拠点毎では削減効果が小さいものの、全国実施でスケールメリットを得たコスト削減移転
年間賃料コスト
削減率 | -36% | 削減額 | 5,167万円 |
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移転によるオフィスコスト累計比較
拠点単体でメリットが出しにくい中全国5拠点一括でコスト見直し
産業用機械製造のF社は、好景気だった数年前までは順調に業績を伸ばしてきたが、世界不況の影響による国内外の設備投資の減少で業績が悪化。全社を挙げて、材料費や製造工程の見直しなどのコスト削減に取り組むことになった。そのような状況下、本社総務担当者に課された命題が、全国5拠点で展開するオフィスコストの見直しだった。
ここで総務担当者は、大きな壁にぶつかった。各拠点の賃貸条件やオフィスの状況については過去まったく精査されたことがなく、本社ではほとんど把握していなかったのだ。各拠点ではこれまでも人員削減や配置転換が行われてきたが、オフィスは現状のままで、余剰スペースが生じていたとしても無駄な賃料が支払われてきた。それらを一つずつ精査していくにしても、契約形態は各拠点でバラバラであり、オフィス移転業務に慣れていない担当者には荷が重い。そこで、各拠点に対してオフィスコスト見直しの指示を出したものの、拠点単体ではコスト削減額が小さいことから移転の意義が見出せなかったり、現場の業務が優先されたりして、移転計画は思うように進まなかったのである。
オフィススタンダードの策定で全国の適正面積化を実現
相談を受けたCBREは、各地に所在する同社の支店を通して、5拠点の現状確認を実施。各拠点単体でのコスト削減効果をシミュレートするのではなく、5拠点全体でのコスト削減効果を測定し、全拠点が一斉に移転することによってコスト削減効果を最大化できることを示唆した。また、移転に必要な1億円以上にもおよぶイニシャルコストの回収期間についても、綿密な試算が行われた。さらに、5拠点全体の見直しを図るため、全社共通のオフィススタンダードを策定。まずは契約基準を定め、現行賃料と現在の市場からみた賃料水準が乖離している拠点については、契約条件の見直しを行った。オフィスづくりにあたっては、1人あたりに必要な面積基準を策定し、それに沿って各拠点の最適面積化を実現した。これにより、各拠点のバラツキを抑えて全体での効率化を図るとともに、移転に伴う拠点の負担を減らし、移転プロジェクトを円滑に進めることができたのである。また、CBREの東京本社が移転プロジェクトの総窓口となり、全国の拠点網を活用して移転交渉やスケジュールを管理したことも、F社移転担当者の負担を減らし、移転を成功に導いた大きな要因だといえるだろう。
全拠点一斉の移転により、全体でのコスト削減が実現できたことに加え、各地の不動産状況を本社が把握、コントロール、マネジメントする体制が構築されたことも大きなメリットだったようだ。「今回の一斉移転と、その結果がもたらした大きな成果がきっかけとなり、当社が全国各地に抱える工場や店舗などの不動産について、トータルでの有効活用を考えるCRE戦略の土壌ができました。これも、今回のプロジェクトの目にみえない"果実"の一つです」と担当者は話している。