に期待が寄せられている。

今号では、この東京スクエアガーデンにスポットを当て、環境対策における技術や運営について紹介する。

2 環境モデルビル、 東京スクエアガーデン

東京メトロ銀座線京橋駅に直結、JR東京駅へは徒歩6分という好立地に、2013年3月に竣工した東京スクエアガーデン。地上24階・地下4階、延床面積117,460.96㎡の大規模オフィスビルである。同ビルでは、以下の3つを柱とした都市における多面的な環境への取り組みを行っている。

  • 高さ約30m・広さ約3,000㎡、ビル低層部全体を覆う「京橋の丘」の整備
  • 先進の技術を導入した「CO2削減モデルビル」の整備
  • 6階のフロア全体を使用して環境関連の活動を行う「京橋環境ステーション」の設置・運営
東京スクエアガーデン

これらの事業計画は、高い環境技術の導入により地域全体の省CO2を先導する事業として評価され、国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択されている。

また、㈱日本政策投資銀行によるDBJ Green Building認証の最高ランク「プラチナ」の認証を受けている。

さらに、建築物の環境負荷削減、環境品質・性能の向上など、環境性能を総合的に評価する建築物総合環境性能評価システム「CASBEE」の最高ランクであるSランクに相当している(2010年度版CASBEE新築 自己評価による)。

DBJ Green Building認証制度:ビルや物流施設に対して、省エネルギー、テナントや地域との連携、耐震性能など環境・社会への配慮を総合的に評価し、「プラチナ」・「ゴールド」・「シルバー」・「ブロンズ」の認証を付与する制度。㈱日本政策投資銀行により開発された。

3 街のオアシス、「京橋の丘」の豊かな植栽

ビルの前面に立ってまず印象的なのが、緑に彩られた特徴ある低層部。地下駅前広場から重層的に連続する高さ30m、約3,000㎡に及ぶ大規模な緑化空間には、140種類もの植栽が配置され、「京橋の丘」と名付けられた。もともと当ビルの立地する中央通り沿いには街路樹がないため、周辺の街並の高さまで緑豊かな空間を提供する京橋の丘はエリアのオアシスとして注目され、春は桜、秋にはモミジが来街者の目を楽しませる【図1】

図表1:「京橋の丘」地上部断面図

また、「京橋の丘」の形成は都市環境の改善、美しい都市景観の創出を企図して東京都が推進する「グリーンロードネットワーク」の一端を担い、都心のクールダウンや「風の道」の形成にも寄与している。

4 環境対策技術が実現する 省CO2効果

東京スクエアガーデンは、先進の環境対策技術を多数導入し、PAL(建物外周部における年間の熱負荷)25%以上削減、ERR(設備システム全体のエネルギー低減率)35%以上と、東京都建築物環境計画書において省エネルギー性能でAAA評価となる最高グレード「段階3」を目標として計画された。

竣工時点では、事務所用途においてPAL低減率43%、ERR54%となり、AAA評価を大きく超え、都内の他の大規模オフィスビルの中ではPAL・ERR共に最上位に位置している。

また、年間一次エネルギー消費量の予測値は、事務所用途で1,210.51MJ/㎡・年と、東京都の一般的なテナントビルにおけるエネルギー消費原単位2,518MJ/㎡・年に対し、約52%を削減。CO2排出量削減では、事務所用途で約50%削減を予測している。

環境対策技術として一番目を引くのは、各階に設けられた連続する奥行1.8mの“大庇”である。直線的なプレートが何層にも積み重なった姿は日射を遮る機能と共に、ビルの特徴的な外観を形成している。その他、次に挙げるのはこのビルの主な環境対策設備である【図2】

東京都環境計画書より。ベンチマークは、「東京都★省エネカルテ(17年度)」テナントビルの107㎏/㎡から省エネルギー要素を差し引いた数値を予測値としている。

図表2:東京スクエアガーデン環境コンセプト図

「東京スクエアガーデン」主な環境対策設備

  • 太陽光発電システム(屋上に太陽光パネル設置)
  • ペリメータの熱負荷を低減する、断熱・遮熱性の高い外装
    (奥行1.8mの庇、Low-eペアガラス、太陽光追尾電動ブラインド)
  • 自然換気システム
    (外周部に設置した手動の換気ホッパーにより外気を取り入れ、廊下を経由して排気ボイドから屋上へ排気させる仕組み)
  • 地中熱利用システム
    (年間の温度変動が少なく、外気と比較して夏は冷たく冬は暖かい地中熱を採放熱源に利用)
  • 高効率熱源機器
  • 水蓄熱槽
  • LED照明+人感センサー
    (人の動きを検知し、自動でON・OFF)+明るさセンサー(外光に合わせて明るさを一定に保って調光)
  • BEMS(ビルエネルギー管理システム)導入
  • テナントサービスシステム機能の充実
    (テナントがPC画面で空調・照明の調節やCO2削減効果の確認等を行うことが可能)

