6拠点を1拠点に集約+所有倉庫をサテライトオフィス化 CRE視点で遊休不動産まで活用したコスト削減移転
年間賃料コスト
削減率 | -49% | 削減額 | 2億4,120万円 |
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移転によるオフィスコスト累計比較
都内6拠点、多数の営業車を集約利便性とコスト削減を両立させるには?
H社は、本社を含め都心6ヵ所に拠点を構える老舗の電子部品メーカー。業界内でも中核を担う存在だったが、昨今の景気後退で大手取引先からの発注が激減し、深刻な経営状況に陥っていた。そこでH社は、首都圏に分散する拠点(合計1,500坪)を1ヵ所に集約することでコスト削減と人材資源の集中を図り、この厳しい経営環境を乗り切ろうとした。また拠点の集約には、オフィス賃料の圧縮を目指しながらも、現状の執務環境を損なわない使用面積を確保することが求められた。
移転計画を推進するにあたり、いくつかのポイントが明らかになった。まず、同社の主要取引先の多くは都内に点在しているため、営業上の交通利便性を考えると、オフィスの立地条件は都心が望ましいこと。また、各拠点で使用している営業車を1ヵ所に集めるとすると、80台分の駐車場が必要となること。さらに、6ヵ所の現入居ビルのうち2拠点は定期借家契約のため、解約には多額の違約金が発生することがわかった。つまり、移転の条件としては「都心近郊で1,500坪、80台分の駐車場付」であり、しかも「移転イニシャルコストに加え、解約違約金も回収しなければならない」という高いハードルが課されることになったのである。
オーナー所有の遊休地や自社倉庫も有効活用「サテライトオフィス構築」を実践
CBREが提案した複数の物件の中から、最終的に移転先に確定したのは、東陽町で2フロア1,200坪(各フロア600坪)の物件だった。決め手となったのは、CBREが提示した次のような解決策だ。まず、6拠点を合わせた貸室面積1,500坪に対し、集約による共有スペースの削減やレイアウト効率の向上によって、必要面積を1,200坪にまで圧縮。この必要面積を、各フロア600坪の連続する2フロアで確保することで、拠点集約を図った。80台の駐車場については、ビルオーナーが近隣に所有していた遊休地を、駐車場用地としてH社に提供できるように交渉した。
しかし、ここで「東陽町」という立地に対する懸念が同社内で浮上。現在の拠点群に比べ交通アクセス面で劣り、そこへの集約は、営業活動を阻害するだろうということだ。そこでCBREは、同社が日本橋で倉庫として使用していた自社所有物件をサテライトオフィスとしてリニューアルし、営業部門がそこを活用することを提案した。これらの解決策と併せ、移転先のオーナーからは現在の市況下ならではの好条件を引き出すとともに、解約違約金やイニシャルコストを勘案したコストシミュレーションを実施。早期に移転のメリットが出るプランを設計したのである。
こうして、多くの課題を抱えたH社の拠点集約は見事に成功。自社所有倉庫からオーナーの遊休不動産まであらゆる不動産を有効活用し、幅広い視点からコスト削減移転を模索した。その創意工夫と交渉力が、難しい条件での拠点集約を可能にしたといえるだろう。