新規需要が空室率の低下を加速。賃料水準の上昇傾向が継続。
空室率は3%台まで低下
2015年6月期の福岡主要オフィスゾーンの空室率は3.6%と、対前期(同年3月期)比1.1ポイント低下。今年2月の新規供給を最後に2016年春まで新規供給がないことや、新規開設や拡張移転等のテナント需要が活発であるため、空室率は、さらに低下すると予想される。
空室率の低下に伴い、賃料水準が上昇している。リーマンショック後の賃料低下時と比較すると、成約賃料はおおむね1,000~3,000円/坪上昇。また、その当時入居したテナントを中心に賃料の増額改定も始まり、1,000~2,000円/坪の増額改定が行われている様子である。市況感に鑑みると、単純なコスト削減移転では対象になり得る物件が少なく、増額改定を中心に協議を行わざるを得ない環境になってきている。
空室率は2007年のリーマンショック以前の水準まで低下しているが、賃料相場は当時の水準までいまだ戻っていない。今後も、空室率の低下や賃料の上昇トレンドが継続していくものと思われる。
来春竣工の大型ビルも好調
空室率の低下は、市況の回復による拡張要因は当然ながら、新規需要が加速させている。今年2月竣工の「長府博多ビジネスセンター」は、コールセンターの新規開設、エリア外からの流入、新会社設立等、ほぼ新規需要により空室が消化され、二次空室等のマーケットへの影響は非常に軽微なものとなった。
他物件においても、自社物件からの移転や分室増床等、空室の発生を伴わない新規需要が多数あり、空室率の低下に大きく寄与していると言える。
2016年春に新規供給予定の「JRJP博多ビル」も入居テナントが決定しつつあり、順調に募集が進んでいる様子である。2016年春頃には、新規供給に伴う二次空室、自社物件への移転等による大型空室の発生予定はあるが、今後も、増床や新規需要の継続が予想され、一時的な空室率の上昇はあっても、空室率の低下傾向と賃料の上昇傾向の継続が予想される。
福岡市以外の九州主要都市も、空室が減少してきている。賃料の増額改定まではまだ見られないが、成約賃料は、一時期の低水準を脱している。特に、熊本や那覇では、空室が大幅に減少している。福岡市のみならず、他都市でも新規供給を期待したいところである。
福岡支店 瀧尾智之
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相場表
種別 | 賃料(共益費込) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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博多駅前 | 10,000~13,000 円/坪 | 博多駅近くの大型物件を中心に引き続き空室は減少しており、成約賃料についても緩やかに上昇傾向にある。 | |
博多駅東 | 9,000~11,000 円/坪 | 博博多駅前エリアとは異なり安価な賃料単価の物件が多い。空室は同様に減少している。 | |
呉服町 | 9,000~11,500 円/坪 | 今春竣工した物件を中心に空室が消化されているが、全体として動きは少なく、空室率・賃料とも横ばい。 | |
天神 | 11,000~13,500 円/坪 | 明治通り沿いを中心に空室は少しずつ減少している。成約賃料も緩やかに上昇傾向にある。 | |
赤坂大名 | 9,500~10,500 円/坪 | 一部、駅至近の物件を中心に空室が消化されているが、成約賃料の上昇には至らず。エリアとしての需要も少ない。 | |
北九州小倉 | 7,500~10,000 円/坪 | 小倉駅近隣の築浅物件の空室が消化されるが、依然として需要は少ない。エリア全体として動きが少なく、停滞している。 | |
中・大型倉庫 市内 |
2,600~3,200 円/坪 | 新設や拡張を検討する企業は多いが、既存倉庫は引き続き品薄感が強い。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。