5 省エネルギー活動拠点 「京橋環境ステーション」

図表3:6F 京橋環境ステーション

当ビル6階の「京橋環境ステーション」は、最先端の環境技術や、環境活動の紹介・発信をするとともに、一般市民や地域の事業者、環境団体、専門家が交流する環境活動の拠点となっている。環境対策にテーマを絞ったこれほどの規模の施設を民間のオフィスビルが自ら設置する例は他にない。

同ステーションは、「エリアエネルギーマネジメントセンター(AEMセンター)」「中央区立環境情報センター」「エコテクカン」の3つの機能で構成され、主として地域の中小ビルオーナーを対象に、省CO2サービスをワンストップで提供し、地域との連携を図ることで地域全体における省CO2、省エネルギー化の推進を目指して活動をスタートしている【図3】

エリアエネルギーマネジメントセンター(AEMセンター)

地域全体のCO2を削減するには、個々の人々、個々の建物といった小さな単位での省CO2化の取り組みが欠かせない。京橋エリアを含む東京都中央区のオフィスビルから排出されるCO2の約75%は中小規模ビルによるもので、改正省エネ法における定期報告書や中長期計画書の提出は義務ではなく任意となっている。これら既存の中小規模ビルでは、ビルオーナーの省CO2に対する意識や、エネルギー消費の特性・要因が千差万別であるため、大規模ビルに比べて省CO2対策が難しい状況にある。

そのような状況下、2013年1月、学識者をはじめエネルギーの専門家が参画して「一般社団法人中小既築建築物省エネ化フォーラム」が設立された。同フォーラムはAEMセンターを地域活動拠点として、主として周辺の中小ビルの省CO2化・省エネルギー化を普及・啓発・促進する活動を通じ、最先端の環境配慮型まちづくりの実現を目指す。

具体的には、現在、地域の町会や、ビルオーナーを対象に以下の活動に着手している。

  • エネルギーについての課題や解決策に関する専門家によるセミナーや勉強会の開催
  • 相談窓口における専門家による省エネルギー診断支援、省エネルギー相談、運用改善や設備改修提案等、個々のビルの特性に応じたコンサルティングの実施
  • 省エネルギー改修における補助金等の申請支援、見積り徴収支援、工事の契約締結補助、工程計画支援等のサービス
  • 個々のビルに適したエネルギーマネジメントシステムベンダー、省エネルギー機器メーカー、工事施工会社の紹介
    (後述の「エコテクカン」展示企業以外にも、中小既築建築物省エネ化フォーラム会員企業から幅広く会社を紹介)
  • 地域の中小ビルのエネルギー使用データの収集・分析

今後は、省エネルギー化対象建築物の具体的促進手法の研究、エネルギー共同利用による負荷平準化システムの研究、研究成果に基づく省エネルギー化推進マニュアル・ツールの作成、中小既存建築物の省エネルギー化市場形成手法とビジネスモデルの研究、中小既築建築物の省エネルギー推進のための地域(自治体、住民組織等)との連携方策の検討および連携支援など、事業領域を拡大していく計画である【図4】

中央区立環境情報センター

地球温暖化など、さまざまな環境問題をわかりやすく学ぶとともに、環境活動の機会と場を提供する中央区の施設。館内には、デジタルサイネージによる展示情報コーナーの他、交流室、研修室がある。

 

エコテクカン

省CO2や自然エネルギーの活用技術、環境配慮型の新商品など、日本企業が世界に誇る最先端環境技術を展示・紹介するコーナー。朝日工業社、きんでん、スミノエ、高砂熱学工業、ニチベイ、日立製作所、日比谷総合設備、不二サッシ、LIXILが出展している。

江戸の商業・文化の中心だった京橋エリア。東京スクエアガーデンは、高性能の省エネルギー設備を導入するだけではなく、古くから循環型社会を形成し清潔で無駄の少ない地域運営を実現していた江戸のまちに倣い、地域全体の環境対策を牽引する情報発信・活動拠点としての役割を担う。

 

取材協力/資料・写真提供 東京建物株式会社

京橋環境ステーション

TEL:03-6262-0980 FAX:03-3231-5330 http://tokyo-sg.com/kankyo-st

エリアエネルギーマネジメントセンター

開館時間10:00~17:00(土日祝日、年末年始、ビル閉館日を除く)TEL:03-5542-1680 FAX:03-5542-1590

中央区立 環境情報センター

開館時間9:00~21:00(12/29から1/3、ビル閉館日を除く)TEL:03-6225-2433 FAX:03-6225-2699

エコテクカン

開館時間10:00~17:00(土日祝日、年末年始、ビル閉館日を除く)

本稿についてのお問い合わせ

東京建物 京橋環境ステーション
TEL:03-6262-0980
http://www.tatemono.com

東京スクエアガーデン公式サイト
http://tokyo-sg.com

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2013年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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